小学生になっちまった。
もっと、こう、幼いうちからすごい精密な呪力操作とか反転術式とか領域とか出来るようになるんじゃないのか?
二次小説のやつらは化物かよ。
「すぐる、サッカーしようぜ!」
「俺はいいよ」
「んだよ、ばーかばーか!」
うるせぇ、こっちは命が掛かってんだよ。
精神年齢が違うからか、俺はクラスに馴染めていなかった。
馴染むには魅力が必要だと思い、試しにカッコいい髪形をイメージしてみたのだが男子からは女かよと言われて女子からは前髪変と言われた、
うん、ポニーテールに前髪が垂れてるこれ最高にカッコいいと思うんだが俺は可笑しいらしい。
ダセェよと思う自分とカッコいいと思う自分がいて、ダサカッコいいだろと頭がバグってる。
やめだ、こんな髪型!
昼休みになったら遊ぶ学友を尻目に俺は、自分の術式を洗練すべく考察する。
暇さえあれば何ができるとかを考えていた。
逆に何ができないとかは考えないようにもしている。
術式の幅を狭めてしまいそうだからだ。
まぁ、唯一の成功例としては呪霊操術の取り込み方だろうか。
3年間の訓練の結果、俺は呪霊玉(俺命名)の圧縮化に成功した。
呪霊玉に関して、ずっと考えた結果の推察になるがこれに関して分かったことがある。
1 呪霊玉は取り込まないと自然消滅する。
2 呪霊の大きさに関わらず意図しなければ一定のサイズになる。
3 自分が倒すのに苦労しそうと思ったのは弱らせないと呪霊玉に出来ない。
4 球体から形を変えられず、重さはない。
5 ケツから入れても使役できないし、そのまま出てくる。
である。
まず1に関しては、多分だが呪霊を呪力の塊に変換しているのではないだろうか。
そして2に関係してくるのだが、無意識に自分の呪力で異なる呪力である変換された呪霊を覆って呪霊玉にしているのだ。
で、一定時間放置すると俺の呪力がなくなって呪力化した呪霊は負の感情のこもったエネルギー、呪力として霧散する。
あと3だが、自分の呪力で覆わないといけないから自分より弱いやつしか呪霊玉に出来ない。
多分倒すのに苦労すると思うような呪霊は、抵抗されるから弱らせないと呪霊玉に出来ない。
で、4は実体化してないエネルギーの塊だから重さがない、球体が一番安定しているから玉になるのだ。
でこぼこも均して中心から等しい距離になると、球体になるって聞いたことがある。
でこぼこより、たぶん一番成形しやすいんだろう。
最後に5、圧縮することに成功して野球ボールからビー玉サイズになった呪霊玉をケツにいれたが意味なかった。
常に体内で触れてるからか球体を維持していたみたいで、うんこと一緒に出てきた。
勿論、トイレに流した。
これから分かることは、食べるって行為じゃないと取り込んだ認定されないってことだ。
つまり、クソみたいな味から逃げることは出来ない。
食べるっていう行為が取り込むっていう概念的な行為なんだろ、よくわかんね。
今は、呪霊玉の呪力を物に込めることを目的としている。
まぁ、自分の呪力でもいいんだけど多分物に呪力を込めることが出来るはずだ。
「シャーマンキングでオーバーソウル出来るんだから、出来んだろ」
だって同じ漫画の世界だぞ、出来ないほうがおかしい。
でも、巫力みたいに死にかけると強くなるのは嫌だな。
痛いのとか死にそうなのは、嫌だしな。
あぁ、でも死にかけて強くなってる描写あった気がする呪術だか呪力の核心だっけ。
どういう原理なんだか、分からんけど。
それで五条悟が反転術式を会得してた気がする。
「何してるの?」
「……えっと」
「絵でも描くの?」
考え事をしていたら、小学生女児に話しかけられていた。
クラスメイトのえっと……斎藤だ、たぶん。
「ペン回し、ペンをくるくる回すんだ」
「サッカーしないの、変なの」
「インドアなんだよ」
「いんどあ?」
フッ、ガキには早すぎたか。
別に上手くコミュニケーション取れないわけじゃない、精神年齢が違うから合わないだけだ。
「じゃ、お話ししようよ」
「はぁ?なんで俺が」
「えー、いいじゃんいいじゃん!」
斎藤さんが俺の服を引っ張る、距離が近いんじゃぁ!
これだからガキは、男女の距離感考えろよ!
「知ってる?学校の怪談」
「はいはい、トイレの花子さんね」
「ブブー、正解は口裂け女でした」
「学校関係無ぇ」
そういえば、最近の小学生の中では妖怪とかおばけの話がブームだった。
ゲゲゲの鬼太郎とか今ジャンプで連載してるぬ~べ~のせいだろうな。
っていうか、もうすぐ2000年になるのか。
いかに怖いのかを斎藤さんが語ってくれる。
正直、大人の俺からしたらどこが怖いか分からない部分のほうが多かった。
しかし俺は侮るべきではなかった。
子供は大人が思ってるより、物事を怖がっているのだと。
それは登下校の時だった。
ある日の昼休みに口裂け女の話をしたことなんて、遭遇するまで忘れていた。
あるいは、話をしたことを忘れるくらい時間が経ってからのことだ。
集団下校する俺の視界の端に、女の姿が見えた。
ただ、その女からは呪力が迸るようにして放たれている。
……やべぇな、今までで一番強そうだ。
「あ……あァ、あッ……わ、たァ!」
「喋って!?」
「ワタしィィィィ!キレェェェェ!」
目の前が青みを帯びた色になっていた。
なっていくではなく、なっていた。
一瞬で、アスファルトも外壁も、街並みも、空も、全部が青みを帯びる。
その中で、ロングヘアーの女がこちらを見る。
その髪の中には拳大の眼球が複数埋もれており、こちらを見ていた。
「…………」
「ねェ、ワたし、きレェい?」
ゴクリ、と生唾を飲む。
初めての命の危機だ、見ただけで恐ろしいと感じる。
それほどまでの圧倒的な呪力を相手が放っている。
だが、10秒あるいは1分間。
奴は、一切動かない。
……思い出した!あれは口裂け女だ!
どこか見覚えがあると思ったが、前世でアニメとして見た奴だ。
夏油傑が使っていた。
こんなとこで会うとは思わなかったが、このままでは死ぬ。
先手必勝、と呪霊を攻撃に向かわせようとする。
「ッ!?」
どういうことだ、どうして呪霊が出てこない!
術式の使用を禁ずる効果か、いやそもそも結界内か。
なんらかの術式を既に喰らっている?
「ワタシぃ、キぃぃレぇぇイぃぃ?」
「…………」
どうして奴は攻撃してこない。
するのは質問だけ、この質問に答えることがトリガーになっていると思われる。
畜生、ちゃんと覚えてればよかった。
パパ黒はどうやって攻略してたっけ、でもどうせゴリラだからアイツは力押しで攻略してるはず。
ずっと待ってるが、進展はない。
そうか、質問に答えられるまで攻撃しないんだ。
その代わり、俺も攻撃することが出来ない。
あと、口裂け女と俺以外が動いていない。
この領域内にいる対象と自分自身以外の邪魔が入らないように、動かない縛りがあるんだろう。
動かないから、領域展開出来てるのかもしれない。
いや、動けないから展開できる領域なら居合の形の簡易領域と同じだ。
これは必中必殺じゃない、簡易領域ってことか?
たしか簡易領域は動けないはず。
いや、相撲取ってたやつは動けたか。
恐らく、口裂け女の簡易領域の条件。
1 質問をするためだけに機能する領域。
2 質問の邪魔が出来ないように対象以外の物が止まる、あるいは時間の流れが速い。
3 質問が回答されるまで攻撃しない、代わりに回答するまで攻撃できない。
4 動かない代わりに領域を展開し、対象(俺)は自由に動ける。
「ねぇ……」
「…………」
なるほど、分かったぞお前の攻略法。
そもそも、この状態になって絶対死ぬのであれば噂になるはずもない。
答えは沈黙!この簡易領域から無言で逃げるのが正解!
怖くて何も言えずに逃げた小学生たちの間で噂になったんだろ。
俺の目論見通り、口裂け女から離れたら物音が聞こえてきて周囲が動き出し、視界が明瞭になる。
「やっぱりな、そして問いかけと同時に領域が展開される」
ならされる前に、叩けばいい。
されたとしても、回答した上でダメージを与えられればいい。
「出し惜しみなしだ。3年分、呪霊1000体の物量を喰らえ!」
俺の周囲に今まで集めた呪霊、約1000体が展開される。
まるでこれから雨でも降る、そんな前の雨雲のような大群だ。
それを、口裂け女に向かって一斉に突撃させる。
突撃させた瞬間、巨大な鋏が空中に表れて呪霊が大量に引き裂かれる。
だが、それを潜り抜けて突撃した一部が口裂け女に攻撃を加える。
見るからにボロボロ、絶え間なく鋏が現れては呪霊を引き裂いているが、群がる呪霊に噛まれ、引っ搔かれ、殴られ、弱らせていく。
「ワタ、しぃぃぃぃ!」
「何とか、なったな……」
口裂け女が徐々に分解され、俺の手のひらに集まって呪霊玉となっていく。
そして、飴玉程度になった呪霊玉を俺は取り込んだ。
「……やっぱ、不味いわ」