トランペットの音色   作:主義

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あんまり更新できなくてすいません。少しずつ更新していく予定なので気長にお待ちいただけると有難いです。


後輩

新入生との付き合いはやっぱり難しい。特に僕と同じトランペット弾く予定の高坂さん。他の一年生とはどうにかコミュニケーションを取れているんですが高坂さんに関しては話し掛けてもその答えが返ってこないことが多い。あんまり人と関わりたくない人なのかなぁと思ってここ最近は声を掛けないようにしている。

 

 

でも、吉川さんはどうやらちょっと高坂さんのことが気に入っていない感じで僕に「私じゃなくて高坂さんの方がいいの!?」と言っていた。その時はなるべく穏便に済むような言葉を吉川さんにかけたけど。元々、吉川さんも高坂さんに対して声を掛けたりしていたものの全然返答が返ってことなかったのでもう諦めてしまったんだと思う。高坂さんは一人で黙々と練習をしている感じですし。

 

 

 

―――――――――――――

 

 

 

授業が終わり、SHRも終わると部活がある人はどんどん移動を開始して教室にはほとんどもの家の殻になる。僕はそんな教室で窓から景色を眺めていた。

 

「もうちょっと後輩の子たちと上手くやっていかないと」

 

高坂さんは壁がある感じなのであんまり踏み込み過ぎるのは危険かもしれない。でも、それ以外の後輩の子たちは良い距離感を保って接していかないと。嬉しい事に僕によく話し掛けてくれる後輩の子たちもいる。パートとかも全然違うからあんまりアドバイスとかは出来ないけど、基礎的なことならちょっとぐらいはアドバイスできる。それに後輩の子に頼りにされているのにそれに答えられないのは避けたいですし。

 

 

 

 

「いた!!!」

 

 

後ろから大きな声が聞こえて振り返るとそこには吉川さんがいた。ちょっと髪がボサボサになっちゃってる。どうしたんだろう。

 

 

「吉川さん?」

 

 

「なんで音楽室にいないのよ!?」

 

 

「たまには外の景色を眺めたいなぁと思ってしまって」

 

 

「それならあたしに連絡しなさい。あんたが音楽室にいないから帰っちゃったのかと思って慌てちゃったじゃない!」

 

 

「すいません」

 

僕が探しているうちに普段は整えられている髪がボサボサになっちゃったのか。吉川さんに心配を掛けてしまうような真似はしないようにしていたんですが。

 

 

「分かればいいの。早く行くわよ。今日は新しい顧問の先生が挨拶に来るみたいだし」

 

 

「あ、確かに今日でしたね」

 

顧問の先生が代わるのは春休みの頃から噂になっていた。でもその後任の先生に関しては全く分かっていなかった。最近になってどうやら新任の先生らしいという話が入ってきた。

 

そしてその先生が今日来るということで昨日の部活では話題に上っていた。

 

 

 

 

 

それから僕は吉川さんに腕を引っ張られつつ、音楽室へと向かってる。

 

「逃げないので手を離してくれませんか?」

 

さすがにこんな風に引っ張られているのはみっともないですし。

 

 

「だめ。あんたはしっかりと捕まえておかないとどっか行っちゃうんだもん。しっかりとあたしが掴んでいるからどこにも行かせない」

 

 

「いや大丈夫ですよ。どこにも行きませんって」

 

いくら言っても吉川さんは腕を離してくれることはなくてずっと掴まれたまんま音楽室へと着いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

そして僕が着いた時には新しい顧問の先生がまだ挨拶をしている程度だった。新しい顧問の先生の第一印象は『人が良さそうな人』だった。顔立ちも整っていますし、声を聞いた感じだととても優しい声色。でも、それから新しい顧問の滝先生は色々と嵐を起こした。

 

先生が立ち去ると音楽室は不平や不満がどんどん飛び交う。僕はそんな様子を見ながら自分に問いかけた。滝先生の言ったことを簡単にまとめると『本気で部活をやるか』『緩い感じでやっていくか』ということ。僕はどちらにも手を上げることは出来なかった。

 

でも最終的に本気で部活をやる方向で向かうことになった。この決定に不平不満が出るのは仕方のないことで止めようとしても止められない。

 

 

「中世古先輩」

 

 

「大変なことになっちゃったね」

 

 

「そうですね」

 

すると中世古先輩は僕の隣の椅子に腰を下ろした。

 

 

「これから大変なことになりそうですね」

 

部内の方針として本気で部活をするようなことになったのでどちらにしても忙しい。滝先生がどれくらいのことを望んでいるのかは分からないですけど、今まで以上に忙しくなるのは確実ですし。

 

 

「そうだね」

 

 

「でもよかったです」

 

中世古さんは首を傾げている。

 

 

「この部活は年功序列な感じだったんで僕みたいな人にもいずれはコンクールで弾くチャンスが来ちゃいますから僕よりもうまい後輩がいたとしても。でも本気でやることになればコンクールもオーディション的な感じだと思いますし」

 

唯一これだけは有難い。これで変な心配をせずに済みますし。それに特に高坂さんは僕よりも圧倒的に上手い。そんな高坂さんを一つだけ学年が上の僕が活躍するチャンスを一回でも奪ってしまうのは悪い気がしていた。

 

 

「音海くんは上手いよ。もっと自分の音色に自信をもってよ。私はキミの音色がとっても好きだし、いつも勇気をもらってるの」

 

中世古先輩は僕に気を遣ってこんなことを言ってくれるんだと思うけど、それでも嬉しいという気持ちはある。自分の音色を聞いてくれる人がいるというのは。

 

 

「それに私で出来ることならなんでも教えるよ。私なんかが教えられることが多いとは思わないけど少しでも音海くんの役に立てるのなら」

 

そう話している時の中世古先輩はいつもの余裕がある感じではない気がした。これはあくまで僕が感じたものなのでもしかしたら全然違うのかもしれないけど。

 

 

「はい、中世古先輩のような頼りになる先輩をもって僕は幸せ者です」

 

これほど頼りになるような人が近くに居てくれるのは本当に有難い。なるべく迷惑を掛けたくないけどここまで先輩の方から言ってくれているんだし、頼りにさせてもらおうかな。僕なんかのためにここまで言ってくれるような人はそんなに多くないですし。

 

 

「香織先輩だけじゃないわよ!」

 

そんな声と共に僕の背中がすごい勢いで叩かれた。

 

 

「…いたいですって……吉川さん」

 

吉川さんはちょっと加減というものを知らないようで全力で叩かれた気がする。多分、背中は赤くなっているだろう。

 

 

「私だってあんたのためなら…がんばるから」

 

 

「ありがとうございます」

 

 

「そ、それぐらい当たり前よ!私があんたのことを吹奏楽部に誘ったんだし、あんたが困っているなら助けるのは普通のことよ!」

 

確かに吉川さんから誘われてなければ中世古先輩や他の先輩や同級生、後輩と出会うこともなかったと思う。だから僕は吉川さんに感謝している。今の僕がこんな風にトランペットに夢中に慣れている理由も吉川さんですしね。

 

 

「そうですか?」

 

 

「そうよ。だから分からない事があったら少しでも頼って来なさい。そうすればなんでも教えてあげる…わよ」

 

 

「ありがとうございます」

 

 

「お、お礼を言われるようなことじゃないわよ……」

 

有難いことに僕の周りには頼りになる人たちがたくさんいる。本当にこの巡りあわせは感謝しかない。

 

 

 

 

 

 

それから皆は不平不満を言いながらも練習を始めた。さすがにずっと言っていても何も始まらないし、これからのことを考えれば練習を積んでおいた方がいいという結果に至ったんだと思う。

 

そして僕もとにかく今の状態であれば確実に今の部活ではお荷物になってしまう。少しでも上達するために練習を惜しむ訳にはいかないですし。

 

「あ、あの…」

 

なんか背中に重みとかすかな声が聞こえた感じがして振り返るとそこには一年生の川島緑輝さんがいた。

 

 

「どうしたんですか?僕に何か用かな」

 

川島さんは後輩の中でそれなりに会話を交わす方。初対面の時に友達からもらったストラップのことでかなり話が盛り上がった。どうやら川島さんはそのキャラクターのことが好きなようでそのキャラクターについて熱弁していたのが印象に残っている。

 

 

「あの…コントラバスって緑の他にはいないんですよね」

 

 

「うん。そうだね。コントラバスをやっている子はいないかな」

 

 

「…れ、れんしゅうをしたいんですがどこを使えば…」

 

 

「あ、そのこと。それなら僕の方から部長に言っておいたからこの教室で」

 

僕は小さな紙を川島さんに手渡した。この紙にはその教室の行き方を書いておいた。川島さんは入学して間もないですしね。

 

 

 

さすがに今までいなかったのでバート事に練習する時に使う場所も決められていなかった。川島さんが弾いているコントラバスをやる人はうちの部活にはいないからね。だから早いうちに部長に言って場所を確保して貰った。

 

「あ、ありがとうございます!」

 

 

「ううん。川島さんのためなら頑張るから」

 

やっぱり話せる後輩のことはとても大切にしないと。失望されないように。

 

 

 

川島さんはなぜか僕から視線を逸らしてどこかに走り去ってしまった。

 

 

「嫌われちゃったのかな…」

 

自分的には嫌われるようなことをした覚えはないんだけど。もしかして何か言葉選びをミスってしまったのだろうか。

 




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