カミキマインドの女を用意したら殺し愛がはじまった件   作:注釈n

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邂逅

 彼女が11歳のとき、彼女の両親は死んだ。

 

 彼女が殺したのではなかった。

 ただの、つまらない事故だった。

 

 彼女はひどく後悔した。

「お父さんやお母さんが死んだら、どれだけ()()が喜ぶだろう」なんて考えてしまったことに対して、ではない。

 

 両親を自分の手にかけなかったことに対して、だった。

 

 通夜が一通り終わって、棺の隣で寝ながら、彼女は()()がほとんど反応していないことに気づいた。

 死に目に会えなかったせいもあって、せいぜいおじいちゃんを看取ったときと同じくらい、彼女はとっくにその程度では満足できなくなっていた。

 

 大切な、大好きな相手が死ぬだけでは不十分で、彼女自身が手を下さないといけない。薄々気づいていながら、勇気が持てなかった自分に、腹が立つ。

「どうせ死ぬなら……」

 私に殺させてくれればよかったのに、と言いかけた。祖母も隣で寝ていたことを思い出さなかったら危なかった。

 

 

 

 彼女は前向きな人間である。切り替えの早さは役者にとって大切な才能だ。ミスをいつまでも引きずっていては、演技に支障が出る。

 そのことをよくわかっていた彼女は、いつでも、過去を悔やむのではなく、これからどうすればいいかと考える癖をつけていた。

 

 そう、このときも。

 

「大好きな人……か」

 

 おじいちゃんでは足りなかった。おばあちゃんでもきっと足りない。

 他の親戚はもっとダメだ。

 

「私にも、好きな人ができたらいいなぁ」

 

 彼女は、それなりに年相応のメルヘンな考えを持っていた。

 ゆえにこう結論づける。

 

「私に大好きな恋人ができたら、きっと、必ず、この手で」

 

 殺したい。

 

 

 

 

 

 彼女は中学校に上がると同時に、劇団を移った。

 それまでの劇団は小学生中心のところだったから、もとより既定路線の移籍であった。

 

 ところで、彼女はそれなりに才能があった。()()を抱えるような異常者だったおかげか、あるいは別の理由か、ともかく演技能力は同年代の中でも高い方であった。

 

 さらに、「両親を亡くした」ということもプラスに働いた。「悲劇の少女」はウケがいい。このおかげもあって積極的に起用されていた彼女は、さらに実力に磨きがかかっていた。

 

 もっとも、彼女がトップであるというわけではない。いくらでも上には上がいる。が、同時にその実力は決してこけおどしではなかった。

 

 知る人ぞ知る実力派の劇団、「ララライ」にも、入団できるくらいには。

 

 

 

 

 

 

「はじめまして、本日から劇団ララライでお世話になります。榊枝(さかえだ)紗夜(さよ)と申します」

 

 と、礼儀正しく頭を下げる。彼女も異常者の例に漏れず外面が良かった。

 もちろん、ララライは異常者集団ではない。不真面目な挨拶もちらほらと見える。

 しかし、紛れもない、純度100%の異常者も、もう一人。

 

「カミキヒカルです。まだ14歳なのでお手柔らかにお願いします」

 

「紗夜ちゃんのことは前々から尊敬していたので、ぜひ共演できたら嬉しいです!!」




時間軸的にはアイが処女懐胎する年の1年前です。
なので、この段階ではララライも「一流しかいない」というほどではない、が実力派のとこみたいな扱いはされてたのかなと妄想してみる。ワークショップ開くってことは演技に自信あるのだろうし。
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