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キーンコーンカーンコーン──。
終業を告げるチャイムが校内に鳴り響く。
「──そこまで! 後ろから回してくれ」
教室内の静寂を破る教員の一声。その声と共に直前まで続いていた筆記音が掻き消え、筆記用具を置く音に続いて忽ち紙が擦れる音が教室を満たした。声が命じた通り、最後方の生徒から記入用紙が回されていき、最前列を回って歩く教員の手元へと速やかに集合される。
全ての記入用紙を集めきった教員は教壇に戻って、回収した紙の集計確認を行い、一通りを終えて頷いた。
「うん……これで今期の期末試験は終了です──それでは、起立!」
教員の号令に無言のまま生徒たちは立ち上がった。
「礼!」
「「「ありがとうございました!」」」
「……うん、それじゃあHRまで待機で」
そう言って教員は回収した試験用紙を封筒に結ぶと、そのまま軽く一礼し、颯爽と教室を後にする。それでようやく、誰かの疲れを吐き出すような息と共に教室の空気を占めていた緊張感と静寂は霧散し、緊張からの解放に端を発する喧騒が教室を瞬く間に満たした。
「んんー、終わった……!」
「しゃあ、試験終了冬休みだぜひゃっはー!!」
「試験期間中が午前授業なのが唯一のメリットだよなァ!?」
「で、推定結果は?」
「平均点は堅いね」
「数学はいいんじゃない?」
「赤点は回避したぜ!!」
「おいおい、来年受験だぞ? 大丈夫なのかそれ」
「大丈夫だ、問題ない」
「……一番良い点数を頼む」
中学の期末試験──三日間続く試験期間からの解放を喜ぶ生徒たち。そんな彼らを傍目に怜志は手慰みに手に取ったシャープペンシルを回しながら、試験の結果を思い返していた。
秋初めにはハワイで英国の神殺しとの死闘を演じ、神代鍛冶やら神殺しやらと裏に色々肩書を背負う怜志だが、表向きには単なる学生。但し彼の場合は少々休みがちだが教員に信頼される優等生、という評判が付く。
当然ながら成績は優秀で、今期の試験も憂う場面などありはしない。
ただ結果に関わる部分で怜志には少しだけ不満があった。
成績的には良い意味で、性格的には受け入れがたい意味でである。
「英語……明らかに不自然な具合で上達しているな。やはり体質の問題か?」
それは二日目の科目についての話だった。
元々文武両道を地で行く怜志だが、英語に関してはどちらかといえば不得意の分野。平均点は上回っているものの、ずば抜けている国語や歴史に比べればやはり劣るし、数学や理科の科目よりも取れてはいない。基本的に要領のいい怜志をして、唯一課題とする科目であった。
それが今期は成績が良い。まあ、それ自体は喜ぶべき部分なのだが、問題はそれが日々の努力ではなく、自らの体質が影響している部分だと自覚してしまったこと。
つまり、一般的な秤とは関係のない習熟に少しばかりの不公平さを覚えてしまったのだ。
「『千の言霊』。神殺しは常人が年間単位で身に着けることになる他言語であろうとも僅かな期間で習得できるという。オーストラリアやハワイでは便利だとだけ思っていたが、こういう場面になると、どうも申し訳なさが先立つな……」
『千の言霊』とは魔術師に対しては言語能力に優れた術師が辿り着く果て。神殺しにとっては成ったその時から身につく体質を指す言葉だ。
言ってしまえば、あらゆる言語に対する習得期間を簡略化する術であり、魔術師は自らにそれを施すのに対し、神殺しは息を吸うようにしてそれを行使する。
その結果、このように極めて短期間で彼らは言語をモノにできるのである。
そして怜志は神殺し。元々中間試験辺りでその効果に薄々気が付いてはいたが、今回の勉強量に対する成果との比較で、その効果が明らかであることを自覚したのだ。
「意識的に切れるものじゃないし、自然と一読するだけで日本語と同じように読み取れてしまう以上は問題は容易に分かってしまう。さりとてワザと手を抜くのもそれはそれで違うだろう。さて、どうしたものか……」
「──抜く? 競馬の話か?」
「違う。何がどうして試験終了後の話題でそう繋がるんだ南」
怜志の独り言を中途半端に聞いていたらしい前の席の南益男が不意に振り向いて話しかけてくる。相変わらずの調子に思わず怜志は間髪入れずに返答していた。
「無論、試験が終了したからさ! 今日は午前授業! 終わったら冬休み! そして明後日からはクリスマス! とくれば当然……!」
「正月だな」
「そうッ!! 年末の有馬記念だッッ!!!」
「聞けよ」
会話できているようで出来ていない調子の南に思わず怜志はドスの聞いた声を漏らす。だがクラスの問題児たちですら震え上がる風紀委員長の声にも怯むことなく、というより聞く耳持たずに南は一方的な話を続ける。
「今年の有馬記念の注目はやはり天皇賞(秋)、ジャパンカップと秋古馬二冠のゼンノロブロイ!鞍上に単騎外国人騎手を乗せて今年絶好調の馬が遂にテイエムエペラオー以来の秋古馬三冠を達成するのかが大注目だろう!加えてゼンノロブロイと言えば昨年覇者シンボリクリスエスと同一調教師!昨年までの連覇に加えてゼンノロブロイが今年勝てば調教師として有馬記念三連覇の大記録もかかっている!今年の秋はこれからを期待されていたキングカメハメハ突然の引退に偉大なる大種牡馬ノーザンテイストの死去など悲しいニュースもあったが、だからこそ年末を彩るグランプリは盛り上がるべきだろう!!無論注目はゼンノロブロイだけじゃない!道営所属でありながら今年クラシック路線で健闘し続けた地方の星コスモバルクに、凱旋門賞で惨敗したものの既に七歳馬でありながら今年の宝塚記念を勝利してみせたタップダンスシチー!一部の連中は何故か有馬記念前日の新馬戦に脇目を振っているみたいだがやはり年度の競馬を締めるのは有馬記念だと相場が決まって──」
「長い、そしてどうでもいい」
「何故だ!? お前の親父は騎手でお前も騎手なんだろ!?」
「流鏑馬な」
「つまり騎手だ!」
「神事舐めんな」
「競馬も陛下が観覧する由緒正しい神事だろうがッ!!」
こと競馬に関しては無駄に教養豊かな南に襟首を掴まれガクガクと揺らされる怜志。面倒くささのあまり若干イラっとする。
「へい、めちゃモテ風紀委員長」
と、そろそろ
視線を送ると隣の席の男子生徒が何やら期待するような視線を送ってきている。
「別にモテては無いと思うが何だ?」
「明後日からはクリスマスじゃん? 聖夜の夜じゃん? リア充ども爆発しろ案件じゃん? ってことでクラスの連中で集まってクリパする予定なんだけど委員長も来ない?」
「ふむ、なんとなく前置きと結論がおかしいような気がしなくもないが……」
突然の誘いに困惑しつつ、意図を探る様に怜志は慎重に言葉を選ぶ。
「クラスメイト同士でパーティーするのは良いと思うが、何故に突然俺を? 今まであまりそちらのノリに付き合った記憶はないが……」
「そりゃあ委員長誘えば女子たちも何人か釣れ「馬鹿野郎!」「要らねえこと口にすんじゃねえ!」……俺たちクラスメイトだろ? 仲間外れは良くないと思うんだ!(爽やかな笑顔)」
「おい……」
聞こえかけた俗物的な本音に半眼になる怜志。途中で茶々入れた二人を含めて、そっぽを向いて下手糞な口笛で誤魔化しているが遅きに失する。
怜志ははぁと一つため息をすると、ノールックで右膝を突き出し、襟首を掴んで揺らし続けていた眼前の悪友を追い払った後、しっかりと断りを入れる。
「ごふっ……!?」
「……下心はともかく、誘いはありがたいが先約があるんでな。悪いが断らせてもらおう」
「げげっ、そりゃあ無いぜー」
「頼むぜみんなの委員長!アンタがいないと女子来ねえじゃん!」
「男子だけのクリパとかもう焚火の前で恋人持ちに呪詛捧げることぐらいしかやることねえじゃん!」
「何故男所帯になっただけで、不穏な儀式が発生するのかはさておき、何と言われようとも先約がある以上、そちらを蔑ろにするわけにはいかないからな。悪いがそっちはそっちで勝手に盛り上がっててくれ」
「えー」
「チッ」
「時化てやがる」
怜志の言葉に三者三様の不平不満を捨て台詞と共に去っていく三人。
その失礼な態度に怜志の眉は思わず吊り上がるが、この程度で反応していたら意外に問題児が多いこの学校ではやっていけない。……いや、全体的な生徒は平均的な学生として振舞うのが大半だが、何故か怜志の周りにだけこの手の輩が多いのだ。理由は不明ではあるが。
ちなみに片手間に制圧された南は鳩尾を突かれ、くの字に倒れ伏す過程で机の角に額をぶつけて割と洒落にならない音と共に教室の床に突っ伏したが、クラス内の第三者含め、特に心配する生徒はいない。
いつものことなので総スルーである。
「──ねね、怜志君」
「ん?」
ギャン厨と三人のモテない男子たちを追い払った直後、今度はちょんちょんと肩を叩かれる。今度は誰かと振り向くと、学級委員長の顔があった。怜志が武力的な意味でクラスを統治するのに対し、まとめ役的にクラスを束ねる女子生徒である。
栗鼠のような小動物じみた可愛さのある茶髪の学級委員長は小首を傾げながら問いかけてくる。
「さっきクリスマスに先約があるって言ってたけれど……」
「ん……ああ、幼馴染と会う約束をしていてな。それに近く身内の集まりもある。どちらも県外だし、明日には立つ。だから馬鹿どもの邪教はともかくクラスメイトの交友関係を温める時間は作れそうにない。もしかして君も何か用事があったのか?」
「ふーん」
怜志の返答にぽやっとした顔で首を振る学級委員長。自我を押し付けるが如き悪友たちと比べれば話の通じる相手とだけあって、怜志の返答は丁寧だった。
……だから、続いて差し込まれた問いにも反射的に応えてしまう。
「それって彼女さん?」
「ああ、秋口に家の事情で休んでいた時があっただろ? その時の埋め合わせをしようと……──あ」
無垢な問いかけについ丁寧に事情を説明してしまう怜志。
だが、怜志とてこの時期にその話題がセンシティブなのを察せる程度には空気は読める。何せつい数瞬前にはその話題で嫉妬と羨望と怨嗟の望みを聞いたばかりである。
迂闊、と反省した頃には時すでに遅し。
ゆらりと先ほどまで諦めて引き返した三人の男子が今まで別の雑談に耽っていた男子や暇そうにHRを待っていた男子を率いて戻ってくる。その瞳に嫉妬と羨望と怨嗟の色を浮かべて。
「ねね、彼女さんってどんな人?」
「……この状況で質問を続ける君は流石このクラスの学級委員長だな。取りあえず容姿端麗な黒髪ロングの俺より頭一つ分背の低い良家のお嬢様かな。聞きたいならあとで教えてあげるから今は下がっていてくれ」
「りょーかい」
ててて、という感じで引き下がる学級委員長。そちらが巻き込まない程度に離れたことを確認したのち、怜志は迫りくる男子生たちの方をため息を吐きながら見返す。
都合十三人。それがクリスマスを前に怒りを吼える哀しき戦士たちの総数であった。
その内面を示さんとしているのか。誰かが持ち込んだガラケーから大音量でヴェルディの怒りの日を流している。ただし音質がちゃっちいので曲自体の迫力に対し、シュールだった。
「おいおいおいおい
「さも硬派な優等生。クラスの問題児たちを嗜めてますって顔で自分はやることヤルってか?」
「そいつはちぃとばかし仁義を欠くってもんじゃねえのか、ええ?」
ゴキゴキと首を鳴らし、手のひらに拳を打ち付け、肩をぐるぐると回す三人を筆頭に、背後では膝を伸ばしたり、背筋を解したり、身体を温めるようにして出走前のスプリンターばりにジャンプをする生徒もいる。
次の展開を察して怜志は冬服用のブレザーを脱ぎながら、一応対話を試みた。
「……念のため聞いておくが、平和的解決の余地は?」
「──おい!
「「「「「いねぇよなァッッ!?」」」」」
「シャアオラァ!! 往くぜ
「うおおおおお! 覚悟風紀委員長!」
「今日こそくたばりやがれ、似非風紀委員!!」
「文化祭スク水メイド喫茶を潰した恨みを此処で晴らす……!」
「天誅ぅぅぅぅぅぅ!」
「エ゛イイイイメ゛ェェェンンン!!!」
「
殺気立って迫る悲しみの十三騎士。
またやってるよという無関係なクラスメイト達の視線と、何故か後ろで怜志を応援する
……収めた武芸は刀剣に限らず。人類最強を背負う戦士として、クラスの安寧を守る暴力装置として、怜志は孤立無援の戦いを覚悟した。
「──来るがいい、クラスの平和は壊させん……!」
その覚悟をあっぱれと認めつつ、
「よく言った
「俺たちの
「フローエ・ヴァイナハテンンンンンン!!」
そして始まる大戦争。HRを始めるべく教師が教室へ入ってくるまで約五分。
せっせと机と椅子を退ける無関係な素晴らしき連携の
「──おーし、全員いるな。ホームルームを始めるぞ」
「せんせー、男子たち後ろのロッカーの前で伸びてますけど」
「……あまくにー?」
「仕留めてはいないので全員生きてます」
「じゃあ全員揃ってんなー。んじゃ、改めてホームルームを始めるぞー」
「はーい」
季節は冬。終業前の年末シーズン。
今日も今日とて怜志の学校生活は平和的に終了した。