斉藤社長から色々と経緯を聞いた。
社長がアイをアイドルとしてスカウトしたこと。だが彼女が先程言っていたように、人を愛した事がない。誰かを愛したい。愛する対象が欲しいのだと。
社長は嘘でも「愛してる」と言い続けることでいつかその“嘘”が“本当”になることだってあるのだと、アイに言った。それが彼女がアイドルに入った経緯。
だが先程の彼女の言葉を聞く限りでは、まだ彼女は“愛”というのは完全に理解出来ていないと見える。
社長は俺と彼女を関わっていくことで“愛”というのを知ってもらおうということか、ついでに俺の頭の良さを仕事に活かす算段か。
この世界での俺は戸籍がない、あまり表立っての行動は出来ない。ならこの事務所の事務員にでもなった方がお金や住まいは確保される。衣食住で1番大事なのは『住』だ。それが何よりも優先。
だが俺が“愛”を教えるのは難しい。こういう時C.C.かシャーリーがいてくれたらかなり助かるんだが…。仕方ない、今までのことを思い出して教えていくしかないか。
「良いですよ。ここで働きましょう。ただし、今理由があって住む場所が無いのでそれさえ提供出来れば、ですが。」
「ああ、今すぐは流石に無理だからこの事務所で良ければ好きに使ってくれ。」
「ありがとうございます。」
よし、これで全ての条件がクリアしたのも同然。アイの“愛”に関する事は長期的な問題になるだろうから急ぎの問題ではない。時間をかけてやれば良い。
「あ、なら今日はうちに泊まりなよー!良いよね?佐藤さん。」
「良いわけねぇだろうがっ!バカアイドルが。」
「えー、今日だけで良いからさー。あ、ミヤコさんも一緒に居れば良いよね?」
「えっ、私もですか…?」
「うんうん♪えっとモモさん凄く頭良さそうだから色々お話をしたいなって」
「モモって誰ですかね…知らない人だ。ルルーシュだ。アイ、君にはまず人を含めた名前を覚える練習をしようか。そこの子ども達と一緒に。」
「やったー!よく分かんないけど色々教えてくれそうだね、ルビー、アクア。」
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あれからお開きになり俺とミヤコさんとアイを含めた子ども達も一緒に彼女の自宅に泊まる事になった。俺は最悪ホテルに行ってギアスを掛け個人情報パスして1泊しようと思っていたが、幸か不幸か今こうなってる。流石に家の中で皇帝の時着ていた服装は堅苦しいが代えの服がない為いくつか装飾の服装は脱いでおりだいぶシンプルな皇帝の服装になった。
皆食事後に歯磨きはすでに済ませていたので後は各々お風呂に入って寝るだけでとなってる。俺としては悪く無い人だと思うが完全には信用出来ないのもあるし彼女の家で申し訳なさもあるから断っていたが無駄に彼女が頑固な為素早くシャワーを済ませた。
鏡を見ると俺の鎖骨下の胸部辺りにギアスの紋章が刻まれてるのが確認できた。
そうか、俺はコードを継承していたのか。おそらくシャルルが俺の首元を掴んだ時…。
つまり今の俺はC.C.やコードを受け継いだシャルルと同じ不老不死。だがおかしい。俺は確かにギアスを発動出来た。コードを持つ物はギアスは効かないがギアスを発動は出来ないはず。
俺がCの世界を壊しシャルルのコードを中途半端に受け継いだからか?情報が少なすぎる。この世界であれこれ考えても意味がない。とりあえずこの胸元は隠さないといけないな。
服を着て浴室から出るとアイを残し皆寝ていた。が彼女も眠そうにあくびをしていた。
「今日はもう遅い。俺なんか気にせず一緒に寝たら良いのに。」
「ううん、今日は本当に色々あったから。何だか寝たくなくて。改めてありがとね。」
そう言って彼女は俺に冷えたお茶を差し出す。俺も礼を言って一杯飲む。日本のお茶は久しい、懐かしい味だ。
「で、お前は何を知りたいんだ?眠いなか無理して起きてるんだ。余程な事だろ?」
「おー、さっすがー!えっと1つは愛するにはどうしたら良いのかな?それともう1つは、ルビーとアクアの面倒看れるかな?時間ある時はミヤコさんと私で看てるんだけど、私が仕事の時はミヤコさん1人で看てるから貴方も手伝ってくれると助かるの。」
「俺は何でも屋かベビーシッターか勘違いしてないか?はぁ…、そうだな、俺の持論だが『愛』とは限りなく与えるものだと思ってる。想われるより想い続けた方が充実感はあるし、想いとは何かを変える力があると思ってる。そう信じてる。お前はどうなんだ?誰かの為にいつも以上の何かは。」
「うーーん、それが分からないの。確かに仕事をいつも以上に頑張らないととかいつも以上に完璧に魅せる為に色々研究したりとかしたけど、それが純粋に誰かの為なのか生きていく上で仕方なくなのかまだ分からない。」
「そうか、なら今のお前の課題は人との関わりの密度が問題だ。」
「密度?」
「あぁ。人の心は人が作っていくものだ。沢山の人との関わりが己を形成していく。その中には綺麗なものだけじゃ無い、悪意や様々な人の欲に満ちてるものだってある。────人の心は最も深い場所にある。だが、中途半端な関係だと心に響かないから良い意味でも悪い意味でも影響しない。深い関係を築いてないからな。だから人との関係を深く築くんだ。心に影響が出るほどの関係の人を。沢山の人じゃなくても良い。もちろん怖さもあるだろう。でも作らずにはいられない。何故だか分かるか?」
「え?えーっと…何で?」
「必要だからだ。心を育てるのに。人は人が必要なんだ。────お前は『愛』を知りたいらしいがその前に『心』を育てるのが先かもな。それが出来たら自然と『愛』が分かるのかもな。」
「『心』…。心を育てるには自分じゃない人が必要。」
彼女はそう自分に言い聞かせるかのように俺が先程言った言葉を呟いていた。
「ねぇ、貴方はそういう人いるの?」
「あぁ、沢山いるし、いたよ。関係の浅い人から深い関係の人まで。」
ナナリーやスザク、生徒会の皆や黒の騎士団…。それにC.C.やロロ、これ以外にも沢山の人と関わっていった事で俺は”俺“という存在が形成された。確かに多くの間違いはあった。やり直しの効かないこともした。でも、それでも、それがあったからこそ俺は歩み続ける事ができた。結果だけでなく人の想いや行動の過程も大事なんだと知った。
「そっか…。貴方となら私変わる事できるかな…?」
「違うな、間違ってるぞ。変わるんじゃなく、成長し育てていくんだ。」
「フフッ、何が違うか分かんないや☆────でもありがとう。」
「どう致しまして。それよりそろそろ寝た方がいいんじゃないか?」
「うん、そうだね、そうするよ。お休み!」
「あ、良ければだがpcか何か貸してくれないか?この後調べものを調べたくて。」
「あぁ、それならこのスマホ貸してあげるよ。」
そう言われて彼女は長方形の形をした端末を貸してくれた。
これは名前が違うが携帯か?いやどうやら色々な事ができるパーソナルコンピュータを携帯端末化したのか。これは便利だ。
「ありがとう。それじゃお休み。」
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皆が寝たのを確認した後スマホを開きネットで調べことをした。図書館で足りなかった事や、色々あって芸能事務所にお世話になる事から芸能界に関する情報も調べることにした。
アイドル『アイ』、ひょんなことからまさかここまで関わる事になるとは思わなかったが、彼女の願いや成長の為にも出来る事をする。
だが俺は芸能界のことやアイドル事情など皆無だ。一晩あれば8割型は把握出来るか…?あとはそれに伴っての戦略を幾つか考えるか。
気付けば日が昇り始めてた。朝か、寝はしなかったが、1泊お世話になったんだ。せめてのお礼として朝食の準備は俺がしとくか。ならまずは買い出しか、この時間は流石に空いてる店はコンビニしかないか。仕方ない。コンビニで買える物は買っていくか、後は家にある物を使うか。後で買い直しておけば良いか。金ならあのチェスで得たんだ。大丈夫だ。
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あの後私も部屋で寝た。意外な事にいつも以上にぐっすり寝れた。何で何だろうか。いつもより疲れたからかな?それとも、『愛』を知る術を知ったからかな?何にしても彼には感謝だ。やっぱり頭が良いってのは良いね。分からない事は色々と教えてくれる。
さて子ども達のためにも簡単な朝食の準備でもしようかな?今日の朝ごはんは私は何にしよう。面倒だしコーンフレークと食パンで良いかな?あ、そういえば食パンじゃなくてフランスパンを間違って買ったんだっけ?まぁ良いか。と思いながらベッドから起きると何やら音が聞こえる。生活音、これは料理の音だ。
え?誰だろう?ミヤコさんはまだ寝てるし、佐藤さんがわざわざこちらで料理をするとは思えない。一体誰が…?
そう思いリビングへ向かうと、最近よく見ることになった彼がいた。
「おはようアイ。悪いがキッチンを借りさせてもらってる。もう直ぐで料理が出来上がるから顔を洗うなりして座って待ってろ。」
「うぇ…?へ…?えと…」
「1泊泊めてもらった礼で朝食を作ってるところだ。それと名前はルルーシュだ。お前また忘れてただろ?────まぁ良いが、早く顔洗って目を覚ましてこい。」
そう言われ私は洗面台に向かい顔を洗う。
初めてだ。誰かが朝、料理を作ってくれてるのは。覚えてる範囲では母さんが朝食を作ってくれた記憶はない。施設での生活では流石に朝食はあったけど、それは学校とかでの給食と一緒。家庭的なのとは意味が違う。
何だろう、この感じ────。
顔を洗い終わりリビングに再び戻ると皆起きてきた。きっと彼が作った料理の音や匂い等が身体の五感を刺激したのだろう。ミヤコさんはまだ寝ぼけ気味でアクアもまだ眠そうだけど、ルビーは眼が完全に覚め、朝からテンションマックスだ。
「すっごーい!何これ!?レストラン?ママ、お兄ちゃん!高級レストランだよ!」
「ルビーおはよう!凄いねー、これ!えっと…る、ルルーシュが作ってくれたんだよ!」
「ねぇねぇ、ルルーシュさん!これなんて料理なの!?」
「あぁ、これは『野菜とチキンにタルタルソースを加えたタルティーヌに卵料理のウッフ・ア・ラ・コックだ。細長くそのパンを切ってバターをつけて、その卵料理に浸して食べる良い。それとコーンスープだ。」
「え?ウッ……何?なんか分かんないけどすごーい!こんな料理初めてだよ!外国の料理って感じ!」
「一応フランスの定番の朝食だよ。さ、食べよう。」
そう促して、皆で席に着き食事にありつけた。
アイを生かすか殺すか悩んでます。
今のところ2:8で殺す予定です。