トランペットの音色   作:主義

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突然の告白

放課後の校舎裏。目の前の彼女はとても緊張した面持ちで僕の方を見ている。

 

 

「いつもあなたのことを見てました。あなたが話し掛けてくれた日のことを今でも覚えてるんだ。いつからか…私はキミのことを好きになってたの。だから…私と付き合ってください」

 

彼女の足はとても震えているし、言いながらも手が震えていた。彼女は一世一代の勇気を出して、僕への気持ちを伝えてくれたんだ。その気持ちにしっかりと向き合って答えてあげないといけない。

 

 

「ごめんなさい。僕のことをそんな風に思ってくれたことは嬉しいけど、その気持ちに答えることはできないんだ。本当にごめんなさい」

 

僕の言葉が彼女を傷付けてしまっているのは分かっている。それでもこの言葉を言わないと彼女はずっと僕に囚われ続けてしまう。彼女が僕への気持ちをきっぱり捨てて、次に向かうにはしっかりと言ってあげないといけない。

 

告白をしてもらえるのは嬉しいけど、いつも相手の気持ちを踏みにじってしまう時が一番辛い。だけど、好きでもないのに付き合ってしまったら、自分に対して特別な感情を抱いて、勇気を出して告白をしてくれた人に対して失礼だと感じる。

 

 

彼女はその後しばらく泣いてしまった。でも僕が彼女に何もしてあげられない。

 

 

 

 

――――――

 

僕はしばらくして校舎裏から戻って、音楽室へと向かっている時に中世古さんと出会って、一緒に行くことになった。

 

 

 

「音海くんってモテるよね」

 

 

「そんなことないですよ」

 

 

「さっきだって告白されてたよね?」

 

 

「見てたんですか?」

 

 

「ごめんね。さっきゴミ捨てのために校舎裏に行ったらばったり見ちゃって…」

 

 

「いえ、見られて困るようなこともないので」

 

それでも彼女のためにも中世古さんにこれだけはお願いしておかないと。

 

 

「でも、中世古先輩のことは尊敬していますし、言うまでもないと思いますが……」

 

 

「あの子が音海くんに告白したことは誰にも言わないで欲しいってことだよね?」

 

 

「はい、彼女はこれから次に向かって歩いていくと思うので、その時に僕に告白したという噂で彼女の足枷になりたくないので」

 

 

「本当に音海くんは優しいね…」

 

 

「そんなことはないと思いますけど、先輩にそんな風に思ってもらえたのなら光栄です」

 

すると中世古先輩は急に足を止めた。

 

 

「どうしたんですか?中世古先輩」

 

 

「…………」

 

 

「保健室に行きますか!?」

 

 

「…ううん。大丈夫」

 

 

「ほんとうに大丈夫ですか?」

 

 

「うん」

 

 

そしてまた歩き出す。

 

「音海くんさ、もし私が告白したらどうする?」

 

 

「…それは分かりませんね。今の僕にはトランペットのこととコンクールのことしか頭に入っていないので。でも、誰から告白されたとしてもその気持ちには向き合うと思いますね」

 

 

「それは答えじゃないよ」

 

中世古先輩はまた足を止め、隣の僕との距離を詰めてきた。

 

 

「私が告白をしたら受け入れてくれるの、拒絶するの?」

 

そう問いかけて来る中世古先輩の目は…中途半端な答えを許してくれそうになかった。

 

 

「中世古先輩って後輩に難しい質問をしますね」

 

 

「ごめんね、でも聞いてみたくて」

 

そして僕はしばらく考えてから答えを口に出す。

 

 

「受け入れるか、拒絶かで問われれば受け入れる方向かもしれないですね。僕は中世古先輩と部活だけですけど、一緒に過ごしてきて尊敬できるところがたくさんありました。そんな人が自分のことを好意的な目で見てくれるのは素直に嬉しいですから」

 

これが今にできる精一杯の答えだった。これ以上のことは言えないし。

 

 

「そっか…。音海くんは私が告白をしたら受け入れてくれるんだね」

 

 

「…そうですね。そんなことは絶対にないと思いますがね」

 

 

「なんで絶対にないと思うの?」

 

 

「中世古先輩が僕を好きようなことはないですし。中世古先輩にはもっと素晴らしい方がお似合いですから」

 

学校内でも中世古先輩のことを狙っているような人はたくさんいるし、こんなことを言ったらダメだと思うけどやっぱり引く手あまた。それに吹奏楽部に所属しなかったら絶対に中世古さんと接点を持っていなかっただろう。

 

 

「私は音海くんのことを…魅力的な人だと思ってるよ」

 

 

「ありがとうございます」

 

 

「…お世辞だと思ってるでしょ?」

 

 

「はい」

 

 

「音海くんはもっと自分のことを認めてあげてもいいと思う」

 

 

「…そうですかね。自分のことは自分が一番分かっているつもりなので」

 

 

「分かってないと思うよ。だって私が音海くんのことをどう思っているのか分かってないんだよね?」

 

 

「え…普通の後輩の一人じゃないですか」

 

 

「全然違うよ…。音海くんにはこれぐらい言ってあげないといけないかな」

 

すると急に中世古さんはもっと距離を詰めてきた。お互いに密着するぐらいに…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…私は本気で音海くんのこと好きだよ」




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