布瑠部の方陣は透き通る世界で循環する   作:Another2

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漢数字なのは殆どマコラ出てこないから。

一部平仮名のままだけど誤字ではないです。


ガコンッ(七回転目)

 夢を見る、とても幸せな夢、それはかつての在りし日の、()()()()()だった頃の夢、まだ俺の中に色彩が満ち溢れていた頃の夢。

 

 とある平凡的な、何処にでもあるような小さな街、大都会という訳でもなく、だからと言ってど田舎と言える程でもない、俗に言う“普通”の街、この街には良くも悪くも有名な人物……否悪ガキ共が居る。

 

「コラアアア‼︎待たんか悪ガキ共ー‼︎」

 

“っへーんだ!誰が待つかよ!ノロマなオッサン!”

 

「待てと言われて待つ逃亡者がいるかよ!勉強不足だぜー!」

 

 駄菓子屋から飛び出す二つの小さい影、さらにその後から大きい影が怒声を挙げて飛び出し二人を追いかける。

 

「〜〜!こんのクソガキがぁ!今日という今日はもう許さん!」

 

「ヒュー♪ジジイがキレたぞー!」

 

“キレ症だー!きっとかるしうむが足りてないんだぜー!”

 

 怒り心頭の店主から煽りながら逃げる、この二人、タチが悪い事にかなり運動神経が良い、さらに小さい体を利用して小回りを効かせて逃げ回るのでなかなかに捕まらない。

 そんな光景を周りの大人達は微笑んで見守っている、どうやらこの街では馴染みの光景の様で周りの住民達も日常の一部として受け入れている様だ、寧ろ今回はどんな悪戯で追いかけられたのか賭けが始まってる始末。

 

「今回はなんだと思う?俺落書きに煎餅3枚」

 

「駄菓子屋の所だろ?なら駄菓子を盗んだに5枚」

 

「そりゃ前もやったろ、俺は案外あの店主の秘蔵の菓子を盗んだってのに6だな」

 

「ハハッ!相変わらず大穴に賭けやがる!勝ったやつがこの煎餅総取りって事で」

 

 案外駄目な大人達が多いかもしれない。

 

“二手に別れるぞ、俺は右!”

 

「なら俺は左!撒いたらいつもの公園な!」

 

 そうして2人の子供が二手に別れて逃亡する、店主の男は堪らず足を止めるがすぐに右側を追いかけに回る。

 

“こっち優先かよ!……だけどなぁ!50過ぎたロートルにこの俺が捕まるとでも……”

 

「だったら30手前の俺になら捕まるって事だな!」ガシッ!

 

 後ろに気を取られて前の人影を注視してなかった子供は呆気なく前の大人に捕まってしまう。

 

“ッゲェ!せんこー!”

 

「はあ……はあ……済まねえ先生、迷惑かけちまって」

 

「いやいや迷惑を掛けたのは此方の方ですご主人、うちのバカ生徒達が本当に……きっちり叱っておきますんで」

 

“はーなーせー!”ジタバタ

 

 小学校職員室にて、結局もう片方の子供も捕まり仲良く説教中だ、他の教員達も慣れているのか“こいつらまたやったのか”と言わんばかりに苦笑いを浮かべている。

 子供2人には仲良く拳骨が振り下ろされ綺麗な二段のタンコブが出来ていた。

 

「……で?今回は何やったんだお前ら」

 

“殴ってから聞くのはおかしいと思うぜ、せんこー”

 

「そうそう、そう言うのは殴る前に聞く物だぜせんこー」

 

「もう一段増やされたい様だな」

 

“「すいやせん‼︎店中の目立つ場所にエロ本をセットしやした‼︎」”

 

「何やってんだ!」ゴン!

 

 室内に“いってぇー!”と言う2人の声が上がる、頭を抑え悶えており中々の痛みの様だ。

 

「ちゃんと白状したのに!嘘つき!」

 

「拳骨を振り下ろさないとは言ってねえだろ」

 

“……確かに!“

 

「おーぼーだ!大人の悪い策略だ!」

 

「ククク、お前達2人は俺の掌の上で踊らされていたのだよ…」

 

「くそう!なんて汚いやつ!」

 

“苦しむ俺たちを見てゆえつかん?って奴にひたってるんだ!”

 

「おうおうなんとでも言え」

 

“「鬼!悪魔!拳骨マン!」”

 

「ハッハッハッ!お前らからしたらその通りかもな!」

 

“「ゴリラ教師!学校でメンチ切ってるのが似合う先生!裏でヤクザと取引してる疑惑がある先生!」”

 

「ちょっと待て、最後の二つはなんだ」

 

“学校中で噂になってるぜ!”

 

「先生見た目厳ついからなー先生っていう見た目じゃないって」

 

「俺が一番気にしてる所を…!」*1

 

 最後にもう一回拳骨を喰らって漸く解放された二人、尚ちゃんと二人とも出る前に先生達に挨拶はした、妙な所で律儀なのである。

 二人は公園に向かう道中で仲良く談笑していた、先程念入りに叱られたと言うのに何故こうも明るいのか。

 

“クッソー、もう少しで逃げキレたのにせんこーのやろう……”

 

「でも上手くいっただろ?大声で“こんな朝からエロ本読んでるー!”って叫んだ時のあのオッサンの顔見たか?」

 

“見た見た!ありゃ笑い物だったな!”

 

「今回は俺の奴だったから……次は蒼記(そうき)の番だな、次何やる?」

 

“フフン、次もとびっきりのやつを仕掛けてやるぜ!(れい)!”

 

 何故ならこの二人、全く反省していないのである、ちっとも懲りてない、それどころかもう次の悪戯の内容を画策している、悪戯の内容は二人で交互に考え計画している様でさらにその内容も豊かである、その為に大人達はどっちが考案したのか、どんな悪戯を仕掛けたのかを賭けているのだ。

 

「前のはけっさくだったぜ、確か……推理小説の本に出てくる犯人の名前に付箋貼って【こいつが犯人】ってやつだったな」

 

“図書館に置いてるやつ全部にやったからな!あれは大仕掛けだった”

 

「その後滅茶苦茶に怒られたけどな」

 

“ページに直接書いた訳じゃないんだしそんなに怒ることじゃねえのにな”

 

「あの時ほど俺はお前が恐ろしいと思ったことはないよ、時間のかけっぷりが半端じゃねー」

 

“そう言うお前もなかなかエグいのやったじゃん、ほらたしか……滅茶苦茶リアルな造形手首の展示だっけ?血管とか骨の断面もしっかり作ったやつ”

 

「あーあれね、みんな腰抜かしてたやつな!あれ夏休みの図工作品の展示品」

 

“リアルすぎてみんな引いてたじゃん、なんでそんな詳しいんだよって”

 

「一時学校内で俺は人をバラした事があるみたいな噂が流れてたねー」

 

 双方共に悪戯の質が高すぎる、これが小学校の子供が考える悪戯なのだろうか。

 

「まぁ次もとびっきりの奴を期待してるぜ!」

 

“勿論、今度のも大仕掛けだ、イルミネーションってあるだろ?あれをな……”

 

「マジかよ!こりゃ久々の大仕事だな!何処に仕掛けんだ?」

 

“フッフッフ……この悪戯は一番目立つ所でやって本領を発揮するのだよ、そしてこの町で一番目立ち尚且つ人が集まる場所と言えば?”

 

「駅前の時計台広場!」パチン(この間0.1秒)

 

“正解!俺の飾り付けとお前の造形技術があればとんでもない作品が出来るぜ!”

 

「クゥ〜!流石だな!いつも俺の予想を超えてくる!」

 

“何、お前の発想には劣るさ、だが問題が一つ、どうやって時計台まで運ぶかだ……事前に作るにしても現場で作るにしても時間が掛かる……”

 

「おいおい、そんなことで悩んでんのかよ、そんな時こそ俺を頼れよ!俺にできないことをお前がやってお前にできないことを俺がやる!そうすれば全部解決だ!」

 

“ハハッ!確かに!俺たち二人ならなんでも出来るからな!”

 

“「俺たちは最強なんだから何も怖くないさ」”

 

 【俺たちは最強】半ば二人の口癖になりつつあるこの単語、事実二人が手を組んで成した悪戯には大人達全員が頭を抱えている、しかし何処か微笑ましい所があったり寧ろ街の話題性が上がったりするのでなんとも言えない始末、そして怒られる時は二人仲良く怒られる、そんな風景がこの町での日常なのだ。

 尚その悪戯は事前準備がバレた為に未遂となってしまった、下手人は先生、本人達は物凄く悔しそうにしており、過去何度か悪戯を阻止されている様だ。

 

「これで俺の159戦79敗80勝目だな、あんな目立つもの準備してたらバレるっつうの」

 

「くっそー!もう少しだったのに!」

 

“後設置する段階まで行ってたんだぞ!”

 

「俺としてはお前らの技術面に驚愕だけどな、こんな小学生いねーよ」

 

“へんけんはよくねーぞせんこー”

 

「そう言った所からさべつもんだいがおきるんだぞ」

 

「なんでそんな難しい言葉知ってんだ、もうちょっと年相応に振る舞えよ、本来小学生ってのはな──」

 

“それ正論?”

 

「俺たち正論嫌いなんだよね」

 

“「ポジショントークで気持ちよくなってんじゃねーよ、オ゛ッエ゛ー」”

 

「……お前達、外で話すか?」

 

「便所なら一人で行きなよせんこー」

 

“大人の寂しんぼ程見苦しい物はないぜ”

 

「反省の余地なしと……お前ら二人とも反省文な、10枚書き終えるまで帰るなよ」

 

 なんて事もあったな……結局あの後どっちがより芸術点が高い反省文を書けるかの勝負になったっけな、先生怒ってたけどしっかり採点してくれるんだよね。

 思えばあの頃の俺たちは皆に構ってほしかったのかも知れない、自他共に認める程に頭が良かったからか周りと自分の見てる景色が違うなんてのはすぐ分かった、その中で零だけが俺の思考に着いて来れた。

 同い年の子達の悪戯の感想や期待の眼差しが欲しかった、大人達から凄いって言う言葉が欲しかった、先生がちゃんと怒ってくれるって事が嬉しかった、俺たちのことを見てくれる人がいる事が嬉しかった、そしてアイツと馬鹿をやれてたのが何より楽しかった。

 だからこそあんな事を考えなければ良かったと今でも思う。

 

「特大の花火を作る?」

 

“そう、火薬の量を弄ってさ、大人達が腰抜かす程のデケぇ花火を作ンのよ”

 

「イイね!凄くイイ!最近マンネリして来てたからな、ここらで一発ド派手な奴をやっておかねえと後々アイディアに支障がでる」

 

“だろ?火薬の調達は済んだら、あとは作るだけよ”

 

「流石、準備が早い、なら早速作るか!」

 

 この時点で止めておくべきだったんだ、周りと比べて頭が良いとは言うがそれはあくまで子供の範疇、大人になっても正しい知識と職人の技で漸く成り立つ花火の悪戯なんて素人の私たちに出来るわけが無かったのだ、その結果……

 

ドオォォォォン‼︎

 

 起こるべくして起きた、必然たる事故(暴発)、爆音を聞きつけやって来た大人達、倒れ込む俺たちを見て直ぐに病院に運び込んだ、結果共に大火傷、後には残らないタイプだったのが幸いだったと言う、俺は吹っ飛ばされた衝撃で重度の打撲と捻挫、零は骨に支障が出た。

 気がついた俺たちはこっぴどく怒られてしまった、今まで聞いた事がない本気のお怒りだった。

 

「なんであんな危険な事をした!悪戯の範疇を超えてるんだぞ!」

 

「いいか!今回の事故でお前達が死なずにその怪我で済んだのが奇跡だ!」

 

「腰を抜かす花火を作りたかっただと⁉︎確かに腰を抜かすと思ったよ!お前達が事故の張本人と聞いてな!」

 

「……でかい花火を作るなら、なんで事前に大人に相談しなかったんだ……!」

 

「……お前達が無事に生きていて本当に良かった……!」ギュッ

 

「頼むから……二度とこんな悪戯はしないでくれ」

 

“ごめ、んなさい、ごめんなさい、ごめんなさい”

 

「……ごめん先生、もうしないよ、こんな危険な悪戯は」

 

 初めて出た心からの反省、謝罪、それを捻り出すには余りにも遅すぎた。

 今思えば先生の叱りの言葉はずっと俺たちの身を案じての事だった、そして今回のこの事故、俺は、自分が発案した悪戯で零を殺してしまうんじゃないかと思ってしまった、だから──

 

「ふう!今回の悪戯も大成功、ペンキでのアート制作!渾身の出来栄えだった!」

 

“おう、そうだな!今回もかなりの出来だった”

 

「……なあ、次こそお前が考える番だぞ、ここ最近ずっと俺が考えてる、大仕掛けの悪戯を考えるにしても結構長いんじゃねえか?」

 

“今までした事ない悪戯を考えてるんだがどれも今ひとつで……もしかしたらスランプって奴かもしれねー”

 

「前も聞いたよそれ、お前さ、もしかしてビビってんのか?」

 

“は?誰が、何にビビってるって?”

 

「お前が塩らしくなったのって前の花火の一件からだよな?それでお互い大怪我したから悪戯考えるのビビってるんじゃねーかって言ってんだよ」

 

“ッ!そんな訳ねえだろ、何考えたらそんな答えに行き着くんだよ”

 

「だったら次の悪戯を考えろよ、いい加減覚悟決めろって!前の事なら気にしてねぇって言ってるだろ?お互いなんとも無かったんだしな」

 

“そりゃあ……そうだけど”

 

 俺は悪戯を考えれなくなってしまった、俺が考えた悪戯で零を傷つけてしまうんじゃないか、もしかしたら今度は殺してしまうんじゃないか、俺の隣から零が居なくなってしまうと言う考えが頭をよぎり悪戯を考えれなくなったのだ。

 

「……最近のお前さ、張り合いねーよ」

 

“は?今なんつった”

 

「だから、最近のお前は面白くねぇ、つまんねえって言ったんだよ、耳遠くなったか?」

 

“ッテメェ!”

 

「何が違うんだよ⁉︎たった一回の事故で起きた怪我でビビるほど小心者になったのかよ⁉︎何度も何度も失敗してもその度に新しいのを考えて周りを驚かせて来たお前は何処言ったんだ⁉︎」

 

“その一回が命の危機だったんだろうが‼︎お互い無事だったとは言え完治するのに時間掛かったんだぞ‼︎”

 

「生きてるから問題ねえだろ‼︎やべぇ事故が起きる可能性の悪戯を考えなきゃ良いだけだ‼︎なんでそんなにビビってんだ‼︎」

 

“俺はお前を心配して……”

 

「お前が俺を心配する⁉︎逆だろ‼︎俺がお前を心配してんだよ‼︎すっかり腑抜けやがって‼︎あんな事故一回で縮み上がる程お前は小さい奴だった訳だ‼︎」

 

“ッテメェさっきから言わせておけば‼︎”

 

「いい加減目ェ覚ませ‼︎俺は今生きてんだろうが‼︎何時迄も前の事に囚われてんじゃねぇ‼︎」バキィ‼︎

 

“この……‼︎やりやがったなこの野郎‼︎”ボコォ‼︎

 

 そこからは殴り合いだ、どっちが正しいかなんてないお互いに引けなかったから、子供故の解決の仕方、先に拳を引いたのは、俺の方だった、また自分の所為で零を傷つけるのが怖くなったから。

 

「ッケ、なんだよ……殴り合いは終わりか、先に拳引っ込めやがって……何処まで腑抜けになったんだ……てめえは」

 

“……”

 

「もういいよ、もうお前とは遊ばねー、じゃあな、今まで楽しかったよ」

 

 そう言って零は俺の前から立ち去っていった、ここで引き留めておけば良かったのに、当時の俺にそんな思考は無かった。

 

“クソッ……なんで、なんでわかってくれねぇんだよ零……俺はお前に傷ついて欲しく無かっただけなのに……帰ろう、明日あったらすぐに謝るんだ、そして俺の考えた悪戯でアイツを見返してやらねえと”

 

 もう何もかもが遅かった。

 

“は?今……なんて”

 

「何度も言わせるな……‼︎零が今日の朝、車に轢かれて死んだ……‼︎」

 

“聞こえてるよ‼︎なんで、救急車は⁉︎”

 

「間に合わなかった、即死だったそうだ……」

 

“だから零とはもう会えねぇって?んな訳ねぇだろ‼︎きっと人違いだ‼︎アイツがそんな簡単に……‼︎”

 

「蒼記‼︎聞き分けろ……‼︎俺にも何が起こってるのか理解し難いんだ……‼︎」

 

“〜〜ッ!クソッ‼︎”バン!

 

「待て!蒼記‼︎」

 

 俺は堪らず飛び出した、目的地なんてない、唯只管走り続けた、そうしてたどり着いたのは変哲もない公園、昨日零と喧嘩して、初めて出会って親友になった場所、気がつけば俺はここに来ていた。

 

“はぁ、はぁ……‼︎零……‼︎零‼︎何処に居んだよ‼︎死亡偽装の悪戯とかタチ悪いぞ⁉︎どうせほら……お前の事だから車に潰させたのお前の人形だろ⁉︎お前こう言う創作上手いもんな⁉︎”

 

 返事は返ってこない、認めたくないのだ、零が死んだ事を、認められないのだ、零がもう居ないことを。

 

“頼む零……そうだと言ってくれ……‼︎お前が居なくなったら俺は……誰と悪戯の計画を練りゃいいんだよ……‼︎張り合いが……っねえって言った側からてめえが、あ、っ……ぅ、いなくなってんじゃねえよ……‼︎お前が、居なくなったらそれこそ張り合いがねえだろうが……”

 

「蒼記‼︎やっぱりここに居たのか‼︎」

 

“先生……っ、アイツ、本当に死んじまったのか?”

 

「……あぁ、そうだ、零は死んでしまった」

 

““うぅ、あぁ……ア゛ァァアァァァァ‼︎

 

「蒼記、ごめんな……ごめんなぁ……」ガシッ

 

 俺はその日初めて人前で大声で泣いた、感情と考えが全部で泣き声だ、先生はずっと俺を抱きしめて謝ってた、先生は何も悪くないのに、悪いのは俺の方なのにずっと、ごめん、ごめんって言ってた。

 その後俺は暫く学校行かなかった、行けなかった、俺が殺した様な物だから、どんな顔して学校に行けば良いのか分からなかった、外に出る機会も減った、自分の部屋に引き篭もってひたすら泣いてその日を過ごした、両親がドアの前にご飯を置いてくれてたのでそれを食べていた、今思えばとんでもない迷惑をかけていたと思う。

 そんな日が、3ヶ月ほど続いた、その間ずっと両親はこんな俺を慰めに来てくれた、先生も毎日来てくれた、クラスの奴らも、駄菓子屋のおっちゃんも、八百屋のばあちゃんも、囲碁や将棋打ってる爺ちゃん達も俺を慰めに来てくれた。

 皆、みんな揃って俺は悪くないよって言ってくれる、あれは事故だったって、でも俺自身が認められなかった、だって俺があの時喧嘩したから、引き止めなかったから、零とその日に仲直りしなかったから、零は死んだ、俺の景色から、色が消え失せた。

 

“俺が……俺が零を殺したんだ”

 

 俺は深い微睡に堕ちていった……すると真っ暗な空間に俺は居た、立ってるのか落ちてるのか、それとも上ってるのか、何処向いてんのか分からない空間だったけど、そこに零が居た。

 

「お前さ、なにやってんの?」

 

“ッ!零‼︎お前!こんな所に居たのか‼︎良かった……ッ!俺ずっとお前を……‼︎”

 

「だから、お前は今何やってんだって聞いてんだよ、俺が居なくなった程度で何してんだ」

 

“そりゃ、お前……お前は俺にとって……”

 

「初めて出来た親友、だろ?そりゃ俺にとってもそうだっつうの」

 

“だから今こうやって悲しんでんだろうが……‼︎”

 

「そうだろうな、俺もお前が死んだらそうなるわ、でもな、俺が知る蒼記はこの程度じゃへこたれねー、絶対乗り越えられる、俺はそれを信じてる!」

 

“それは無理だ……零、お前が居ないんじゃ俺は……”

 

「へこんだままってか?はぁ、お前なぁ……いつからそんな女子みたいな考えになったんだよ、前世は女か?」

 

“おま、こっちはマジに悩んでるっつうのに……”

 

「だから言ったろ、お前と俺の思考は似てんだ、だからこそ親友になれたしずっと一緒に居れたんだ、でも俺がお前と友達になったのはそこじゃない、俺がお前と親友になっても良いと思えたのはお前が笑ってる顔を見るのがどんなゲームやら悪戯をする時より好きだったからだよ、んでもって思考回路が俺と似てるっつうんだからもう笑うしかねえ」

 

“……”

 

「だからこそ今のお前が見てられねぇンだわ、本当に何やってんだ?俺が死んで悲しむのは良い、親友冥利に尽きるってもんだ、だけどな、何時迄も落ち込んでんじゃねー、て言うか親友の葬式にぐらい出席しろ馬鹿、なんで俺が死んでからのこの3ヶ月ずっと引き篭もってんだよ」

 

“葬式……そう言えば、すっかり忘れてたな”

 

「忘れんな、親友だぞ!親友!いいか、すぐに忘れろとはいわねーし立ち上がれとも言わねえ、でもな、何時迄もウジウジすんのはやめろ、知ってんだろ?俺ジメジメした奴嫌いだって事」

 

“あぁ……そう、だったな、何時迄もウジウジしてる場合じゃ無かった”

 

「だったら早く帰れ、お前は此処に居て良い奴じゃねーし何より表で待ってる奴がいっぱいいるだろ、帰り道は後ろの光ってる方だぜ、俺と反対だな」

 

“……本当に死んじまったんだな、零”

 

「まあな、俺は先に逝くけど、お前はまだこっちに来んなよ、来たら呪うぞ、俺の執念はつえーぞ?」

 

“そりゃあ怖い、だったら呪われる前に退散しなきゃな”

 

「おうおう、さっさと帰れ……蒼記、お前は俺より優しいからな、もし死ぬってなった時は俺みたいに突然死ぬんじゃなくて周りに親しい人にいっぱい囲まれて死ねよ、俺からの最後のプレゼント(呪い)だぜ?」

 

 そうして俺は目が覚めた、零がとんでもない呪いを寄越された、もし破ろうものならとんでもないことが起きるだろう、だったらいつまでもクヨクヨしてられない、立ち上がるんだ、立ってその日を必死に生きるんだ、そうしなけりゃ親友である零の想いを踏み躙る事になる、それだけはしたくない、その為にも先ずはこの自分で構築した檻の中から出なくてはならない、出るのは簡単だ、ドアを開けてしまえばそれだけで出られる、でもその扉が重い、いつものように捻っていたドアノブが錆び付いたかのように動かない。

 いや、本当は分かってるんだ、ずっと此処に居たいって、此処に居た方が楽だから、これ以上苦しみたくないから、みんなに会いたくないから、そんなでまかせの理由を付けて此処に居て罪から逃げたいだけだ、でも……それでも‼︎

 

『俺が知る蒼記はこの程度じゃへこたれねー、絶対乗り越えられる、俺はそれを信じてる!』

 

 思い起こすのは夢の中での零の言葉、アイツが俺を信じてるって言ってくれたんだから親友である為にも、俺はその言葉に報いなければならない‼︎その信用に応えてやらなければならない‼︎それが親友ってもんだろ‼︎

 

“はあ……まっぶしいな”

 

 久しぶりに食事以外でドアを開けてその目で見た景色はなんとも眩しかった、でも確かに一歩、先に踏み出せたのだ、俺はもう、あの檻の中には戻らない、もう俺には不要な物だ。

 

「蒼記……‼︎お前……‼︎」

 

“ごめん、父さん、母さん、ずっと、迷惑かけた、もう、大丈夫”

 

「本当に……!手の掛かる子供なんだから……!」

 

 俺が無くした物、親友、古い色、悪戯を考える時間

 俺が新しく得た物、親友の呪い、新しい色、未来(これから)を考える時間

 

“なぁ2人とも、俺さ、やりたい事ができたんだ”

 

「どうした?新しい悪戯か?」

 

“それは──”

 

俺さ、先生になりたいんだよね。

 

「──い」

 

“ン、んん…”

 

『起きてください先生!仕事の時間はもう始まってますよ!当番の人も待ってます、と言うよりもう来てます!」

 

「寝坊助か先生、寝るにしても布団で寝ろよ、ソファは寝る場所じゃなく座る場所だからな」

 

“ンン、そうだね……おはよう、アロナ、マコラ”

 

「はいおはよう、涙の跡があるな、まずは目覚ましも兼ねて洗顔でもして来たらどうだ」

 

『おぉ?本当です!もしかして夢見が悪かったのでしょうか?』

 

“んー、そんな所かな、随分と懐かしい夢を見たよ、歳を取ると涙脆くてねえ”

 

「『??』」

 

 2人はきょとんとした顔を浮かべている、時計を見ると既に仕事に取り掛かる時間は過ぎている、急いで準備しないとな。

 今でも零の言葉は俺の胸を縛ってる、でも以前よりかは緩くなった、その理由は……

 

──私たちは、キヴォトスに存在する全生徒は、先生なら誰でも良かったんじゃない、アンタだったからこそ!アンタが真摯に向き合ってくれたからこそアンタに全幅の信頼を寄せてるんだ!

──アンタは子供達に寄り添い!向き合い!そして無謀ながらも時にはその身を挺して子供達を守った!それは他の大人達にはなかった事だ、だから私たちはアンタに応えるんだ!だからこそ私たち生徒は先生であるアンタを信頼も信用している!尊敬される存在なんだ!

── 皆先生に対しては同じ思いだ!アンタがどんなことを思おうが勝手だが、この一点だけは譲らねえ!何故ならそれは!全生徒の思いを踏み躙る事になるからだ!……アンタは誇っていい、アンタは()()()()()()、誰にとってもな

 

 以前夏につい溢れてしまった俺の弱音、それを聞いてくれた上でマコラはこう言ってくれた、その言葉にどれだけ救われたか、どれだけ報われたか、彼女はきっと知らないのだろうし、これからも知る必要はない、今の俺を零が見たらどう思うだろうか、多分俺が先生とかにあわねー!とか言ってる笑い立てるんだろうなアイツはそんな奴だ、でも俺が選択した行為を否定する奴では無かったから、なんだかんだ言って賛同はするんだろう。

 

“さて、今日も一日頑張りますか”

 

 俺は今日も全力で先生を遂行する、俺みたいな過ちを犯す生徒を生み出さない為にも、こんな経験をする人間は、俺だけで良いのだから。

*1
外見は夜蛾先生のそれ




超ザックリとした先生の過去編でした、実はかなり悩んだ回だったりする、理由は言うまでもなく先生の名前の件、先生の名前はそれぞれ違うし二次創作でも先生の名前は伏せてたりするから、かなり悩んだ、でもずっと〇〇表記なのもな……と思い名前を付けました。

そんな先生の名前は蒼記(そうき)
由来は【ブルーアーカイブ、Blue=蒼、archive=記録や資料、二つを合わせて蒼記】、因みに本編中に呼ばれる事は殆どないので苗字は特に考えてない、て言うか年頃の娘から先生に対して蒼記さんとか呼ばせよう物ならそれはもうね……なのでこれからもずっと先生呼びです、良くて名前+先生呼び。
名前呼びになるとしたら先生がチビになった時とかそんな辺り、イベント時空のネタが出来ちまったな?

度々本編でも出て来てた先生の親友君の名前は零(れい)
由来は原作呪術のさしす組の中から“せ”と“そ”が空いており且つ“そ”は先生が担当したので“せ”の枠に組み込み零(ゼロ)を音読みに変更させた物、因みにフルネームは寒凪 零(かんなぎ れい)、本人は女みてえな名前と思ってる。

先生の過去は大体こんな感じ、本編じゃ持ち直したっぽく描かれてるけどこいつ中高の学生生活はすっげぇ退屈な青春を過ごしてんぞ、相方が居ないし先生を目指すためにその為だけに真っ直ぐ走り抜けて来たから、上っ面だけ持ち直した様に見えてるだけ、マコラの激励を受けてかなりマシになったけどやっぱり何処か零の姿を追ってる女々しい奴、そんな彼に騙されてはいけない。

【最終決定】IF世界線のマコラ

  • アビドスIF
  • ゲヘナIF
  • トリニティIF
  • ミレニアムIF
  • アリウスIF
  • ゲマトリアIF
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