神々、君に背き奉る   作:アグナ

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前回のアンケート加味してお前もカンピオーネ二次創作者にならないか?と続ける予定だったが思いの他不信心者が多くて出鼻を挫かれた図。
チクショウ!布教が足りねえ……!!


断章:プリンス&プリンセス

 ロンドン・ヒースロー空港──ホノルル空港から経由地を挟んでようやく本拠地のあるイギリスの大地を踏んだアレクサンドル・ガスコインはほうっと息を吐く。

 旅の終わりに対する安堵感、慣れた土地に対する安心感などもあるにはあるが、それ以上に飛行機旅が終わったことによって得られる平穏こそがアレクには代えがたかった。

 

「嗚呼! やはり我ら人間にとって大地こそが母なる故郷だ! いつ落ちるやもしれぬ危険のない地に足の着いた感触……! 人間は大地の素晴らしさを今一度知るべきなのです! やれ効率だの利便性だのを追求するあまり人は大切なことを忘れている、そうは思いませんか!?」

 

「そうだな」

 

 長旅を終えてからというもの我が世の春と言わんばかりに絶好調なサー・アイスマンに適当な相槌を入れながら眉間に皺を寄せ、軽く肩を揉む。

 ……さっきまでこの世の終わりのような表情で「やはり船にしましょう!」「この際、太平洋を泳いで渡るのもやむなし……!」「ああ! 地面が! 地面が!? ぬおおおおおお?!」などとひたすらに喧しかった王の右腕である。

 これ以上ウンザリするような不平不満やら悲鳴やらを聞かなくて済むのであればアレクとしても喜ばしい。

 

「……それにしてもアレク、事前にアレだけ自信満々にトラブル回避を謳っておきながら結局、日本の王と戦う嵌めになるとは。お陰で迎えに行くこととなった私は行きは疎か、帰りまでもあの鉄の塊に乗る羽目に……」

 

「またその話か、それはもう何度も聞いたぞ」

 

 飛行機から解放されたことで平静を取り戻したのか、ハワイの病院で既に聞いた話を繰り返すアイスマンにアレクは渋面を浮かべる。

 彼の苦言は既に私情にまつわる不平不満ともに散々聞いていた。

 なので、彼の説教に返す答えもやはり同じである。

 

「何度も言うがアレは俺のせいじゃないと強く主張する。そもそも今回に関しては最初に仕掛けて来たのは日本の神殺しの方からだ。俺はただあの戦争厨から身を守るべく応戦しただけであって俺自身に荒事を起こす意図などなかった」

 

 あくまで自分は悪くなかったと主張するアレク。

 それに対してアイスマンの目はやれやれと言わんばかりに呆れていた。

 ……そもそもの話をするならば此度の騒乱はアレクがハワイから出土した古刀を狙わなければ発生しなかった事態である。自らが狙うことを予め予告していたからこそ、相手方はその対策として日本の王を引っ張り出してきたといえる。

 

 故に正当防衛を主張するにしても義は被害者側となるはずだったハワイの魔術師たちにあるといえるだろう。

 だが偽悪的に振舞うひねくれ者がそんな道理を認めるはずもなく、あくまで相手方の非を主張する。

 

「ふん、大体奴は古刀の製作者の縁者であるらしいが、異国に流れ出ている時点でそんな縁はとっくに途切れているだろう。だのに首を突っ込んできたのは結局のところはただ暴れるための口実が欲しかっただけだろう」

 

「はぁ、聴くに欧州に悪名轟くヴォバン侯爵や、放蕩物のサルバトーレ卿と違い、義に篤い御仁という印象ですが」

 

「違うな、アレは奴の猪口才な処世術だ。そうやって親切ぶっていれば自らが探さなくても騒動の種が勝手に自分の所に飛び込んできてくれて都合がいいからと、そう振舞って見せているだけに過ぎん。遮二無二言わずいきなり斬りかかってきたのが良い証明だろう。結局奴は戦えれば何でもいいというだけの戦闘狂だ」

 

「……成程」

 

 確かにこの通り騒動の種(アレク)が釣れたのだから間違いない──という言葉をアイスマンはグッと堪えた。

 偏見だらけの印象論だが、流石に神殺し(カンピオーネ)であるだけあって、的外れな人物評とはならない。

 悪意的ではあるが、アレクは的確に日本の王の本質を突いていた。

 

「ヴォバン侯爵に、サルバトーレ卿、帰国後にはまつろわぬ神と渡り合い、そしてハワイで貴方とですか。確かに新たに誕生した日本の神殺し殿は能動的ですね」

 

「ああ、実に傍迷惑な話だ。お陰で結局、刀を取り損ねてしまったしな!」

 

 フンと強く鼻を鳴らすアレク。神殺し内では草食系だの変わり種だの謳われる彼ではあるが、他の神殺しの例に洩れずなんだかんだで負けず嫌いな性格だ。

 狙った獲物を取り逃がすという珍しい失態を忌々しく思っているのだろう。

 

 不機嫌そうに唸る主に肩を竦めながら、アイスマンは手癖の悪さに関しては定評のある主の珍しい失態を追求する。

 

「それにしても貴方が盗みをこうもあっさり断念するとは珍しい。致命傷を負っていたとはいえ、なんだかんだでちゃっかり目的を果たすのが貴方らしいとは思っていたのですが」

 

「元々、刀そのものよりも来歴の方を気になって調べていただけだからな。刀がハワイにまで流れて来た経緯と背景さえ確認できたならば現物そのものを持っている意味はないと判断した。……それに結果として代わりの物は手に入れられたからな」

 

「代わりの物……? 例の《カルイキの刀》の代替品ということですか? アレク、いつの間にそんなものを」

 

 思わぬ返答に驚くアイスマンに、アレクはニヤリと意地の悪い笑みで笑いかけると懐から一本の武骨なナイフを取り出す。

 細長い、抜き身の投げ刀──天国怜志がアレクとの戦闘時に使い捨てていた武装。その内の一つをアレクは戦の渦中でこっそり回収していたのだ。

 

「奴曰く、そもそも《カルイキの刀》は奴の一族が過去に生産したものが外海に流れたものらしい。つまり、奴の使う刀と《カルイキの刀》は本質的に同じもの。ならば調べる分には態々《カルイキの刀》を求めずともこれで十分だろう?」

 

「……道理であっさりと諦めたと思ったら、そんなものを。相変わらず抜け目がないですね」

 

 戦いでは相打ちを演じながらもちゃっかり目的は達成している辺り、やはり侮れない。やはり神殺しというものは一筋縄ではいかない存在なのだ。

 

「……見た印象からして、単なる投げナイフにしか見えませんが」

 

 アレクが手に取るナイフを軽く眺めてから素直な感想を口にするアイスマン。

 その言葉にアレクは頷いて肯定する。

 

「確かに一見して変わった部分は見られない。だが──推測にはなるが、この刃には神殺しに対する『毒』のようなものを感じる」

 

「『毒』ですか……? このナイフが?」

 

「ああ」

 

 信じられないとばかりに、改めて盗品のナイフをまじまじと眺めるアイスマン。アレクはそんな右腕に対して軽く自分なりの所感を語ってみせる。

 

「いわゆる、その神話自体が『剣』の暗喩(メタファー)となる《鋼》の神々だが、奴らの中でも源流と謳われる神性は時折、俺たち神殺しに対して異常な力を発揮する時がある」

 

 元々《鋼》などとカテゴライズされる神々は軍神や戦神など戦いに長けた属性に加え、不死身の肉体や竜蛇に対する優位性など様々な異能を秘めているが、その中でも時折、源流と呼ばれるより《鋼》に近しいまつろわぬ神は神殺しに対して異常なまでの特攻作用を発揮する場合がある。

 その特性をアレクは何の変哲もないナイフより感じ取っていた。

 

「……最初はそれこそ奴が殺した軍神とやらの権能かとも思ったが──どうにもそういうわけでもないらしい。俺が《カルイキの刀》を適当に振るって見せた時の奴の反応、アレは明らかに刀が神殺しに対して有効なのを知った上で警戒しているようだった」

 

「ふむ、だからこそ《カルイキの刀》と同じ製造過程を辿ったこのナイフもそうだと?」

 

「そうだ。……実際、こうして近づけるだけで薄ら寒いものを感じる。これはやたらと頑丈な神殺しの体質をも突破する魔剣だとな」

 

「魔剣……」

 

 例えばアーサー王の伝説に登場するエクスカリバーのような。或いはそれこそ日本に伝わる天叢雲劍ような。

 持ち主に絶大な力を与え、勝利を約束する宿命の剣。

 魔王殺しの魔剣、これはそういう由縁を持つ武器であると。

 

「……恐らく奴はこれで神を殺したのだろう。神殺しをも殺す武装、これはきっと神々にも有効に働くはずだ。だとすると興味深い話だ、奴は神殺しとなる前から神々をも殺す由縁を手にしていたということになるからな」

 

 そしてこれを天国怜志はアレクの前で『製造』して見せた。

 ……一代限りの才能、とは考えづらい。恐らくは秘奥秘術の類である。アレクのように探索紀行の最中、神殺しの天運で手にした……という可能性も無くはないが、それ以上にありそうなのはやはり、これが家伝(・・)である可能性だろう。

 

 アレクは飛行機嫌いの右腕が恨み節を捧げている移動時間中に、賢人議会の発表している天国怜志のレポートに目を通している。

 その中には彼の家柄……古より続く鍛冶師としての顔が記されていた。

 

 まだ地上に神々が君臨していた千年の太古より、時の権力者に武力を提供してきた鍛冶師の一門。謎多き神代鍛冶。

 あの秘術はそれに由来する力だろう。

 

「ではアレクがしてやられた日本の神殺しこそ、他の神殺したちにはない何らかの秘密を握っているということですね!」

 

「してやられたわけではない! が……グィネヴィアがやたらと『刀』に執心していたのはこれに気づいたからだろう。日本に伝わる鍛造技法は大陸経由、それもスキタイ民族から流れて来たものだと言われるが、だとすると曰く最初の鍛冶師たる天国に秘伝するのはそれこそ最源流の《鋼》の──」

 

 と、そこまで言いかけてアレクはふと言葉を止めて思う。

 ──今の声は誰のものだ?

 半ば思惟に耽る様にして顔を伏せていたアレクは咄嗟に隣を歩いていたアイスマンの方を見る。視線を向けられた彼は困ったように首を振ると、ひょいと顎でアレクの向こう、隣接するもう片方へと合図を送る。

 

 ……猛烈に嫌な予感を覚えながらアレクはギギと出来れば見たくない方へと視線をやった。案の定、目をやるとそこには非常に見覚えのある令嬢がニコニコと微笑んでいる。

 途端、アレクの顔が苦虫を噛み潰したかのように歪んだ。

 無言のまま渋面を浮かべる王を於いて、右腕たる騎士は恭しく令嬢へと礼を捧げた。

 

「……これはこれは、ご機嫌麗しゅう『姫』。本日は如何なるご用件で?」

 

「ふふ、アレクが新たに誕生した新参の王に一杯食わされたと聞いて様子を見に来たつもりだったのですが、何やら興味深い話をしていたので──」

 

「盗み聞きをしていたと。……相変わらず貴様は節度というものをわきまえない。話を聞くならばまずは挨拶してから同席するのが礼儀だ」

 

「まあ。兇悪無惨な大魔王である貴方が礼儀作法を説くなんて。きっと天変地異の前触れですね」

 

 棘のあるアレクの言葉に毒で以て返す女性。

 ──彼女の名はアリス・ルイーズ・オブ・ナヴァール。

 ゴドディン公爵家令嬢にして『天』の位を極めた魔女。

 通称、プリンセス・アリス。

 

 時に敵対し、時に共闘してきた旧知の相手。

 予期せぬ腐れ縁の姫君の登場に、アレクは思わず舌打ちをした。

 

 

………

………………。

 

 

 思わぬ来客を招くこととなった一行は、立ち話から場所を変え、空港内ターミナルに存在するバーへと場所を移した。

 ロンドンを拠点に展開する老舗百貨店が経営するというバーの一角。

 そこに席を取った三名は居席代に適当な飲み物を注文したのち、改めて会話を再開した。

 

「──それで、何処まで聞いていた?」

 

「新たな神殺し殿が持つ風変わりな武器が《鋼》に関わる一品なのではないかという貴方の推測までですね」

 

「つまり全部聞いていたということだろう。趣味の悪い女だ」

 

「あら? ひそひそ話のつもりだったのですか? 天下の往来でドヤ顔で考察を語っていたのでてっきり誰かに聞いてほしいものかと」

 

「別にドヤ顔では語っていない!」

 

「……あー、お二方。それこそ此処は聴衆のいる場所ですので……」

 

 コホンと、一息入れる騎士の諌言。

 促されて周囲を見ると、見目麗しい令嬢と美形の青年が言い合う様を見て注目する幾つかの視線。それを受けてアレクはチッと舌打ちし、アリスは軽く肩を竦めた。

 軽口の叩き合いが落ち着いたために関心を失ったのか、向けられた視線は再び無関心へと散った。

 

「……まあいい。元々隠し事のつもりもなかったからな。それに貴様が現れたのなら都合がいい」

 

「と、言いますと?」

 

「聴講の駄賃だ。その盗み聞き、盗み見の特技を使って、このナイフの来歴を教えろ」

 

 アレクの言い様にアリスは嫌そうな表情を浮かべる。

 彼の意図したところを嫌った、というわけではない。協力するのに否はないものの、その配慮のない言い回しを嫌がったのである。

 

「アレクサンドル、貴方も一応英国紳士なのですからもう少し紳士的な言い方を身に付けたらいかがですか? 仮にも王子の肩書が泣きますよ?」

 

 アレクの要望はつまるところ、このナイフの鑑定である。

 日本で言うところの媛巫女格──西洋文化圏における高位の魔女である彼女はその霊能の高さから「白き巫女姫」とも呼ばれる人物だ。

 当然ながら媛巫女らと同様、高い精度での霊視も可能であった。

 

「腹黒とお転婆が過ぎる姫に言われたくはないな。それで? どうなんだ?」

 

「……ふう、乗り掛かった舟ですし、私も興味があるので構いません。ただ知っての通り、霊視は天運も絡む力。何処まで視えるかは保証しませんよ」

 

「構わん。取っ掛かりでも得られれば十分だ」

 

「分かりました。では少々ナイフを借りますね」

 

 そういってアレクの差し出すナイフを手に取り、アリスは意識を空にする。

 無我の境地、無意識の境──いわゆる瞑想や座禅といったトランス状態こそが霊視を受け取る上で最も理想的な状態である。

 無言で見守る神殺しと騎士の視線を受け止めながら、西洋世界屈指の魔女はアカシャの記録へと触手を伸ばし──。

 

「消された神権……西方より来訪せし客人(まろうど)、まつろわぬ民を纏め上げ異国にて王と祀り上げられる……海人たちの鉄剣を掲げし大蛇斬(ハハキ)り……」

 

 茫洋とした様子で無意識に言葉を紡ぎあげるアリス。

 霊視による託宣。その言葉を一言も聞き逃すまいと集中するアレク。

 そして──。

 

 

「──アラハバキ(・・・・・)

 

 

 最後にそれを口にして、アリスはハッと自意識を取り戻した。

 

「……これ以上は見えませんね。どうにもこのナイフ──というより、これを作ったという術の方ですか──直感ですが偽装工作のような気配を感じました。恐らく、この術を開発した者たちが術の原典を隠すための措置のようなものかと」

 

「だが、それに繋がるヒントは探れたな──アラハバキ。確か、日本の神だったな」

 

「そうですね。詳細は私も存じ上げませんが、記紀神話などの日本における本流の神話には記されない、記録のみが伝わる古代の神性だったかと」

 

 アラハバキと言えば、日本国内においてはいわゆる土偶の姿をした神と思われがちだが、そのパブリックイメージが定着した由縁は『東日流外三郡誌』。古代における東北地方の歴史を記した古文書によるところが大きいだろう。

 だが、専門分野における『東日流外三郡誌』の扱いは偽書の見方が広く、厳密には古文書とは言い難い。

 

 そのため正しき知見を求める者たちの間ではアラハバキの正体は未だ不明確だ。一体何を司る神性なのか、その名にどういった字が当てられるのか、どういった姿なのかも不明のまま。極めて謎めいた神格として今も様々な説が語り継がれている。

 

「古代からの鍛冶師が係わる古代の神性か。……奴自身は偽善者気取りのいけ好かない男であったが、奴の背景には少し興味が湧いたな」

 

「それについては同感です。どうにも新たな神殺し殿は只ならぬ背景の持ち主のようですね。歴史ある家系から生まれた神殺し、というのも中々に興味深いです」

 

 互いに犬猿の仲と振舞いながら根っこの部分では同種なのだろう。七人目の神殺しの未知なる背景に釣られ、二人の興味が一致する。

 

「……──しかし、海人の鉄剣か」

 

「いかがしました、アレク?」

 

 不意に降って湧いた好奇心に目を輝かせたアレクがぼそりと呟き、考え込むようにして黙る。それに若干蚊帳の外であったアイスマンが訝しむように声をかける。

 だが、応える声はない。代わりにぼそぼそと、思考をまとめるような独り言が繰り返される。

 

「島釣りの神話……ハワイにせよ、日本にせよ、伝来にはポリネシア人たち海洋民族の影響が……だとすれば、やはり例の仮説の検証を……どちらにせよ絞り込むことが……」

 

「ああ、これは……」

 

 無反応なアレクに何かを察したかのようにため息を吐くアリス。見ればアイスマンの方も同じような反応だ。

 なんだかんだでアレクとの付き合いの長い二人である。当然彼の性格は熟知しているし、こういう何か思いついた!という時にアレクの行動は決まっていた。

 

 なので次瞬、彼から飛び出した言葉は予想通りのものである。

 

「すまないが予定が出来た。留守を頼む」

 

「……またですか。どちらにいかれるつもりで?」

 

「フィリピンだ。少し思いついた実験がある」

 

 そう言い残すとアレクは前触れもなく、稲妻を纏って《神速》を発動させる。部下の返事を聞く間もなく、アレクは遁走した。

 唐突に場を辞した自由気ままな魔王に、アイスマンはため息を吐いた。

 アリスがころころと笑う。

 

「相変わらずですね。今の話を聞いて何か思いついたとみえます」

 

「でしょうね、今度は一体どんな騒ぎを引き起こすつもりなのやら」

 

「思い付きの話のようですので、最終的には失敗してまたぞろツケを払う嵌めになりそうですがさて──まあ、なんにせよ。彼が飛び去ってしまった以上、この場はお開きにしましょうか」

 

 そう締めくくると、唐突にアリスの身体が薄れていく。 

 

 ……彼女は実際にこの場に足を運んでいたわけではない。

 優れた霊能の代償に、外に出るのも苦労する虚弱な体質。

 そのために彼女は、外に出る際、自らの霊体を飛ばして外界を伺うのだ。

 

「かの王に関して、私は私なりのアプローチで追ってみるとしましょう。アレクはああ言っていましたが、話せば通じる御仁だと思いますし、対話を通じて引き出せるものもありましょう」

 

 そう言って、アリスの姿は虚空に消えた。

 残された王の騎士は一息吐いて、注文した飲み物を飲み干し、

 

「全く、困った方々だ」

 

 類は友を呼ぶ。

 そんな感想で締めくくって席を立ちあがった──。

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