中学3年生も半ば、また忙しい夏が来た。
五条とは何度か任務を一緒にやることになった。
そう言えば、単独任務になったのはパパ黒に負けて俺が闇堕ちした頃だったか。
闇堕ちするなんて、俺のベースとなった夏油は真面目過ぎる。
だから、パンピーなのに特級になってんだよ。
「よぉ」
「久しぶり」
「何だよその怪我、転んだ?ダッセェ!」
「富める者の宿命みたいなものだよ」
今度の任務は京都だった。
こっちにも呪術高専はあるのだが、なかなか手に負えない案件らしい。
特級にしてやるから行ってこいと、俺に話が来たのだが、正直いらんことするなとしか思えない。
上層部、会ったことねぇけど何で昇級させたがるんだよ。
死にたくねぇから、ホイホイ任務受けてやるけどさ。
雑魚だけでいいんだよね、こっちは。
「今回は狐だか、石の呪霊だろ。余裕だろ」
「殺生石な、ちゃんとバックボーンは知った方がいい。どういう呪霊か、把握出来るからね」
「いらねぇよ、雑魚共は下準備で大変だな」
「才能の世界だからねぇ、こればっかりは努力で補うしかないんだよ」
リムジンで移動する中、五条と雑談に興じながら任務に向かう。
十中八九、特級仮想怨霊である玉藻の前だろうな。
何か任務出すたびに強くなってるらしいし、負けた呪術師側の畏怖の念で強化されてるまでないか?
「呪霊について説明します」
今日も違う窓の人。
毎回任務が終わると変わるのは何でだろう、胃が持たないのかもしれない。
そんな窓の人から説明がある。
「特級仮想怨霊玉藻の前、如何に五条様の無下限が最強だとしても今回ばかりは安心できません。いや、安心出来る出来ない以前の問題です。呪霊討伐の任務にて、五条悟最大の敵。京都に新たな歴史が刻まれる……のかもしれない!」
「私の奇策でカバーしますよ」
「まぁ、俺達最強だしぃ~」
この時俺達は、それほどまでの強敵だとは思ってなかった。
「それより今週の遊戯王見た?ヤバくね」
「私から言わせれば、あの程度ヤバくないね」
「とか言って負けたじゃん、草」
「金に物言わせてお前がデッキ組むからだろ、海馬かよ」
「サクリファイスなんて陰キャなお前はペガサスかよ」
まぁ、そんな事情とは裏腹に俺達は最終回間近の遊戯王で盛り上がるのだった。
帰りのリムジンの中、俺と五条はボロボロになっていた。
「玉藻の前、私は生涯この呪霊のことを忘れることはないだろう」
「ギリギリの戦いだった、伝説というだけのことはあった」
「まさに紙一重だった、現代の伝説である五条悟でなくては勝てなかっただろう」
「言うな言うな、傑の呪霊操術あっての勝利じゃん」
「いやいや、悟のフォローがなければ私は生きていなかっただろう」
リムジンの中にあるお菓子やジュースを飲みながら思い出す。
「だとしても真正面から倒したお前は、これで名実ともに特級だろ」
「特級か、余り実感はないかな。戦闘開始と同時に張られた領域展開、物理攻撃しか効かないのに近づくだけで即死させるとは」
「驚いたと言えば、俺は決まると思った口裂け女の攻撃を喰らってからの復活だな、正直ヤバいと思った」
二人して強敵に思い馳せる。
「私はアレだな、第二形態は知っていたがまさか即死の呪いを吸収して自分にバフ効果を付けるのには驚いた。あの時、偶然だが悟の術式に巻き込まれて移動してなかったらゾッとするよ」
「ゾッとすると言えば、決まると思った傑の呪霊特攻。蠱毒砲を変化の術で身体に穴を開けて避けたのは見事だった。正直、六眼でも奴の実力の一部しか見えてなかったと思うぜ」
「そうだね。正直言って運とすら言えない、私達は勝ったのではなく負けなかっただけとすら言える」
まさに激闘も激闘だった。
死ぬかもしれないと何度思った事か。
「だが一番驚いたのは時の天皇すら惑わせた九尾の本気だったな。まさか、術式を応用してあんな利点と特性を持たせるとは夢にも思わなかった」
「そうだね。六眼を以てして把握していても、回避できないまさに呪術の極致と言えるだろう。だが、それでも私達は勝てたのだから良しとしよう」
「でもよ、一時的なパワーアップの代償に、自分の毒で弱らなければ術式反転も使えない俺じゃ勝てなかったかもな」
「珍しく弱気じゃないか。まぁ、最後の最後で術式順転を思いついて成功してよかったよ。正直、賭けだった」
とは言えだ、勝ったには勝った。
自分の実力ではないと言っても弱らせて調伏し、取り込めたのだから。
まさか岩形態から夏油傑が出していた人型形態になるとは思わなかった。
いや、禪院直哉も変身してたしあり得なくはなかったのか。
全く、油断して死ぬかと思ったよ。
「これで現代で3人目の特級呪術師か」
「一般家庭出身だぞ、身に余る重荷だよ」
「重いし、余ってるのは脂肪だろ」
「分かってないな、これは余裕の現れだよ。先に餓死するのは悟のようなマッチョさ、何故ならカロリーが足りないからね」
呪術高専に帰るリムジンで私達は軽口を叩きあった。
まさか、あんなことになるとはこの時は思ってなかった。
五条家による初めての友人、特級祝いという名目の宴会で、俺と悟は吐くまで食べた。
何なら、悟に至ってはナマモノが当たる始末。
料理担当の人間が、後日泣いて謝って来たのにはドン引きした。
反転術式があるとはいえ、切腹しようとするのはどうかと思う。
割りと高等技術だから会得してないのにしようとしてたかもしれない、五条家の闇だな。
気にするのはやめておこう。
「傑、デオキシスって知ってる?なんか、なみのりで手に入るらしい」
「やめた方がいい、バグってデータが消えることになる」
「ってかさ、お前の順転ってポケモンみたいだよな」
「知らなかったのかい?私はポケモンマスターだよ」
ある日のことだった。
腹を下してる間、ポケモンやってた悟に呼び付けられて家に遊びに行った時の話だ。
かつて、夏油傑が言われていたポケモンマスターみたいだなお前と、悟に言われた。
この野郎、サブカルチャー布教したのは失敗だったか?
お前、デジモン派じゃなかったのかよ。
玉藻の前戦で死に掛けた際、俺は術式順転を思いついた。
なんてことはなく、ニュートラルでは静止するだけの無下限みたいに思いっきし呪力を流せば、術式・蒼みたいに何か変化が起きるのではと自棄になってやっただけだ。
まぁ、成功したけど。
まず、呪霊操術のプロセスのおさらいだが。
呪力化(階級差2階級以上は弱らせる工程を省ける)→呪霊玉による書き換え(言うことを聞くようにする工程)→取り込み(何処か分からないところに格納)→強化(やる時は召喚と同時なので)→召喚(もしくは呪霊の復元、多少の呪力を消費する)
こう言った流れだ。
呪霊操術の術式順転、悟に因んで今は『黑』と呼んでいるそれは、すべての工程の強化だ。
呪霊操術、術式順転・黑、そのプロセスは……。
1 凝集(自分以外の呪力を掌に集める)
2 支配(一時的な催眠状態)
3 生成(格納する入口を作れる)
4 暴発(呪力の過剰供給)
5 展開(復元量の増加)
まず1だが、これは呪霊本体ではなく周囲の呪力を集める。
恐らく、本体自体は抵抗力があるんだろう。
その抵抗を上回るのが階級差2級以上なのかもしれない。
2では、俺の呪力が届く範囲で使役する際の書き込みが出来る。
ただ取り込む際にやってる場合と違うからか一時的に命令を出して、それに相手が一瞬だけ従うみたいな物だ。
動くなと言ったら、一瞬だけ止まるみたいなイメージでいい。
3は、そのまま出すときの黒い渦のような穴を生成するだけだ。
どこに繋がってるか分からないが瓦礫や呪霊などを落とすことが出来る。
もしかしたら、呪霊の巣窟みたいなところに沈めるのかもしれない。
呪詛師がいたら試してみたい。
次に4、大量の呪力と呪霊を消費するが爆発する。
説明不要、爆発する、以上。
壊れた幻想だ、呪霊爆弾の完成、爆発規模は呪力量による。
最後に5、一度に大量に放出するだけ。
玉藻の前戦でやったのは、凝集によって周囲の毒としてバラ撒かれてる呪力を集め、一時的に動きを止め、足元に穴開けて格納による体勢の崩し、呼び出していた呪霊を取り付けて爆破、周囲を入口で囲んで逃げ場所をなくして呪霊を絶えず突撃。
そんな戦いだった。
まぁ、もう終わった話だしジャンプの続きを……コイツ、勝手に人のやつ読んでる!
おい返せよ、250円もするんだぞ!高いんだぞ!
「途中なんだ、返せよ悟」
「もう2ページだから、いいとこだから」
「いちご100%か、マセガキめ」
「なぁ、来週の東城の話したいことってなんだと思う?」
「告白じゃないのか?大学行く前に言いたいことだろ」
「やっぱそうなのか、東城ついにかー」
「あんな乳だけ女より、やはり西野にすべきだろ」
「そこはほら、好きより自分のこと好きな女なんじゃね?」
「はぁ?保健室の西野、見てから言えんの?」
「はぁ?停電の時のチュー見てから言ってんの?」
この後、めちゃくちゃ殴り合いの喧嘩した。