助けるまで早かったし、絶妙に瓦礫の位置煽るために調整してんじゃね?
格ゲー、それはゲームの中で対人戦をするゲーム。
昔は拳と蹴りの応酬だったそれは、ブームと資金と技術の発展によって色んなエフェクトのあるものとなった。
「人間の想像できるものは、実現できる。洗練された歴史に敬意を抱こうじゃないか」
「どの口が言ってんだ!一緒に、スト極めようって約束しただろうが!」
「もう遅いんだよ、私はギルティがやりたいんだ!お前に勝てないストはもう止めた、このメカザンギエフ野郎!」
「人を投げキャラみたいに言いやがって、お前なんてザッパじゃねぇか!」
「取り消せよ、ブリッジ野郎って言ったことを!」
俺と悟の決別。
グラウンドで向かい合いながら、互いに呪力を滾らせる。
「来い!」
先に動いたのは悟だった。
術式順転による吸い込み、確実に捉えて殴るつもりなのだろう。 逃げるか、ガードするか、答えは1つ。
「ッ!?コイツ!」
「退かぬ!媚びぬ!省みぬぅぅぅ!術式順転、爆!」
足元に呪霊を呼び出し、過剰強化による呪霊の暴発、自爆した呪霊で推進力を出し、自ら悟に近付く。
「術式順転、展!」
「わざわざ口に出さなきゃいけねぇなんて不便だな!順転、蒼!」
「そういう縛りだからね、次は増嵩だ!自分の呪力を糧に分裂や巨大化していくぞ!さぁ、包囲した!どうする悟!」
周囲には大量の呪霊、それが包囲してドームを作る。
いつもの呼び出す呪霊の出入り口を出力を上げることで全体に展開したのだ。
術式では蒼しか使えない悟は、蒼を作って吸い込むしかできない。
つまり、蒼とは逆の方向からは必ず呪霊が悟に突っ込んでくる。
さぁ、このまま使い続ければ後ろからは呪霊、前からは俺が来るぞ。
当然、俺は無色透明の結界である虚空を張る。
咄嗟に無下限を出したとしても、領域展延のダウングレードである虚空は動けない代わりに結界に術式を流し込んで中和する展延のように無下限を突破する。
「正面からブン殴る!」
殴るためにまるで居合のような構えをする悟。
まさか、シン陰流か!
しまった!虚空は動けない縛りを前提に作っている。
このままタックルの体勢を変えることは出来ない。
変えれば無下限で届かず、そのまま殴られる。
変えなければ、最速で殴られる。
二択か!俺のめくりに、対抗するとはやるじゃないか。
「術式順転、展!」
「くっ!?」
「解いたな、構えを」
だが、下段攻撃として足元に呪霊が呼び出される謎の空間を展開する。
展開と同時に、呪霊による突撃。
体勢を崩し、簡易領域が解除され、同時に迫る呪霊をニュートラルな無下限で止めるしかない。
「だから、なんだァ!」
「ぶっ!?」
馬鹿な、なんで、普通に殴ったのか!
しまった、足元の崩しを無下限を足場に克服していた。
「思わずガードしてんじゃねぇか!」
「そっちこそ、簡易領域は失敗だね」
「舐めるなよ、術式反転」
「なっ!?まだ、使えないはず!」
「赫……パンチ!」
何も来ない騙し討ち、素早く反応して両腕を頭の前に持ってくる。
だが、一向に攻撃は来ず、太ももに衝撃。
ローキックが、俺の足にヒットしていた。
「キックじゃねぇか!」
「上段じゃなくて、下段小足でしたぁ!ざまぁ!」
今回の模擬戦は俺の負けだった。
クソっ、最近負け続きだな、恐ろしい成長力だ。
「おーい」
「ん?なんか、硝子来たぞ」
「任務だってー」
任務?いつもと違って随分と急じゃないか。
証拠に呼ばれた俺達は夜蛾先生の所に向かった。
「状況を説明する!」
部屋に入って開口一番、ぬいぐるみ片手に夜蛾先生が説明を始める。
なんでパンダのぬいぐるみなんか作ってるんだ?
「京都校より、任務に出た庵歌姫と冥冥。以上2名の術師と連絡が途絶えたとの知らせが入った。既に窓の人間が試したが2日以上連絡は取れていない。場所は今は使われてない洋館、お前達には救助と最悪死亡確認に行ってもらう」
「冥さんもいるのに死ぬわけないじゃん。時間関係の呪霊か?」
おい、今、そのパンダ動かなかったか?
絶対、今、動いたって!
「聞いてるのか、夏油!」
「先生、それは本物ですか?」
「むっ、パンダはパンダだ」
「なに言ってんだよ傑。ワシントン条約知らねぇの?」
いや、俺には分かる。
きっとこいつは、パンダ先輩に違いないんだ。
なんか小さいけど、生きた呪骸に違いないんだ。
「ゴリラになったりするんですか?」
「なりませんけど」
「うおっ!?喋った、しかも敬語」
「やっぱりパンダはパンダだ!」
「落ち着けよ、パンダは普通喋らねぇよ!」
何言ってるんだ悟、生パンダだぞ!
俺は今、猛烈に感動しているぞ!
「はぁ……もういいから、早く救助任務に向かってくれ。一応、硝子も連れていけよ。怪我してるかもしれんからな」
「まぁ、サクッと歌姫達助けてきますよ、だって俺達最強だし」
「悟だけ、だろ?」
「お前も特級だろう、俺達だよ」
さっき模擬戦でボコボコにしたくせによく言うよ。
近場ということもあって、俺達は半日掛けて現場に移動した。
現場の洋館からは、呪力を感じられなかった。
しかし、しっかりと残穢は二人がいたことを示唆している。
「洋館自体が結界みたいなもんか」
「まとめてふっ飛ばせば出てくるんじゃね?」
多分、行きの新幹線で帳を降ろすって約束忘れてるんだろうな。
まぁ怒られるのは俺じゃないし、別にいいか。
「術式順転、蒼」
「やった!わっ、わっ、ちょ、うわぁぁぁ!」
洋館の周りに青い呪力の塊が集まる。
それが洋館の周りをぐるりと回るだけで、破片のように洋館を剥ぎ取っていった。
半壊する洋館、あと歌姫先輩らしき悲鳴が聞こえた。
「うぅ……」
「助けに来たよー、歌姫」
瓦礫の中から這い出る歌姫先輩が見える。
アイツ、絶妙に調整して軽いのが落ちるような細かいことして。
「泣いてる?」
「泣いて、ねぇーよ!つか敬語ぉぉ!」
ニヤニヤしながらからかっていた。
「ふぅ、久しぶりだね夏油くん」
「その後、術式はどうです?上手く行きそうですか」
「もう少しって所かな、株はどうだい?」
「いい感じですよ」
まぁ、俺は俺で瓦礫と瓦礫を飛び越えて、どっかの大総統みたいなことしていた冥さんと雑談してたけど。
「姑息だね、やることが小さい……」
地中から湧き上がる呪力、何かが地面突き破って動く気配を察してゲートを開く。
「後ろ、危ないよ」
「うぇ!?」
歌姫先生の後ろから土偶のような呪霊が出てきて、更にでかい体色が緑で鎧を纏った巨人がソイツを着地と同時に両手で掴む。
「うわぁぁぁぁ!?」
「小さいな……喰っていいぞ」
そういうやることが姑息な奴は、大抵雑魚なので食わせることにした。
大して意味はないんだけどね、成長しないから。
クレーターのようになっていて、その中心で煽られてる巫女服の歌姫先生、学生時代から巫女服なのは縛りなんだろうか。
身体能力を活かして、すぐ近くまで跳んで俺は手を差し伸べた。
「よっと!ふぅ……歌姫先生、大丈夫ですか?」
「夏油ぅ……でも、先輩であって先生じゃないんだよ」
「ところでコスプレですか?まだまだ若いから良いですけど、30なってもはどうかと、だから30まで独身なんですよ」
「コスプレじゃねぇーから!あと、25 くらいで絶対結婚するから!」
無理だと思うなぁ、呪術師は男尊女卑だからないだろうし、一般人は出逢いがないから。
「なんだよ傑、歌姫に甘すぎ。もしかして、好きなの?」
「ハッハッハ、子供に欲情するほど飢えてないよ」
「誰が子供だ!もう、大人、なんだよ!」
ムキになってるウチは子供なんだけど、いやこの人大人になっても悟と喧嘩してたか。
そのまま硝子に抱きつく歌姫先生、やっぱり子供じゃないか。
「こんな小さい子をイジメたら弱い者イジメだろ」
「ちっちゃくないわよ!」
「強いやつ虐めるバカが何処にいんだよ」
「なるほど、一理ある」
「あるあ……ねぇーよ!」
「フフフ、夏油くんの方が煽っているね」
いやだって歌姫先生、声がツッコミ向きだからからかいたくなるじゃん。
「先生、声はいいんだから声優やれば?」
「あぁ、歌姫弱いから呪術師やめればいいじゃん、うんたんうんたん言ってみろよ」
「カスタネット片手にやれってか!あぁ!」
ツッコミ、キレキレでウケる。
あぁ、それにしても。
「そろそろ始まるのか……」
「傑……なんか言ったか?」
「いいや……何でもないさ」
そう、本当になんでもないさ。