神々、君に背き奉る   作:アグナ

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神魔大乱 Ⅱ

 安禄山率いる勢力が構えるという雄武城に到着した恵那と勇者(アルプ)は、帰城した勇者(アルプ)が恵那に関する事情を簡単に話すとすぐに城主との謁見を取り計らうとして謁見の間に通された。

 恵那が驚くほどの戦力を有する勇者(アルプ)は、安禄山たちにとってもやはり特別な存在なようで、彼の語る言葉を疑う者などおらず、右も左も知らない迷い人であり、身内を探すために客将の席を所望するというどう考えても怪しい話はあまりにも簡単に通った。

 話を疑わない、というより恐らく絶大な信頼を勇者(アルプ)が勝ち取っている証左だろう。謁見の場とされる一室に隣席する少年に恵那は感心の言葉を向ける。

 

「客将って聞いたけど君ってすっごく信頼されてるんだねえ」

 

「ああ、外様の身にも関わらずありがたいことだ。将軍殿を君のように巨大狐から救った程度の仲だが、それでも皆には恩義以上に良くしてもらっている」

 

「神獣クラスの妖狐退治を程度と言っていいのかは置いておくとして、実力もそうだけど君の人柄が大きそうだけどねェ」

 

「そう……か? 私としてはこれが普通なのだけれど」

 

「その普通の性格がみんなに好感触なんじゃない?」

 

 接した時間は短くとも眼前の少年が誠実な性格をしているのは恵那でもすぐに察せた。あれほどの武を持ちながらそれを誇るでもなく振り回すのでもなく、ただただ困っている者のために振るい、当然のこととして受け入れる。

 それは簡単なようでいて案外難しいものである。

 例えば恵那の相方である怜志もそれに等しい振る舞いをしているものの、根本的な部分では力に酔っている部分が無くもない。

 

 努めて人に寄り添おうとしても傲慢さが消えないのが神殺しの宿痾だが、眼前の少年はそれとも無縁である。その身が名も知れぬまつろわぬ神である可能性がある以上は、それこそ人に災禍を齎す存在であっても珍しくないのに少年はその特徴すらない。

 

 勇猛にして誠実。弱きに立つ慈悲深さ。

 成程──勇者を名乗るだけのことはある。

 少年の振る舞いは正しくその名に恥じないものであった。

 

「そうか、君たちには私がそういう風に映るのか。他人(ひと)から見た私というモノを評するものは今までいなかったから。うん、参考になった。ありがとう」

 

「んー、礼を言われることのものじゃないと思うけどなー。というか、自分の評判とかそういう話を気にしてなかった感じ?」

 

「そういうわけじゃないのだが……私は記憶が朧ゆえに勇者(アルプ)と名乗っているわけだが、どうにも彼ら騎馬の民にとってその名が表すのは敬服に比する存在のようで、名前だけでも勝手に尊敬を買っているようなのだ」

 

 故に平等な立場からの意見に欠けていたと語る少年。それを聞いて恵那は先の霊視もあっておやと内心首を傾げる。

 

“騎馬の民族にとって特別……? 確か安禄山は……”

 

 記憶を漁る。騎馬の民と言うのは恐らく安禄山率いる郎党の事だろう。

 唐代の軍人を務める安禄山であるがその出生は純血ではない。

 外来の血の混血(ハーフ)が安禄山である。

 

 その外来の血とは──唐国と突厥。

 前者は現代でいうところのウズベキスタンに位置するサマルカンドのことを指し、後者は遊牧系民族の血、即ちテュルク系部族の事を指した。

 そして出生あってこそ決起に際しては民衆人気は勿論のこと、多数の異民族も安禄山の側に加わり、天子を都から追い落とすことに成功したという。

 

 当然、少年が騎馬の民と言うからには彼の言う彼らとはその異民族──遊牧民系の後者を指して言ったことであろう。

 アルプという聞きなれない響きは後者に端を発するものであるのか。

 

「……えーっと確か突厥、テュルク系遊牧民族は中央ユーラシアに広く展開した民族だったんだっけ? 特に起源とされる原住地は鉱石資源が豊富で……あ」

 

 流石に東洋圏外にまで広がる逸話については恵那も詳しくはない。無いが、口にして重要な情報に気づいた。

 そう──テュルクの原点は唐代には「劔水」と表されるエニセイ川、またの名をイェニセイ川の上流域を原住地とする丁零であるとされている。

 この地は鉱石資源に豊富な土地であり、後に彼ら突厥が鍛奴──鍛鉄奴隷と呼ばれることの裏付けにされている。

 彼らはその鉱物資源を活かす術を匈奴が猛威を振るっていた頃に身に付け、三世紀の頃には鉄器の使用が普及していたという。

 

 そしてその勢力拡大の背景にはそうした鉄器の活用、即ち製鉄技術の活用によって中央ユーラシア広域を支配下に置くテュルク系部族最強の勢力とまで成り上がったのだ。

 

 ──鉄の征服者(・・・・・)

 

 そして、そんな彼らが無償の敬服を払う勇者(アルプ)の名。

 ……口惜しい、と恵那は思わず歯噛みする。

 恵那は日本の媛巫女である。

 最近は日本の神殺しの誕生を以て、正史編纂委員会主導で西洋文化圏の神話体系の学習なども進んではいるものの、まだ昨日の今日に始まったような事業とあっては恵那もその知識のレベルは浅い。

 

 だからこそ中華史に取り上げられる突厥、ひいてはテュルク系遊牧民族の話も概要だけは知っているものの詳しいところまでは知識が追い付かないのだ。

 或いはこれが祐理辺りであれば霊視で詳細すらも見抜くかもしれないが、恵那の霊視はそこまで高頻度かつ強力に機能するものではない。

 故にヒントを掴むことは出来ても活かす領域にはないのである。

 

“怜志なら──いや、駄目かな。怜志だって西域の神話にはそんなに詳しくないって言ってたし、そういうのに詳しい別の人が居れば……”

 

「…………」

 

 或いはこの少年(まつろわぬ神)の存在を特定できたかもしれないのに、と。恵那は思わず黙り込んだ。

 恵那にはらしくもない焦燥だが、少年の出生に符合すると思われるそれに気づいた瞬間、嫌な予感が奔ったのだ。

 以前、他ならぬ神殺しが語った『最後の王』の存在。

 最強の『鋼』とも評されるそれに目の前の少年が関わっているのかもしれない、と。そんな予感がしたのである。

 

 だが、そんな警戒など露知らず少年の方はと言えば突然黙り込む恵那を前にこてんと首を傾げる。

 

「うむ? どうした巫女殿? 急に黙り込んで。む、もしや体調か気分が優れないのか? 一先ず将軍殿への挨拶は置いて医者に声を掛けた方が……」

 

「う、ううん! 大丈夫! ちょっと緊張し始めただけだから気にしないで!」

 

「そうか? それならいいが……しかし緊張か。確かに将軍と言う肩書はそれに値する肩書であるが、そう気張ることもないぞ。言ったように安禄山殿は恰幅の良い気持ちの良い御仁だ。女人だからと言って侮ることも無し。巫女殿の話を聞けば寧ろ──」

 

 恵那の誤魔化しを真実と捉えたらしい勇者(アルプ)はその気分を和らげようとこれから会う安禄山への擁護(フォロー)をするが、それは必要のない事であった。

 それは恵那のそれが緊張ではないというのもあるが、それ以前に勇者(アルプ)の言葉を待つまでもなく。

 

 

「その通り! 女だてらに商人たちを背に巨大狐に立ち向かう! その勇姿を伝え聞いただけでも貴女が勇猛果敢な戦士であることに疑いはない! そしてそのような者に我が方と轡を並べて貰えるというならば喜ばしくあれど、跳ね除ける理由などない!!」

 

 

 怒鳴り声にも似た大声。

 驚くほどに良く響く発声を伴って謁見の間に当人(・・)が現れる。

 

「初めましてだな! 異国より訪れたという巫女殿! 我輩がこの城の城主にして楊貴妃を語る不届き者を誅せんと立ち上がった者! 即ち安禄山である!」

 

 将軍と言う上位者に相応しい武骨ながらも豪奢な衣装、豪快な言動は成程その肩書に相応しい大人物であろうことが伺える。

 だが一番目につく第一印象は「恰幅が良い」様である。

 常々勇者(アルプ)が口にしていた将軍に対する評判であるが、恵那はこれを内面を評してのことだと考えていたが、どうやらそれは正解であり、間違いでもあった。

 

 言葉は正に内面と外面双方を指しての事。

 安禄山を名乗り現れたその男は将軍──軍人の肩書には考えられないほど豊満な肥満体形であった。

 力士のような筋肉の塊、というわけでもなく。

 その腹には贅肉が詰まっている。

 

 お手本のような腹太鼓を持つ好漢、それが安禄山であった。

 

「えっと……」

 

「ワハハハハ! 皆まで言うな! とても一軍の将には見えないというのだろう! うむ、陛下にも同じことを言われたことがあるし、勇者(アルプ)殿にも鍛えているようには見えないと言われてしまった! だが案ずるな! 戦に支障は無いし、それにこの腹にあるのは贅肉ではなく真心であるからな! ハハハハハハハ!」

 

 冗談のつもりなのか爆笑する安禄山。

 ……唐代の栄光を終わらせ、天子から都を奪い取って享楽を尽くした反逆者。歴史における彼の立ち位置はそのはずなのだが、そうとは結びつかないほどに安禄山は色々な意味で豪快であった。

 

「ふふ──恰幅の良い御仁だろう? 巫女殿?」

 

 隣席する勇者(アルプ)が笑いかける。

 

「……みたいだね」

 

 それを、恵那は困ったような苦笑で肯定した。

 

 

………

………………

…………………………。

 

 

「──して、勇者(アルプ)殿と同じく巫女殿も我輩たちと共に戦ってくれるということでよろしいか!?」

 

 自己紹介もほどほどに着席するや否や安禄山は駆け引きも何もなしにいきなり本題を投げつける。特別急いての事ではなく、こういう性格なのだろう。

 歴史上は成り上がりのみで時の皇帝に売り込んで立場を作った狡猾な人物とされている筈だが、その評判とは結びつけられないほどの勢いある性格である。

 

「うん、取り得ずはね。客将っていう立場を貰えるのは右も左も分からない恵那にはありがたい話だし。恵那の目的の人探しをするのにも便利そうな身分だしね。あ、でも、恵那は戦えても軍人さんたちを率いるとかそういうのは得意じゃないから……」

 

「了承した! 君のことは勇者(アルプ)殿と同じく強力な一騎掛けの戦士として皆には伝達しておこう! 指揮は従来通り我輩の部下に任せてもらって構わない!」

 

 恵那の言葉に言い切るより早く一つ返事で応じる安禄山。

 勢いがある、というよりあり過ぎである。

 恵那をして思わず指摘してしまうほどに。

 

「えっと……こっちの都合を受け入れてくれるのはありがたいんだけど、いいの? もっとこう、詳しい事情とかそっちの事情とか……」

 

「構わん! 今は国難の時だ! 如何なる身分、立場、肩書も気にする時ではない! 帝都を牛耳る狐の魔物──これを倒すためならば、力ある者の協力を拒絶する理由は何処にもないからな! 一兵でも多くの助力が願えるのならば何処までも胸襟を開く覚悟である!」

 

 詰まるところ、協力してくれるのであれば何も問わずして、あらゆる条件に譲歩する各語であるということ。

 一兵卒であれば簡単な言葉であるが、一国の将軍という身分であってこれを口にするのは相当の覚悟がいることである。

 それを迷い無しに言い切る事実こそが、安禄山の度量の広さ、深さであると同時に──切羽詰まった状況であることを否応なしに示していた。

 

「楊貴妃──と、取りあえず言うけど、その人、そんなにもマズいの? 話を聞く限り皇帝は認めているんだよね?」

 

「うむマズい! すごくマズい! 何が不味いかと言えばまずかの狐は人心を弄ぶことに長けている! 宮中で正気なのはもはや張九齢殿ぐらいであろう! ……そして嘆かわしいことに張九齢殿でさえ、その記憶を操られておいでだ!」

 

「記憶を、操る……?」

 

「九尾の狐の権能(チカラ)だな、かの存在は人心や記憶をも化かす(・・・)ことが出来るようだ」

 

 恵那の疑問の声に勇者(アルプ)が合の手を入れる。

 安禄山はそれに大きく頷いた。

 

「然り! かの御仁にとっては今の時代は我輩が反旗を翻す以前の、乱前夜のそれで止まっている! 我らは既に雌雄を決し、歴史の果てに共に死したというのに!」

 

 安禄山の語りからして既に彼は自身が歴史上の役目を終えた存在であることを認識しているのだろう。勇者(アルプ)が語る通り、楊貴妃の皮を被るまつろわぬ神が見せた泡沫の夢の存在。それを知っている。

 ……知った上で、立ち上がったのだ。

 

「……こういうことを聞いていいのか分からないけどさ。恵那は将軍様の歴史っていうか末路っていうか、その本当の未来っていうのを知ってる。だから聞きたいんだけどなんで戦うって判断したの? だって──」

 

「一度──国を裏切ったではないか、か?」

 

「…………」

 

 続く言葉を先に言う安禄山にこくりと恵那は頷いた。

 安禄山──唐代に治世に反旗を翻し、一つの時代を終わらせた者。

 

 天下大乱の引き金となった彼は天子に決起その後に十五万の兵を率いて都に踏み入り、天子よりその帝位を簒奪して大燕皇帝を名乗った。

 そして玄宗のように帝都から逃れることを送れた旧皇帝勢力の悉くに、老若男女問わずの拷問や殺戮を加え、さらには帝都での略奪行為などの非情も認めた。

 

 直接行ったのは配下の将や部下たちであるが、それを咎めることをしなかった時点で暗に安禄山もそれを認めていたということである。

 

 そして簒奪後の非情な振る舞いと帝位簒奪と言う暴虐が巡り巡って因果となったか、最後には糖尿病を発端とする重篤な病を経て後、不信の煽りを受けた実子によって暗殺されるという凄惨な末路を辿っている。

 

 ……歴史における安禄山とは圧政に苦しむ民を救わんがために立ち上がる義の将、などでは決してないのだ。

 むしろその逆、骨髄まで国への反感と憎悪を募らせていても不思議ではないほどに残虐非道の側面を有している人物である。

 ましてやその歴史(・・・・)を経たという彼が、国のために立ちあがるというのはとても考えられないことであろう。

 

 率直な疑問を問う恵那に、ふっと安禄山は笑う。

 

然り(・・)! その通りだ(・・・・・)! 我輩を突き動かすのは義でもなければ民を苦心を憂いてのものでもない! 我輩個人の恩と私心に基づくものである!」

 

「恩と……私心?」

 

「そうだ! ……歴史に沈んだ優と同じく、当初の我輩も帝都で目を覚ました。まだ我輩が上を目指して天子殿や楊貴妃殿に取り入らんとしていた頃の時代にな。そこで我が行いを知る我輩は状況を突き止めるべく行動したのだが……目覚めてすぐの我輩の前に楊貴妃殿の偽物が現れた」

 

「狐の親玉……まつろわぬ神本人が?」

 

「うむ。彼女は言った。『夢の都合、汝も共に目覚めさせることと相成ったが、甘い夢中に不都合な現実は不要。死すべしとな』。つまるところ目覚めて早々、我輩はその元凶に殺されかけたのだ」

 

 まつろわぬ神当人との敵対。それは実質死刑宣告に等しい状況であっただろう。怜志などの神殺しは例外として基本的に人間は神に抗えない。

 単に逃げることすら絶望的なほどに人と神とには大きな差が横たわっている。呪術に詳しいようには見えない安禄山であるが、人として神に相対すれば本能からして否応なくその差を悟ることだろう。

 

 彼がどれほど絶望的な状況に置かれたか、想像に難くない。

 しかし……安禄山は今まさに目の前にいる。

 それはつまり──彼はその絶望的な状況を脱したのだ。

 

 そしてそれこそが彼の原動力……戦う理由であった。

 

「万事休すを悟った我輩だったが……そんな状況で聖女様は……否、女神様は救いの手を差し伸べてくださったのだ!!」

 

「ん?」

 

 突然、話の雲行きが変わったかのような人物(よこやり)の登場。

 思わず疑問符を挟む恵那だったが、そんなことを気にする様子もなく、ばん!と勢いよく謁見の間の円卓を両手で叩くと安禄山は、グッと力強く握りこぶしを作ってより熱く、むさ苦しいほどの勢いで語りだす。

 

「そう──我輩に手を差し伸べてくださるその姿は正しく女神であった! 覚えているとも! 膝を屈する我輩の前に立ちふさがった華奢な背中! 楊貴妃を語る狐の魔物に一歩も引かぬ言葉! そして、悪漢たる所業をした我輩の認め、その上で慈悲を賜ってくださった度量……彼女と出会い、我輩は心を入れ替えたのだ! 将として、否! 一人の男として、彼女に伏し、彼女と共に立つことが出来る益荒男足らんと!」

 

 要は、命の恩人に恩を感じてそのために戦おうという話であろう。

 だがそれにしては熱狂的ともいえる様である。

 勇者(アルプ)や恵那に向ける強者に対する尊敬とも別の、信仰心にも似た熱弁の様は、恵那から見てアイドルやら『俺の嫁』とやらを語る甘粕に似ていた。

 

 ──その時である。

 コンと謁見の間の扉が開く音がした。

 

 反射的に恵那と勇者(アルプ)の目がそちらに向く。

 

 しかし聞き手の注意が逸れたことなど気にする様子もなく、佳境を迎えた熱弁は遂に恩人の名とやらを口にする。

 

 

「そうだ! 我輩は決して義のために動いているわけではない。我が恩と私心、我欲が故に義者として振舞っている! 他ならぬアイーシャ様(・・・・・)のご恩に報いるべく、彼女の敵を倒さんと立ち上がったのである──!」

 

「あ、はい? 私に何か御用ですか?」

 

 

 ドオオン!と効果音でも聞こえてきそうな熱弁と同時、唐突に開かれた扉から話題の主にして第三者が現れる。

 

 身に纏うは何故か恵那の住む現代においてメイド服と名付けられた使用人の服である。時代錯誤どころか世界観の破壊に等しい服装だが、容姿は非常に端麗だ。

 ただし素肌はアジア人特有の黄褐色のそれではなく黒よりの褐色肌。

 間違いなく外国に由来を持つ人物であろう。

 

 見目からして恐らくは十七、十八歳ごろの乙女である。

 

 熱弁に語られる名をさも己に投げかけられた呼び掛けだと判断していることから、安禄山の語るその名──アイーシャと呼ばれる人物であることは間違いなく。

 

「ってやっぱり! 兵士さんたちから見覚えのない娘が城に来ているって聞いたから顔を見に来たんですけどお客さんだったんですね!」

 

 面を喰らったかのように唖然とする恵那を傍目に、少女──に見える女性、アイーシャはほわんとした雰囲気のまま万遍の笑みで恵那に笑いかける。

 

「初めまして! 私、アイーシャと言います! 将軍さんのお客様ですよね? お茶をお持ちしました!!」

 

 さも我が城といった元気いっぱいの使用人仕草で、恵那と同じ現代に君臨する神殺しの貴婦人は当たり前のように挨拶をするのであった。




傍迷惑の代名詞、降臨──。
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