馬になったっぽい男のインタビュー風な感じです。
自分、馬らしいっす。
阿呆とか言わない。いや馬鹿の類ではあるんすけど。
そもそも違和感に気がついたのは、馬の房で飯を食っていた時っすね。ええ。いや、喰ってたら、なんかさ。思い出したんすよ。
「…草ばっかりじゃ味気ねぇよな。せめてこう、ピーマンとか食わして貰えん?」
って。いやでも落ち着いてみれば、いや馬はピーマン喰わんやろってなったんすよ。
そこで慌てましたよね。そういえば自分、馬じゃんかって。そうなんす。なんか違和感あったなぁとおもったんすけど。自分、なんだか人間だった気がするんすよね。うん。
え?変な話だって?そりゃあ、自分もそう思うっすけど。ま、でも仕方ないっすよ。文字わかっちゃって、記者さんともこういうふうにやり取りできるんすから。疑われても、『なっとうやろがい』としか言い返せないっすよ。
これ?デカいキーボードっす。馬の体重でも壊れないってんで、いや、最高っすよ。ほら、それに判ります?タッチパネルもあるんで、こう、ゲームも出来るんスよね。至れりつくせりってやつで。ははは。どうです?某ウマの擬人化のゲームなんかもやってるんスよ。結構、上手いっすよ?課金なんかもほら。
あ、はい。無論、自分で稼いだ賞金っすよ。あー、八百長ですか。疑われるのも判ります。いやでもね、他の馬ってそこまで知能高くないんスよ。他のインタビューでも答えましたけど。基本、本能に忠実って奴っす。ターフでの彼らの本気を感じて欲しいくらいっすよ。本当怖いっすよーあれー。八百長ができればどれほど楽かって思いますよ。馬になってまで全力疾走しなきゃ駄目なんすよ?
それに舐めた走りしてっとケツ叩かれるんで、ええ。そこそこ痛いんすよねあれ。まぁ、気合入るんで個人的には良いんスけど。あ、それはそうと、そろそろその差し入れのピーマンくれません?結構腹減ってんすよねー。
なんでピーマンかって?ああ、好物っす。それこそ、世界一、旨い喰い物と思ってるっす。
―某年某月某日、栗東トレセン内、とある馬の馬房にて
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その馬が無敗の三冠馬になったのは、当然のことだと誰もが言う。
黒い馬体、素晴らしい血統、そして、その体から繰り出される最高のパワー。まるで、意志がしっかりとあるように、騎手と共にまっすぐゴールを目指すさまは、かの名馬であるシンボリルドルフや、シンザンをも彷彿とさせる。
しかし、今回の特集は、そんな三冠馬の話ではない。レースの話になるとあまり話題にはならないが、必ず馬券に絡む善戦ホース。ピストルピーマンの話だ。
彼の戦績は、今のところはぱっとしない。デビューこそ勝利を納め、その後もそこそこの成績を納め、そして、そこそこの成績でクラシック戦線、そしてそこそこの成績で有馬記念まで駆け抜けたピストルピーマン。大体、掲示板にはいるので、馬券に入れておけばまず損することはないという、競馬ファンにとっても、馬主にとっても、有り難い存在だ。
だが、彼の真髄はそこではない。我々は忘れてはならない。あの伝説の皐月賞。グレード1の舞台で興奮しすぎ、彼が、彼の秘密を暴露してしまった、あのレースを。
あの皐月賞から、馬の歴史が変わったと言っても良いだろう。馬房はより大きくなり、馬の個体による餌の違いや、育成の仕方など、調教というものが大きく変わったと言えるあの皐月賞から1年。我々は再度、彼に出会うことが出来た。彼は以前の通り、レースを走れば大体3着で、大体気楽に過ごしていた。
「別にいつでも訪ねてきてもらっていいっすよ。ま、拉致は御免っすけどね」
からからと笑っているのか、歯をかちかちと合わせながら文字にされた言葉に、背筋が少しだけ凍る。というのも、このピストルピーマンが秘密を暴露してしまってから、世界中からピストルピーマン号をほしいという連絡が来たのだ。それこそ、国家予算以上の金を積んだ国も有る。中には強硬手段に出た国もあるとかないとか。
現在では、米国、中国、そしてEU圏の軍隊が持ち回りで彼の警護、正確に言えば競馬のセキュリティを守っているためそのような事は報告されていない。
―話が逸れたが、彼の名前はピストルピーマン。御存知の通り、日本のサラブレッド、今年、5歳馬になる
「そんな大層な事っすかね?ちょっと他の馬の言葉が判るくらいっすよ?え?ああ、今年三冠を獲ったアイツっすか?いやね、好みだって言われたんで、ずっと誰にも負けなかったら考えてやるよって言っただけっすよ」
なお、本文中では『彼』と評しているが、それは、ピストルピーマン号たっての希望であることを此処に記しておく。