俺たちは挨拶を済ませた後簡単な打ち合わせをした。というのもこの場所で冒頭を撮るとか、俺とアイのちょっとした挨拶及び雑談を済ませた後に依頼主のMEMさん(以下MEM)が登場するようにしましょうとか、そんな感じだ。番組の目的であるこんな企画をしようっというのはカメラで撮影中に考えて決めるようにしよう。ということらしい。余りにも決まらなかったら一旦カットして皆で決めよう、と。
そんな感じでスタッフ達はトントンと話が進んで行く一方、アイとMEMと俺の3人である程度コミュニケーションを築く為軽い雑談をしてる。
「ねぇルル、いやルル子ちゃん今日すっごく美人だねー♪」
「チッ、やめろバカ。」
「いやーまさかこういう形で女装姿を見れるなんて思わなかったよー!佐藤さんとミヤコさんにも見せたいなー!あ、そうだ!写真撮ろうよ!」
「撮るなバカ!それと社長の名前は佐藤じゃない、斉藤だ。良い加減覚えろ。」
「え、えと、アイさんとルル子?さんって仲良いですね。普段はどういう話してるんですか?」
「仲良く見える?良かったねルル子ちゃん。」
「ちゃん付けやめろ。そして茶化すな。仲が良いってよりコイツが俺を揶揄ってるだけだ。それに普段は仕事の話しかしてないな。あ、最近はコイツにちょっとした勉強を教えてるくらいかな。」
「そ、時間が空けば勉強をさせられてねー、もう、貴重な空き時間を休みに費やしたいのに!」
「脳の中に十分空きがあるんだから詰めれる時に詰め込んだ方がいいだろ?」
という形でアイと俺の揶揄い話をMEMが聞いてるって形だ。いやこれ3人でコミュニケーションとってないな。
そして撮影が始まった。
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冒頭とMEMの紹介の撮影が終わり企画内容を考える為の一室にMEMが案内しようとしたが俺がそれを制止した。
「ん?どうしたの?ルル子?」
「いや何、こういうのを考えるにはまずはこの学校の事を把握しないとダメだろ?MEMさん、良かったらまずは校舎内を紹介してくれませんか?」
「え?あっはい!分かりました。」
どういう企画を作っていくのか誰もまだ分からない。校舎内を見て回って地形を把握したところでそれが必ず役に立つとは限らない。でもせめてアイには学校の楽しさというのを見て回って何か感じて欲しい。ドラマの撮影だけじゃ分からない『本物』がそこにはきっとあるのだから。
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「MEMさん、ちょっと聞いてもいいかな?」
「はい、何ですかー?」
「どうして今、依頼をしようと思ったんだ?」
「…え?」
「今回の番組の出演依頼で俺も過去の番組を確認したんだが大半は高校生からの依頼が多かった。どうしてまだ中学生なのに依頼をしたんだ?」
校舎内を歩きながら今回の経緯を尋ねる。因みに今回の依頼内容は『全校生徒皆が主役になれるイベント』だそうだ。
「私立は分かりませんが、県立の中学校て特別だと思いませんか?」
「ん?」
「高校は皆自分の好きな何かで決めるじゃないですか?学力や制服、興味のある学科とか色々…。だから高校は自分と似たような人が多いと思うの。でも県立の中学は地域別で学校が決まるじゃないですか。学力も将来なりたい夢の種類も何もかも皆バラバラ、それが1箇所の学校に集まるのって凄く不思議で凄く特別で奇跡だと思うんです。────私今中2ですけど、来年は高校受験とか色々皆大変だと思うから皆でそういうの気にせずイベントを楽しめるの今年が最後だと思ったから…!」
「そうか。」
『モラトリアム』学生から大人になるまでの猶予期間。学生だからこそ楽しめる期間の内に楽しむ。いつの時代もどこの世界にもそういうモラトリアムを楽しむ、楽しみたい人はいるのだろうな。
MEMと話しながら校舎内を歩くとアイが、そーいえばと言ってきた為意識をアイに向ける。
「大分前に事務所で話してた時にルル子の学生の頃の話をしてたじゃん?それを参考に出来ないかな?」
「会長のイベントの話か?」
「そうそれ!えーっと何があったっけ?」
「そうだな、水着で授業、絶対無言パーティーとか男女逆転祭、キューピットの日と仮面告白大会があったかな。」
「それどういうドッキリ番組ですか?」
「いやお祭り事の好きな生徒会長の主な内容だよ。」
校舎内を一周歩き学校のとある一室を借りて具体的な内容を考えることにした。といっても目的は『全校生徒皆が主役になれるイベント』まずはこれの具体的なことから聞こう。
「この全校生徒皆が主役』というのは具体的にどういうことを指す言葉だ?裏方がいない、必要ないってことか?」
「そうですね、いないってより必要ないのが良いかな?」
ということは文化祭関係は難しいな。あれは規模も準備も大掛かりだ。それを視点の違いで楽しむことが出来れば良いが難しいか。
どれなら良さそうか、水着で授業…いやダメだ。県立の中学校でそういうイベントをしたなら教育委員会やPTAやらで問題になる。絶対無言パーティーはどうだ?いや番組的に面白くない、終始無言の映像をお茶の間で流すのか?そもそもパーティー自体日本にはあまり馴染みがない文化だ。
なら後は何がある?
ダメだ。あまり良いのが思い浮かばん。
「正直時間もあまりない。不甲斐ないが過去に行った俺の学校の生徒会長が開催したイベントをベースに考えるぞ。」
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「────という形でしていく。あとは校長にお願いして教師陣にも協力を要請するとしよう。」
「な、なんか大丈夫ですかね…?反対意見とか出たら…?」
「その時はその時だ。まぁそういう矛先をなるべく別のに向けるつもりだから安心しろ。」
「これ、もちろん私も参加していいんだよね!?」
「あぁ、勿論。」
「やったー!!なんか楽しみ!」
「よしイベント時間は1時間とする。そのため1日の最後の授業をこのイベント企画でまるまる使う予定だ。イベント決行日は全校集会がある、その時にMEMとアイがステージに立ち企画を発表しろ。」
「「うん、分かった!」」
「ではこれより、企画名『ラブ・アタック』を開始する!」
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イベント企画当日、それはなんて事のない平日だ。夏休みが先月明けたがまだ残暑が続くそんな時期。もう少し涼しくなると文化祭シーズンが始まりそうなそんな中途半端な時期。
学生の皆は2週間に一度あるこの意味を見いだせない全校集会の為に体育館へ入り座っていく。朝一にある為か眠い生徒も多く既に何人かは眠りに入っていた。
「そういえば今日MEMちょ見たー?」
「いやー、そういえば今日見てないなー…休みなのかな…?」
というクラスメイトの女子達が会話をしてる。彼女の本名をもじったあだ名が『MEM』となってるため皆からそう言われてる。だが今日は珍しく彼女が朝からいない。きっと季節の変わり目で体調でも崩したのだろう。そういう認識で朝礼が始まるのを待つ。
生徒会の挨拶が終わり校長先生のいつも通りの挨拶が終わった後今日の朝礼が終わるなーって思った後突然音楽が流れ始めた。
これは『サインはB』!?
皆ソワソワしキョロキョロと周りを見始める。すると正面のステージから2人登場してきた。あの人は!?
「やっほー!皆元気ー?私はB小町のアイです!今日は隣にいるMEMさんの依頼でとあるイベントを今日開催しまーす!♪」
え!?MEM!?アイの隣の人を確認するとそれは今日欠席だと思ってた人MEMがちゃんといた。
「えと、題して『ラブ・アタック』です!」
ある程度区切り良く切っておかないとゆるゆるスローストーリーになってしまう。