女の子はひとりだけ! 男だらけの結束バンド   作:koshikoshikoshi

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虹夏ちゃん(♂) その2

 

 男の子の虹夏ちゃん。

 

 背はけっして高くない。男の子としてはむしろ小さい方だろう。でも、スポーツやってそうな筋肉質な体格。もちろん髪の色は、とても綺麗な金色だ。

 

 その虹夏ちゃん(♂)が、ひとりの手をひいて歩く。まっすぐにずんずんと歩く。ギターケースを背負ったひとりは、ついていくのがやっとだ。

 

「あ、あの、すいません、虹夏ちゃ・・・、じゃなくて伊地知君!」

 

 ひとりは、決死の思いで声をかけた。

 

「なに?」

 

「そ、その、あの、ちょっと、……手を」

 

「えっ?」 

 

 ……、はっ! 

 

 その時になって初めて、女の子の手を握っていたことに気づいたのだろう。虹夏(♂)があわてて手を離す。

 

「ご、ごめん。気安く手をひいちゃって。ギタリストが見つかって嬉しくて、つい……」

 

「い、いいえ。こちらこそ、つまらないものを握らせてしまって、ほ、ホント、もうしわけないです」

 

(わ、私の手、汗かいてなかったかな? 気持ち悪くなかったかな? 指が硬い女とか、思われなかったかな?)

 

 ひとりの心の中、生まれて初めての感情がわき上がる。一方で、虹夏(♂)の顔は僅かに赤くなっていた。お互いに視線をそらしながら、むりやりに話題を変えようとする。

 

「そ、そういえばひとりちゃ、……後藤さんはさ、バンド組んでないの?」

 

(記憶にある会話と同じだ。虹夏ちゃん男の子でも変わらない。……ちょっと安心)

 

「あ、バ、バンドはやってません、今はまだ。普段はカバーを弾いてネットにあげたり……してます」

 

「へぇ! カバーといえばさ、オレ凄い気になっている人がいるんだ。ギターヒーローって名前で滅茶苦茶上手いって一部で評判な人。知ってる?」

 

「え、……ええ」

 

「オレ、ギターヒーローさんが動画あげるのいつも待ってるんだ! 君もギターやるならそうだろ!!」

 

 よほどギターヒーローが好きなのだろう。虹夏(♂)はひとりの両肩をつかみ、一気に顔を近づける。息がかかるほどの近距離から、ギターヒーローの素晴らしさを熱弁する。

 

 え、あ、あ、……あ、ありがとう、ございます!

 

 ひとりの全身から力がぬけた。へなへなと、その場で地べたに座り込む。

 

(やっぱり、やっぱり、……この人は虹夏ちゃんだ!)

 

 ひとりは感極まってしまった。人生を繰り返してからひたすらギターばかりを弾いてきた。それもこれも、すべては虹夏ちゃん達に再び出会う日のためだった。今日までの日々がついに報われた気がした。

 

 ぽろ、ぽろ、ぽろ。

 

 そして、瞳から涙がこぼれおちる。自分でも意識しないままに。

 

 え、なに? なにが? オレなんか悪いことした?

 

(この娘、情緒が不安定すぎる! ……いや、もしかして、女の子ってみんなこうなのか?)

 

 伊地知虹夏(♂)17歳。この瞬間、彼の人生がおおきくかわってしまったことに、彼自身はまだ気付いていない。

 

 

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