異次元フェス行きたかったけど、配信で見ました。とても素晴らしかった。
23話
────王様から動かないと、部下はついてこないだろ。
この言葉が決め手になったのかどうかは分からない。だが少なくとも俺の理念や覚悟というのが伝わったのか有馬をはじめルビーやミヤコさんも許してくれた。もとよりミヤコさんは、はなから諦めに近い感じで外出を許可していたが。
俺はレインコートを羽織りワイヤレスイヤホンを右耳に装着して最寄の山まで走って行く。
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「ルルーシュさん行っちゃったよー、本当に良かったの?先輩ー」
「良くないわよ。でも仕方ないじゃない。あんな風に言われたら。」
あの言葉で彼の生き方というか信条がなんとなく伝わった気がする。リーダーというか上に立つ者の在り方や責任、というのをしっかりしてるんだなって思う。ボスというかキングのような傲慢さがありつつもリーダーのような皆を引っ張ってくれる。そんな上に立つべき存在。
って何よ、なんか私あの人のこと好きみたいじゃない!?ないない、だってさっき王様とか言ってたのよ?厨二病じゃない。それにあの人もう何歳なのよ?18歳?違う違う、もう30歳超えてるのよ!?頑固なおっさんじゃない。
でも、30歳超えてるのにあの美貌は反則よね…それに頭も良いし家庭的な面もあって素敵だし、見えにくい優しさも時々感じるし、だからこそ絶対的な自信の表れの傲慢な態度も何か許せちゃうのよね。
え?てかこれ何?
とにかく、無事でいて下さい。あの人に何かあったら許さないわよ、黒川あかね。
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人は精神的に追い込まれたり精神的に余裕がなくなると正常な思考が出来なくなる。“そんなの辞めたら良いじゃない” 周りのヤツらは最もな意見を言う。だがあらゆる理由で辞めない。そのくせ精神がどんどん病むと最終的に自殺や殺人をしたりする。
楽な死に方なんて色々ある。”硫化水素“などの化学物質を吸ったり、薬の大量摂取だったりだ。人は楽を求める者だからどうせ自殺するならその方が楽で良いのに何故、飛び降り自殺や首吊り、手首を切るような痛々しい死に方をするのか。
理由はそれぞれあるから厳密に1つとは言えないが、“こういう死に方をしよう”より“早く簡単に死のう“が勝ってるのかもしれない。
もうまともな思考回路も、考える思考回路もおかしくなって、単純な動きになる。
鷲見の報告次第で絞り込めるが、今の黒川が死ぬとするなら”飛び降り“”“手首又は首をはじめとした動脈を切る”“首吊り”だ。
飛び降りも歩道橋か電車、高い建物があるが、この辺りの高い建物はマンションかデパート、オフィスビルだがセキュリティの問題から入ることは出来ない。
道路に飛び出て轢かれて死ぬ可能性も考えた。この天気だ。視界も悪いから轢かれる可能性は上がるが、視界が悪いからこそ速度も遅く轢かれたとしても死なずに痛い思いをしただけで済むこともある。
もし黒川が確実に死にたいと思ってるのならその選択肢は選ばない。
俺は頭の中で思考しながら山へ向かって走っていく。しかし…キツい。チッ、自転車かバイクがあれば良いものを…ハァ…ハァ…少し歩こう。
「こちら
「了解。ではB-1はこのまま待機、後に連絡するからその時母親と一緒に警察署へ向かう準備をしておけ。」
「分かった。ねぇ、大丈夫よね…?あかねは。」
「…あぁ、任せておけ。」
コンビニに行って買った可能性は否定出来ないが、わざわざ新しく買うとは思えない。これで動脈を切って死ぬ可能性は低くなった。
縄紐は部屋や家にそもそも有るのが怪しい。ただの紐なら有るか…?いやだったらハサミくらい持っていくはず。仮に縄紐を使うにしても、普通のコンビニにあるとは考えにくい。加えて縄紐ならそれなりのハサミが必要。それをこんな天気の中あの精神状態の黒川がセットで買うとしてみろ?店員が不審に思い止めに入るはず。
やはり首吊りの可能性も低いか?何か見落としてる気がする。
俺は今一度黒川あかねに関する記憶を掘り起こし、分析する。
黒川あかねは役者。色々な役を演じてきてる、芸能人だからパーティに誘われることもある。パーティだからドレスを着てる可能性もある。今ガチでは皆制服だ。黒川の着てる制服はどうだった?確かブレザータイプで胸元には確かリボンではなくネクタイだった。短いネクタイではなく一般的な長さの。
黒川が着用していたネクタイの長さなら首吊りも可能か!?
「
「え、ええ。分かった!」
もしネクタイで首吊るなら山の可能性は低い。ネクタイでも十分首が巻ける長さと人の体重が掛かってもそれに耐えられる木の枝の大きさを考えるとネクタイでは役不足だ。もしネクタイで首吊るなら学校か公園にある高い鉄棒か、ブランコ、
「
「ああ、一応確認してる限りでは見当たらない。ここにはいないと思う。」
「分かった。なら今から黒川の学校を最終的な目的地とし、周辺の公園も捜索しろ。」
「お、おぅ。」
「こちら
「そうだな、次の発車時間が早いホームに入って探してくれ。」
だがMEM1人で駅のホームを全て確認するのは無理がある。時間が惜しい。なら
「
「えと、警察に事情を伝えたけど、あまり真剣に取り合ってくれなかった。でも一応パトロールはしてくれるって。」
「そうか、なら今から
「分かった。なら警察の人に、駅に早く帰るからパトカーに乗せてくれないか話してみるよ。この天気だし多分いけるっしょ。」
「フッ、頼むぞ。」
馬鹿そうだが頭が悪い訳ではなさそうだな。未成年という立場を上手く利用したな。
よし俺も急がなくては…
────────
疲れた。
もう歩くことや立ち上がる気力さえ湧かない。
どうしてこうなっちゃったんだろう。なんでこんな目に遭うんだろう。
私なりに事態の沈静化を図ろうと頑張った。SNS越しではあるけど、ちゃんと謝罪のツイートをした。でもそれがスタートの合図とばかりにどんどん悪化した。
酷い言葉の羅列が画面のほとんどを埋めてた。けどそれでも私の数少ないファンもいて援護の声もあった。
でも世の中声がデカいやつが有利だ。例えそれが正しい正しくないに限らず。
数少ない私のファンの声が消えていき、とうとう最後の1人と思わしき人に見捨てられた。
もういいや。これ以上頑張ったって意味がない。
考えるのも疲れた。
もう何も考えたくない。
ああ、楽になりたいなぁ
無意識に私は歩道橋の柵の上によじ登った。落下を防止する為の柵だが、今その狭間の上に立ってる。
私はそこから見える景色を見た。
あぁ、キレイだなぁ。クルマのライトがまるで劇場の舞台に照らされるスポットライトのようで明るく温かい。
気持ちいいなぁ。
もっと近くでスポットライトに当たりたいな。
だけど、誰かの手によってそれを阻まれた。少しずつ見えていた幻想が現実に戻されていく。
いや
イヤイヤ
ああ!
離して!
私は私に関わる全てを拒絶した。今私の邪魔をしたヤツにも言葉にならない声で拒絶する。
「落ち着け!!俺は敵じゃない。頼むから落ち着いてくれ。」
───敵じゃない。
その何でもない言葉だけど、その言葉で少しずつ落ち着くことができた。味方で数少ない居場所が出来た感じになった。
「アクアくん…なんで?」
「あー…説明すると長くなるが、俺の事務所のプロデューサーが嫌な予感をして、MEMや鷲見とか皆で幾つかルートを絞って探していたんだ。」
「うっ……」
「良かった…本当、馬鹿野郎が。」
頭が冷静になってきた。自分は一体何をしていたんだろう。自分の行動の愚かさに涙が出る。
雨で服も体も冷え切っているが心の中だけは温かさが少し取り戻したようだ。
「ちょっと君達!」
こんな天気で早く雨が凌げるところに行きたいはずなのに、まだアクアくんに体を預けて貰いたかったが、パトロール中の警察官に先程の経緯を見られていたのだろう。声を掛けられてしまった。
「危ないでしょ!?あんな所に…って、ん?君はもしかして…?『こちら小島。今〇〇歩道橋にて先程、捜索依頼者が見せた行方不明者の写真の者を発見しました。…はい、生きております。…はい、了解しました。』君たち大丈夫か?どこか怪我はしてないかい?」
「はい、大丈夫です。ごめんなさい…」
「いいよ、気にしないで。それにその言葉は僕たち警察じゃなくて、君のためにこんな天気の中動いてくれた友達の為に言うべきじゃないかな?」
「え…?」
そっか…さっき、アクアくんが言ってた…。皆でって…。
こんな身近にいたじゃん…私の味方は。
────────
「そうか、アクアが…良かった。…分かった、俺も警察署へ向かう。────ところで相談なんだが、クルマを出してはくれないだろうか…?ミヤコさん。もうこれ以上体を動かせそうにない…。」
俺とミヤコさんが警察署に着いた頃には既に今ガチの皆と黒川の母親も来ていた。皆色々言いたかった事を言ったのだろう。黒川も自分の事を大事に思ってくれる数少ない味方がいた事を知って少し安心したのか表情もよくなりつつある。
「皆、ご苦労だった。私が苺プロのプロデューサーのルルーシュ・ランペルージだ。」
こんな形で皆に自己紹介するとは思わなかったが皆一度自己紹介をした。
「それで、アクア。お前はどうしたい?」
「そうだな…」
アクアはまず黒川にこのまま番組を続けたいか降りたいかを確認した。番組の契約の問題もあるが、こうして自殺未遂をしたのだ。しかも未成年者がだ。人の命に関わる事が起きた以上、その監督責任が問われる問題だ。続けても降りても誰も現場は責めない。
アクアに問われた黒川は身体をプルプル震えてる。怖いのだ。身体が、本能がそれを拒絶している。だというのに黒川の心はそれでも立ち向かう事を、続ける事を選んだ。
彼女はとても強い子だ。
「でもこのままってのは気分悪いよな。煽った番組も好き勝手言うネットの奴らにも腹が立ってしょうがない。」
「なら、どうする?」
俺はアクアに問う
「警察署には記者クラブっていうのがあるからそこに行って新ネタを提供してやろうかと。」
「なるほどな、差し詰め記事のタイトルは『炎上中の未成年女優が自殺未遂』ってところか?────ダメだな、全くもって足りんな。それではつまらない。」
「あ?てめぇふざけんじゃねぇぞ!!人の命に関わることをつまらないだと!?てめぇは人の命を、黒川の命をなんだと思ってんだ!」
アクアが俺の胸ぐら掴んで怒気を強めて言う。
「では逆にさっきのまま記事が出回ってみろ、どうなると思う?黒川だけじゃない、お前らの経歴にもキズが付くことにもなる。お前らの将来にも関わることだぞ、何よりお前らはこの番組をただの悲劇で終わらせたいのか?」
「…何が言いたい?」
アクアをはじめ、皆俺が何を言いたいのかまだ掴めてないようだ。
「コントロールするんだよ、情報を、記事を。あのままの記事では黒川の批判は収まらない。寧ろ悪化する。『どこまで人に迷惑をかけるつもりか』と。だが、同番組出演者のアクアを中心に皆で助けた。という記事が加わるかどうかでネットの反応や記事の印象が変わる。────お前らは恋愛リアリティショーに出てるんだろ?これをきっかけに恋愛に結び付く事だって出来るんじゃないか?」
似たような記事内容でもタイトルや記者の何を1番伝えたい記事かで印象が変わるものだ。
最も、アメリカの心理学者のロバート・ナップが研究したが人は“良い噂”より“悪い噂”の方が広がりやすいのを明らかにしたらしい。だから記事では良い記事内容より悪い記事内容の方が多いのだろう。
だが、ここまで若者を中心に注目になってるのだ。悪い記事で載せる必要がない。寧ろ恋愛番組なのだからアクアが助けた事でも載せた方が視聴者としては今後の展開が気になるのでは?と思った。
「確かに…」
「今回のではっきりと知った。“リアリティショー”なんてない。あれは“リアリティドラマ”だ。製作者のくだらん脚本に踊らされてるだけだ。────そこで君たちに問う。たった一度の本当の恋愛リアリティショーを作ってみせたらどうだ?」
ここで力を持つ大人に苦汁を飲んでたらいけない。子どもでもお前たちは揃って“タレント”だ。才能があり可能性の力を持つ者だ。ここで動かずしてどうする?
そして俺はもう一つ気になることがある。
この“今ガチ”をはじめとした恋愛リアリティ番組。俺の調べ足りなさがあったが、同様の事件があって何人も過去に死亡者を出してるのではないか?と。
仮にあったとしても何故この番組系は制作を続けてるのか、何故リアリティドラマとしてではなく、リアリティショーなのか。
“ショー”か“ドラマ”という単語の違いだけで内容は同じでも観てる人には意味が変わってくる。ドラマだったらここまで黒川が思い詰めることもなかったはず。
ふざけるなよ。強いものが一方的に弱い者を殺す事は断じて許さない。撃っていいのは撃たれる覚悟があるヤツだけだ。
必ず暴いてやる。芸能界に巣食う
最後なんかいい感じに終わらせたけど、未だ内容を考えてません。
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ありがとうございます。