Ghoti' 前世で読んでたガチ競技系世界に転生してバーチャル配信者達の師匠になった   作:ルシエド

15 / 26
西暦2059年4月14日(月) 21:00

 善幸は教え子3人のタイプを大まかに把握している。

 前世で見た文章を基点に、善幸は3人を3つのカテゴリーに振り分けていた。

 

 不寝屋まうは実況型。

 リアクションが派手でツッコミがキビキビとしていて、それでいて感情豊かな精神性がRPGのストーリーやキャラの心情に対する深い考察を垂れ流し続ける、RPGなどの実況プレイに向く気質。

 

 アチャ・東郷は対人型。

 他プレイヤーと競い合うゲームでキレのあるプレイで魅せるタイプであり、ポシビリティ・デュエル以外の対戦ゲームをかなり配信しているのを善幸も確認している。その真価がポシビリティ・デュエルでどう発揮されるかは未知数だ。

 

 そして、伊井野いのりは雑談型。

 無限にゴールの無いトークを回すタイプ。

 そんな彼女にとってのホームとは当然ポシビリティ・デュエルではなく、牧場を経営するゲーム・街を作っていくゲーム・自由に家を作るゲームなどである。

 

「せんせ~これインストールして~」

 

「分かった」

 

 いのりに勧められるまま、善幸はストアで指定されたゲームを購入する。

 

 ゲーム名は『ワールドクラフトビルダーズ』。

 

 素材を集めて物を作り、隣国の侵略を物作りで阻止して世界に平和をもたらすストーリーモード、自由に土地・街・城・基地なんでも作って遊べるクラフトモードの両方で人気が高いクラフトゲームである。

 

「せんせ~ログインしてついてきて~」

 

「分かった」

 

 ワールドクラフトビルダーズは、ポシビリティ・デュエルとある程度の互換性を持たされた、この時代では比較的一般的な仕様のゲーム。

 善幸はアバター作成の手間をかける必要もなく、YOSHIのアバターをそのまま使うことができた。

 不正防止用のアカウント作成もすっ飛ばし、ポシビリティ・デュエル用アカウントでログイン、同様にログインしたいのりに先導されて行く。

 

 辿り着いた場所は、混沌だった。

 

「ついたよ~せんせ~」

 

「うお……」

 

 善幸は、今まで色んな場所を見てきた。

 世界中の色んな都市を回って各国の強者と戦い、大会で公式のマップを駆け、万を超えるユーザービルドのダンジョンで戦ってきた。

 

 それらのほとんどには、『計画性』があった。

 『正気』と言っても良い。

 「草原」や、「遺跡」や、「近未来」や、「ぐちゃぐちゃ」や、「不規則」など、どんな形であっても『これを作ろう』という計画性があった。

 

 だが、此処にはそれがなかった。

 人類史最大級に計画性が無かった。

 『混沌を作ろうとした』フィールドよりもなお無秩序。

 正気の人間が好き勝手にやった結果として、限りなく正気が無くなった混沌がそこにはあった。

 

「……」

 

 まず、入ってきた人を迎える門。

 下半分にゴテゴテと宝石が飾られている。

 しかし何も考えず宝石を付けまくった結果か、宝石の上に宝石がくっつけられ、うねうねと触手のように宝石オンザ宝石のぐねぐねタワーが生まれ、四方八方にそれが伸びていた。

 リレー制作物だったのか、明らかに門の上半分は別の人間が作っており、上半分のいたる所から植物と花が生え放題になっており、何故か花弁の隙間にこれでもかと日本刀がねじ込まれて固定されていた。

 

「……」

 

 大きな壁1枚だけ作って放置された巨大ビル。

 その周囲では常に爆発と再生を繰り返す大文字山が4つ。

 大文字山から吹き出し流れ出したマグマを使って、自動で生える草を食って自動で繁殖する牛が自動で焼け死に、焼け死んだ牛を自動感知した自走キッチンがそれを回収してステーキを吐き出す。

 そこにあるのは、海へと向かって流れて行くステーキの川。

 

「……」

 

 ハイセンスな住宅街があり、その向こうにおふざけで建てられたであろう、街を脅かす超巨大な怪獣の立像があった。

 超巨大な怪獣立像は極めて高い造形美で作られていたが、その足元には小さな怪獣の像が数十個建てられており、その多くが小学生向けアニメのようなキュートでポップな造形をしていた。

 

 その後方に、後から建てられたであろう怪獣を狩る人型ロボット像の群れ。

 その後方に、ロボットの群れをスクラップにしようと迫りくる動物型重機殺人マシーン像の群れ。

 その後方に、手作りの温かみに溢れるゾンビ組体操軍団の像の群れ。

 その後方に、十二支の立像が並んでいて、更にその後方に実際に遊べるゲームセンターが何十と……と続いていく。

 

 何故か永遠に背後を取り続ける立像達。

 

「……」

 

 門の近くから見える範囲に、地下の大規模ダンジョンへの入り口があった。

 モンスターの自動発生とアイテムの自動供給も組み込まれた、平均攻略時間1時間ほどのダンジョン。

 それだけならいいのだが、明らかにセンスが異なる他人が後から追加したであろうものが大量に散見される。

 

 入り口の左右に設立された巨大な桃太郎と金太郎の像は作った人間の趣味か。

 ダンジョンの周囲には自動ベルトコンベアがいくつも設置されており、うっかり踏むと地下ダンジョンの入り口の中に放り込まれるようになっている。

 斜め上を見上げれば謎の建造物が空中に浮かんでおり、夕方になると太陽との角度が一致し、地下ダンジョンがある辺りの地面にダンジョン製作者のファンマークが浮かび上がるようになっている。

 これもまた、誰かが作って、他の誰かが便乗して何かを作って付け足した、後付けの塊だ。

 

「……」

 

 計画性の虚無。

 目標とする形の欠如。

 自由に好き勝手にやっていいという普及思想。

 一部はめちゃくちゃで、一部は整理整頓され、一部はハイセンスな建築物で埋められ、一部は悪ふざけにしか見えない何かで埋め尽くされている。

 

 数十人、あるいは数百人の人気者が、『好きに作っていいよ』と言われた結果生まれた世界。

 低い技術で精一杯作られたもの、高い技術の神業で作られたもの、他人の建設などを見て真似して作られたもの、それらが世界を埋め尽くしている。

 

 YOSHIは、溺れそうな量の『作ってる時が一番楽しい創作』の洪水に、全身丸ごと飲み込まれたような気分であった。

 

「エヴリィカ新鯖へようこそ~」

 

「新鯖? 旧サーバーもあるのか」

 

「最初の鯖があっていつからか初期鯖って呼ぶようになって~、容量が一杯になったから次に作ったのを新鯖って呼んでたんだけど~、その新鯖が容量一杯になったから新しいサーバーを作ってそれが新鯖って呼ばれるようになって~、それからまた容量が一杯になって今のサーバー作ったから"今の新鯖"みたいな呼び方してる~」

 

「名称まで計画性がねえ」

 

 つまり、エヴリィカのワールドクラフトビルダーズサーバーには、初期鯖、新鯖、新鯖、新鯖(現行サーバー)の4つがあるということになる。

 

 こういった『界隈で慣例的に皆がそう呼んでてそれで困らないし誤解も生まれないからそのまんまにしている呼称』は、いつだって外部から来た何も知らないニュービーにツッコまれるものである。

 ややこしくねえか、と。

 

 YOSHIが気まぐれに顔を横に向けると、『モールガン拠点こっちに移動しました☆』『拠点爆破されたのでこっちに拠点作りました☆』『偉大なる街計画のために拠点を消しました、空を目指してください、モールガンです☆』といった看板が乱立しているのが見える。

 

 あまりにもややこしい、溺れそうな乱雑さの洪水。

 

「エヴリィカ鯖はね~エヴリィカのVliverしか入れない場所なんだけど~エヴリィカの皆が色んなものを作るから~いっつもこんな感じなんだ~」

 

「なるほど」

 

「ポシビリティ・デュエルとの共有化機能も入ってるから~あっちで使ってたスキルも全部そのまま使えるよ~」

 

「ん? お、本当だ。これなら色々とトレーニングの場としても使えるのか……」

 

 少し考え始めたYOSHIの横で、いのりが微笑む。

 

「じゃ~、配信始めるね~」

 

さあ、遊ぼうか(Let's hang out.)

 

「……うん、遊ぼうね(Let's hang out.)

 

 セミロングの髪を手櫛で整え、表が茶で裏が明るい紫で出来た髪をなびかせる。

 ミニスカートとスリットが多く見える黒白青のメイド服の裾・襟・袖を正して、服全体をピシッとさせたら準備は完了。

 全身を飾る賢者の石をカチャリと揺らして、小柄な体に丸顔丸目を備えた小動物的美少女が、陽気に微笑む。

 

「は~い。月曜日の夜からいのの~。エヴリィカ4期生、伊井野いのりだよ~。昨日も楽しく、明日も楽しく、今日も楽しかったらいいね~? うり坊の皆~、週明けの一番行きたくない出勤や登校お疲れ様だぜ~! えらいよ~!」

 

________________

□いのりへのコメント~▽   ︙

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

○まうちゃんこんばんわ~

○いのの~

○待ってたよこの時を

○ワークラコラボきた

○いのの~

 

 

 あっという間に配信同時接続者数が1万、2万と伸び、止まることなくどんどん伸びていく。

 コメントも凄まじい勢いで流れていくので、YOSHIは視界に共有してもらったコメント欄を読むことを早々に諦めた。

 

「今日はせんせ~がいのりの配信に来てくれました~、普段の特訓だけでもお世話になってるのに誘ったらすぐ来てくれた聖人だよ~! 聖人はいい人って意味~」

 

「えー、あー、リスナーの皆さん? 今日はよろしくお願いします。初心者なので伊井野いのり先生に教わりつつ、とりあえず自分にできることをやっていきたいと思います。何かリスナーの皆さんを不快にさせることもあるかもしれませんが、それは基本的に自分の無知のせいなので、それを理由にコメント欄を荒らすなどないようお願いします」

 

 あらかじめ考えてきた開幕挨拶の文章をそのまま口にし、YOSHIは配信画面越しにリスナーに向けて軽く頭を下げた。

 

________________

□いのりへのコメント~▽   ︙

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

○YOSHI~~~

○いのちゃんをよろしくお願いします

○今日はYOSHIを見に来た

○必要ないくらい礼儀正しいな……

○いのちゃんも大丈夫かな

 

 

 ちゃんとした挨拶をして礼儀正しくしたのはYOSHIだったが、リスナーの反応から『今後炎上する気配があるかどうか』を正しく見極めていたのは、笑顔でコメントを横目に見ているいのりの方だった。

 

「せんせ~はワールドクラフトビルダーズはやったことがない~、どころかポシビリティ・デュエル以外のゲームをほとんどやったことがないそうです~」

 

「そもそも競技性が高くて世界的に一番人が多いゲームを選んだだけだからな。野球のゲームとかが流行ってたらそっちをやってたと思う」

 

「わぁ~、衝撃発言~。もしかして~、ゲームだけじゃなくて漫画とかアニメとかも全然摂取して来なかった人ですか~」

 

「興味はあまりない」

 

「休日とかの過ごし方は~?」

 

「研究と練習」

 

________________

□いのりへのコメント~▽   ︙

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

○仙人ですかね

○本当に現代人?

○困った…イメージ通りだ…

○令和生まれの爺でもそう居ないレベル

○いのちゃんがもうワークラ先輩になるなんて

 

 

「身近な人間が買ってきたものなら手慰みに手を出すことはあったけどな。『私が私を好きになるための、たった一つの冴えたやり方』も部室にあったから手を出したものだったし……」

 

「へ~、知らない作品だ~」

 

「……まあ、自分から見たり読んだりはしにいかないし、買いに行くこともない。国民的アニメなら本編は見てないが名前は知ってるってくらいだ。かといって別に娯楽に差別意識があるわけじゃない。それぞれの人生の楽しみ方はそれぞれだしな」

 

「今度わたしのチャンネルでせんせ~と同時視聴する名作映画・名作アニメの募集するね~」

 

「え? 何の話?」

 

________________

□いのりへのコメント~▽   ︙

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

○名作挙げまくろうか

○2040年代名作見てないのもったいなさすぎるよ

○いのちゃん節だ…

○この世界チャンプ同時視聴とかするんだ

○えー何からがいいんだろ

 

 

 困惑するYOSHIをよそに、いのりはガンガンと話を進めていく。

 

「今日はね~、2人でここにせんせ~の家を建てようと思います~!」

 

「……!? 俺の家!?」

 

「ようこそエヴリィカへ~。今日作るのはせんせ~のマイホームです~。ここを拠点に気が向いた時にエヴリィカ新鯖を堪能下さいませ~」

 

「いや……色んなことを経験してきたが……家を贈られるのは初めてだな……」

 

「へっへっへ~。どうせその内せんせ~の家は皆が作ってあげようとするから、いのりちゃんがファーストマイホームを作って差し上げるのだ~」

 

「どういう文化の世界?」

 

「初家プレゼントはわたしのもんだぜ~」

 

「どういう早い者勝ちの論理?」

 

「普通の家とかっこいい家のどっちがいい~?」

 

「普通の家で」

 

「わかった~、かっこいい家でいきます~!」

 

「その4つある耳は飾りか? 獣人Vliver」

 

 YOSHIの手元に、いのりからデータが送信される。

 それは家の設計図であった。

 家の良し悪しなど分かるはずもないYOSHIでも少し「おっ」となる出来の、洋風モダンベースに洋風ファンタジーの建築物の特徴を混ぜ合わせた独特ながらも洗練された家屋の設計図。

 

 ワールドクラフトビルダーズは素材を集め、四角ブロック・丸ブロック・三角ブロックなどに固め、それらを素材に様々なオブジェクトを生成し、ブロックとオブジェクトで作りたいものを作るゲーム。

 土を集め、土四角ブロックにし、火を使ってレンガを作り、レンガを加工して暖炉を作り、レンガを削って石像を作る。

 鉄を集め、鉄三角ブロックにし、鉄から大砲を作り、鉄の柵を作り、全てを組み合わせて要塞の壁を完成させ、内側にちんまりとした自宅を作る。

 そういうゲームだ。

 

 設計図とクラフト手順さえ分かっていれば、時間をかけることでプロでもアマでも同じものを作り出すことができる。

 ゆえに平等で、ゆえにクリエイティブな発想の価値が他のゲームより高くなる。

 それがクラフトゲームの醍醐味である。

 

 いのりがクリエイティブな方向に優れているがために生まれた設計図が、設計図の通りにしか組めないであろう初心者のYOSHIを牽引し、その作業レベルを引き上げてくれるだろう。

 

「……」

 

「とはいえ~、世界チャンプと黙々とクラフトしてるのも味気ないよね~? 期待に応える~、一味加えるいつものいのりちゃんがやって来たようり坊(リスナー)のみんなぁ~」

 

「え? 今必死に設計図覚えてるとこなんだが」

 

「なので~」

 

「待て、まだ設計図を覚えてない」

 

「じゃじゃじゃじゃ~ん!」

 

 いのりがどこからともなく取り出した大きなボードをドンと置いたので、YOSHIは無表情なまま面食らう。

 

「バーチャル配信者への100の質問~! いぇ~! どんどんどん、ぱふぱふ~」

 

「なにこれ」

 

________________

□いのりへのコメント~▽   ︙

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

○出た

○出た

○い つ も の

○いのちゃんらしい

○えっなにこれ

 

 

 そう、それは、トークが苦手なVliver、トークに困ったVliverの虎の巻。

 

「ここには~、100の質問があります~! これに答えることで、Vliverとしてのプレゼンテーションとプロモーションを行うことができるのだ~! 何を話したらいいか分からないVliverも安心~」

 

「……? 自己紹介がプロモーション……?」

 

「Vliverは~……なんだろ? 『自分そのものが最大の商品』? みたいなものだから~、自分がどういうものなのか~、自分にどのくらい見てもらえる価値があるのか~、そういうのを自分で語っていくのだ~」

 

「……」

 

 YOSHIは自分ならどう語るかを考え、そして。

 

「…………………………………………苦手だな」

 

 ()()()()()()()()()ということの難しさを予感し、絞り出すように言葉を吐いた。

 

「だいじょぶだいじょぶ~、わたしも居るから全然だいじょぶだよ~!」

 

 いのりが『容量無限ボックス』を取り出し、溜め込んでいた資材から建築に必要なものをポンポンポポポンと並べていく。

 YOSHIがいつでも使えるようにするためだ。

 並べられた資材を確認しつつ、YOSHIはパパっと手持ちのスキルを組み直す。

 

「リスナーの皆さんにはスキルを開示しておきます。作業するなら戦闘用スキルセットは使い途が無いでしょうし」

 

 

【名称:ゴムゴムの俺】【形質:手足が伸びる】

破壊力:0

絶対力:0

維持力:10

同調力:0

変化力:20

知覚力:0

 

【名称:エアステッパー】【形質:空中に足場を作る】

破壊力:0

絶対力:0

維持力:20

同調力:0

変化力:10

知覚力:0

 

【名称:センスコピー】【形質:肩に触れた人間の特定センスを数値相当にコピーする】

破壊力:0

絶対力:0

維持力:3

同調力:9

変化力:9

知覚力:9

 

 

「分かりやすいように記述しましたが、これがつまり『状況に合わせたスキルセット』というものです。自分に合わせるか、仲間の構築に合わせるか、流行りの環境に合わせるか……スキルセットは何に合わせるかが重要、ということだけ覚えておけば大丈夫だと思います」

 

「ちょっと木材足りないな~」

 

「あのへんのでいいか?」

 

 YOSHIは腕をぐいんと伸ばし、遠くの巨木を引っこ抜き、ゲーム判定で木材化したそれをいのりの横へそっと置いた。

 

「おお~ありがと~気遣いの世界チャンプだ~」

 

________________

□いのりへのコメント~▽   ︙

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

○適応が早い

○勉強になります

○本当にいつも状況に爆速で適応するな…

○スキル使い建築だ、あんま見ないやつ

 

 

「せんせ~この万能杖を使って~資材の加工から建築の補助まで自由自在だぜ~」

 

「ありがとう」

 

 ぽーんと、いのりがステッキを投げる。

 いのりのノーコン投擲で明後日の方向にすっ飛んでいった万能ステッキを、空中に作った空気の足場を走ってキャッチ。YOSHIはそのまま、軽やかに着地した。

 

 

 

【01.お名前は?】

 

「YOSHIと名乗ってる」

 

「伊井野いのりです~!」

 

「本名は……」

 

「本名は言わなくていいんだよ~!?」

 

 一度地面を剥がし、それなりに平らになるよう加工した土を2人で敷き詰めていく。整地作業だ。

 

 

【02.呼ばれ方は?】

 

「ヨシ、ヨシ君、44、ヨッシー、せんせ~、ダーリン、カスゴミ、仏頂面男、妖怪隙間風、扇風機の親戚、エア殺エアコン、トビウオ、ヨシツネ、祓う風の魚、風切羽、八相跳び、Wind、Hurricane、MiniDisaster、Bugs、Dragonfly、Ebene、метель、primera primavera……あとなんかあったっけかな……試合中に呼ばれたやつしか覚えてないからな……」

 

「わぁ~、玉石混交のエレクトリカルパレードみたい~」

 

「どれが玉だ?」

 

「『せんせ~』だけを玉にしておこうぜ~」

 

「いいぞ。そういうことにしておいてやる」

 

「ひゅ~」

 

 平たくなった土の上に、加工した石の板を敷き詰めていく。

 

 

 

【03.名前の由来は?】

 

「本名から持ってきてるな」

 

「わたしは異世界からやってきた時に日本人の名前を付けたので~猪獣人のメイドっぽい名前を頑張って付けました~」

 

「可愛くていい名前だと思う」

 

「えへへ~」

 

 石の板を敷き終わったものの、2人同時に敷き始めて3/4はいのりが敷いていた。今日が初めてとはいえ3倍近い速度差が視覚化された事により、YOSHIの中にいのりに対する対抗心が燻り始め、それがやがて自分の可能性を確かめようとする欲求へと変換されていく。

 

「せんせ~一回わたしを持ち上げて~高い所から見下ろして」

 

「ああ、任せろ」

 

 

【04.あなたは何系Vliver?】

 

「えっ……分からん……」

 

「わたしはなんだろ、まったり雑談系Vliver~? せんせ~はPD系って名乗れば良いんだよ~」

 

「PD。ポシビリティ・デュエルだな、なるほど」

 

肺疾患全般(Pulmonary Disease)かもしれないよ~?」

 

「絶対に嫌だろ肺疾患系Vtuber」

 

「絵が上手そうな感じがするじゃん~」

 

「もしかして肺の病気でゴホッゴホッなのでゴッホですよろしくお願いします! って話か? おい」

 

「わぁ~すごいなんで分かるんだろ~」

 

「ワードのヒントがありゃそりゃな……」

 

 敷かれた石の板の上に、石のブロックを並べていく。板の上にブロックを置くことで、システム的に後で構造をいじりやすくなるのだ。

 

 

【05.性別は?】

 

「男だが」

 

「女です~」

 

「これ何の意味があるんだ」

 

「無性とか男の娘とか、中の人がおじさんの美少女はここでそのまま言っちゃったりできるよ~」

 

「!? え、これそういうののための項目なのか……?」

 

 ブロックを並べる作業も、YOSHIよりいのりの方が遥かに早い。現役競技者最速のプレイヤーにも数えられるYOSHIではあったが、この分野に限って言えば、いのりの速度には到底及ばないようだ。

 

 

【06.デビュー日は?】

 

「俺は……公式戦デビューだと9年前の2050年の5月19日だったかな。ネットニュースでこの日が『チャンピオンの日だ』って書かれてて、そんな記念日が在るんだなって思ったから覚えてる」

 

「わたしは半年前の2058年の10月9日だね~。同期が毎日デビューして~、24人居たから一ヶ月くらいずっと皆デビューしてたなぁって~」

 

「こんなもん聞いて何になるんだ」

 

「周年記念は派手にお祝いするものなんだよ~。せんせ~の9周年もいっぱいお祝いしようね~」

 

「何!? いや、別にそんな……今まで活動何周年とか祝われたこととかなくてだな、必要なもんだとは……」

 

「遠慮すな~ぬへへ~」

 

 一階一枚目の壁に取り掛かり、窓を仕上げていく。複雑な部分はいのりが率先して引き受けていった。

 

 

【07.誕生日は?】

 

「4月27日」

 

「えええええ!? す、すぐだ~! ケーキ予約してこないと~!」

 

「いや、そんな頻繁に祝われてもちょっとな、感謝の言葉のストックが尽きる。それより、俺が教えたのに君らの誕生日を教えないのはフェアじゃない気がするが」

 

「んとねー、わたしが7月7日、まうちゃんが2月14日、アチャー君が11月11日だったはず~」

 

「好きな誕生日ケーキはあるか?」

 

「チョコアイス~!」

 

 いのりはYOSHIが一箇所間違ったブロックを嵌め込んだ部分を無言で破壊、正しいブロックを嵌め込み、何事も無かったかのように壁を完成させた。

 

________________

□いのりへのコメント~▽   ︙

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

○やさしい

○やさしい

○またやってる

○こういうとこだよねほんとに

 

 

【08.年齢は?】

 

「19」

 

「100歳だったり200歳だったり~」

 

「なんで年齢がそんなブレるんだお前」

 

「時間の流れが違う異次元のお屋敷でもメイドをしていたという設定があります~たまに忘れる~」

 

「忘れんじゃねえそんなデカい設定」

 

 いのりが作った壁の上に新しく積んでいく足場を用意しようとすると、腕を伸ばしたYOSHIがぽんぽんと壁の上に積んでいった。いのりがにこにこと笑っている。

 

 

【09.出身は?】

 

「よく知られてると思うが、少子化対策センター国民生産区画で俺は作られた。その後は東京都世田谷区の学校に通わされてた覚えがある。確か世田谷と八王子が東京で一番小学校多いとかなんかそんな感じで……」

 

「わたしは京都勢~、仏様に見守られながら生まれて来ました~」

 

「君異世界の獣人じゃねえの?」

 

「…………………………………わたしは異世界パラレリアの辺境の獣人部族に生まれ~、プラム王国の伯爵家に奉公に出て幼少期を過ごしました~」

 

「そっか……」

 

 窓の無い壁にYOSHIが取り掛かり、扉と窓のある壁にいのりが取り掛かる。

 

 

【10.どんな性格?】

 

「自己の可能性以外に興味無し。コミュニケーション能力低。共感性低。協調力低。これと決めたものにひたすら打ち込む気質。求道者タイプ。自己研鑽に集中しがちな人間の例に漏れず、他人の心情に対する考察力が低く、対人関係でトラブルを起こしやすい他、心理考察による先読みの精度が低く、対人観察力で補いがち。ややサヴァン症候群の傾向があり、試合で発揮できる能力を日常に流用できず、日常生活で一般人の平均を下回る挙動を見せることが多い。会話及び人格的な柔軟性の低さもここに起因するものであると考えられる」

 

「な、なんか客観性だ~……! わたしこれに『自分の性格なんて自分で語れないよ~』ってものすごく苦戦したのに~……!」

 

「俺が語ろうか?」

 

「怖いのでいいです~なんかわたしが知らないわたしのことがポンポン出てきそうで怖い~」

 

「そうか……」

 

 ぱっぱっぱっ、と2人で並行して壁を仕上げていった。

 

 

【11.見た目のお気に入りポイントは?】

 

「俺は……まあアバターの容姿はどうでもいいんだが。『動きやすいイメージ』を持たせる服の細かい細工は気に入ってる。見ても分からんと思うが、脇の下とか膝の裏とかの生地が網状になってて動きやすい感触なんだよな」

 

「わたしね~このメイド服の飾りの賢者の石が結構好き~。こうして体の向きを変えると~、光の当たり具合で見える色合いがちょっと変わって~、しかも光でキラキラするんだよね~」

 

「メイドってなんかもうちょっと慎みあるもんじゃなかったか?」

 

「ミニスカートは慎みを捨て女子力を得る、女の子の条件付きパワーアップ装備なんだよ~。ミニスカメイド~」

 

「ああ、維持力をギリギリまで切り詰めて絶対力に回すみたいなもんか……よく知らん世界の納得できそうな気がする理屈だ」

 

「これが特攻の男の人も居るからね~」

 

「絶対力に半端に振りすぎたやつには維持力を切り詰めて絶対力に振ったスキルが特攻気味によく刺さるからな……」

 

________________

□いのりへのコメント~▽   ︙

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

○なんだこれ

○なんだこの空気

○一生バカ笑ってる

○腕と足間違えて繋いで平然と進む二人三脚

 

 

 いのりが壁に色鮮やかな模様をプリントするのを眺め、そのやり方を学ぶYOSHIの姿があった。

 

 

【12.イメージカラーは?】

 

「考えたことなかったが、俺は一応黒と緑か? 服の基本色が黒で、後は緑の風に合わせてるしな……」

 

「わたしは髪の茶と服の白かな~。黒白青のメイド服は結構着替えちゃうことも多いんだけど~、どの服でも白だけはいつも残ってるんだよね~」

 

「何の意味があるんだ? この質問は」

 

「基本のユニットは各々でイメージカラーを別々のにした方がいいんだよ~。キャラが被らなくて覚えてもらいやすいし、新衣装も差別化しやすくて被りにくくなるからね~。しばらくしたら同じイメージカラーのVliverで新ユニット作るとか、三原色でユニット作るとか、そういうのができるかんじ~」

 

「なるほどな」

 

「でも、和風黒レザーのせんせ~と~、黒ジャージのまうちゃんと~、黒ミリタリ服のアチャー君と~、黒メイド服の私で~、実は結構黒っぽさ多いんだよね~。せんせ~の緑の風とか~、まうちゃんの灰っぽい髪とか~、わたしの茶髪とかで~、それなりに黒一色じゃなさそうには見えそうだけども~」

 

「ダーク・フォースとか名乗ってみるか。Forceかつ4thみたいな」

 

「かっくい~」

 

 空中に作った足場から、YOSHIがブロックを置いていく。

 

「でもチーム名は4人集まった時に決めないと~」

 

「それは……まあ、そうだな」

 

「配信終わったら皆でご飯食べに行ってそこで決めよう~次の世界を取り歴史に刻まれる偉大な名を~」

 

「でけえ付与情報がくっついてんないつの間にか」

 

 いのりが難しい建物角の曲線をぱぱっと仕上げ、片手を上げて、腕を伸ばしたYOSHIが乗ってくれたのでハイタッチ。

 

 機嫌良さそうにとんとんと歩いていくいのりの視界の隅で、コメント欄に1つのコメントが流れる。

 

 

○いのちゃんはいつもすぐ仲良くなるなぁ

 

 

 いつも通りの配信。

 いつも通りのコメント欄。

 いつも通りの仲良くなる流れ。

 だから皆特に言うことはなく、このコメントも目立つことはなく、コメントの海に飲まれて流れた。

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。