呪術界って実は居場所分かってたけど逃げられまくってたんじゃね?
宗教団体を奪ってから数ヶ月が経った。
名前なんてどうでも良かったのだが、敢えて名付けるならと『エルピスの会』とした。
名前を変えたことで、今までと違うという事を信者達に認識させ秘密裏にパフォーマンスをすることで信仰を集めた。
簡単なことだ、不思議な力を使えば誰だって信じる。
俺は原作夏油ほどカリスマはないからな、呪力を使って騙すしかない。
「この世界には解明できない謎の力があります。そう、私はそれを魔力と名付けました。ハハハ、笑いましたよね。ですが実際に何人か、不思議な経験がある方もいると思います。手を上げて……はい、ありがとう」
宗教団体というのは講演をしたがるのか、人を集められる施設を持ちがちだった。
だから、そんな場所で信者達を集めて講演をする。
「私はそれらを魔物と呼んでいます。こうして話すと、まるでアニメや漫画みたいですよね。でも、昔から妖怪や神として見ることが出来る人達は啓蒙しているんです。皆さんの知る御伽話は、実は本当の事かもしれないと考えたことはありませんか?」
俺の言葉に笑い声が聞こえていたのに、いつしか静かになり話を聞くような雰囲気が出来上がっていた。
「魔物は、我々の体から漏れ出した魔力が集まって生まれると言われています。それは畏れや信仰、共同幻想や噂話など名前はそれぞれですけど人の想いの塊です。では、そんな魔力を扱えたら何ができると思いますか……正解、魔法です!良ければ此方に、さぁ上がって」
仕込みの人間を壇上に立たせる。
今からやるパフォーマンスに必要だからだ。
「我々に宿っている魔力は、あらゆる宗教団体の修行法によって開花します。神通力、気功、悪魔祓いの奇跡や念力などもそうです。そうして極めればこういう事ができる」
俺はリコちゃんを呼び出し、サクラの信者を押し出してもらう。
「う、うわぁぁぁ!浮いてる!身体が、勝手に動いてる!」
何かのパフォーマンスだと、喜ぶ信者達。
うーん、今回のこれは失敗だな。
「失礼、パントマイムのようですよね」
「女の子だ!首のない女の子がいる!」
「私も見た、そこに化け物がいるわ!」
仕込みではなかったのだが、呪霊が見える奴らが混じっていたらしい。
流石に冗談だと思ったのか周りが窘めるが、一向に落ち着く気配がないことから様子がおかしいとすら思われていた。
そんな彼らに、すかさず助け舟を出す。
「素晴らしい!彼女は私の使い魔、デュラハンと呼ばれる存在です。そう、彼らのように見える才能ある者もいるのです。そうですね、皆さんに分かりやすく見せましょう……あー、プラン2だ。コンクリート持ってきてくれ」
「ったく、俺は仲介屋であって業者じゃねぇぞ」
それは彼らの言う化け物がいることの肯定だ。
まぁ、化け物呼ばわりはムカつくけどね。
パフォーマンスのウケが悪い時用の計画として考えていたものを行うべく、会場にいた孔時雨にコンクリートブロックを持ってこさせる。
孔時雨、裏社会に精通する仲介屋で何だかんだ金で言うことを聞く雑用係だ。
「ここに硬いコンクリートがありますね。皆さんも私のもとで修行をすれば、魔物を見ることが出来るようになり、そして」
全身を呪力で強化してコンクリートブロックを握りつぶす。
まるで食パンを千切るように、手が沈み込んでブロックが抉れる。
そして手を開けば、ブロックの破片が砂のようになってサラサラと落ちた。
ざわめく会場、謎の力よりウケが良い。
やはり、フィジカルなんだろうか。
「肉体の強化だけでこんなことが出来る。魔物が見えない貴方、まだ遅くありません。見える貴方、才能があります。私の他にも魔法を使えるようになった人間は何人かいます。魔力を扱えようになれば健康的な肉体、永遠の若さ、そして魔物という不可視の存在から家族や貴方自身を守れるようになるのです!」
ダメ押しとばかりに、あぐらをかいてリコちゃんに抱えてもらう。
見えてる奴ら以外からは、あぐらで空中に浮いているように見えるだろう。
「おぉぉぉ、人が浮いてる」
「ワイヤーで吊るしてるんじゃないか?」
「おい、プルプルしてるぞ」
「魔法じゃ!本当にあったんじゃ!」
信者達が好き勝手に話し始める。
それほど衝撃的だったんだろう。
「しかし政府は!国家は!これを隠蔽しています!何故なら力の独占が出来なくなるからです。魔法の存在を知る者達は秘密裏に殺されています。それが、貴方達が今まで知らなかったことからも分かる真実!ネットや新聞、国家の関わる全てのものは検閲されています。貴方の目と耳で見たものだけが真実だ、さぁ共に新しい人類の夜明けを見ましょう」
拍手。
拍手、拍手。
拍手、拍手、拍手。
適当を並べただけの言葉に、一部の者は熱狂し、一部の者は懐疑的だ。
だが、滑り出しはこんなんでいい。
今は地盤固めの時期だからだ。
「教祖様も板についたじゃねぇか」
「やめてくれよ、久し振りに丁寧に喋って疲れてんだ。酒のんでヤニ吸いたい気分だよ」
「ハハッ、エセ坊主め。あぁ、そう言えば呪術界が探りを入れてるらしい」
「園田を殺したのがまずかったか、まぁ暫くは雲隠れすればいいだろ」
どうやら太客の政治家や事業家の中に、高専と関わりのあるやつでもいたようだ。
夏油はよく映画であんな堂々として、呪術界に動向がバレなかったな。
まぁ、戸籍は色々持ってるし呪詛師を捕まえてスケープゴートにすれば良いだろ。
リコちゃんの術式を使えば、それなりに誤魔化せる。
一部の熱心な信者を経由して、戸籍を手に入れた。
日本でも戸籍のない子供というのは家庭の事情で少なくない。
そういう時の手続きも、色々あるからだ。
手に入れたのは、美々子と奈々子という村で拾った双子の戸籍だ
そして、巻き上げた金で買ったアパートの一室で、美々子と奈々子の夕飯を作る。
「夏油様……ご飯」
「悪いな、もう少しで出来るからよ」
「ううん……何か手伝いたいの」
「おう、そうか。じゃあ箸とか出しといてくれ」
部屋の中はテレビと机とベッドくらいしかなかった。
1箇所に留まるには、呪詛師という立場だと難しいから何箇所かアパートを所持している。
それぞれの戸籍と口座事に手続きできるように秘書でも雇うか。
「菜々子、飯だぞ」
「はーい、あとちょっとで終わるから」
「録画だろ?後で見りゃ良いじゃん」
「リアタイで見たかったの、楽しみにしてたの!プリキュアはすごいんだよ!」
「初代しか知らねぇんだよなぁ」
「菜々子、仮面ライダーの方が強いよ」
「ハァ?美々子言っちゃいけないこと言った!」
子供というのはすぐ喧嘩するなと思いながら、自分で作ったチャーハンを食う。
うーん、ベチャベチャで失敗したかもしれん。
それにしても、ガキ共は随分と元気になったし我が儘も言えるようになってきた。
そろそろ学校にも通わせたりしないとな。
ふと、そんなことを思ってたら携帯がなる。
相手は孔時雨だ。
「もしもし?」
「よぉ、探してた婆さん見つかったぞ」
「素晴らしい、相手はなんて?」
「あってやっても良いそうだ。日程はメールで送る、あと報酬は金じゃなくてライブのチケットだそうだ」
「芸能系の社長に伝手があるから任せろと言っておけ」
遂に、探していた存在に出逢うことが出来る。
私のプランを成功させるために、必要なのは降霊術だった。
「夏油様?」
「どうしたんだ?」
「なんだか嬉しそう、いいことあったの?」
「そうだな……目標に一歩前進したってところだ」
「いっぽぜんしん?……えっと、すごーい!」
「菜々子の分かってない奴だ、美々子には分かる」
「は、はぁ!し、知ってたし!」
またも喧嘩が始まり、止めるのに苦労した。