女の子はひとりだけ! 男だらけの結束バンド   作:koshikoshikoshi

7 / 35
はじめてのライブ その3

 

 後藤ひとり、さん。

 

 蒼い瞳に桃色の髪の女の子。ライブ直前、公園で偶然見つけた野生(?)のギタリスト。

 

 後藤さんの特徴をひと言でいってしまえば、……かなり個性的な女の子だ。

 

 オレは、決して見かけの外見や言動で人を判断しない。もともとバンドやってる奴なんて、見た目も振る舞いもろくな奴はいないことをよく知ってるからな。でも、それでも、ピンク色のジャージにギターケースを背負った女子高校生というのは、ちょっと珍しいと思う。

 

 しかも性格は、……人見知り、なのだろう。それも人並み外れた。

 

 出会ってからそれほど時間はたっていないが、後藤さんはいつもうつむいている。正面から話していても、決して人の目を見ない。発言はかならず『あっ』か『うっ』からはじまる。

 

 その上、情緒不安定。すぐ落ち込む。座り込む。泣き出す。気付くとゴミ箱に入り込んでヤドカリみたいになっていればましなほうで、油断すると粉になったり溶けたり面ダコやツチノコになっている。

 

 そんな後藤さんにリョウが命名したあだ名が『ぼっち』。

 

 酷いと思ったが、本人は喜んでいるようなので、これでいいのだろう。仕方が無い。

 

 とにかく、学校にも、バイト先にも、あまり居ないタイプの人だ。

 

 ここだけの話、オレは女の子と親しくお付き合いしたことがない。だから、後藤さんの見せる一見異常な生態が、彼女だけの特異なものなのか、それとも女の子一般のものなのか、判断できない。

 

 正直、どう接すればいいのかわからない。バンドに誘ったことも、ちょっとだけ後悔していたくらいだ。

 

 でも……。

 

 

 

 

 ライブ本番。

 

 開店したばかりの店。決して多くはないお客さん。店長からお情けで機会をもらった思い出作りライブ。前座の前座である結束バンドの演奏になんて、誰もまったく期待してなかった、はずだ。

 

 その観客達が、ぼっちちゃんのギターが始まった途端に静かになった。度肝を抜かれてあっけにとられ、そして総立ち。

 

 ぼっちちゃん。楽譜渡したばかりなのに、どうしてそんなに正確に弾けるんだ? ただ上手いだけじゃない。緊張でミスしまくりのオレとリョウを、やさしくリードしてくれた、……んだよな、あれは。まだまだドラムはぜんぜん未熟なオレだが、それくらいはわかる。

 

 そして、ソロ。文字通りの圧倒的な技術。音圧。表現力。

 

 猫背のまま、桃色の髪を振り乱してギターを掻き鳴らす小さな身体。ステージの上、強烈なスポットライトの逆光の中、後ろからみた彼女の影はまるで……天使。

 

 オレは、STARRYで演奏するギタリストは何人も生で見てきた。けど、プロを含めたって、後藤さん以上の演奏なんて見たことが無い。

 

 ぼっちちゃん。初ライブの数時間前に君と出会ったのは、本当に偶然なのか? 運命? これがカルマって奴?

 

 ライブ終了後、感激のあまり力いっぱいぼっちちゃんを抱きしめてしまったオレを、いったい誰が責められようか。

 

 

 

(追伸)

 

 ここだけの話だが、抱きしめたぼっちちゃんは、壊れちゃうかと思うくらい華奢で、同時に柔らかくて、いいにおいがした。そして、次の瞬間びっくりしてその場で溶けてしまった。オレが100%悪いのはわかっているが、……女の子ってみんなこうなのか?

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。