微妙系RPGのヘイト担当悪役貴族に転生した俺は、世界の破滅を防ぐためバーサーカー系女主人公ちゃんたちとノーマルエンドを目指す   作:ぷうち☆りん

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転生したらラッキースケベを経験しました。

「ダメね! 美味しくないわ!」

 

 メスガキお嬢様……じゃなくて悪役令嬢であるオレサマがまたしても俺に無理難題をふっかけてきた。

 授業が終わった後にフルーツが食べたいというから何とか学園外に抜け出して、近くの果物屋さんで買ってきたというのに……。

 

「ま、まあそう言わずに……」

「はあ!? 貴方はノツモリダ家の婿になるのよ!? この程度のことで音を上げるようでは先が思いやられるわ!! 。いい? 私のクジョ様への言葉一つでアンタはノワール家から廃嫡されるのよ? それをわかっているのかしら?」

 

 青いロングで耳辺りにボブがかかった髪をしたオレサマが偉そうな口調で言った。まあ、侯爵家の令嬢だから偉いのは事実だからしょうがないけど。

 

「「「おっしゃる通りでございます!」」」

 

 オレサマ親衛隊とでも呼ぶべきか

 3人の生徒がオレサマに同調する。その光景を見てオレサマは満足げな表情をした。

 ウザイ、ムサイ、クサイ。

 キラワレモン子爵家の三つ子兄弟だ。顔は違うのはいいとして酷い名前だな……3人とも美形なのに。

 天は二物を与えないと言ってもあんまりじゃないか? 

 お前らの守護神ってまさかドレイクスレイヤーだったりしない? 

 ちなみにキラワレモン家は代々騎士を輩出していて領地はそこそこ豊かだが帝都からは遠く離れていて、政治力はないらしい。

 だから帝都や地方の貴族至上主義者を纏めるノツモリダ侯爵家に恭順しているんだとか。はぁ〜……面倒くさい大人どもが考えそうな事だな。それよりもフルーツですよフルーツ! お前、人が買ってきたモンを……。

 

「はぁ〜……見る目もない。教養もない。況してや器量はクジョ様のお腹に置き忘れる無能ぶり……。そんな男には私が付いていなければダメね」

 

 オレサマが辛辣な言葉を吐いた。

 なんでここまで言われにゃならんのか……。

 

「いや、それはあまりに……」

 

 ムサイ君がオレサマを諫めようとしたがクサイ君に肘を食らっていた。

『余計な事を云うな』というサインだろう。大変だなお互いに……。俺は内心で同情していた。

 

「ウザイ、早くこのフルーツを片付けなさい!」

「はい、只今。もぐもぐ……。

 おお、これはうまい!」

 

 俺とオレサマは危うくずっこけるところだったが何とか堪えた。

 ウザイ君は何だ、ウザキャラというより天然系かな……? しかもイケボだし……。ある意味人気が出そうなキャラではあるが。そして、オレサマの方を見ると彼女は顔を真っ赤にしてプルプル震えていた。怒りか羞恥のどちらかだろう。どっちにしても怖い。

 

「もういいわ! 私帰る! ほら、馬を用意しなさい!」

 

 いや、馬を用意しなさいと言われましてもここは学園ですヨ? 

 騎乗馬なんてあるにはありますけど引き連れる訳にはいきませんよ。

 ファンタジーやメルヘンですけど。それにこの世界の馬は魔物の一種なのです。

「お嬢様、それはさすがに無理です」

「何が無理よ? 貴方、自分の立場を解っているの!? ノツモリダ家次期当主になるならばそれなりの工夫をしなさい!!」

 

 ……えぇ〜……理不尽過ぎじゃないですかねぇ? そう思いながら俺は、オレサマに睨まれたので仕方なくオレサマをおんぶして寮まで送り届ける事にした。しかし哀しくなるまでに平坦だな……。

 

「貴方……もしかして私の胸が貧しいなんて不埒な事を考えてないかしら?」

 背筋が凍った。バレてる……。

「そ、ソンナコトオモッテナイデスヨー。ホントデスヨー?」

「嘘つき!! 貴方、顔に出てるわよ!! しかも何で疑問系なの! ああ、情けない! これだから男は嫌なのよね!! 全く、貴方の姉であるジン様くらいにならなければ私は振り向かないわよ!! 分かったらもっと努力する事ね!!」

 

 はいはい、分かりました。漸く寮の入口だ。

 

「了解しました。良い夢を」

「ええ、貴方も」

 

 その後、オレサマを送り届けた後、俺は一人で寮に戻る。まあ……フルーツを地面にぶちまけなかっただけ他の貴族至上主義者よりはマシかもしれないな。

 と、気持ちを切り替えながら歩いているとミザリーちゃんがカウと話していた。

 

 NTRやんけ〜~~~!? 

 

 と、言うのは冗談としてザンテツじゃなくて貴族至上主義者に片足突っ込んでいるカウの奴がミザリーちゃんを諄くなんて意外だぜ。まあ、俺は他人の色恋沙汰に首を突っ込むつもりはないがミザリーちゃんはめちゃめちゃ塩対応だった。

 

「お断りします。私には心に決めた方がいるので」

「そう言わずに頼むよ……。僕だって本気なんだ! 君の事は何でも知ってる。君はいつも一人でいるけど寂しくないのかい? 僕はずっと君を見て来たんだ。君の煌めくような美貌と凛とした姿に憧れているんだよ。どうか僕のパートナーになってくれないだろうか……キラッ☆」

 

 おい、お前それ完全に口説いてんじゃねえか。ダメだよ、こんな可愛い女の子を困らせちゃ。あとキラッ☆を口で言うな。ウザイ君より更にウザいから。

 

「いえ、結構です」

「そこをなんとかお願い出来ないかな……? ほら、僕達ってまだお互いの事をよく知らないじゃないか……。だからまずは友達として付き合ってみようよ……」

「私がこの身を捧げるのはボン様だけです」

「うっ! ぼ、ボン様とは一体誰のことだい……? まさか、あの冴えない男ではないだろうね!? 君にはもっと相応しい相手がいるはずだ……ぐわっ!?」

 

 ミザリーちゃんの平手打ち……にしては強烈な一撃がカウの下顎に命中した。あれは武技の一つ『スタニングブロウ』。魔攻デバフ+麻痺という強力な攻撃だ。しかも人間特攻のおまけつき。オイオイ、瞬殺だよ。

 

「私の前でボン様を侮辱するな……!」

 

 ってミザリーちゃん! カップガード付きのマインゴーシュを抜くのはまずいですよ!! 

殿中でござる。

 

「ちょ、ちょっと待ってくれ……! そんな物騒なものを振り回したら危ないよ!」

 

 流石に武技『息根止』まで使ったらシャレにならんから! 下手したら死人が出るので俺は咄嗟にミザリーちゃんを羽交い締めにしようとした。

 が……。

 むにいぃっ♥とミザリーちゃんの胸をキャッチしてしまった。

 何やってんだ俺はぁぁぁぁ!! 

 

「あん♥ボン様……♥こんな人前でなんて……そんな強引な所もお慕い申しております♥」

「ご、ゴメンね。わざとじゃないんだよ……! ホントだよ!」

 

 何かトリップしてるけど大丈夫か? 

 しかも脇をロックして俺の手がミザリーちゃんの胸から離してくれないのだ! 

 

「また君か……! 厄介な奴だよ君は! って何をしている〜ッ!?」

 

 カウは自力で立ち上がると目ん玉が飛び出すんじゃないかって位驚いていた。すまん、うちのミザリーちゃんが、本当にすまねぇ。

 そら目の前でパイタッチがされていたら目を丸くするよね……。

「だが、このカウ・マッセ。欲しい物は必ず手に入れる主義だ。必ずや君を手に入れてみせるぞ! 覚えていろ〜!」

 

 いや、もう忘れたいです。

 

「ボン様、申し訳ありません。見苦しいところをお見せしてしまいました」

「いや、いいよ。それはそれと離してくれる?」

 

 傍から見たら従者にパワハラパイタッチ中に見える俺の方がよっぽど見苦しい。

 

「はい、かしこまりました。では失礼致します」

 

 やっと解放された俺は急いで自室に戻る。

 ふぅ……、とりあえずこれで一安心。しかし、ミザリーちゃんのおっぱい服越しなのに柔らかかったな……。

 いかん! 夜這いされた時の下着姿の記憶と合わさり言わばメド○ーア状態! 社会的に抹消間違いなしだよ! 

 心のメモリから消去するのだ! 

 3……2……1……ボカン! 

 よし、落ち着いたな……。

 そんなこんなで寮に戻ったのだが……。

 

 ー

 

「ただいま〜」

「よっ、おかえりハーレム王!」

「データの平均値より帰りが遅い様だが……何かあったか?」

「ふーんだ」

 

 相部屋から四人部屋+1となりにぎやかに帰りを迎えられた。

 面子は俺(ボン・ノワール)、ザンテツ、クオタ君、ユーシャちゃん、そしてミザリーちゃん。

 ユーシャちゃんは何だか不満があるのか、頬っぺた膨らませてそっぽを向く。自分以外に女の子が来たのが気に入らないとか……そんな安っぽい女の子ではないだろうけど。

 

「……怒ってる?」

「怒ってないし。普通だし……。

 あっ! ふーんだ!」

 

 思い出したようにそっぽを向き直すユーシャちゃん。何だろう? 可愛いんだけど……。

 

「そういやミザっちから聞いたけど、何か童貞君とトラブったって?」

 

 ザンテツはきいーっと椅子を回転させ、俺達の方に身体を向けて話しかけてきた。おい、その呼び方はやめてさしあげろ。あと、ミザっちってミザリーちゃんの事だよね? 

 

「ああ、うん。ミザリーちゃんがカウに絡まれていたのを助けようとしたらちょっとハプニングがね、ワハハ」

 

 まさかパイタッチしましたなんて言えやしない。ミザリーちゃんも話してはいない様だし。

「へぇ、やるじゃん。ボン君流石だね。ナガレイシだねぇハハハハハ!」

「ふむ。ボン氏は「義を見て為す勇気ある者」なのだな。データに入力しておくとしよう」

「でも、女の子が困ってたら助けるのは当然だよ。当たり前の事だよ」

「ボン様は素晴らしい方ですわ」

 

 ユーシャちゃんが塩対応なのが悲しい。仮にステータス開けたら爆弾がついてるよ。『コッチヲ見ロォ〜』って感じで! 

「それで、童貞君はしつこいのかい? もしそうならオレがぶっ飛ばしに行ってもいいぜ」

「いえ、不始末は私が……」

 

 ザンテツ! ミザリーちゃん! 得物を取り出して殴り込みに行く準備をするんじゃあない! 

 

「しかし、カウ氏には嘗ての実習で回復の支援を受けた恩がある。ここは穏便に済ませた方が良いのではないかな」

 

 さすがクオタ君! 流石このチームのブレーキ係! ブレイン役とリーダーは任せたよ! 俺はモブキャラとして影から支えるから! 

 

「そんなことより、次の実習の話をしようよー!」

 

 そんなことよりって……ユーシャちゃんの様子がちょっとヘンだな。俺をかばって、カウに喧嘩を売って泥を被ってくれたユーシャちゃんと同一人物とは思えない。やっぱりミザリーちゃんと同じで、他の子達とも仲良くして欲しいな。

 

「うむ。では次週の実習だが……」

 

 え、何? ダジャレ? いや違うな。

 クオタ君は真面目な顔で話してるし、冗談じゃないみたい。

 

「どうやら学園内の森林でゴブリンの討伐を行うらしい」

「マジでぇ!? 俺、ゴブリン苦手なんだよねー! 噂だとアイツら鬼畜じゃん! マジでねーわ! 愛の狩人たるザンテツ・キリステとして成敗してやんよ!」

「私は……う〜ん、わかんないや」

 

 ユーシャちゃんにしては歯切れの悪い言葉だ。彼女のイメージからして

『人を傷つけるモンスターなんて許せないよ! 私が皆やっつける!』って言いそうなものだけど。

「ゴブリンの討伐はゴブリンの弱点を知る事にも繋がる。ゴブリンの生態については調べてはいるが未知の部分も多い。我々はまだ学生だから独断専行や無謀な行動は控えるべきだろう」

 

 もう、クオタ君は先生ポジションが板についてきたね。このチームのリーダーとして本当に頼りになるよ。

 しかし、ゴブリンの討伐か……。

 最近魔物が活発化している気がする。何かの前触れじゃなければいいけど……。具体的にはドラゴンスレイヤーのリセットが想定より早まってるとかネ! 

 

 ー

 

 日々が過ぎるのは早いもので

 あっという間に実習日だ。

 森だというより大分蒸し暑い。

 なるべく日差しは避けよう。

 しかしここで大問題が……。

 

「貴方! 何故私のチームに参加しないの!?」

 

 チーム割が始まるや否やオレサマが俺に詰め寄ってきた。

 いや、見えている地雷にストンピングをかます馬鹿がいるだろうか、いやいない(反語)。

 

「あのさぁ、オレがお前のチームに入らないのは理由があってだな……」

「いいから来なさい! これは命令よ!」

「ぐはッ!」

 襟首を掴まれたままズルズルと引きずられていく俺。

 ヤメロー! シニタクナーイ! シニタクナーイ! 

 

「なっ、何するんだ離せ! オレはまだ死にたくない!」

「黙りなさい! 私と一緒にいるのが嫌だと言うの?」

「そういう訳では……」

「それなら決まりね!」

 

 くそ、明るい表情になるととびきりの美人になるのはルールで禁止スよね。悪役令嬢はルール無用だろ? 

 やっぱり怖いスね異世界転生は。

 

「何を一人でブツブツ言っているの! そんな事で私の夫になれると思ったら大間違いよ!」

「「「おっしゃる通りでございます!」」」

 

 キラワレモン三兄弟もいるのか!? くそっ! 俺の人生オワタ! 

「ふふふ、よろしい。では参りましょう。あ、皆さん! ご機嫌よう! 

 今回も私がトップを取りますから思う存分地固め代わりに地団駄を踏んでくださいませ! おーほっほっほ!」

 

「「「おーほっほっほ!!」」」

 

 三兄弟も笑うんかい!! 

 何でかなァ! オレサマちゃんは何で自分から敵を作るのかなァ!? 

 周りの生徒が舌打ちしてるよォ! 

 泣けてくるなァ! 煙草が吸いたいなァ!! 

 

 ー

 

 そんなこんなで実習開始。

 今回の実習場所は森の奥にある祠。

 学園を守る神様を祀った神社みたいなものだ。しかし今はゴブリンが住み着いているらしい。

 ゴブリンに負けるとかどんな神様なんだよ! まさか姫騎士の神様とか言うんじゃないだろうな! 

 

「ゴブリンは一匹見つけたら30匹はいる」って言われてるくらい繁殖力が高い。そして、そのゴブリン達は集団で行動する習性がある。

 つまり、ゴブリンの討伐はコロニーを叩く前に、出来るだけ数を減らしておきたいということだ。

 まあ、今回は5人でパーティを組んでいるし、流石に一人頭100体倒すなんてことはないだろう。

 しかし、どうにも不安が拭えない。

 

「わっせ、わっせ」

 

 三兄弟は輿を担いでオレサマちゃんを運んでいる。大変だな……。

 俺は殿を担当し、魔族性の探知魔法『サーチャー』を使って周囲を警戒している。探知魔法のレベルを上げることで、周囲の生物の位置や大まかな強さを把握することが出来るのだ。ジン姉さんの魔導書を休日返上で読んだかいがあったぜ。

 ちなみに、サーチャーは向こうからも探知できるのでレベル差がある場合は向こうから逃げていったり、逆に襲い掛かられる事もあるので注意が必要だ。エンカバグも良し悪しだネ。

 

 ……どうやら前方に10体ほどゴブリンがいる。距離は付かず離れず、という辺り偵察班といった所だろうか? 奇襲を仕掛けるべきか、それとも様子見すべきか。

 

「おい、前方からゴブリンの群れが来るぞ。気をつけろ」

「ふん、ゴブリンなどを恐れる必要は無いわ。私に任せなさい!」

「いやいやいや、ちょっと待って下さい。ゴブリンは数が多いんですから、ここは慎重にいきましょう」

「がやがやと喧しいですわ! 

 そんな弱気では私の力を学園に誇示する事はできないでしょう!!」

 

 ……う〜む。こりゃ根が深いな。

 恐らくオレサマちゃんは物やお金でしか両親の愛情を受けてこなかったのだろう。彼女は自分の価値を両親に示すために、常に一番でなければ気が済まないようだ。

「分かったよ。でも、危なくなったら逃げるからな」

「はあ!? 貴方、私がゴブリン如きに遅れを取るとでも思っていますの!? それに、この私がゴブリン風情を恐れて逃げ出すなんて、プライドが許さないわ!」

 

 そんなプライドは犬の餌にでもしてほしい。そもそもその考えはプライドじゃなくて傲慢っていうんだヨ! 

「ああ、そうですか。分かりましたよ。では、オレは後ろの方を警戒していますね」

「フン! 最初から素直に従っていれば良いのよ!」

「「「おっしゃる通りでございます!」」」

 

 こうしてオレ達の戦いが始まった。

 輿からゆるりと降り立つオレサマちゃん。その姿はまるで聖女様の降臨だ。輿に括り付けていた棒に魔力を帯びさせると光の戦旗へと姿を変えた。

 ……この装備、という事はオレサマちゃんのジョブはプリンセスだな。

 因みに俺はマージ。

 しかたねーだろ悪役貴族なんだから。

 

「ほーっほっほっほ! ゴブリンなど頭を潰せば死にますわ! 貴方達、突撃なさい!」

「「「かかれーっ!」」」

 

 いや、掛け声はいいから突撃してくれよォ!! 君ら良い装備してるよね! 明らかに魔法銀(ミスリル)シリーズだよねぇ! 

 

 チラチラとこちらを見るな! 

 何で俺が先頭で突っ込まなきゃいけないんだ! マージですよ! しかも魔属性しか適正ないから! 

 デバッファーだから! 

 関係ないから! 関係ないから! 

 

「くそっ! もういい! やってやる!」

 覚悟を決めたオレはゴブリン達の方へ駆け出した。前方から矢だの石だのが飛んでくるが、伏せで回避する! 

 ゴン兄さんとの特訓のおかげですぐに伏せる事ができたがオレサマちゃんのバフ効果もあるのだろう。

 

『マジックアロー!』

 

 俺の数少ない(というか今はこれしかない)基本魔法が前衛ゴブリンの膝に刺さる。

 うそ……俺の攻撃魔法、弱すぎ! 

 

「グエー!」

「オボエテロー!」

 

 しかしゴブリンの戦意を挫くには十分だ。今はこれでいい。

 と、考えていたら頭に激痛が走る! 

 何か棒のような物が後頭部に当たっている。

「いてててて! 何すんだよ!」

 振り返るとオレサマちゃんの戦旗が俺の頭を小突いている。

 ……縞パンってこの世界にも有るんだなぁ。それはともかく、オレサマちゃんの顔は真っ赤である。

 え? まさか……。

「あああ貴方なんて事を! 私のパンツを見た罰ですわ!」

「不可抗力だよ! そもそも伏せてる俺の頭を小突かなきゃこんなことにならないし!」

「何ですって! ゴブリンは逃がすし私のぱ、パンツは覗き込むし! この役立たず! 穀潰し! ボン・ノワール!」

 

 オレサマの罵倒が止まらない。

 個人名が悪口になるってどんな理屈なんだよ! 

「あのな、俺は逃げられたんじゃなくて逃したんだよ!」

「何ですって! 貴方、モンスターに情けを掛けるなんて、それでも人間ですの!?」

 

 オレサマちゃんは更に興奮気味にまくしたてる。いや、寧ろ人間だから情けをかけるのではないか。

『ヒャッハー! 新鮮な経験値だーっ!』とか

『殺モン上等! 俺たちゃ無敵の

 未成年様だぜー!』

 なんて人の形をしたバケモノだよ。

 

「見逃したワケじゃなくて

 ちゃんと理由はある。

 退却した連中は必ず巣に戻る。

 それも正面からじゃなくてあいつらだけが解る秘密の抜け道からだ。

 そこを通れば敵の本陣を叩けるからな」

 

 休暇の自主鍛錬のときに、ジン姉さんから教えてもらった戦術の基本。

 戦いとは敵を倒すことだけが目的ではなく、如何にして目的を達成するかが遥かに重要だ。

 逃げた敵は殺さなくてもいいが追跡は本隊と合流するか散り散りになるまで怠るな。ってさ。

 

「「「なるほど」」」

 三兄弟も納得してくれたようだ。

 

「ふ、フンだ! そのくらい私だって知っていましてよ! あの子達がピンときていないようだったから仕方なく貴方に解説させるために泥を被っただけですわ!」

 

 うん、そういうことにしとこう。

 オレ達はゴブリン達を追いかけると、小さな穴を見つけた。

 多分ここから合流したんだろう。

 ややヒョロ目の男か女の子ならギリギリ入れるかもしれない。

 ……。

 三兄弟は基本ムキムキだからなあ。

 顔はイケメンだからバランスが悪い。二人で入るにしても、

 半ば縛りプレイジョブのプリンセスとしがないマージの二人じゃなあ。

 ……うん、捕らえられてぐへへ案件まったなし! 

 ここはこの穴を煙で燻して、破壊工作でもするしかないかなあ……。

 しかし、中に他のパーティーがいて戦闘中とかだと面倒だなあ。

 まごまごしているとまたしても後頭部に戦旗が振り下ろされる! 

「何をしていますの! 早く入りなさい!」

「いや、ちょっと待ってくれよ。オレはマージなんだ。この穴に入るには……」

「言い訳は聞きません! 貴方はノツモリダ家の婿でしょう! さっさと行くわよ! ついてきなさい!」

 

 と言って躊躇いもせず穴に飛び込んでいった。なんなのこの子!? ブレーキが無いの! どういう教育受けてきたの!? オレは諦めの境地でオレサマちゃんの後を追った。

 ……暗い。

 俺は『ザミカル』の魔法で周囲を照らすと隅の方でゴブリン達がしくしく泣いていた。さっき逃げていったのとは違う群れだ。しかし、何で泣いているんだ? 全滅させられるとでも思ったのか。

 オレサマちゃんはそんなゴブリン達を見下ろしながら高笑いをしていた。

「ほーっほっほっほ! 哀れですわね! 平民を襲い、財産を奪う事しか能のないゴブリン如きが! 私の高貴なる血筋の前では虫ケラ同然ですわ!」

「違うゴブ! 財産は奪ってないゴブー!」

 ゴブリンの一頭が抗議の声を上げる。ん? こいつらは略奪に加担しているワケじゃないのか? そう言えば肌の色も枝豆みたいな緑だし、言葉も通じる。きれいなゴブリンってタイプだ。

「あら? では何故こんな所に?」

「それは私達が奴隷ゴブリンとしてここのボスに飼われているからゴブ……どこにいっても俺達は自由になれないゴブ」

「「「ゴブッ……ヨヨヨ……」」」

 ゴブリン達の泣き声がどんどん悲壮感を帯びていく。

 

「ふん、モンスターならば好き勝手に逃げればいいじゃない。契約なんて高尚なものが貴方がた低俗なゴブリンにあるわけないでしょう!」

「それが、俺達のボスはゴブリンキングじゃなくてラミアクィーンゴブ。誓約の魔眼の力で逃げたら石にされてしまうゴブ……」

 

 ラミアクィーンって……終盤のザコ敵じゃん! 序盤のボスよりステが遥かに強い分、タチが悪いよ! 

 学園の教師はちゃんと調査して! 

 

「はぁ……貴方がたが自由になりたいと言うのであれば私が助けてあげてもよくってよ?」

「どうしたのオレサマちゃん? 

 平民は貴族を媚びを売って平伏すべきだってこの間言っていたじゃん。

 調理スタッフにも水ぶっかけていたし」

 

 するとオレサマちゃんがキッと睨んできた。

 

「貴方は何も分かっていないわね! 

 あれはあのスタッフが学園の看板を背負っている自覚もなく、軽んじていたからですわ! それに貴族は平民から平伏される以上その生活を守る義務がありましてよ! 

 貴方はクジョ様から何を学んできたの!」

 

 ……なんとなく嬉しくなった。

 いや、マゾじゃなくてね? 今までオレサマちゃんの言動は、ただの悪役令嬢のテンプレと思ってたけど、最低限の貴族の誇りは持ってるんじゃないかって思って。

「分かったよ。それならオレサマちゃん。コイツらと一緒にラミアクィーンをやっちまおうぜ」

「ふふ、その位してくれなければ私の夫になる資格はないですわ」

「お、俺達も戦うのかゴブ!?」

 

 腕組みしながらオレサマは微笑む。

 いや、結婚する気無いから。

 それにゴブリン達も困惑するな。

 ノーリスクで英雄様にお任せして自由の身になろうなんて考えが甘いんじゃねえの? 

 




※プリンセス
ドレイクユニバースの職業の一つ。
バフ系統に優れるが
上級職に行けるのは終盤
大器晩成型の成長率
専用装備が貧弱
という三重苦がのしかかりRTAはもちろん
通常プレイでも罠扱いの職業

基本はファイター、マージ、スカウトが安定。
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