グッドエンドで世界が滅ぶなんてそんなのアリ!? ~ヘイト担当悪役貴族は主人公らとノーマルエンドへ辿り着きたい~   作:ぷうち☆りん

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転生したら体力測定でした。

 まあ……学力測定テストはいいんだよ。

 問題は、体力測定テストだ。

 この間、妖精の隠れ家でハメ戦法を使ったワケじゃん? 

 あれでレベルが大幅に上がった筈だから、

 ステータスも爆上がりしているに違いないワケで……。

 

『100メートル走を5秒!? す、凄い!』

『きゃ~! ボン様ステキ~!! デートして〜!』

『お見逸れ致しました〜! あなた様にはかないません!』

 

 な〜んて崇められたり、ペコペコされちゃったり? 

 

「いや〜! 困るな〜! そんなつもりじゃあなかったんだよ〜!!」

 

 俺は相部屋の寮にて、一人謙遜のポーズの練習に取り組んでいた。

 こういうのは日々の積み重ねが大事だからな!! ガハハハハ!! 

 

『何とまあ楽天家な事よのう』

 

 妖精女王の指輪から俺を嗜める様な声が聞こえてきた。オフェーリア様だ。

 なに言ってるんですか? ステータスが高けりゃ能力が上がる。

 能力が高けりゃ評価される。当たり前じゃないですか? 

 かー! これだから生まれつきの強者であるオフェーリア様はなー! かーっ! 

 

『……。まあよい。戦いに於いてのそなたのやり方を見るに、後々高転びに転ぶよりはここで躓いた方がそなたの今後にはなろう』

 

 と、意味深な台詞を残しオフェーリア様は黙ってしまった。

 全くオフェーリア様ときたら。

 

 ー

 

 そんなこんなで体力測定のスタート。

 試験官はやはり、というべきかスパルタ教育に定評のあるサドゥー先生だ。

 

「宜しくお願いしまーす!!」

「うむ……ではまずは筋力を測定する。 大、中、小ある好きなバーベルを選ぶが良い」

 

「小でお願いします!!」

「そうか……好きにしろ」

 

 サドゥー先生は俺が小を選ぶとあっさりと許可してくれた。うむ、話せる人だな! 

 だがここで『ちょっとジャマだな〜』とか言って大のバーベルをひょいと持ち上げてしまうのが転生者の持ち味ってもんでがしょ!! 

 早速俺は大のバーベルを持ち上げ……持ち上げ……! 持ち上げ!!  持ち上げっ!!! 

(動け! 動け!! 動けよぉ!!!)

 

「んっぎいぃぃぃ!!!」

 

 うんともすんとも言わない!? ど、どうなっているんだ!! 

 

「ボン・ノワール。貴様ふざけているのか? やる気のないものは去れ!!」

「ヒィ! す、すみません!!」

 

 うおぉぉぉ!! 転生+レベリングの奇跡を見せるんだ!! 見せろーっ!! 

 しかし奇跡というものは起こらないから奇跡というワケで、やはりびくともしなかった。

 

「ボン・ノワール。筋力は計測不能。では次は持久走だ」

「ま、待ってください!」

「ダメだ。貴様一人を相手に体力測定をしているワケではないのが判らんのか?」

 

 と、鋭い眼光で正論を言われてはこれ以上逆らう事はできず従うしかなかった。 しくしく……。

 

「カウ・マッセです。中バーベルを」

「ほお。貴様はウィザードを希望していたのではないか?」

「はい。ですがウィザードに筋力があっても問題はないでしょう? 常に魔法が使える環境にいるわけではないのですから」

「成る程。貴様の言うことにも一理ある。

 確かにウィザードが武器を一切使わない理由もない」

 

 な、なんだか俺の知らん所にカウのヤツに主人公フラグが!? がががが!? 

 よく見りゃイイ身体してるしさ!! 

 兎にも角にもカウのヤツは中型のバーベルを持ち上げようとする……。

 

「む……うぅぅん!!」

 

 血管が浮き出て、鼻血が出るんじゃないかと心配になる程顔が真っ赤になる。

 その姿は茶化すことなんてできない真剣さがあり、自然と周囲は息を呑んで応援したくなるようなオーラがあった。

 

 そしてついに……

 

「ぐぬぅぅぅっ!!」

 

 じわじわと中型のバーベルがカウの全身の筋力により上へと持ち上げられた。それを見て野郎達は思わず拍手をし、女子達からは黄色い歓声が上がる。 ぐぬぬ……。

 

「きゃあ〜!! カッコイイ!」

「やるなぁ! カウ・マッセのヤツ!!」

「はぁ……! はぁ……! 

 ど、どうということはない……!!」

「カウ・マッセ。評価Bプラス! 次!」

 

 そしてザンテツ君はというと……。

 

「あ、俺っちはムキムキキャラじゃないんで。小さいヤツでいきま〜す」

「……なら早々とやってみせろ」

 

 言われるがままにザンテツ君はひょいひょいと口笛を吹きながらバーベルを軽く持ち上げた。

 

「キャー! ザンテツ君もカッコイイ!」

「スマートで憧れちゃう〜!!」

「声援ありがとうねぇ〜! 今度お茶でも

 一緒にどう?」

「ザンテツ・キリステ! 評価C! 次!」

 

 クラスメート達は賛否両論だ。なお男子の方に否が多い。女の子に手を振っている所をみるに評判や評価は気にしていない様だ。

「ケッ、ザンテツのカッコマンがよ……!!」

「調子にのりやがって……後で呼び出すか?」

「け、けどアイツ喧嘩はめっぽう強いぜ。オネスト先輩を一発でのしたっていうし」

 

 なんだか不穏な話をしているな……。

 いや勝てないからなフツーに。でも後で警告はしておこう。

 

 そして測定は次々進み……

 

「んあ? 先生。3つぜーんぶ持ち上げるんはダメなんか?」

「ボノク・デイ! 筋力Aプラス!」

 

 

 見るからに筋力特化のデクノボーっぽいヤツがバーベルをダンベルと勘違いしてるんじゃないかって位ひょいひょいと持ち上げたり

 

「クオタ・クラウドです。ザトゥー先生。持ち上げるのに勁のスキルを使用しても宜しいですか?」

「……まあ良かろう。但し評価は下がるがそれで構わんな?」

「はい。結構です」

 

 そしてクオタ君は大型のバーベルを持ち上げた。確か「発勁」って筋力上げるスキルだったな……。

 

「クオタ・クラウド! 評価Bプラス!」

「まあ。こんなものでしょう」

 

 フツーに凄いと思うのだが何故か黄色い声援や拍手はなかった。

 更に更に。

 

「ベノム。肩に乗せているスライムを降ろせ。筋力補助と見做して評価を下げるぞ」

「仕方ねェなあ……。公明正大なサドゥーセンセの言いつけだ、離れてろイービル。

 ……これでいいかい?」

「ベノム・ヴィラール! 評価B!」

 

 あのサドゥー先生に皮肉めいたタメ口で話しかけられるって凄い度胸だよ。

 ホントに学生? 

 ともかくみんなそれぞれ筋力を披露していく中、計測不能(悪い意味で)はキツい……。

 

 ー

 

「では続いて持久走による耐久力の計測に入る。これより60分の間にどれだけの距離を走れるかを競う。

 リストバンドには距離の記録と共にいざという時の体力回復の魔法が付与されている。決して外さないように!」

 

 走り込みは散々サドゥー先生に仕込まれているからな! 多少は自信があるぜ! 

 さすがに連続で測定不能はマズいもんな! 

 

「なーボン君。ゴールまで一緒に走らね?」

 

 ザンテツ君が気さくに話しかけてきた。

 こ、これはあれか? 一緒にゴールすると言いながら途中で裏切るデスゲームのパターン? う〜ん……。

 

「いや、やめとく。自分のペースで行きたいんだ」

「ま、それもそーだわ。悪いね、気ぃ遣わせちゃって」

「それよりもさ。ザンテツ君、変なヤツらに狙われてるぜ。気をつけた方がいい」

「マジか〜。女の子にマークされるなら可愛げもあるけど、男じゃなぁ〜。

 教えてくれてサンキュー!」

 

 チャラいがしっかりはしてるんだな……。

 ザンテツ君はさっと手を挙げ爽やかに去っていった。

 

 ー

 

「それでは始めるぞ! 用意……! 始め!!」

 

 パン、と魔法の空気銃が鳴るやヒュン、と風の速さで駆け出したのは俺……ではなくまたしても見慣れない生徒だった。

 いや、あれは先行逃げ切り作戦か!? 

 

「おいおい……! アイツ速すぎだろ!」

「なんつう奴だ……まるで競走馬だぜ!?」

「へぇ、目立ってんじゃん! 

 俺っちも負けられんねぇな!!」

 

 と、周囲からどよめきが起きる。

 が……ああいうタイプに張り合うとオーバーペースになってしまうのがお約束。

 見栄を張って自爆するのは一回で十分。

 俺は自分のペースを守りつつ、無心で走る。

 

 10分。 「もぉだめだぁ〜」

 とボノクがギブアップ。

 20分。「ヤバ……ちょっとペースを上げすぎちゃった……!?」

 とザンテツくんがヘロヘロになり……。

 30分。「ま、こんなモンだろ」

 合格基準に達したとみるや、ベノムがてくてくとポケットに手を突っ込んで歩きはじめた。

 40分。「……」

 先の黒髪ハーフアップの俊足君のペースは一切崩れない。 それどころか周回遅れのメンバーの間を滑るように抜けていく……!? なんて体力と動体視力だよ!?

ていうかチートスレスレっていうか……まさか転生者か!?

 

 

「……野郎!!」

 

 先の陰湿三人組は何と露骨にブロックする様な姿勢を取り出し、更に肘まで食らわそうとしている。マイペースで走っている俺はともかく、競走馬ばりの速度で走っているアイツに解るのか! 

 

「危ない!! 前っ!! ……かはっ!?」

 

 つい注意してしまうと呼吸が乱れてしまう。だが予想に反して彼はまるで羽根が生えたかのようにジャンプ、陰湿三人組を避けて走り続けた。注意したのは余計なお世話だったのか? 

いや、さっき俺の警告に対して感謝のハンドサインをしていた様な……? 気のせいかな?

 

「う、嘘だろ……?」

「くそっ! 全然追いつけねぇ……!!」

「なに、もう一回周回してきた時に……」

「そこの三人!! 今すぐトラックから離れろ! 走者妨害と見做し失格とする!!」

 

 天網恢恢疎にして漏らさず。

 俺でさえ見抜けるんだからサドゥー先生の眼力をすり抜けられるわけがない。悪因悪果を呪え。

 

 ともかく残り10分。

 あとはスパートを駆けるだけだ! 

 と、その時……。

 

「やあ、俺に構わずマイペースで行ってくれ」

 

 とここまで俺につかず離れずのペースで左後ろについてきていたカウがペースを上げてきた。

 

「いやいやいや。お前こそ」

 

 なんかイラッとしたので俺もペースをあげる。なんか知らんがお前には負けたくない! 

 いつの間にやら抜きつ抜かれつ、汗振り乱してフォームもグッチャグチャになりながらも俺達は全力で走った。

 

 

「「負けて……たまるかあーっ!!」」

 

評価されたいとか、チヤホヤされたいとか、敵とか味方とかどっちが上かを周りに知らしめた、いとかそんなんでもない。

ただ、負けたくなかった。

 ザトゥー先生が終了の合図をしても俺達は関係なく体力回復の魔法が回復するまで走り続けた。

 

 ー

 

「全くザトゥー先生の呆れ顔なんて初めて見たよな!」

「ウム。ザトゥー先生の予想を越える勝利の執念の持主がいるというデータは無かった。更新の必要がある」

 

 持久走後の昼休み。

 メチャクチャ走ったせいで俺とカウの腹には何も入らない。

 ユーシャちゃん達の計測は午後かららしいけどあんまり食べ過ぎてないといいな。

 

「ボン君。ここだけの話だが俺はキミに負けたくないから魔法の勉強の間を縫って筋トレに励んでいたんだ」

「な、なに〜! お前、そんな少年漫画の主人公みたいなマネしやがって!! 汚いぞ!」

「汚いとは何だ! 陰で努力していたと言ってほしいね!」

「そ、そうか。そうだな……」

 

 言われてみればいつの間にやらステータスだのレベリングだのに頼りきって……。

 目が覚めたぜ……!! 

 

「な、何だいキミは。減らず口はどうした!」

「ハハハ。直ぐに反省して立て直すのがボン君の取り柄じゃんか。カウっちはボン君とのまだまだ付き合いが足んねーな」

「うむ……」

 

 と、何やら奇妙な友情の芽生えを感じていた時。

 

「ザンテツく〜ん? さっきの観てたよ! 

 すっごいカッコよかった〜」

「うんう〜ん」

 

 筋力測定の時にザンテツ君を応援してた貴族の女の子達が秋波を送っていた。

 まあザンテツ君は慣れているからうんうん、とにこやかに応ずる。

 うーん、このモテ男の余裕ときたらどうだ。

 

「って、あれ〜? ボン・ノワールじゃ〜ん」

「さっきのアレな〜に? ギャグのつもり? 全然ウケなかったんだけど〜」

「マジで空気読めないのは昔からだよね〜。ホントノワール家の恥曝しだよね〜」

 

 え? な、何っ? いきなり悪意剥き出しにして俺を扱き下ろしにきたんですけど!? 

 この三人、誰!? 記憶に存在しないんだけど? 

 昔からの知り合いっぽい? 

 そして幼馴染というよりは、本来のボン・ノワールを蔑ろにする側のヤツらか……。

 

「キミたちはボン君の友人か? それにしては随分失礼な物言いだ」

 

だがそれを感じ取ってかクオタ君が代わりに俺に絡んでくる令嬢達を咎めてくれた。眼鏡の位置がズレたのかすっと位置を直している。というのに、貴族娘達は立ち振舞を改めようともしない。

 

「ちょっと、アンタ何様のつもりよ〜」

「庶民のくせにウザくな〜い?」

「あ、あとマッセ家のお飾り長男もいるじゃん♪ 聞いたわよ〜♪ アンタもうすぐ廃嫡されるんでしょ〜? 可哀想〜♪」

 

 まるで猫が鼠を甚振るかの様に俺達を嘲る三人。

 コイツら……いい加減にしろよ。

 カッとなって席を立とうとすると動きが阻まれる。

何だ!?と視線を移すとザンテツ君が俺の肩を抑えていた。

 

「失せろクソアマども」

「「「……は?」」」

「俺のダチにイヤな思いさせやがって。 二度と俺等に声かけンな」

 

 ギロリ、とサドゥー先生にも劣らない義憤と侮蔑を孕んだ瞳で威嚇するザンテツ君。 うおぅ、めっちゃ怖っ!! 

転じて貴族娘達は甚振っていた鼠が虎に様変わりしたかの様に真っ青になる。

 

「な、なによ! ちょっと顔がいいからって!」

「パパに言いつけてキリステ領の支援を打ち切らせてやるんだから!!」

「覚えてなさいよー!!」

 

 と、捨て台詞を吐いて去っていく三馬鹿女たち。何か悪い噂をばら撒かれてはたまらない。オネストの件もあったから要注意だな。

 

「……キミたち。さっき彼女達の話していた事だが……その……」

「何が? アイツラの性格がブスすぎるのにカッカしちゃったから忘れちまったよ」

「私もさ」

 

なんとクオタ君がザンテツ君の物言いに賛同した。

普段なら「性格ブス呼ばわりは紳士的ではないザンテツ氏。せめて精神構造が不自由と言うべき」とか言って窘めそうなのに。

いや、我ながら精神構造が不自由もダメだろ。

 

「マジで!? クオタ君も怒る事ってあんの!? アッハハハ!俺っちらも気ぃつけないとな?」

 

 ザンテツ君がイヤ〜な空気を跳ね飛ばす様に豪快な笑い声をあげる。

 

「ザンテツ君! さっきはありがとう」

「いいって事よ! さ〜てと午後からの体力測定頑張りますか〜!!」

 

 ザンテツ君はニッと白い歯を見せて親指を立てた。

 

 

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