女の子はひとりだけ! 男だらけの結束バンド 作:koshikoshikoshi
ぼっちは悩んでいた。結束バンドのギターボーカルについて、だ。
結束バンドは、虹夏ちゃん、リョウさん、そして喜多ちゃんがいないと成り立たない。
だけど、この世界の喜多ちゃんは、……ちゃんと女の子なんだろうか? もしかしたら、伊地知さん兄弟と同様に、男の子かもしれない。そうだったらどうしよう?
同じ学校にいるはずなのだから、実際に会ってみて確かめればいいのだが。だけど、他のクラスの人に会いに行くなんて、人生二度目のぼっちにとっても難しい。
そのうえ、もし、もし、もし喜多ちゃんが本当に男の子だったら……。ぼっちの方から声をかけるなんて、ぼっちがぼっちである限り、たとえ人生を何回繰り返しても絶対に不可能な話だ。
どうしよう。
考えれば考えるほど、気持ちが落ち込んでいく。こーゆー時は……。
前世同様、ぼっちは階段下のお気に入りスペースに引き籠もる。薄暗くて湿度が高くてカビ臭い空間にいると、なぜか落ち着く。誰もいるはずのないそこで、いつものようにギターを掻き鳴らす。
ジャンッ、ジャジャンッ、……聴いてください。
『憂鬱な日々〜、増えてくトラウマ〜、いらない私の負の遺産〜』
うん。良い調子。このまま明日の朝までだって、弾いていられそう。
辛いとき、先延ばしたいことがあったときは、ギターを弾けば良いのだ。前世でもこの人生でも、一心不乱にギターさえ弾いていれば、大抵のことはなんとかなった。そう、こうしていれば、きっと喜多ちゃんともまだ巡り会えるに違いない! ……なんてね。
さすがに人生二度目のぼっちは、それが現実逃避でしかないことくらいは自覚している。だけど、それでも、ギターはとまらない。
パチパチパチ
びくっっ!
ぼっちの背中が跳ねた。唐突に、背後から拍手の音が聞こえたのだ。
き、喜多ちゃん? まさか本当に、喜多ちゃんの方から来てくれた?
「すごいね、感動したよ。後藤さん、……だよね。ギター上手いんだね! バンドでもしてるの?」
え、え、え?
拍手に続いて声をかけられ、ぼっちの心臓が悲鳴をあげる。前世で喜多ちゃんと出会った時の台詞が、男の子の声で聞こえたのだ。
ま、まさか。
おそるおそる顔をあげる。振り向く。そこに居たのは、……チャラいイケメンだった。
ひーーー。
虹夏ちゃん(♂)の時も、店長さん(♂)の時も、同じような悲鳴をあげていたような気がする。我ながらワンパターンの反応だと思いつつも、それでもやっぱりこのシチュエーション。悲鳴をあげずはいられない。
「おっと邪魔してごめん。オレ隣のクラスの喜多郁代。後藤さんバンドやってるの?」
ちょっとパーマの赤い長髪。ピアス。ちゃらちゃらしたアクセサリー。開いた胸元。そして美男子。眩しいオーラ。背景にキラキラ星がとびかう、まるで少女マンガの王子様のような。
「あ、え、あ、……あ、は、はい」
(き、喜多ちゃん? ……こんなちゃらくてパリピっぽい男の子が、本当に喜多ちゃん? いえーい、とか言ってるの?)
ここで爆発四散せずに返事ができただけでも、ぼっちとしては大きな大きな進歩だと言えよう。
「ねぇねぇ他にも何か弾ける? 弾いてよ?」
初対面(?)の隂キャ女子に向かって、いきなり親しげな口調。そしてさりげなく肌が触れあうほどすぐ横に座り込むイケメン。
(う、うわーー近い! そしてやっぱり、男の子になっても喜多ちゃんまぶしい! 眩しすぎて直視できない!)