魔界最強の魔族になったが、魔王様から勇者と別世界の魔王軍を倒してくれと頼まれたのだが!?   作:リーグロード

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初陣は圧倒的にして無双

 仙人のような隠居生活を送りながら、日々を送っていた俺に魔王様から援軍の要請を受けて謎の軍隊への対抗策として呼び出されたわけなのだが……。

 

「まさか、敵さんが()()()()からやって来るなんてな……」

 

 次元の海とは魔界と人間の狭間にある空間であり、海と言っても海水などはなく、ただ広大な範囲で広がっていることから海と名付けられただけだ。

 そこは砂漠の陽炎のように空間が歪んでおり、暑くもなく寒くもない不思議な空間で、別に禁域という場所でもなく、普通には入れて真っ直ぐ進めば魔界と人間界を行き来することが出来る場所だ。

 

 しかし、下手に次元の海でウロチョロと動き回れば、まったく予想だにしていない場所へ辿り着くという結果にもなるらしい。

 

「いや~、次元の海の研究に携わる者達から聞いた話では、相手の軍隊はあの謎の現象を解明して長距離移動に使っているのではないか?という説が出てるんだよ」

 

「いや、なんでアンタがこんな所にいるんだよ」

 

 ここはかつて人間との戦争に使われていた旧砦で、今は先の謎の軍隊による侵略を受けてボロボロに朽ちてはいるが、俺の寝床にするには丁度いいということで利用しているのだが、何故か俺の隣に魔王様が居座っている。

 

「いや、君の力を信用はしているが、それでも敵の軍が新たにどの規模で侵略を開始してくるのかは統治者として当然知るべきところ。それに、ここならば敵がやって来ても直ぐに察知出来るし、君が戦闘を開始するまでに逃げることぐらいは出来るだろ?」

 

 ん?と有無を言わさぬ雰囲気を押し寄せてくるが、俺はアホかと言い返す。

 そもそも、敵の規模が知りたきゃ部下をよこせばいい。逃げるにしろ、そんな場所に統治者がやって来ていい訳があるか。

 

 軽く説教でもしてやろうかと口を開こうとした瞬間、俺の感知能力(センサー)に何者かがやって来るのを捉えた。

 即座に砦から次元の海が見える見晴らしのいい屋上まで移動して身構えると、そこには次元の海の向こう側からこちらに向かってくる。

 

 見た感じ人型の竜、リザードマンのようなタイプが1万近く隊列をなして侵攻してくるのが見えてきた。前に魔王様が見せてきた紋章が入った鎧を着こんでいた。

 

「あ~、確かにありゃ強いな。見た感じ鎧がどうこう以前にあいつらの鱗からして並みの武器じゃ弾かれて終わりだろう」

 

「よく見えますね。私もそこそこ視力がいい方なんですが、双眼鏡で覗き込まないとこの距離からじゃまともに見えませんよ。流石は魔界最強の男、視力1つとっても常識外れだ」

 

「おだてるなよバカヤロウ。さて、俺の言った条件は忘れてねえだろうな?」

 

「勿論、私はここから離れさせてもらうよ。もし何かあればこれで連絡をくれれば結構ですので」

 

 そう手渡されたのは魔界で最もよく使われれる通信装置の1つである伝言水晶(メッセージフォン)と呼ばれる端末だ。

 これには登録した端末にしか連絡を飛ばせないという欠点はあるものの、その通信距離は魔界の端から端まで届く有能さを秘めている。

 

「了解。パパッと終わらせて勝利報告をしてやるから安心して逃げてな」

 

「ああ、期待して待っておこう!」

 

 互いにグッと親指を立てて健闘を祈った後、俺は敵軍へと向かう。

 

「さて、この砦は俺の寝床なんでな。悪いがここを巻き込まない位置でやらしてもらうぜ!」

 

 俺はスキーのジャンプ台のように氷の道を生成し、背中から炎を噴出して勢いよく空へと飛び出した。

 その速度たるや、前世のジェット機にも勝るとも劣らないスピードで敵の軍隊にへと接近していった。

 

「っ!全軍止まれ!!何者かがこちらに向かって飛んでくるぞ!!」

 

 軍を指揮しているであろう、他のリザードマンよりも体格も鱗も上位互換みたいな奴が声を上げて指示を出すと、軍団全体が進軍をやめてその場で停止をする。

 俺は炎の勢いを調整して、そんな奴の目の前に降り立つ。

 

「よお、こんないい天気にお仲間連れてピクニックか?」

 

「ぬかせ、我らは竜騎士兵団!魔王軍最強の歩兵部隊なり!!そんな我らがピクニックなどとお茶らけた目的でやって来たわけではないわ!!」

 

 まさか、挨拶代わりの挑発にこうまで乗ってくるとは驚きだが、それよりも気になる事をコイツは口走りやがった。

 

「魔王軍だ?ふざけてんのか、テメェは……?俺はテメェらみてえな軍隊は知らねえし、そもそも、そんな奴らがなんで魔界に喧嘩吹っ掛けてきやがる!?」

 

「はっ、笑わせるなよ。我らは貴様らとは別の次元、それも上位世界から来た存在だ!あのような貧弱な魔王軍と一緒にされては困るわ!!」

 

 そんな奴の言葉に後ろにいるリザードマン共も一緒になってガハハハッ!と笑ってきやがる。

 っにしても、別の世界の魔王軍ときたか。それもここよりも上位世界の存在。

 

 あれか?ラノベとかである勇者召喚の儀式で呼ばれた生徒にスキルとかあるのは上位世界の存在だからみたいな設定のやつに近いものだろうか。

 とすると、こいつら一体一体がこの世界の連中にとってのチート野郎ってことか。

 

「なるほどな、道理でウチの軍の連中やオウルのオッサンとこの傭兵団も相手にならなかったわけだ……」

 

 俺が1人納得していると、笑い終わった将クラスのリザードマンが元々睨んでいるような眼つきを更に細めて伸ばしていく。

 そして、口を開くと同時に魔力の込められた殺気をぶつけてくる。

 

「さて、無駄話がすぎたな。それで、貴様はたった1人で我らの前にノコノコと顔を出して何しに来よった?まさか、たった1人で我ら誇り高くも最強と謳われる竜騎士兵団を止めに来た。なんて冗談を吐きにでも来よったか?」

 

「んな訳ねえだろ。こっちは冗談抜きでテメェらよそモンを叩き潰しに来たんだよ!悪いが、速攻で黒焦げにさせてもらうぜ!!!」

 

 俺は奴からの殺気の籠った言葉を耳をかっぽじりなががら否定して左半身から大量の炎を発火させる。

 それが開戦の合図となって、敵さんのリザードマン達が一斉に動き出す。

 

「動きがノロイんだよ、クソトカゲ共!核の炎の威力を知って逝け」

 

「「「「「グオオオオォォォ!!???」」」」」

 

 前にオウルのオッサンと戦った時のような加減したものではなく、全力全開の広範囲による一撃をブチかます。その火力は凄まじく、まるで太陽が降ってきたかのような熱量と光を発しながら敵を飲み込んでいき、あっという間に敵の軍勢を全滅させた。

 

 周囲は焦土と化し、辺り一帯は見るも無残な焼け野原へと変貌してしまった。

 いくら上位世界からやって来たチート野郎共といえど、このレベルで焼き尽くされれば生きてはいないだろう。

 若干、魔王様から直々に依頼されたことだからマシな戦闘にはなるかと期待していたのだが、結果はご覧の通りの一撃死で終わりだ。

 あれだけいた1万近くの軍隊も、流石の核の炎には敵わないってことか……。

 

 一応、確認のために少しだけ残った炭の塊となった死体を踏みつけてみるが、反応はなし。どうやら完全に仕留めたようだ。

 とっとと魔王様に勝利報告でもするとしようかね。

 

「……マジか」

 

「………」

 

 俺が勝ちを確信して早速報告する為に渡された通信装置を取り出そうとした瞬間、チリっと背筋に嫌な予感が走った。

 それを信じて懐に伸ばした手を止めて周囲一帯を警戒する。

 すると、俺の感知能力(センサー)に1つだけ生命反応をキャッチした。

 

 息遣いも鼓動も生命特有の気配すら極限までに薄めさせたといえるレベルの隠密能力、はっきり言って俺以外なら見逃してただろうな。

 

「いい加減出て来いよ。ちょっぴりだが、殺気……漏れてたぜ」

 

「……カマかけではなさそうだな」

 

 黒焦げた焼死体の下から大火傷を負ったさっきの将クラスのリザードマンが這い出てきた。

 

「お仲間を盾にして生き残ったか。にしても、あの高温の中でよく生き延びれたな」

 

「我ら人竜族は自然エネルギーへの耐性が強い!炎や冷気、果ては電撃から毒に至るまで我らには耐えうる頑丈なボディがある!と豪語したいところだが、流石に今の炎は驚いたぞ!!」

 

「にしちゃ、随分と余裕そうだが?」

 

「それはこちらの台詞だな。あれだけの炎……いや、もはやアレを炎を言うのも烏滸がましい。アレはまさに死の爆炎だ!!そんなものを生身で撃って無事で済む訳がない!余裕がないのはそちらの方ではないか?」

 

 そう自信満々に言い放つリザードマンに俺は思わずプッ!と笑いをこぼした。

 

「おいおい、マジかよ。って、そりゃあんなモン見せられちゃ普通はそう考えるよな。普通は――」

 

「……っ!まさか」

 

 再び左半身を発火させた俺を化け物でも見るような目で慄くリザードマン。

 俺の能力はその身に宿した核の炎と氷河期の氷を自由自在に操ること。

 

 器が中身に傷つけられるなんて、そんな道理がまかり通るはずもない。

 俺の体は常に最適な状態に保たれている。

 だから、あれほどの超高熱で焼かれようと、極寒の低温で凍りつこうとも、死ぬことはない。

 

 つまるところ、俺は絶対に近しい炎と氷の耐性を得ているのだ。

 

 そして、前にも説明したかもしれないが、俺は能力を使えばすぐさま使った分のエネルギーが補完される。

 ちょっとのクールタイムが挟まるが、そんなものあの強力過ぎる攻撃の前ではあってないようなものだ。

 

 そんな存在まるで――

 

「っく!化け物め!!」

 

「あぁん?気付いてなかったのか?俺は魔界最強の――化け物さ!!」

 

 恐怖に顔を歪めるリザードマンの胸元に手を添えて、俺は精々気絶する程度の一撃を放つ。

 

「少しの間眠っとけ、破炎!!」

 

「っっっっ!!!?」

 

 鱗を貫通して内蔵を焼かれたリザードマンは声にもならない悲鳴を上げ、口から真っ黒な煙を吐き出して倒れた。

 

「よし、これで今度こそお終いだな。ちょうど口の軽そうな奴が生き残ってくれて助かったぜ!あっ、加入の条件に環境破壊への苦情を一切受け付けないも加えてりゃ良かったわ」

 

 参ったなと頭をかきながら周りの惨状を見渡しながら、戦闘終了の報告を魔王様へと知らせる。

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