女の子はひとりだけ! 男だらけの結束バンド   作:koshikoshikoshi

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逃げないギター その2

 

 

 虹夏(♂)があわててぼっちの肩を掴み、控え室の外へ連れ出した。

 

「え、え、り、リョウさんは、どうして脱ぎ始めたんですか? 何を見せちゃうんですか? いったい何が始まるんですか? ケ、ケンカになっちゃったら、リョウさんが……」

 

「あー、ぼっちちゃん。たぶんケンカにはならないと思うから、安心して」

 

「え?」

 

「リョウは大丈夫だから心配いらない。喜多は、……かわいそうに」

 

「え? え? え?」

 

 ぼっちには訳がわからない。

 

 

 

 

 

 二人きりになった控え室で喜多(♂)と対峙するリョウ。立ち上がり、ゆっくりとシャツのボタンを外し始める。

 

「うわ! や、山田先輩? いったい何を?」

 

 あわてて目をそらし、後ろを向く喜多(♂)。

 

「喜多郁代、こちらを見てくれ。……すまない。決して騙すつもりも隠すつもりも無かったんだが、見ての通り、ボクは……男なんだ」

 

 え? えええ?

 

 上半身をさらしたリョウが高らかに宣言する。すまないと口では言いつつ、まったくすまなそうな顔をしていないのがいかにもリョウなのだが、今の喜多(♂)にそんなことを感じる余裕はない。

 

「そして、ボクも恋愛対象としては女の子が好きだ。だから君の想いに応えることは出来ない。……本当に、すまない」

 

「う、うそだろ……」

 

 

 

 

「……そろそろいいか」

 

 そっと虹夏(♂)がドアの隙間から覗き込む。すべてが終わったことを確認後、ぼっちと共に部屋の中に入る。

 

 ぼっちがそこで見たものは、がっくりと床に膝をついた喜多(♂)。全身がプルプルと震えている。その前、服装が乱れたままなぜか誇らしげな顔のリョウ。

 

「い、い、いったい、何が、あったんですか?」

 

「……ふふふふ、自分の美しさが恐い」

 

「だーかーらー、リョウ、普段から誤解されないような格好しろっていつも言ってるだろ!」

 

「仕方が無い。ボクはロックンローラーだ」

 

 ???? ぼっちは頭をひねる。ふたりが何を言っているのか、さっぱりわからない。

 

「あー、喜多。無理かもしれないが、あまり落ち込むな。今まで何人もの男が、こいつの外見にだまされてきたんだ」

 

 虹夏(♂)が慰める。

 

「それ、慰めになってねぇから!!」

 

 泣きながら、叫びながら、喜多(♂)は立ち上がる。そしてダッシュ。足元をふらつかせながらも、とにかく必死にその場から逃げだそうとする。

 

 あー、やっぱりかぁ……。逃げだしたくなるもの無理はないよなぁ。

 

 虹夏(♂)があきらめ顔でつぶやいた。似たようなことは今まで何度もあったのだ。

 

 

 

 

(よ、よ、よくわからないけど、こ、こ、このままだと、結束バンドが!)

 

 だが、そんな喜多(♂)を止める者がいた。

 

「き、き、喜多君、まって!」

 

 声をかけたのは、もちろんぼっちだ。あたまの中はまだまだ混乱しているが、ここで喜多(♂)を逃がすわけにはいかない。

 

「な、何が何だかよくわからないけど、逃げちゃダメです! 喜多君!!」

 

 ……が、たとえぼっち二度目の人生でも、運動神経までは改善されていない。

 

 喜多(♂)に追いつくどころか、ぼっちはその場で脚を絡めて大転倒。ついでにSTARRY店内の備品やらコードやらを巻き込み、大惨事となってしまう。

 

 どんがらがっしゃーん!

 

「ご、後藤さん!」

 

 さすがに喜多(♂)も立ち止まる。助け起こそうとした喜多(♂)にぼっちがすがりつく。そして叫ぶ。なけなしの勇気を振り絞る。

 

「あ、き、喜多君! 喜多君の指、先の皮が固くなっていますよね!」

 

 はっ? あ、ああ。

 

「かなり、ギター、練習していたんですよね!」

 

 そ、そ、それほどでも、ない、よ。

 

「本当は、バンド続けたかったんじゃないですか!」

 

 えっ? 

 

「た、たとえチャラくても、女の子が好きでも、喜多君は努力の才能は人一倍あります。わたし、知ってるんです。ぜったいに大丈夫です。だから、……だから、結束バンド、いっしょにやりませんか?」

 

 床に這いつくばりながら、ピンクの髪を振り乱し、必死の形相で叫ぶ少女。

 

 喜多(♂)はその場から動けない。どうしてよいのかわからない。

 

「……なぁ喜多、これも何かの縁だからさ。オレ達の結束バンド盛り上げるの手伝ってくれよ。リョウもそれでいいだろう?」

 

「ぼっちがここまで言うんだから問題ない。チャラいビジュアル系のギターボーカルがいれば女性客が増えるし、いいよ」

 

 先輩……。

 

「わ、わ、わたし、喜多君と、結束バンド一緒にやりたいです」

 

 至近距離、涙を浮かべた深い深い蒼色の瞳が、喜多(♂)の顔を見つめている。

 

 喜多(♂)の心臓が跳ねた。脳のもっとも深い場所が焼かれたような気がした。

 

「わかった。後藤、さん。……オレがんばる」

 

 

 

 

 こうして、結束バンドのメンバーは、ぼっちの前世と同じ4人が揃ったのだ。(性別が同じとは限らない)

 




 
 
ようやく結束バンドメンバーが揃いました。
次回からは週一くらいのペースになると思いますが、気長にお付き合いいただけると幸いです。
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