やはり俺の日常ラブコメはまちがっている。 作:ARuTo/あると
おやつな頃合い。一般的にはもう直ぐ夕方という事になるが、そうはいってもサマーな時期である。陽が傾くまでまだかなりの時間がある。二度もサイゼに行くわけにはいかず、俺達三人は店内を適当にうろついていた。ここは一つ、オシャンティーなカフェにでも立ち寄りたい所だが――
「……なんかあれだな。入る店が一向に思いつかない」
「そうね。大人や家族連れならまだしも、私達はまだまだ高校生なのだし、自然と選択肢も限られてくるんじゃないかしら」
「初っ端からネガティブだなぁ……。あっ、ここなんかどうですか先輩」
小町が指をさすのはクロワッサンの看板が印象的なカフェ。前に別の場所ではあるが、川なんとかさんがいたところだ。さり気なく後輩を装うのもイイ。いや、本当に後輩なのだが、なんせ血の繋がった妹なもので。つい事実が揺らいでしまってね?
「私は別に何処でも構わないけれど……」
雪ノ下はあくまで勧誘した比企谷家の意見を尊重するようで自然、視線を俺と小町に向けてきた。
「小町的にはここがベストだと思います!値段もリーズナブルですし。事前に調べておいたので問題ないと思います!」
小町はここしかないとばかりに豪語する。影で下調べを順当にこなしていたとは。流石は良くできた自慢の妹。
あれでも待てよ、この店はマリピにもあるが、ここは超ふかふかベットタウン便利な海浜幕張である。メニュー表を見ても値段がいつもより少し割高な気がする……。もしや、最初から海浜幕張に行く事になっていたのでは?あれ……?
我がアイドルの裏側、打算的な思惑に疑念を抱きつつ、うんともすんとも言えない唸り声と共に口を開いた。
「……うん、いや別に良いんだけどね」
気付けば、八幡サーチライトが自動点灯していた。店内を盗み見ながら言葉にならない違和感の正体を探す。あれぇ、なんでかな。何故か足を踏み入れてはいけない気がする。
「あれってもしかして……」
小町が小声で呟く。視線の先には青っぽい黒髪三人と一匹……いや、小さな子供を連れた家族連れが和気あいあいと午後のゆったりとした時間を楽しんでいた。内二人の顔には酷く見覚えがある。
「川崎か‥‥…」
口をついて出たのは同級生のサキサキだ。なんでいつも具体的な名前が出てこないのに今日はすんなりと出てきたのだろう……と、刹那、思案する。
「どうするお兄ちゃん……?挨拶していく?」
小町は優しげな柔らかい表情をしつつ、どこか申し訳ないといった感情も確かに滲ませていた。噂をすれば本人か。きっとフルネームが思い浮かんだのはそういう詫び錆び以前に、家族という一つのテリトリーに遭遇して背筋を伸ばすような緊張感に見舞われたからだろう。
「あの空気の輪に入るのは私でも難しい。流石に気が引けるわね……」
「だな……」
茶を濁すわけにもいかない。どうか茶柱の愛が立ちますようにと。そんな願いにも似た温かな感傷を抱きつつ、ほんの一時、光景を眺めて俺達はその場を後にした。