「来る、10月31日!我々はハロウィンを始める!場所はパリピの坩堝渋谷、スイーツとパスタ食べ放題だ!フハハハ!存分に祝い合おうじゃないか!」
「いぇーい!カラオケでハニトーとアイス喰おうぜ!」
繁忙期の終わった、高1の秋。
硝子がバイクの免許を手に入れたとのことで、お祝いがてら流行ってもないハロウィンを行うことにした。
いや、流行ってないっていうか知ってる人しか知らんみたいな時代だ。
「まったく、パンにアイスなんて冒涜ですよ。その食パンはどこ産の小麦なんですかね?蜂蜜の種類は、アイスの量は?コメダより洗練されてるか調査が必要ですよ」
「七海、忙しい先輩達が身を粉にして盛り上げようとしているんだ!僕達が盛り上げないわけにはいかないよ!ドンキでヘリウムガスとか売ってるかな?」
「アハハ、成立してるようで全然会話になってないのウケる」
丁度、任務終わりの後輩達を見つけたので誘ったりもした。
この七海、数年後には頭皮のこととか気にするんだよな。
あと灰原、お前に数年後はない。
まぁ、助けられたら何とかなるかもしれないけど。
「ちょっと男子ぃ、主役は私なんですけどぉ」
『何で任務なのよ!私も行きたがっだ!』
「京都から来るの大変ですよ〜」
電話を片手に、私服に着替えた硝子が寮から出てきたりした。
相手は電話越しにテンション高い声が聞こえたので十中八九田舎者の歌姫先生やろ。
京都から硝子の奴は歌姫先生を呼んだりしたみたいだ、どこで知り合ったのかメル友でもあるらしい。
「つか、なんで制服なんだよ〜夏油なんて痩せたからサイズダルダルじゃん、ヤンキーかよ」
「知らないのか、ボンタンだよ」
「サルエルパンツの間違いだろ」
サル……何?そうか、そうなのか?そうかもなー!知らねぇ!
ズボンの種類とか男が分かるわけ無いだろ。
「そうだ、おいクズ二人集合」
「なんで?」
「いいから、いいから。夏油も」
悟に急かされて硝子の方によると、携帯を硝子は弄って。
「はい、写真撮るよー」
「えっ、はぁ?」
「はいピース!」
「イェーイ!」
あっ、こいつ写真撮りやがった。
俺はあんまり写真とか撮られるの好きじゃないんだけどな。
「見してみろよ、おぉ良いじゃん」
「夏油だけしかめっ面」
「いきなり撮るからだろ、なんでお前らノリノリなんだよ」
しかも硝子なんかタバコ加えてんじゃん、ヤンキーかよ。
人に見せられねぇ写真で草。
「もういいだろ、ほら電車の時間に間に合わないかもしれない」
「早く言えよ、ほらダッシュ」
「時間管理出来ないのはクソですよ。そもそも」
「行くよ、七海」
「私先行くから、じゃ、お先〜」
ブーンと横切ってくバイクに乗った硝子。
おい、ズルいぞ!一人だけ文明の利器使いやがって!
ダッシュするかと思っていると、どこからか悟が自転車を持って現れた。
「傑!これ!」
「素晴らしい、私は今猛烈に感動している!」
「悪い、俺、自転車乗ったことない!」
「嘘だろ悟、君にはがっかりだよ!」
これだからお坊ちゃまはよぉ〜!
俺達は最強だった。
道路交通法も無視して、自転車二人乗りで学校飛び出したのだ。
「クソっ暑い!悟、上着カバンに入れといてくれ」
「オッケー!秋なのにまだ暑いな!」
「見えた!坂道だ」
「よっしゃ!大幅なショートカットだ」
急な坂道だった。
まぁ、怪我なんか怖くねぇ、野郎ぶっ飛ばしてやるー!
なお、後で聞いたら後輩達はタクシーで来たらしい。
駐輪場に自転車を止めて、改札前で集合する。
後輩二人組は既に来ていた。
「遅いぞー、電車来るって」
「切符買っておきました!」
「灰原、俺はSuicaなんだ」
「うわぁ、使ってやれよ」
仕方ないな、私はクズじゃないからね。
悟と違って後輩の買った切符で行ってあげる。
昼間から渋谷に来た俺達は早速スイパラで腹を満たしてぶらつくことにした。
「俺、初めてスイパラ行きましたよ!スイーツ以外もあるんすね」
「あんなものを食べていて痩せたいは無理があるでしょ」
「七海?」
「……すいません、家入先輩」
笑顔の硝子に七海が目を逸らしていた。
お前ら、そういうパワーバランスなの?
「こわーい、後輩イジメよ」
「やだー、硝子こわーい」
「うるさいなぁ、何なら私より食べてただろお前ら」
「俺ら、お前と違ってプニってないしー」
「私も、もう痩せたしー」
ブチギレた硝子が追いかけて来たので、俺達はダッシュで逃げた。
硝子は普段、学校でメス片手に解剖とか医学書ばっか読んでるから運動不足なのですぐ息切れする。
「おっそー、そんなんだから太るんじゃないんですか?」
「待ちなさいよ、待たないとアンタのプレステのメモリーカード壊す」
「地味にエグいな」
煽る五条に硝子が精神的に追い詰められていた。
何だかんだ謝ってて、草だった。
「夏油、アンタも同罪だからね」
「やれやれ、糖分足りてないんじゃないか?」
「おい、ファミチキ喰おうぜ!お前ら、傑がおごるってよ」
「マジっすか!悪いっすよそんな、俺コーラで!」
なんで俺がおごることになってんだよ、別にいいけど。
「分かった分かった、ほら七海も好きな物を選ぶといい。君はアイツらくらい遠慮をなくした方がいい」
「すいません、ウチの灰原が」
「良いじゃないか、学生のうちだけだぞ。大人になる上で理不尽な目に遭うが、こういう思い出が支えになるってものさ」
「人生二度目ですか?オッサン臭いですよ」
そんなこと言ってお前も何時かはオッサンになるんだぞ。
変なグラサンにくたびれたサラリーマンになるんだからな。
コンビニで買い物しながら、何するかと話したりする。
大人になると無計画で遊んだりしてないな、ガキの頃は友達といるだけで楽しかったな。
「はい、夏油あずきバーでしょ」
「センスねぇー、固くね?」
「ガリガリ君なんて氷じゃないか」
こうやって、喋りながら買い食いするのも久しぶりだった。
五人横並びになってアイスを食べながら次の目的地を探す。
「なぁ」
「なんだい」
「次はゲーセン行こうぜ、俺アケコンで練習したから格ゲーやりたい」
「負ける気がしない」
見せてやろう、金の力で得たアケコンで延々と一人練習していたお前とゲーセンという実践で鍛えられた俺の実力の差ってやつをな!
「何、本田じゃなくて春麗使うのかよ」
「おいおい、ガイル使うやつがなんか言ってるよ。待ちガイルか?」
「負けたほうが罰ゲームな」
「良いだろう。そうだな、今は月見バーガーの気分だ」
後輩達は俺がゲーセンに通ってるので、俺に賭けた。
「家入先輩はどっち賭けます?」
「んー、穴馬の方かな?」
「穴馬扱いかよ、勝つから俺。だって、天才だし」
「ハッハッハ、硝子。穴馬ってのは、偶にしか勝てないから穴馬なんだぜ」
甘く見られたものだな、俺の実力も!
また、守れなかった……俺の財布の中身。
「うめー!あっ、傑は食べるなよ、罰ゲームだから」
「私肩凝ったな、灰原と七海ー」
「ぐぬぬぬ、ズルいじゃないか待ちガイルなんて……ハメ技だぞ」
「CPUは回避してますー、避けれない方が悪いんですー」
俺の前には山盛りのバーガーがあった。
コイツ、マックで1万も使わせるとか食い過ぎだろ。
「いやぁ、人の金で喰う飯は美味いなぁー」
「理不尽だ。俺は賭けに参加してなかったのに」
「七海。なんか言った?」
「言ってないです」
すまない七海、だが硝子はクズだが面は悪くない女だ。
役得だと思って、そんな目で見ないでくれ。
画面端に追い込んでからハメ技やめて、確殺してきた悟が悪いんだ。
なんだかんだで、高校生と中学生。
夜まで遊ぶ訳もなく、解散となった。
「あっ、俺らこっちなんで。七海、飯食べてくだろ」
「そうか、帰りは路線が違うのか。じゃあな、灰原、七海」
「はい!お疲れ様でした!また遊びましょう!」
「……はい」
「何してんだよ、七海」
「やめろよ、こういうのハズいんだよ……」
なんか、後輩達は後輩達で楽しそうであった。
守りたい、この笑顔って奴である。
俺は原作を知ってるが、どこかで原作と違って死んだりもあるかもしれない。
畜生、楽しいから死ぬのが怖くなってくるな。
二度目なのに、覚悟が足りないな。
「遅いぞ。もう電車出ちゃったっぽい」
「マジ?じゃあ、待つしかねぇじゃん」
三人で改札を抜けて、空いてる席に座って明日からの予定を思い出す。
明日からまた任務で、忙しくなるな。
休みてぇ……なんか仕事に追われてるみたいでつれぇ。
「傑、傑」
「なんだ、いっ……」
「ハハハ、引っ掛かってやんの!」
考え事していたら、悟の奴が指で顔を突いてきやがった。
しかも肩を叩くから、普通に引っ掛かった。
「私、挟んでイチャつくなよお前ら。歌姫先輩に写メ送るんだから」
「イチャついてねぇーよ」
「そうさ、悟がそもそも悪いんだから」
「引っ掛かる方が悪いだろ」
まったく、人が思い悩んでいたというのに人の気も知らないで。
「私のバイクこっちだから」
「やれやれ、乗れないなら任せられないしな」
「悪いな、じゃ先帰ってるわ」
それぞれ3人とも学生寮に帰る前に一度分かれて帰路に着いた。
さて、明日からも仕事頑張るか。