死ぬ予定の夏油傑になった凡人   作:nyasu

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呪詛師集団って、ソーセージの名前じゃね?

コトコトと沸騰するポットの音がする。

正直、ホテルの湯沸かし器は中に小便する奴が一定数いると聞いてから使えなくなった。

 

「あぁぁぁ!わ、悪かった!ごめんって、マジごめん!」

「うるさいな、彼女達が起きてしまうだろ」

 

繭を作る虫型の呪霊に理子ちゃんと黒井さんを包むように命令し、正直捕食する前に準備しているようにしか見えないが、安静にさせたばがりだ。

Qの呪詛師は、正直呪霊の物量で瞬殺だった。

 

「痛てぇ……やめてくれよ!もう、呪詛師はやめるから!」

「聞いてくれよ、最近の私は頭打ちと言うやつでね」

 

ソファーから立ち上がり、沸騰したポットを手に取った。

横には騒がしいQのコクーンという男がいて、まぁ偽名だろう。

そんな男が手足の健を切り裂かれた状態で、掌を壁に釘打ちされた状態で吊るされていた。

大の字になるような、そんな状態だ。

 

「最近、幸福について思うことがあるんだ。あらゆる方法を模索してるのだが、君と出会った時なんか最悪だった。まぁ、今は何ともない……フラットだよ」

「この件から手は引く!ぐっ、Qだって抜ける!ぐあっ……」

「だからという訳ではないが、覚悟することにしたんだ。ジョジョは読んだことがあるかい?そう、プッチ神父だ」

「おい、やめろ、これ以上、いぎゃぁぁ!?」

 

顔を押さえつけて、その眼球に目掛けてポットのお湯を注ぐ。

呪力で強化しているとはいえ、少し熱いな。

 

「覚悟すれば死を克服できると思ってたんだ、どうにもまだ決心出来ないんだけどね。ふむ、次は包丁を試してみるか」

「ナメんなよガキが!ここには、あがぁぁぁ!?」

「バイエルとか言うのがいるんだろ、私はシャウエッセンの方が好きなんだよ」

「やめろ!なんで、あぁぁぁ!」

 

二の腕を掴んで、包丁を沿うように滑らせる。

それだけで、皮膚に刃が食い込み、途中で刃先が止まる。

 

「呪力を纏わないと切れ味が悪いな、だが呪力は使っていけないルールだからね」

「やめてくれ……もう、終わりにしてくれ……」

「まだまだ始まったばかりじゃないか、殺さない程度に食べていいぞ」

「来るな!来るなぁぁぁ!俺のそばに近寄るんじゃねェェェ!」

 

蟻のような呪霊が傷口に向かって殺到した。

 

 

 

今週号のジャンプをベッドで寝転びながら読んでいると、悟のやつが部屋に来た。

 

「いやー、絶景かな絶景かな」

「まったく、壁ごと吹き飛ばしやがった。怒られるぞ、これ」

「俺等悪くなくね?そういえば吹き飛ばした奴は」

「逃げたよ、正確には逃がしてあげたんだ。聞いてくれよ、田舎で米農家やるんだってさ」

「呪詛師に農家が務まるかよ」

 

後処理した呪詛師の痕跡は一切残していない。

正直期待外れだったが、実験としては有意義だった。

ガキンチョは、と聞いてくるのでジャンプを読みながら繭を指さした。

 

「下衆めぇぇぇ!妾を殺したくば、まずは貴様から死んでみせよ!ネチョネチョじゃぁぁ!」

「傑、中学生相手に酷いことを」

「初めまして理子ちゃん、落ち着いて聞いてください。私達は君の護衛だ」

「嘘じゃ!めっちゃ怪しいのじゃ!ヌルヌルするのじゃ!」

 

言い方ァ!たしかに事実だけど、事実だけど!

 

「助けて下さい!」

「く、黒井!?」

「お嬢様から何も奪うな、下衆が!」

 

奪わねぇよ、なんでそんな敵意マシマシなの。

ちゃんと保護して監視も付けただろ。

ほら、涎を垂らした巨大な蜘蛛が護衛もしてる。

まぁ、涎は汚いけどさ。

 

「思ってたよりアグレッシブなガキンチョだな。同化でおセンチになってるだろうから、どう気を遣うか考えてたのに」

「ふっ、いかにも下賤の者の考えじゃ!」

 

思わずこめかみを、押さえる。

もう遠く朧気な記憶で、聞いたことあるようなセリフだった。

知っていることが、なぞられるように起こる現実に何とも言えない気持ち悪さが伴ってくる。

今まではそうでもなかったが、最近は特に顕著だ。

 

「いいか、貴様のように同化と死を混同している輩がおるが、それは大きな間違いじゃ!同化により――」

「それは違うよ!……あっ、いや、何でもない」

 

思わず、手で口を覆ってしまう。

俺は、何を口走ってるんだろうかと。

今更、本人が同化する事を辞めるようなことを言う必要なんてないはずなのにだ。

 

「傑、大丈夫か?」

「あぁ……それより、学校に行かなくては」

「はぁ?学校って、なんで――」

「あっ学校!黒井、今何時じゃ!?」

「まだ昼前……ですがやはり学校は」

「うるさい、行くったら行くのじゃ!」

 

知っている。

学校に行くことも、呪詛師が来ることも、変わってない。

 

「はぁぁぁ!お前、ふざ――」

「悟、行かせてやろう」

「何でだよ、さっさと高専戻ったほうが安全でしょ!」

「彼女は天元様と同化する。友人、家族、大切な人とは会えなくなる。最期なんだ」

「ッ……チッ、わかったよ!ゆとり教育極まれりだな、ったくよ!」

 

大丈夫、最後だけ辻褄が合うように変えられればいい。

むしろ、それ以外はコントロール出来るように流れを管理したほうが得策だ。

だから、死と向き合って来た理子ちゃんが学校に行くのは問題ない。

 

「あ、ありがと……変な前髪」

「その呼び方やめて」

 

やっぱ同化の日まで監禁してやろうか、この餓鬼。

 

 

 

タクシーを飛ばして、急いで学校に来た。

俺、初めてブラックカードを見たよ。

悟ってやっぱり金持ちなんだな。

 

「着いてくるでない!黒井はメイド服だが、まぁ許されるか。だがここは女子校、友達に見られたらどうするんじゃ!」

「目の届く範囲にいねぇと守れねぇだろ、んなことも分かんねぇ馬鹿かよ!あぁ、馬鹿だから勉強しに行くのか」

「むきぃぃぃ!妾は馬鹿じゃないもん!言っちゃいけないこと言った!バーカバーカ!」

「お嬢様、せめて移動教室の際にはメールをしてください」

「一応、呪霊は付ける。友達には見えない、いいね」

 

校門の手前で、俺達は理子ちゃんと離れる。

これから学校に入る手続きをしないといけないんだ。

さぁ、どうかな。

呪詛師が来るなら、捕まえて裏サイトを見つけなくちゃいけない。

証拠があれば、先生も動いてくれるはず。

大丈夫、まだ時間はある。

同化の日までに依頼を取り消させれば、何とかなる。

 

手続きを済ませた俺は、プールサイドのベンチに座る。

夏以外使わない場所だから、人通りも少なくて変な目で見られない。

 

「悟、結界を張る。無色透明で一定呪力のある人間が入ると耳鳴りがするものだ」

「また腕を上げたな。そんな事もできるようになったのか」

「唯一の成果だからね、本来なら出来るはずないんだ」

「本来なら……あぁ、天元様のサポート様々ってことね」

 

結界を張ってから、大体2時間が経った。

酷い耳鳴りが聞こえたので、侵入者が来たということだ。

理子ちゃんを監視している呪霊はまだ祓われていない。

 

「悟」

「お前の予想通りか。Qの残党か、盤星教の呪詛師か」

「手分けしよう、悟は理子ちゃんを頼む」

 

結界の良くないところは侵入の有無しか分からないということ。

だが、呪霊を学校全体にバラまいて、消えた反応から見つければ。

 

「おぉ……その制服は、それにあの量は呪霊操術か」

「サシでやろう。その上で俺の提示するカードを知ってから決めろ。俺は近接が得意だ、そして呪霊操術という物量と質の術式もある。更に拡張術式と特殊な結界術も扱える説明は以上だ」

 

拳を構え、背後に呪霊の群れを出す。

相手の老人は式神を2体、唇に手足がついたようなものを出して構える。

 

「挑発するわけでは無いが100%俺が勝つ。それでも降参しないか?」

「勿論」

 

先に動いたのは呪詛師の方だった。

近接戦闘を得意とするタイプか、長年生きてきたと言うなら戦場で命を落とさなかった熟練者だ。

冥さんに指導されたからと言って、俺はそれほど戦闘は得意じゃない。

俺は懐から武器を取り出し、それを駆けてくる呪詛師に向けて狙いを定める。

 

「はい、お疲れ」

「なぁ!?ぐあぁぁぁ!」

 

それは冥さんの伝手で取り寄せた拳銃だった。

御三家や呪術師は古臭いから現代兵器を見下してるフシがあるからね。

腹を狙ったのだが、見事に太腿に当たった。

 

「貴様、殴り合いで」

「武器使わないなんて言ってないでしょ、お爺ちゃん」

「おのれ、許さんぞ貴様ァァァ!」

「黙れよ猿。お前はこれから聞かれたことにだけ答えればいいんだよ、殺すぞ」

 

さっさと裏サイトの在り処を吐き出させなきゃな。

 

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