高校生1年目の夏が来た。
入学してから学業は窓の人がボランティアで教えてくれて、後は任務と任務と任務だ。
夜勤のようなもので、任務は大体深夜だから終わったら次の日は休みだ。
正直、任務に来てるのか学校に来てるのか分からない。
休日だけのが、平日も出来るようになっただけだ。
俺のストレスを除けば、窓の人とドライブするだけで大体の呪霊がいなくなる。
階級差のある呪霊は、簡単に複数取り込めるからだ。
食えなく無いが、死ぬほどしんどい。
「この後。ご飯ですか?」
「あぁ、新人だから知らないのか。コイツ、仕事の後は喰わねぇから」
「あぁー、グロいですもんね。すいませんね、育ち盛りの時期だから食べるかと思ってました」
「食べれなくないんですが、呪霊のせいで味覚がね」
「えっ、そうなの?」
えっ?とお互いの顔を見る。
アレ、言ってなかったけな……言ってなかった。
「六眼じゃそこまで分からないか」
「そんな強烈なの、呪霊って」
「そうだね……試してみるか。やはりご飯行きましょう、しゃぶしゃぶとかの店で」
「チェーン店ですか?あっ、ナビまで、ここに行けば?」
ちょうどいいから教えてあげることにした。
みんな知らない、呪霊の味。
「へぇ、すげー!野菜好きなの食べていいの、てか自分でやるんだ」
「やれやれ、これだから坊ちゃんは……悟これ、こうすると」
「おいおい、ジュース出たぞ!何でオレンジ100%なのに、横から液体入れてんの?」
「これはそういうものなんだ」
チェーン店の夏鍋キャンペーンとか言うのを頼む。
分かるか、私の嫌いな物が入ってる。
「縛りでね。私の嫌いな味になるんだ」
「へぇ、これがそれ。パクチー?ってやつ……おぇー」
「ハッハッハ、最悪だろ。口直しで違うもの食べたくなるだろ、太るのも仕方ないと思わないかい?」
「ほんとに野菜か?カメムシみたいな匂いするんだけど」
「よく分かったな。和名はカメムシソウだ。育つとコリアンダーというのになってカレーに入ってる」
「詳しいじゃん、逆にもう好きだろ」
求めていたリアクションに笑いがこみ上げる。
もう水も水の味になったから食べれるが、パクチーを磨り潰して飲んでたり食べたりするような味覚はストレスが本当に溜まるんだ。
だから、肉を食べるのは仕方ない。
油は落ちてるからいくら食べてもしゃぶしゃぶは太らない。
「ハフッ!ハフッ!」
「げぇ、メッチャ辛いだろそれ。そうだ、硝子に送ってやろ」
「辛いと代謝が上がるからゼロカロリーだろ」
「サウナみたいになってんぞ、ウケる」
適当に写真を撮ったら、何やらソフトクリーム屋アイスコーナーに行く悟。
甘党め、早速見つけたか。
「ここは私が出しますよ。食べ放題ですしね」
「ご馳走様です」
「おい傑来いよ!ワッフルだって、ワッフル作れるぞ!」
「まったく、子供だね。餅でも作れるんだ、ワッフルは!」
あぁ、何だかんだ新しい人生だ。
しんどいこともあるけど、今は楽しい。
地元のヤンキー共に拉致されることを、失念していた。
そもそも、異常なくらい路地裏が多いし、民度も悪いのを忘れていた。
人の負の感情、そんなものが主軸にある漫画の世界だ。
そりゃ、それなりに民度悪いだろ。
ウシジマくんの世界観で民度が良い訳ないのと一緒だ。
ワンピースの世界で海賊が良いやつばっかとか、ToLOVEるの世界でお色気要素がないとか、そんなレベルだ。
「1つ、聞いていいかい?どうして拉致なんてアホなことしたんだい?」
「んだとテメェ……」
「殴るのは良いが、純粋に疑問なんだ。警察にだってバレるだろ?」
「馬鹿だなぁ……」
数は20そこらだった。
地元の暴走族とかだろうか、まぁ殺されるモブとしていそうだよね。
リーダー格らしきヤンキーがウンコ座りで煽ってくる。
ちなみに、俺はボコボコにされた上で両腕を掴まれていた。
「お前が不登校で喧嘩ばっかり、そんで金持ってんの知ってんのよ。言えんなら言ってみろよ、汚い金だろ、叩かれて困るのはどっちかな?」
「それはバイト代さ。怪我はね、バイトのせいで喧嘩じゃないんだよ。後暗い事情なんてないのさ」
「ハァ……気に食わねぇなぁ!テメェ、馬鹿にしてんのか!バイトで十数万も入るかっての!」
痛み。
蹴りが入る。
まったく、悟の蹴りのほうが重くて鋭かった。
もう少し、抵抗してみるかな。
まぁ、死ななければ反転術式で治るし安い安い。
死んでもまた転生するかもだし、いやでも死にたくないな。
死んでもいいなんて、度胸がないからな。
「どっちが」
「ガッ!?クソが、反抗しやがって!」
「するだろ、馬鹿かい?」
一応授業で体術くらい習う、掴まれたら腕を捻るとか合気道も軽くね。
腕を捻って、手首の関節に痛みを与える。
耐えられず、肘まで捻った状態で拘束を外す不良達。
「テメェ!ガバッ!?」
「グフッ……痛いじゃないか」
殴られながら、全体重を乗せて肘打ちをした。
お前たちより私の一撃は重いだろ、体重あるからね。
「死ねぇぇぇぇ!」
「ッ!?」
油断したつもりはなかった。
だが、どこか非術師だと見下してたんだろ。
呪霊なら警戒してるのに、人だからと警戒が足りてなかった。
ヤンキの一人が鉄パイプを持って走って来ていた。
ドラマじゃよくあるが、殴ったら人が死ぬと想像が出来ないんだろ。
腕を犠牲にするか、今は倒れてるから間に合うかどうか。
「よっ!」
「へっ?」
「あらよっと!あは、雑魚!」
殴られると思った瞬間だった。
掬い上げるように鉄パイプを持ったヤンキーの腕が蹴られる。
カランと落ちる鉄パイプ、手放したガラ空きのヤンキーの横でクルリと回転する白い頭の長身。
吹っ飛ぶヤンキー、ポケットに手を突っ込みながら立ったソイツが言う。
「よぉ、傑。新しいダイエットか?」
「そう見えるなら眼科をオススメするね」
「オッケー、病院行けってことだろ。これ、やってみたかったんだよね……あー、もしもし?今から救急車呼んでくれる?場所?知らねぇけど、とりあえずたくさん!」
「やっちまえぇぇぇ!」
やりたかったことってBLEACHのパロかよ。
そう言って携帯を投げ捨てて悟が殴りかかった。
結論から言うと、圧勝だった。
私が2人に対して、残りは悟みたいなもんだ。
そりゃそうだ、近接専門のゴリラだもんな。
悟に担がれながら、拉致された廃ビルを出ていく。
よくこんな場所が分かったな。
「なに不思議そうな顔してんだよ」
「よく分かったなって」
「硝子に冤罪掛けられたんだよ、喧嘩も程々にってな」
「場所が分かった理由になってねぇんだけど」
おい、痛いんだから叩くのやめろ!
悟は投げ捨てるようにいつものリムジンに俺を放り投げた。
このままどうやら学校に行くらしい、あぁ反転術式か。
過労で死にそうだな、硝子にもお礼を……あいつタバコのカートンでいいか。
「…………」
「足、煩いんだけど?」
「なんであんなのに負けてたんだよ」
「あんなの……とは?」
硝子の好きな銘柄が何だったか考えていたら、悟が機嫌悪そうにしていた。
ヤンキーに負けたことだろうか、だって数があるからなぁ。
「呪力使うなり、呪霊使うなり、やりようはあっただろ」
「呪術規定に関わるからね、それを破る度胸なんて私にはないよ」
「そんなの!」
「君がどうにかするかい?それともバレなきゃいいとか?特級は貴重だから出来るかもね、でも仕方ないんだよ」
呪術規定、原作でも忘れられたかのようにたまにしか出ない設定。
あんなのバレなきゃいいだろ、つまり残穢とか呪術の存在がバレなきゃいいだろみたいな抜け道だらけな代物だ。
上層部のためにあるような決まりだ。
まぁ、呪術師とか非術師とかの殴り合いもアウトみたいだったけど。
「悟、彼らはね……世界が違うんだ。才能が全ての世界じゃない、努力の世界の住人だ」
「何言って……」
「努力で決まる世界だから、自己責任なんだ。だから落ちこぼれると諦めがつかない、自分のせいだって分かるからね。そう言った不条理を他人にぶつけるしかない弱者だ」
「なんだよそれ、理由になってねぇよ」
「才能で、彼らをどうこうするのはフェアじゃないだろ。不条理をぶつける、そんな同じ存在になりたくないじゃないか」
彼らは非術師で、可哀想な存在だ。
そんなやつと同じになる?借り物の力で?
俺にだって恥くらいはあるし、死にかけたらきっと呪霊操術なり呪力なり使ってたさ。
まぁカッコいいこと言ったけど、本当は何が抵触して秘匿処刑とか上層部に言われるかビビったからである。
「お前。じゃあ、呪力無しで戦えるくらい痩せろよ」
「好きで太った訳じゃないんだけどね、死にかけたら考えるよ」
死にそうにならないと痩せる気はないかな。