布瑠部の方陣は透き通る世界で循環する   作:Another2

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再戦─伍─

 仲間の負傷、術式の覚醒の兆し、天童アリスのギアが上がる、キヴォトス最速の美甘ネルに“最強”マコラと対峙した以来の緊張が走る、しかしネルは迸る闘争心を抑えず、寧ろ更なる昂りを見せる、されど思考は冷静に相手の術式の攻略法を模索する──それは向こうも同じ事であった。

 

──あのチビの手札を探る、まず一際目立つあの馬鹿みたいにデカい武器、アレがあいつのメインで且つ校舎に大穴を空けた代物と考えて良いがその分大きな溜めがいる、起点を効かせて連射もできる様にしてるみたいだがその分威力はお粗末、次にそのデカい武器をぶん回せるだけの膂力、向こうも私に対して飛び道具が余り旨くないとわかってる分寧ろこっちの方が厄介……

 ()()()、たったの一撃、あの時の天井からの一撃*1だけだ、あたしがこの戦闘で喰らった攻撃は……それだけだって言うのに()()()()()()()……‼︎担いでる大砲のレーザーより手軽にバズーカ砲並みの威力が出るアイツの膂力の方が遥かに面倒だな、そして何よりの懸念点は、コイツの異様なまでの頑丈さと上がり続ける出力‼︎これだけがマジで分からねえ、アスナみたいな条件付きの身体強化みたいな術式と見るべきか?だとするなら発動条件が分からねえ以上純粋な力比べは旨くねえな、*2あたしのアドバンテージは、あのチビがあたしの術式の速度にまだ慣れていないという事と動きを作れずにフリーズする事、この二点のみ、逆に言えばあたしの術式を攻略された時点で敗色濃厚なわけだが……面白え、アイツ(マコラ)と本気で戦った時以来だな、ここまで気分がアガるのは、今のコイツなら簡単には壊れねえ‼︎最高速度でぶっちぎる‼︎

 

──ネルの手札を整理しよう、まずは手持ちの二丁のSMG、コレの同時掃射の火力は目を張るものがある、しかもネルの術式の影響かネルのリロードの時間はほぼゼロだ、そして彼女の術式……視界を画角にしてあらかじめ動きを作りそれを後追いする、それにより規格外の速度を出せる、しかしそれにはいくつかの条件があり、失敗するとさっきのアリスみたいに1秒のフリーズが入る、逆を言うなら動きを作るのに成功したら誰でも加速できうるって事だ*3、発動条件は掌で触れる事、銃弾の速度がエグかったのは常に両手で触れてるからだろうな、術式の対象は生物だけか?あらゆる物が対象と考えても空気等の固定が出来るとは考え難い、だけど最悪瓦礫とかの固定はできるかもな、度重ねの加速もできなくはないだろう、だけどそれをやらないのは自身の肉体の強度故かな、どれだけ甘く見積もってもマッハの領域に到達することはないだろうけど亜音速ぐらいならあり得るな、それぐらいネルの身体能力は高い……‼︎

 此方の手札はミドリの狙撃による妨害と前線を張れるアリス……要はアリスだな、アリスの術式はまだ分かんないけど恐らく発動条件にアリスの精神面が関わってると見て良い、喜怒哀楽によって運動能力が変わるようにアリスは自身の精神面によって術式を無意識に発動させている、その鍵は恐らく()()()()()()()()()()()()だろう、恐らくそのイメージによって術式の効果が左右されるんだ、そして恐らくその事をネルはまだ知らない、つまりこの戦いは……‼︎

 

──相手が自身の術式に慣れる前に潰す戦い‼︎

 

 奇しくも両者の思惑が一致する、アリスはネルの速度に対応したら、ネルはアリスの術式の秘密を解明できたら、その掛け合いによってこの戦いは決着を見る。

 

「光よ‼︎」

 

 先手を取ったのはアリスの砲撃による光線、ネルは即座に回避の構えを取る、それを見越した上でミドリは既に射撃を終えており十字砲火の形となる、しかしそれだけで攻撃が当たるほど“キヴォトス最速”はノロマでは無い、ネルはその止まって見える速度の攻撃を難なく躱し、ミドリの方へ直行する。

 

──先ずは鬱陶しい狙撃の方から潰す‼︎

 

 その判断は誤ちではなかった、事実ミドリを再起不能にすれば残りはアリスただ1人、複数人との対面より一対一での正面戦闘の方が幾分かマシだ、しかしそれを──

 

「勇者の前でこれ以上仲間を倒せるとは思わない事ですね‼︎」

 

 “勇者”が黙って見ている筈がない。

 

「ユズの様に正確に‼︎」

 

 アリスの大砲から再びネルへ向けて光線が放たれる、しかし先程と同じではなく複数に枝分かれし様々な角度からネルに向かっていく。

 

──光線の数を増やし軌道を途中で変えた⁉︎だが一本の威力と速度はお粗末だ‼︎難なく躱せる‼︎

 

 当然の様に乱反射される光線を躱していくネルとその標的からズレた光線は更に向こうのミドリと先生へと向かっていく、このままでは2人に命中してしまうが……

 

「モモイとミドリの様に自由に‼︎」

 

 二人の直前で光線の軌道を捻じ曲げて再びネルへと猛追させる。

 

──マジかよ‼︎更に途中で捻じ曲げやがった‼︎だが所詮一発芸、問題は……違う‼︎誘導されてんだ‼︎アイツの方向に‼︎

 

 ネルのその思考より早くアリスがネルに迫る。

 

「マコラの様に……パワフルに‼︎」

 

 アリスの拳がネルに当たる──直前にアリスの動きがフリーズする、ネルはアリスの拳がネルに当たるより先にアリスの肉体に触れる事で術式を発動させた、そしてフリーズさせたアリスを勢いが乗った状態で更に打撃を叩き込む、しかしそうする事で──

 

ズガガガガガッ‼︎

 

 背後からの光線をモロに受けることになり、手痛いダメージを身体に刻むことになる。

 

「〜〜ッ‼︎」

 

──クソッ‼︎覚悟してた事だが纏めて受けるとここまでダメージを受けるとは‼︎だがアイツの拳の直撃を受ける訳にはいかなかった‼︎直撃を受けていたらまず間違いなく沈んでた‼︎だがこれで奴を遠くに飛ばせた‼︎あのデカブツは奴の手元には無い‼︎拾う暇は与えねえ‼︎一気に速度で潰す‼︎

 

 ネルが床に着地する、その瞬間を狙撃手は見逃さない。

 

「ドットを打つように緻密に……‼︎」

 

「ッチィ‼︎着地狩りか‼︎徹底してんなァ‼︎」

 

“分かりやすい隙があるなら其処を突くだろうが‼︎”

 

──着地がワンテンポズレた!だが問題ねぇ‼︎従って──

 

──態勢を崩したな‼︎だが大した問題にはならない‼︎だから──

 

──このまま攻める‼︎

 

──この状態が続けば勝機はある、()()()()‼︎ミドリはもう、限界だ!

 

 度重なるハイスピード戦闘、極度の集中下での精密な射撃、才羽ミドリの体力が底を尽きようとしていた。

 

「先……生‼︎ネル先輩は今私とアリスちゃんとの一対ニを前提で戦術を組んでると思います、でも実際は違うんです、生まれてからずっと一緒だったんです、だからもう目を覚ましている筈なんです

 

“成程ね、それはこの世の何よりも信じれる言葉だ”

 

「ハッハァ‼︎また身体能力が上がったなぁ‼︎本当に際限なくあがんのかよ‼︎」

 

「今のアリスは沢山ゲームをこなして製作にまで関わりました‼︎だから誰よりもゲーム脳なんです‼︎」

 

──やっぱりアリスの術式の発動条件はイメージの有無と精神性‼︎ネルは際限無く上がるとは言ってるがそんな筈はない‼︎必ずどこかで無茶が立つ‼︎そうなれば私たちの──。

 

 攻めきれない、それは即ち手詰まりに近い、事実このままではアリスの体力が切れるのが早い、今盤上に欲しいのは、外からの介入。

 

「おりゃー‼︎私の怒りの弾丸を喰らえー‼︎」

 

「ア゛ァ⁉︎」

 

 突如として起きた再起不能になったはずの才羽モモイの乱入からの即射撃、それは如何に百戦錬磨の美甘ネルをしても度肝を抜くには十分過ぎるものだった、否、それだけではない。

 

「標準定まりました……‼︎覚悟してください‼︎」

 

 加えて花岡ユズの復帰による爆撃、四方からの攻撃に囲まれたネルは──急加速を持ってやり過ごすが……僅かながら息が乱れてきている、術式の使用による体力消耗が勝ってきているのだ。

 

「どう言う原理だよ、2人とも確実にしばらく起き上がれねえ位に打ち込んだはずだぞ」

 

「いやー、それが私たちにも……」

 

「何が何だか……気がついたら目が覚めてたと言うか……」

 

──当事者2人が分かってねえって事は確定でチビの術式だな、回復させる効果もあんのか?

 

「モモイや、ミドリ、ユズが教えてくれたんです、RPGのボス戦闘において味方の回復やバフを撒くのは必須行為であると、そして勇者ジョブは味方の回復や補助もこなせる万能ジョブなので‼︎アリスにできても不思議ではありません‼︎」

 

「えぇ……そんな理屈なの?」

 

「油断しましたね‼︎勇者とはこう言う物なのです‼︎」

 

「クソッ、そうだったのか……‼︎じゃあ何か?お前が勇者であり続ける限りそいつらは倒れねえしお前も負けねえって事か?」

 

「はい‼︎勇者は最後の最後に必ず勝つんです‼︎」

 

“……だそうだけど、まだ続ける?”

 

「あー……もういい、十分にお前らの強さは分かったしな、あたしも満足に暴れることができたしな、今回はここまでにする」

 

「もう襲ってこない?」

 

「あぁ」

 

「本当にもう終わりですか?」

 

「あぁ、これ以上は本当に重傷者が出かねないからな、これでお開きだ」

 

「……よかったぁ〜‼︎何とか無事に済んだぁ〜‼︎」

 

 戦闘終了の意を聞き取りホッとしてその場に倒れ込むゲーム開発部の面々、唯一アリスだけピンピンとしているが……

 

「なんだ、終わってたのか、加勢の必要は無かったな」

 

“おかえり、マコラその様子だと結構消耗したみたいだね”

 

「おう、思いの外楽しめた、大当たりのアスナの強え事強え事」

 

「わーん‼︎リーダー‼︎負けちゃったよぉ〜‼︎」

 

「うがぁー‼︎アスナテメェ離れやがれ‼︎あたしも結構疲れてんだよ‼︎」

 

 続々とメンバーが集結し始めてんやわんやとした状況になった、どうやら本格的に戦闘は終わったらしい。

 

「それで?どうだった?こっちの戦闘は」

 

“大方君が狙った通り、アリスが術式を発現させてネルと一進一退の攻防を繰り広げたよ、かなりとんでもない代物の術式だ”

 

「マジか」

 

「あぁ⁉︎アンタこのチビの術式の効果がわかったのか⁉︎」

 

“まぁ、大方の目処は付いてる、多分使い方によってはマコラすらも落としかねない程の物だよ”

 

「ククク……ハーッハッハッハ‼︎そうかそうか‼︎俺すらも危うい術式か‼︎そいつは傑作だ‼︎」

 

 先生の発言は大方的外れではない、天童アリスに発現した術式“勇者”はアリス自身が思う【勇者らしいと確信した想像(イメージ)の実現】と【勇者らしい行動をした際の身体能力の強化】を可能とする、神将マコラにも対抗しうる術式、アリスは自身の術式の事を、何も知らない。

 

「おい、アンタらが作ったゲームってのはどんなのだ?」

 

「あ、それならここからダウンロードして……」

 

“アリス、ミレニアムプライスの発表まであとどれくらい?”

 

「えぇと、まだ少し時間があります」

 

「じゃあ帰って休もう‼︎すっごく疲れた‼︎」

 

「同感……もう帰って寝たい……」

 

 ミレニアムプライスでの結果発表まであと僅か。

*1
しかも防御や威力を流すこと自体は成功している

*2
というかさっきからそれで押し切れてねえ

*3
そんな芸当出来んのマコラぐらいだろうけど




これにて対C&C編は終わりです、疲れた。

因みにアリスがネルと渡り合えた理由は単純に出力上昇による身体強化もあるけどそれにプラスで作中でアリスが言った通り自身にバフ(強化呪文的な奴)を無意識にガン回ししてたから、あとさりげなく気絶してるモモイとユズの遠隔回復させてるのもやばい、真面目にマコラを倒しかねない術式を持ってる。

言うまでもないがアリスの術式の元ネタは高羽の超人

【最終決定】IF世界線のマコラ

  • アビドスIF
  • ゲヘナIF
  • トリニティIF
  • ミレニアムIF
  • アリウスIF
  • ゲマトリアIF
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