朝食の評価はかなり高かった。芸能活動をしてる人たちの事だからこういった食事は何度か経験してると思っていただけに予想外だった。子どものルビーに関しては、お代わりを何度も求めてきた。
さて今日からこの苺プロダクションの一員として働くことになった。と言ってもいきなり大役を頼まれる訳ではない。普通の書類や事務関係の整理だ。誰でもできる。
その為基本的なやり方やマニュアルを頭の中に叩き込みあっという間に終わった。結果1日で済ませる予定の仕事を昼時には終わらせた。
流石の速さにミヤコさんや斉藤社長も唖然としてた。
斉藤藤社長が事務員で済ませるのは勿体無いと思ったのか追加で仕事というより頼み、相談事を持ちかけられた。
それは、『アイをどうしたらもっと人気になるのか。』だ。
彼女はアイドルをはじめ、芸能人として売れるべくして売れる『本物』だと、その可能性があると。
だが、今はまだ流れや軌道に乗り切れてないと。だから俺にどうしたらそのきっかけが出来るのかと、そういう相談だ。
俺の生きてた世界でもインターネットはあった。だがそれでもテレビを始めたメディアや報道局の力が強かった。だから放送コードをハッキングしてそこから魅せ方、演出を黒の騎士団や皇帝の時は工夫していた。
だがこの世界はテレビこそあれど、このスマホの端末をはじめとしたSNSの時代。インターネットの力が強いのだ。個人が膨大な数のあるジャンルを検索して観たり、調べる時代なのだ。若干だが違うのだ。
戦略は変わらないが戦術面で違う。
「彼女の今後のスケジュールや仕事内容を確認したい。」
「あぁ、アイのスケジュールはこれだ。」
社長のスマホを手渡され確認するとアイのスケジュールが共有されている。
確認すると1番近いのでドラマの撮影というのがわかった。
ドラマか…ドラマの人気、話題次第では彼女が更に人気になるきっかけとしては良いのかもしれない。だが撮影から放送までの期間が分からない。数ヶ月か?いやそれとも数週間、数日なのか?いや、そもそもドラマは沢山の会社のスポンサーや制作会社等芸能会社で溢れてる。向こうの政治的な問題がある。いくら彼女が頑張ったとてそれが意に沿わないことならあったことが、なかった事にされる。
「社長、このドラマ撮影俺も同行させて頂いてもよろしいですか?」
「え?ルルーシュ、お前がか?」
「ええ、俳優ほどでは無いですが多少演技や芝居は嗜んだ事がありますので、アイのサポートにはなるかと。」
「まぁお前が行ってくれるなら何とかなるか。じゃあ頼む。」
これで第一段階はクリアだ。あとは向こうの人と関わる事が出来れば…最悪関係者にギアスを掛ければ問題はないが…。
ついでにある場所を調べておくか。上手くいく為に…!
────────
「苺プロのアイです。本日はよろしくお願いします。」
そう言って彼女は監督をはじめ各スタッフに挨拶をしていく。ミヤコさんは子どもたちを連れてアイと一緒にご挨拶をしてる。この際に俺も一緒に挨拶をしていこう。因みにだが、道中黒いスーツを購入しすぐ着用してる。流石にいつまでも皇帝の服装のままはマズい。目立ちすぎる。
「初めまして、苺プロのプロデューサーのルルーシュ・ランペルージと申します。最近苺プロで働く事になったのでこうして現場を一緒に見て勉強させていただいてます。よろしくお願い致します。」
「ん?」
現場監督らしき人がこちらを見てじーっと見つめてる。と、監督が子ども達の存在に気付き問い掛けきた。
「この子ども達は?」
「あっこの子たちは私の子で…」
え?そうなのか?ずっとアイかミヤコさんのどちらかの子だと思ってたが、ミヤコさんの子どもだったのか。確かにアイの年齢や職業の事を考えると彼女の子どもである確率は低いしな、しかしアイがこの子らの母親らしき面を魅せてたが…。そうか、ミヤコさんの子どもたちを社長やアイの皆で面倒を見てたのか。アイもそれで母性愛に目覚め始めたと…。なら『愛』については順調に理解してるんじゃないのか?
そういうと監督は最近は働き方改革だからなとか何とかいってさして気に留めていなかった。
が、それでも問題はある。幾ら年齢が4歳児くらいとはいえ、こういう現場に長時間はキツい。いずれぐずる可能性がある。母親のミヤコさんがいるとはいえ、1人で2人の子どもをあやすのは大変だ。俺も可能なら加わりたいが、作戦中に起きたら大変だ。どうする?
そうだ、ナナリーと昔何して遊んでいた?日本にいた頃は人生ゲームをしていた。しかしここに人生ゲームはない。なら作るか?いや4歳児がして楽しむゲームではない。周りを見渡して何がある?
紙…?確かに紙を細く包めば棒状になってチャンバラごっこが出来るし広げてペンがあればお絵描きとして使える。紙飛行機や、正方形にすれば折り紙として遊べる。よし、何かあったらそれを使わせてもらおう。
が、それよりも監督にもう一度声を掛けた。
「監督、すみません。少しお時間を宜しいでしょうか?」
「ん?あぁ、君は確かアイくんのプロデューサーの…」
「はい、ルルーシュです。よろしければ他の番組関係者にご挨拶をしたいのでご紹介して頂いても宜しいですか?」
「あぁーなるほどね、いいよ。にしてもルルーシュさんか…。」
「ん?どうかしましたか?」
「顔も整ってるし声もクールでかっこいいなと思ってね、役者やってみない?」
「役者ですか…?」
俺が役者…?まさか、出生不明の人間が表舞台に出ると色々面倒なんだ。SF世界なら運良く権力者と関わって勝手に戸籍を偽装しれくれるが、基本的に無理な話だ。
ま、ギアスを使えばどうにもなりそうだが。
「今は苺プロのプロデューサーが似合ってるのでお断りします。」
「そうかい、ならしょうがないか。」
そう言って俺は監督と一緒に各関係者にご挨拶をした。
よし、これで作戦の下地は済んだも同然だ。あとはアイの撮影でも観てタイミングを図って動くだけだ。
────────
撮影現場に戻ると間も無く撮影が始まる。ジャンルとしては高校生の学園ものらしい。
高校生か…俺が死んで何年経つのだろうか。俺が学生の頃、他愛のない日常のあの頃の光景を思い出す。そう、その頃の俺は気付いてなかった。それが、どれだけかけがえのない時間だったということを。
俺がこの事務所に所属するにあたって、彼女のおおまかな経歴を調べてた。芸能デビューは中学生の時で、16歳の時体調不良で活動休止したがしばらくした後復帰。
俺が言えた事じゃないが、彼女はまともな学生生活を送っていない。こういう役は果たして出来るのだろうか?芸能人といえどある程度の教養は身に付けてた方が良いだろうな、時間ある時に勉強でも教えてやるか。
撮影が始まった。率直に言おう、アイは凄い。これは彼女に何かしらのスター性、いやカリスマ、魅了する力がある。演技は特別上手いという訳ではない。しかし細かく彼女を見るとメインカメラに対してどうすれば可愛く映るのかを分かってるのか絶妙な角度、仕草をしてる。
よく調べてるな、さすがアイドルといったところか?
このまま放送すれば彼女の人気に火がつくのは間違いない。snsの発信力を活かせば後3回程出演すれば人気になるだろう。あとは製作陣達の意向次第だが、恐らく……。
────────
私的には撮影は上手くいったと思う。ライブの時と違ってカメラの位置や向けてる角度の事を考えて、それに合わせた可愛い私を魅せれば良い、MVの撮影と同じ要領でやっていけば良かったのだから。
ルビーやアクア、ミヤコさんだけじゃなく監督も撮影スタッフも皆私に魅了されたはず。
あ、そういえばルルーシュはどこにいるんだろう?最初は私の撮影を観てたはずなのに気付けばいない。もしかしてトイレなのかなー?でもやけに長いしどうしたんだろう?
「ねーねーミヤコさん、ルルーシュ知らない?」
「え?あ、そういばいないわね…確かあっちに行ったけど、どこ行ったのかしら…?」
そう言ってミヤコさんが指した方向は現場スタッフが集まってる場所ではなく製作陣やスポンサー様が集まってる場所だった。挨拶なのだろうか?でも撮影前に挨拶を済ませてたみたいだし、一体何のようがあるんだろう?
私が主演を務めてたら私を含め、マネージャーや社長等が製作陣やスポンサー様と挨拶や色々お話をする。今後の為に、だけど私はやっと出演した脇役。
私は彼が気になり彼がいるかも知れないところへ歩いていく。少し歩いたところのとある曲がり角の先から複数人の声が聞こえる。その内の1人は最近よく聞く声、ルルーシュだ。
「フハハハハハッ、違うな。間違っているぞ。それでは思った通りの最低限の結果しか得られない。が、俺の提示したのであればそれの倍以上は得られる。」
「何ィ?」
一体何の話をしてるんだろう?もうちょっと彼らの話を聞きたいから私は一度周りを確認する。よし、今誰もいない。ルルーシュ達はそんなに小声で話してる訳ではないし私も耳は悪くないから盗み聞きしてない感じを装おう。えーっと…?
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「お前ら制作会社は主演の女優を『可愛過ぎる演技派女優』として売りたい。だから彼女アイの出演シーンを削る。何故なら彼女はあまりにも可愛過ぎてイメージ戦略に問題が発生するから。それはアイを主演女優と同じ『可愛過ぎる演技派女優』と同じ立場で売ろうとしてるからだろ?彼女はあくまで本業はアイドルだ。違うコンセプトなのだから普通に良いシーンを残せば良いだろう?彼女の女優としての演技はそこまで上手くないからな。」
「そんなわけ行くか!観てる人からしたらアイドルか女優かなんて関係ない!同じ『出演者』として観られるんだ!」
「なら制作会社として『今後人気間違いなし!可愛い過ぎるアイドル』を発掘したとしてニ大巨頭として売り込めばいい。そしたら主演の女優だけでなくアイが活躍したりオファーの声が掛かるたびに貴方らの制作会社の存在が必ず出てくる。今後の仕事の繋がりを築く為にも悪い話じゃないだろう?」
相手の目的は主演の女優を売り込みたいこと。ではそれはなぜか?単純だ。ブームの火付け役として売ってお金や権力を得たいからだ。おそらく主演女優の事務所と制作会社は繋がってる。
だから先程の違うコンセプトとして捉えて映像を残せば良いと言っても反対された。俺は別にドラマや映画の主演者として売ってくれとは一言も言ってない。
が相手はそう解釈した。
次に俺は別の提示をした。それは二大巨頭として売れば良いという話。
が言い方を変えてるだけで話してる内容は結局は同じ。コンセプトの違いを理解させること。強いていうなら売りたい畑は違うということと、貴方の会社の名前が徐々に知れ渡るという具体性を伝えたということだ。
この芸能界は凄い早さで勢力図が変わる。数年で人気だった人物は影を潜め新しい誰かがその座に就く。だから芸能界は短期集中型だ。
それ故に長期間売れ続けるのは凄い。それだけでこの芸能界の権力をある程度は握れる。
ではその方法は何か、いくつかある。単純なのは人物は短期集中型だが、そのバックにいる事務所やスポンサーは同じであること。超大手の芸能事務所は特に強い。売りたい・売らせたい人物が沢山いるからな。
「今すぐ数字として結果は出ないでしょう。だが彼女はとてつもない可能性がある。それは貴方達自身が良く理解してるはずだ。」
現場で直接見たからこそ分かる。彼女の才能、可能性。何のしがらみもなければきっと彼女を使いたいはずだ。だがそれが出来ないのが大人の世界。ならば
「彼女がアイドルとして今後活躍するという事は、俺たち事務所をはじめ、貴方達の会社の判断が、一部が、生き方が勝った、成功したということだ。────アイにやらせて俺たち、貴方達が勝った、成功したという事だ。だから彼女の未来への可能性を、才能を一緒に投資しませんか?」
大人は上手い言い訳を作らないとダメなものなのだ。なら言い訳材料を作ればいい。俺が彼女を凄く売り込んだ。とか所々彼女を売り込む時に「貴方達」と一言付け加えるだけで、あたかも自分も一緒にそうなんじゃないか?と思い込みやすい。
例えるなら今全く関係ないのにとあるスポーツチームのスポンサーステッカーに自分の会社のロゴがあったら皆こういうんじゃないのか?「うちのチームだ」って。正式にスポンサー契約してもいないのに。
「ふっ、私たちの負けだ。いや君の誘い言葉に乗った!ま、細かい契約内容は後日決めようじゃないか。そうと決まれば監督さん達に伝えないとね。」
「ありがとうございます。」
「にしても君、ルルーシュさんだっけ?期待してるよー?アイさんの今後の活躍。早く売れるように頑張ってね?」
「それなら安心して下さい。今回のドラマで彼女のシーンがそれなりにあれば、放送後にはsnsで話題になってるはずなので。」
「それって…どういうこと?」
「秘密ですよ。」
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そう言って彼は現場の方に向かって歩いていく。咄嗟に隠れたおかげでバレずに済んだ。
今回はプロデューサーという肩書きで同行してくれたけど、彼はうちの事務所の事務員と聞いてる。現場を観たいからプロデューサーという偽りの役割で来てるのに、まさか本当にプロデューサーとして?の事をしてくれてた。
こんな私をあそこまで売り込んでくれた。
それは仕事だから?それともこれが『愛』の一種なのかな?社長と違って強引な感じで関係者を巻き込んで次の仕事に繋げてる。嬉しいのかな?私は。