トランペットの音色   作:主義

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告白とトランペット

中世古先輩に「好きだよ」と言われて動揺していたところに先輩は「本気だよ」と追い打ちを掛けてきた。

 

 

「え……」

 

 

「私は本気で音海くんのことが好きだよ。でも、それに対する答えは今はいらないよ」

 

 

「………」

 

 

「音海くんは私が告白をしたら受け入れてくれるみたいに言ってくれた。それは素直に嬉しい。でも、私は音海くんの重しにはなりたくない。キミは優しいから私のことを受けいれようとしてくれると思う」

 

 

「………」

 

 

「だけど、これから部活も忙しくなるタイミングでキミに迷惑を掛けたくない。だから答えは私が卒業するまでに教えてくれたらいいよ」

 

そう話している時の中世古さんの顔はいつもと変わらなかった。

 

 

 

――――――

 

 

中世古先輩に好かれるようなことをした覚えはないと思っていた。それに中世古先輩みたいな人に好かれるなんて微塵も考えていなかった。

 

自分みたいな人間が……。

 

 

 

「僕はどうすればいいんだろうか……」

 

ここで告白を受け入れたとしてたら僕は中世古先輩と恋人同士となる。中世古先輩には申し訳ないけど、僕は先輩に対して恋愛的な感情を抱いていない。

 

もちろん尊敬している人だし、今まで色々とサポートしてもらったことも考えれば感謝しきれない恩人。

 

だけど、それは恋愛とは関係ない。

 

 

逆に告白を断れば、僕と中世古先輩は先輩と後輩という関係に戻れるかもしれない。

 

でも、こんな風に吹奏楽部が忙しい時期に中世古先輩を悲しませるようなことはしたくない。それに中世古先輩のような人だったらないと思うけど、もしメンタルが下がったりして演奏に影響が出るのを一番恐れている。

 

 

 

 

なら僕は中世古先輩に対してどういう答えを出すのが一番正解なのかな。そんなことを考えながら僕はいつものように音楽室に向かうことにした。

 

そこで僕がよく知っている人が目の前を歩いていることに気付いた。ここで声を掛けて彼女の機嫌を損ねるようなことをするべきではないのかもという気持ちとどんな関係であっても同級生だから挨拶ぐらいはするべきじゃないかという気持ちがせめぎ合っている。

 

 

 

数秒悩んだ末に挨拶はしっかりしておこうということになった。

 

 

 

「中川さん、こんにちは」

 

 

「…………」

 

 

「…話し掛けてごめんね」

 

 

返答が返ってこないとしてもここで挨拶をしないのはさすがにダメな気がする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして部室に着くと部長が急に抱き着いてきた。

 

 

「ど、どうしたんですか、部長!?」

 

 

「もう部長を辞めたい!全然みんなは同じ方向に行ってくれないし、もう無理!」

 

 

「そうですか。部長はいつも頑張っていますもんね」

 

 

「おとみくん~」

 

 

「はい、今は少しでも心を落ち着かせましょう。部長はどんな時も部のことを第一に考えて行動してくれていることを僕は分かっているので」

 

なるべく部長が落ち着けるように優しく語り掛ける。今の部の状態はそんなに良くないのは僕も分かっているつもり。顧問の滝先生に対してかなり嫌なイメージを持っている部員がいることも周知の事実。逆にしっかりと全国という目標に向かって頑張りたいと思っている子がいるのも事実。

 

 

だからこそ、部長も難しいんだと思う。どっちかに加担すれば、反対から反感を買うのは目に見えていますから。

 

 

 

「部長が頑張っているのは分かっているので」

 

 

「…うん。やっぱり私には音海くんが必要だ」

 

 

「僕でよければいつでも部長の助けになりますよ」

 

 

「本当に音海くんには一生私のことを支えて欲しいよ」

 

部長は本当に疲れているようなのでなるべく労うことにした。

 

 

「僕は部長が望むならいつでも支えますよ。部長がいつも部活のことで板挟みになって苦労しているので」

 

小笠原先輩のことを見ていると部長職は本当に辛いんだと改めて感じる。特に今みたいに部の中で内部分裂みたいなことが起こっているような時は胃がキリキリするよね。

 

 

すると田中先輩が笑みを浮かべながら近付いてきた。

 

 

「音海くんはこのまま吹奏楽部の女子を全員落とすつもりなのかな?」

 

 

「そんなつもりはありませんし、僕なんかに恋愛感情を抱いてくれるような方は数少ないと思いますし」

 

 

「これが無自覚って奴だね」

 

田中先輩はなぜか呆れたようにため息を付いた。

 

 

「黄前ちゃんも音海くんは罪な男だと思わない?」

 

 

「ど、どうですかね…」

 

明らかに黄前さんは答えづらそうにしているので、もしかしたら黄前さんも田中先輩と同じことを思っていたのかもしれない。自分的にはただ部長を気遣っていただけなんだけど…。

 

 

それからも田中先輩は後輩や同級生に「僕が罪な人だよね?」と問いかけ続けていて、結果的に多くの人が答えづらそうにしていた。

 




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