微妙系RPGのヘイト担当悪役貴族に転生した俺は、世界の破滅を防ぐためバーサーカー系女主人公ちゃんたちとノーマルエンドを目指す 作:ぷうち☆りん
視点は一度ボン・ノワールから離れ……。
「成程、ボンの成績に関しては特に目を見張るものはないようですね」
クジョ・ノワールはミザリー以外に学園に忍ばされているスパイからボンの素行を聞いていた。
「まだ入学して一月程です。結論を出すには早いかと……」
「確かにそうかもしれませんが、あの子には何か……特別な物を感じます」
(紅衣の宰相と言えども母親か。やはり凡庸と言っても我が子はかわいいという事か)
報告したスパイはクジョの人間臭い部分に触れ、若干彼女に親近感を抱いた。しかしそれは彼女へ人間として好意的な解釈を当てはめていたに過ぎない。彼女の次の言葉を聞いて彼女への親近感は恐怖と困惑に変わる事になる。
「だからこそ私の言葉がなければ何も話せず、私の判断がなければ何も決められない……そういう存在になって貰わねば困るのです」
何と自分の実子の才能を潰してまで自らの操り人形に育てようと言うのだ。その冷酷さと非情さは人間のものとは思えなかった。
「まあ、それは良いとして。
ボンとオレサマへの補習講師はどうなっているのです?」
「それは厳しい上にも厳しく……
ボン様と言えども挫折は間違いない鬼教官と呼ばれるサドゥーがふさわしいのでは……」
なるべくクジョへの嫌悪感を隠してスパイの教師は提案したが、クジョはまるで解っていないと言いたげに頭を振る。
「貴方ほどの者が人の心の機微が解らぬのですか。なまじ向上心に目覚めた今のボンに鬼教官などを当ててご覧なさい。『本気で自分の相手をしてくれる大人に出会えた』と一念発起してしまうに決まっているでしょう」
「は……はあ、そこまでの考えには至らず……申し訳ありません」
「ですから、根腐れを起こすには水と肥料をこれでもか、と与えてあげれば良いのです。立派なノツモリダ家を内から蚕食する馬鹿婿の完成というワケです」
(なんという女だ)
スパイの教師はクジョの邪悪極まる
笑顔を見て背筋に冷たいものが走る感覚を覚えた。
「ですから、講師はビルデに任せなさい。あの女ならばボンの様な子供を骨抜きにする術に長けているはずです」
「承知しました」
この様な邪悪な笑みを浮かべる女の言う事を素直に聞く事に抵抗を覚えつつも、教師はその提案を受け入れるしかなかった。
ー
まあ……何やかんやあって放課後に補習を受ける身となった俺とオレサマちゃんなワケだけど初っ端から大問題だった。
「はぁ〜い♥今日から貴方の補習を担当する事になったビルデ・グラマラスよん♥宜しく♥」
……何だこのお姉さん? 危ないクスリでもやってるんじゃなかろうか?
教師っていうかエロ動画に出てくる女教師モノの女優みたいなお姉さんが現れたんだが……。
所謂女魔道士を地でゆくような丸眼鏡と金髪を後ろで結わえているのはともかく、その上乳丸出し、尋常じゃねえスリット入りの改造制服は何なんだ?
「まずは質問なんだけど……何かある♥」
わざわざ流し目までして質問を受け付けなくてもよかろうに、何なんだ一体。
「はい! 先生は何で上乳丸出し改造制服なんて格好をしているんですか!」
「んもう! 可愛い事聞いてくれるじゃないのぉ〜。これはねぇ、私の趣味なの♥若い男の子って色々溜ってるんでしょ? だから、私がそれを解消させてあげるのよ♥」
そう言って胸元を強調するように腕を組んでポーズを取る。
デカァァァァイ! 説明不要!
って説明は必要だろうが俺!
「いや、そうではなくて……。
俺は補習を受けに来たんですけど……」
「硬いわねぇボン君は♥硬い硬い♥硬くていいのはアレだけよ♪」
ダメだ会話が成立しねえ。なんでこんな頂き女子系な人が女教師なんてやってんだ? 魔法学園は何考えてんだ? 魔法学園は婚活会場じゃないっての!
「あの、補講というのは何を?」
「うふふ♥大丈夫♥名前さえ書いてくれれば後は私が全部やるわ♥任せてちょうだい♥」
「……はい?」
いや、それじゃ補習の意味がない。
まるで意味が解らんぞ!
……まさか、クジョからの刺客か?
俺を堕落させて意のままに操ろうって魂胆なのか!?
「あら、どうしたのボン君? 顔色が優れないわね♥」
「いえ、何でも……」
いや、昼から何にでも♥がついている様な甘ったるい声と仕草で喋りかけられたら誰だって気分が悪くなると思う。
「そんな時はコレが一番効くわよ♥ちょっと元気が出るオクスリもあるから一緒に飲みましょう♥」
「いや、結構です」
「遠慮しなくて良いわよぅ♥ほら、お姉さんのおっぱい見ながら飲めばすぐにビンビンになるから♥」
ビルデ先生はぎゅむっと谷間を強調しつつ、その豊満なおっぱいの谷間にピンク色の小瓶を挿して見せつけてきた。そのまま飲めとでも言いたげだ。
……何か逆に腹が立ってきたな。
何というかバカにされているような気がしてきた。
「いい加減にして下さい!」
「きゃん♥」
流石に我慢の限界だったので、つい怒鳴ってしまった。ビルデ先生はと言うと大して驚いた様子もなく、ただニコニコしているだけだ。
「あらあら怒られちゃったわ♥でも怒ったボン君もステキよ♥でも無理は良くないわ♥私は貴方の味方になりたいの♥ノワール家の中で居場所がなくて肩肘張るなんて疲れるでしょう? お姉さんにだけは本音を話しても良いのよ♥」
「……」
「さあ、まずは深呼吸して落ち着いて……そして私に話してみて。
ボン君の心の闇を、ぜーんぶ吐き出しなさい♥」
成程、人生一周目の子供なら即落ちだわなこんな悪魔の誘惑。
けどこちとら過労死で転生してるモンで泥水も煮え湯もそれなりに飲んでいる。
「悪いですが、そういうのは間に合ってます。俺は貴女に話す事はありません。補習は0点でも欠席でも
構いませんから」
すると、ビルデ先生の目つきと雰囲気が変わった。いや、こっちが本性か? 女は魔物というし特にクジョの刺客なら尚更だ。
「あらあら……。ユーシャちゃん。ミザリーちゃん。それにオレサマちゃん……。ノワール家の三男坊だけあって女の子には不自由していないってワケね」
普通に喋れるんじゃねえか!
つくづく人を食った女だな……。
「でもユーシャちゃんは平民だから色々軋轢があって大変でしょうね。
特に貴族の女の子なんてヤキモチ焼きが多いんじゃないかしら?」
……コイツ、何を言っている? まさかユーシャちゃんに嫌がらせでもする気か?
「オレサマちゃんは……あの子も中々クセのある性格よね。
ワガママだし、口は悪いし、態度も横柄だけど……根は素直で可愛いところもあるわ。あの子が本当の意味で心を開ける相手はどんなタイプかしらね。案外キミよりカウ君の方がお似合いかも」
「流言飛語に離間分断ですか……。成程タメになる補習ですね」
遂、皮肉を言ってしまうが、ビルデ先生はクスクス笑うだけだった。
「あらあら、相手を怒らせたいなら言葉尻をとらえるより相手の自覚しているコンプレックスを刺激しないと。そういう意味ではボン君はまだまだ甘いわね♥」
「……」
俺は黙って退室した。
ユーシャちゃんとオレサマちゃん、ミザリーちゃんに何かするつもりなのは間違いないだろう。このまま放置すれば三人は学園生活に支障をきたしてしまうかもしれない。
バッドエンドを防ぐためというのもあるがあの子達を不幸にしたく
はないというのが俺の本音だ。
ノーマルエンドを目指すならユーシャちゃん以外はどうでもいいなんてクジョとまるで変わらねえからな。先ずは補習を受けているオレサマちゃんだが……。
「貴様ぁ! 誰が俯きながら走っていいと言ったあ!」
学園の外周で男の先生の檄が飛ぶ。
見るからに凶悪そうな顔つきで額から目を通り顎までにかけて傷跡のある武骨な男性だ。
余程深い傷だったのか眼帯をしている。
「何がプリンセスだ! ど男を顎で使って悦に浸りたい女王蜂気取りの戯け者が!」
「け、決してその様な……。私はノツモリダ家の娘として……」
「家名を持ち出せば誰も彼も傅くと思い上がるその性根が気に食わん! 3周追加だ!」
「……ッ!?」
「嫌か? 辛いか? なら尻軽の女王蜂らしくさっさと巣に戻れ。囲っている働き蜂共にでも慰めて貰うんだな!」
これは相当のスパルタだな……。
このキツさは並の男でも逃げ出すんじゃなかろうか。増して蝶よ花よと育てられたであろうお嬢様にはキツイんじゃなかろうか……。
だが、オレサマちゃんは俺の想像を越えてタフな少女……いや女性だった。
キッと前を見据え、再び走り出す。
あの鬼教官の言う通り首は下げず背筋を伸ばし、ただひたすら走る事に集中していた。
「辛かったか?」
「いえ、然程」
校門にもたれ掛かり、青ざめた顔をしながらもオレサマちゃんはそう答えた。
「うむ……」
鬼教官は頷いた後書類に判を押していた。恐らく補習は合格という事だろう。傍から見ていただけの俺だが何となくオレサマちゃんの努力が評価されたのは嬉しい。
「これは飽くまで独り言だ。返事はしなくていい」
水分補給を終えつつ、戦旗を杖代わりに自らの身を支えているオレサマちゃんに鬼教官は背を向けながら話を始めた。
「私は高貴だの、血筋が尊いだのと理屈を垂れて姿勢を崩す。そんなプリンセス……もとい指揮官になど誰もついてこないと心しろ。今日の補習はそれさえ解ればいい。以上だ」
「はい……サドゥー先生」
サドゥー先生はそのまま立ち去っていく。厳しいには厳しいが俺もビルデ先生じゃなくてサドゥー先生の方が良かったな……。
などと後方理解者面をしていたのが悪かったのかサドゥー先生が俺の方に振り向く。
「貴様、確かボン・ノワール……。
確かビルデ教諭の所で補習ではなかったのか?」
ジロリ、と俺を睨むサドゥー先生の百戦錬磨の眼力はまるで鋼の矢のようだ。
「えーと、それはですね……。
名前を書けばそれでいいと言われまして」
「何だと? 貴様、ふざけているのか?」
サドゥー先生の目が吊り上がり、今すぐにでも襲いかかって来そうだ。
「いや、本当に名前を書いただけでして……。
後はビルデ先生が全てやってくれると言っていました」
「フン。あの女のやりそうな事だ。
だが貴様はそれでいいのか?
ゴン・ノワール閣下とジン・ノワール女史の弟として恥ずかしいとは思わんのか?」
怒鳴るでもなく淡々と、威圧するでもなく正論を述べる。
相手が真剣なら俺も真剣に答えなきゃ駄目だ。生前は逃げてばかりだったがゲームの世界で位は真摯に向き合おう。
「恥ずかしいと思います……。
家柄に甘んじて努力しない人間にはなりたくないです」
「なら言葉ではなく態度で示してみせろ」
そんなワケで俺も学園の外周を走らされる事になった。
「……っ!」
「どうした? ペースが落ちてきているぞ! 貴様はオレサマ・ノツモリダの夫になるのだろう! そんな不甲斐なさで良くも妻を娶ろうと思ったものだな!」
「は、はいっ!」
「声が小さい!」
「はいぃ!!」
「もっと腹の底から声を出せ! その程度の覚悟で学園に入ってくるなど貴族を嘗めているのか貴様ぁ!」
怒声と共にサドゥー先生は教壇用の大定規で俺の尻を叩いた。
「ひぎゃあああっ!!!」
「なんだその情けない悲鳴は! それでも男か!?」
「お、お尻が……」
「まだ余裕がありそうだな。もう一本追加だ」
「そんなあ……」
結局俺は夕暮れまで走る事となった。キツいし、しんどいし、痛いが……悪い気はしなかった。
マゾになったワケじゃないけどな。
し、しかしメチャメチャしんどい。
腹は減っているのに何も口に入りそうにない、というか口に入れたら吐くぞこれは……。
「全く世話のかかる婿ですわね。
ウザイ、ムサイ、クサイ!
ボンを運ぶ担架を用意なさい!」
最後まで付き添っていたオレサマちゃんが三兄弟に指示を出し俺を運ばせる。意外と身内に対しては優しいタイプなのだろうか……。そんな事を考えながら俺はつい、微睡んだ。
ー
「え〜。そういうワケで今回の講義は合成魔法の取り扱いについて行う」
地獄の様な走り込みを終えた翌日の座学では我がクラスの担任であるモーロック先生による合成魔法の講義が行われていた。この間学んだ12属性のある意味での発展系。分かり易い所でいえば火と光を合わせて擬似的な聖属性を生み出すといった具合だ。
まあ……この「ドレイクユニバース」の世界では最初から聖属性の適性があるキャラに使わせた方が余程効率的だし、使い手が適性を持つ魔法同士でしか合成できないって制約もあるからゲームにおいてはあまり意味のない仕様だったりする。
しかし……だ。俺一人ならともかくユーシャちゃん、ミザリーちゃん、オレサマちゃん、ザンテツ、クオタ君とパーティーを組んでいる今はそういう所にも配慮しなければならない。原作のボン・ノワールみたいにデバフばかり撒いていればそれでいいなんてことはない。
ある意味、ゲームであってゲームではない世界に今の俺は生きているんだからな。
「先ずは誰か、手本を見せて貰おうかの」
皆が手を上げるなか俺は敢えて手を挙げずにやり過ごすべく気配を消す……俺は影、路端の石ころ、村人A……。
「そうだな……。ではボン・ノワール君、やってみたまえ」
な、何ぃ!? この先生はアレなの?
村に入ったら村人全員に話しかけ村中のタンスを開けるタイプ!? よりにもよって俺を選ぶとは……。
だが、悲しい現実を知らせねばならないが俺の判明している属性は魔属性しかないのだ。つまり一つの属性だけしかない。詰んだな……これは。だがこの状況を打破する方法が一つだけある!
「うおおおおお! これが俺の合成魔法!
「マキシマイズ・ドンムブ」!」
叫びは虚しくこだました……。
しかしなにもおこらなかった!
好きな方を選んでくれ!
いや、実際は全体化として発動しているのだが……。
「どういうつもりかねぇ?」
モーロック先生はスピードダウンしているとはいえ明らかに怒っていた。
「い、いやこれはですね……。
魔属性と魔属性を合成したいわば
スーパー魔属性なんですよ! (キリッ」
何とか勢いで誤魔化そうと思ったものの失敗してしまった。忽ちクラスが爆笑に包まれる。
「ギャハハハハ! こりゃ傑作だぜ! 流石は落ちこぼれのボン様! やる事が違ぇなぁおい!」
「ぷふっ……。くくく……。
ぼ、ボン様。さすがにそれはどうかと思いますよ?」
「ボン氏、それは魔術の広域化だ。
合成魔法ではない」
「え、そうなの?」
良く知らんクラスメートの嘲笑よりもクオタ君のマジツッコミの方が精神的にきつい! というかユーシャちゃんは知らんかったのか!?
「ばっかもーん! ボン・ノワール! お前は今日も補習じゃ!! 基本魔術書の全写しと反省文3枚!
転写などしようものなら退学じゃからな! いいな!?」
「は、はい……」
俺はがくりと肩を落として席に戻った……私は貝になりたい。
「全く……。ではカウ・マッセ君! 六属性を使いこなせる君ならば問題なく出来るハズだろう?」
うう、すっかりカウの奴が評価されるお膳立てをしてしまった……。
あいつが益々図に乗って俺にマウントを取ってくるのが目に見えている。
「え、僕ですか?」
「当たり前じゃろ! 君までボン君の様にふざけた事をぬかすなら君も落第させるぞ!!」
いかん! このままではモーロック先生の堪忍袋の緒が切れてしまうぞ。すっかり顔が真っ赤で茹でダコの様になっている。
「ええと……僕はその……」
あれ? 様子が変だぞ? てっきりコイツならノリノリでモーロック先生のリクエストに応えると思ったんだが……。
「わ、解りました……。
では水と火、そして光を合成する『オールクリア』をお見せします」
教室がざわめきに包まれる。
そりゃそうだ。『オールクリア』は上級も上級。耐性を無視してダメージを与えられる最強クラスの魔法なのだ。その分要求されるステータスは高いけど。
「では……『オールクリア』!」
杖を教壇に突き魔法陣を展開する。
モーロック先生は感心しながらそれを見て……目を剥いた。
「おおー……。ワシも30年教鞭をとってきたが……。まさか生徒にこうも容易く凌駕される日が来るとはなぁ……」
モーロック先生は半ば呆れながらも嬉しそうだ。クラスメート達も同様に驚いている。だが、俺はとんでもない事実に気づいてしまう。
魔法陣を展開し、カウの眼の前に赤と青の光弾が展開されている。赤と青……これは違う。
『オールクリア』の時に現れるべき光弾は赤、緑、青の三つなんだ!
しかもモーロック先生はこの事を知らないらしい!
仕方ないけどな! 使い手が10人もいないとされる伝説級魔法だもん!
終盤の隠しショップじゃないと魔導書すら買えないし!
しかし失敗となると暴走した魔力が爆発を起こすというお約束!
爆発オチなんてサイテー! なんてワケにはいかない!
カウは気づいてるのかいないのか、魔法を発動させようと光弾を重ね合わせた。
忽ち紫色に変貌し、バチバチッと明らかにヤバそうな音が響き渡る。
止むを得ない! 俺の評価が更に下がるが緊急手段だ!!
「『マキシマイズ・ディスチャント』!」
魔属性の高位魔法である魔術を打ち消す術式を放ち暴発を防ぐ。
と、言っても『オールクリア』がどういうエフェクトによって発動するのかなんて俺を除いて誰も解らない。故に、俺が意図的にカウの魔法を妨害、または破壊したように見える。
「おお……。なんという……。
ボン・ノワール君。君はやはり只者ではなかったのだな……。ワシの目は節穴だったようじゃ」
あれ? まさかモーロック先生の中で俺は大出世してしまったのだろうか? よし、異世界転生でお馴染みのあのセリフを今解き放つ。
「あれ? 俺また何かやっちゃいましたか?」
さもHBの鉛筆をボキッと指で折ったかの様に大したことないだろ? というオーラを醸して言うのがコツ! これなら大抵の相手は納得してくれる。
「うむ……ボン・ノワール。君はワシの予想を越えて……最低最悪の生徒じゃ!
失敗した腹いせに他の優等生の足まで引っ張る真似をするとは!! バカモン! バカモンが! 貴様はこの学校始まって以来のバカの王様じゃ!!」
モーロック先生は大激怒。
俺は涙目で「すんませんっしたー!」と土下座する他なかった。周りの嘲笑う声が耳と背中に刺さる。
「ま、まあまあ先生。彼を許してやって下さい。魔が差す事は誰にだってありますよ」
カウは咄嗟にフォローを入れた。
まさかコイツ……失敗したって直前で気づいたんじゃなかろうか?
……って駄目だ駄目だ!
そうやって人を疑うのは良くない!
「う、う〜む……。君程の優等生がそう言うのであれば……これ以上ボンを責めるのは止めにしよう。
だが、ボン・ノワール! お前の反省文は10枚に追加じゃ!!」
「ええ!?」
「ええ、ではない! 当然の報いじゃ! このくらいの罰を受けなければワシの……いや皆の気が済まんわい! いいな!?」
「は、はいぃ……」
こうして俺は追加の反省文を書く羽目になったのだ。トホホ。
ー
ルームメイトの皆が寝静まる中、
俺は別の部屋で反省文を書いていた。何枚も重ねて書いていくうちに眠くなるが、ここで睡魔に負けると反省文の意味がない。
「ふぅ……。やっと書き終わったぜ……」
しかし……あんなにこき下ろされるなんてなあ……。
『助けない方が良かったんじゃないか?』
『恩知らずめ!
恩知らずめ!!
恩知らずめ!!!』
『ふざけやがって……!
人の好意を……どいつもこいつも!』
頭の中に呪詛と怨念に満ちた言葉が響く。クソ。弱い心に支配されそうになっている。人肌が恋しい。慰めて欲しい。癒やされたい。愛して欲しい。支配したい。思い知らせたい。そんな欲望が溢れ出てくる。
「……っ! ぐあああっ!」
思わず頭を掻きむしり、机に突っ伏してしまう。傍から見たら病院に運ばれた方が良いレベルでおかしいだろう。
「ボン様?」
「!?」
うわあ! びっくりした! 幻聴かと思ったらミザリーちゃんだった。
「どうされましたか?」
「ああ……いえ……何でもありません。ただ少し疲れただけさ……」
「左様ですか……」
気まずい沈黙が流れる。彼女は黙っているが何となく気遣ってくれているのが伝わってくる。
ずっと部屋の外で
「なあ、ミザリーちゃん。俺って皆が言う程下らない人間かな」
「え……?」
「ああいや……ごめん。変な質問だね。忘れてくれ」
俺は何を言っているんだ。こんな事を言っても困らせるだけだというのに。彼女が俺……もといボン・ノワールのメイドである以上否定なんて出来ないのにな。
「……私は貴方に救われた身です。ですから貴方がどの様な方であろうとも私にとっての『主』は貴方だけです」
「……そっか。ありがとう」
俺は彼女の優しさに感謝しつつ彼女と一緒にユーシャちゃん達の眠る部屋へと戻った。
色々な事がありすぎて疲れ切っていたのか、その時の俺は背後からビルデ先生、いや、ビルデ・グラマラスが監視していた事を知らなかったのだ。
Qボンの心の闇なんですか?
Aドレイクスレイヤーのスカウトの声です。