死ぬ予定の夏油傑になった凡人   作:nyasu

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現代のほうが呪霊が強くなってんじゃね?

呪詛師になって2年目、美々子と奈々子達も小学校に通い始めた。

会社の事業も順調、トゥイッターを始めメッセージアプリであるFINE、ゲームならパズルゲームであるパズモンや引っ張りアクションゲームのドラゴンストライク、色々なものを擬人化した娘化シリーズ、サブスクリプションによるアニメやドラマが見れるネットフリー、手軽に売買できるウリカイなど知ってる企業は買収した。

結果、呪霊が爆増した。

肌感覚になるが、量は変わらずとも質は高くなったとも思える。

炎上という概念、虐めへの利用、課金によるトラブル、放送独占による不満、転売ヤーの増加、企業活動による影響で負の感情は増えた。

 

「あぁ、大暴落してる!おい、不正とかしてんじゃねぇよ!」

「夏油様、だからあれほど投資部門に任せろと……あと、素が出てます」

「おかしいなぁ、最近ズレがあるんだ。そろそろ、専門家に任せるか」

 

社長室、いるはずのない人間である俺はパソコンで株取引を行っていた。

だがここ最近は連敗続き、下がっては買い増しを続けてなんとか+に持っていっている。

資金の多さで誤魔化してるのが現状だ。

 

「はぁ……それで、今日はわざわざお越しした理由は何でしょうか」

「少し、仕事をしたら海外に行こうと思ってね。ブゥードゥーの呪術に興味があるんだ」

「海外ですか、パスポートとワクチン接種各種の準備をしておきます」

「仕事が速いね、あと美々子と奈々子の面倒も見てほしい」

「あの子達、最近私に対して当たり強いんですけど」

 

もうすぐ高学年だからね、少しだけ大人になったのかもしれない。

おじさん、女の子の扱いとか分からない。

もうすぐ二十歳だけど、中身はおじさんだからね。

とはいえ、頼みごとを終えた俺は今日の公演を行いに宗教団体の施設に向かった。

 

 

 

いつかの盤星教を思い出すような地下に信者達が集まっていた。

今日の公演は、信者の中でも特に熱心な者しかいない。

 

「悪いね、残穢は残したくないんだ」

「はい」

「はい」

 

嘱託式の帳用の札を巻いた釘を渡す。

熱心な信者2名に今回は呪力を込めてもらって行う形だ。

 

「「闇より出でて闇より黒く、その汚れを禊ぎ祓え」」

 

二種類の透明な帳が降ろされる。

さて、炙り出しを行わないといけないな。

 

「さぁ、公演を始めますよ。皆さん此方に、どうぞ近くへ」

 

信者達が一斉に俺の側にやってくる。

だが、一部の信者が近寄ってこない。

否、近寄れない。

 

「どうしました、あぁ近寄れませんか?」

「えっ、あっ」

「呪詛師夏油、やはり生きていたのか!」

 

理由は簡単だ。

無色透明な帳が張られていたからだ。

外からは入れるが中からは悪意のある人間は出られない帳。

中からは入れるが外からは悪意のある人間は出られない帳。

 

「いよいよもって探りを入れられると思ってね。私に悪意がある人物は通れないようにしていたんだ」

「どうして……帳か!?」

「知らなかったのか、私は結界術が得意なんだ」

 

高専が一般家庭出身の術師でも潜り込ませたか。

帳が見えるかもしれないと思ったから罠にハメる必要があった。

 

「3人か、うち一部は高専とはなんも関係なさそうだな」

「なんで、なんで出れないの!」

「困るんだよ、ファッションで宗教をやられるとさ。さて、君達に選択肢を与える」

 

一般信者達が通りやすいように左右に分かれていく。

人が通れないような現象は見慣れているからか、真顔である。

 

「うちの教義を知ってるか?愚者に死を、弱者に罰を、強者に愛をっていうんだ」

「気持ち悪いカルト教祖め!ここで消息を絶てば高専はお前を始末するぞ」

「この状況を分かっているか?上層部に使い捨てにされてるんだよ、全員一般家庭出身だろ」

 

まだ利用価値はある、言葉という毒を仕込む。

 

「な、何を言って……」

「少しでも危険な任務は一般家庭に、呪術家庭出身は箔付のために簡単な任務に、バックアップだって差がある。そもそも私の罪は上層部のでっち上げなんだ」

「耳を貸すな、戯言だ!」

「愚か者から死んでいく、弱者は他人を陥れる。その証拠に真実を知らない君達は命の危機に瀕していて、私より弱い上層部の人間だけが甘い蜜を啜る。この状況はどうだ?」

 

適当なことを言っている自覚はある。

まぁ、でも上層部が老害の巣窟なのは共通認識だし思うことはあるだろう。

 

「私に忠誠を誓い、私の思想に賛同しろ。そうすればこの結界を通り抜けられる」

「お前の考えに賛同しろだと、非術師を一緒に殺せというのか!」

「違うさ。食い物にされる愚か者を救い、他人を害する弱い心の者達を罰するんだ。そして、評価されなくても強かに生きる者達だけの世界を作る。術式がないだけで侮り、女であるだけで胎盤扱い、血筋に拘り優劣を付ける、そんな呪術界に価値はあるか?」

「戯言だ!」

 

可哀そうな術師だ。

だが、他の術師や一般人はそうでもないようだ。

 

「私は、私は忠誠を誓います……」

「待て!」

「私も!誓う、誓うわよ!」

 

制止を振り切り、こちらに寄って来る信者に扮した術師と一般女性。

だが一般女性だけが結界に阻まれ、高専の所属であった女性だけが通過する。

 

「はぁ?……な、なんでよ!出せよ、出しなさいよ!」

「皆さん、新しい仲間だ。拍手で迎えてください、おめでとう」

 

信者たちが疎らながら拍手で迎えていく。

頑張ったね、大変だったね、分かりもしないのに労いの言葉を掛けていく。

何もわかってないけどそういうことを言うことにしているんだ、マニュアルがあるからね。

 

「さて、現状を理解できない愚か者と私達に悪意のある弱者が残ったな」

「なんでよ!若くありたいことの何が罪なのよ!あんた達やってることおかしいわよ!こんなの、現実じゃない!」

「知らねぇよ、お前が認められなかったことは俺のせいじゃねぇ」

 

おっと、思わず素が出てしまった。

まぁ、いいパフォーマンスになるか。

 

「シン・陰流!」

「何もしてこないと思ったらカウンターしか出来ないのか。そんなんでよく、いや調査だけの任務だと言われたか」

「どうせ死ぬなら一矢報いてやる」

「いい考えだ。だからこそ惜しい、君には素体になってもらおう。リコちゃん」

 

俺の呼びかけによって、俺の影からリコちゃんが現れる。

そして、俺と一緒に帳の外側に出てきて殴ろうとして走ってきた女性を掴んだ。

ちなみに使うためにいつもの同化はしない。

 

「見せてあげよう。私の呪霊操術、術式反転の真の効果を」

「術式開示か」

「いいや、ただの自慢さ。私の術式反転は呪霊から呪力を奪い解放するというものなんだが、これは2級以上の場合、調伏直前の呪霊玉として排出されても分散しないんだ。不思議だろ」

 

身体が動かなくなっている女性の口を無理矢理に開け、実際に術式反転で生み出した呪霊玉を手にもって見せる。

 

「それで考えたんだが、私はこれを自分で飲んでいるんだ。ではその逆は」

「まさか」

「そう、他者に飲ませることが出来る」

「んぐぅ!?んぅぅぅぅぅ!」

 

呪霊玉を飲み込ませ、俺は残った術師に向かって説明してやる。

 

「通常、飲み込んだ場合は私が支配するんだがね、反転の場合は呪霊が人を支配するんだ」

「ワ、ワタシ……綺麗?アハ!」

「呪力が……跳ね上がって……」

 

女の肉体が変質する、その口元が左右に裂けていく。

だが、見た目はそれだけで変わっていない。

 

「呪霊の受肉、脳をリコちゃんと私で弄らなくても呪力を使えるようにする手段だ。まぁ、廃人になってしまうから、教義に反した人間専用だけどね」

「夏油ぉぉぉぉ!」

「若さよ、私は美しい!教祖様に感謝を、愚者には死を!」

 

走っていく女性が男の範囲に入ったのだろう、だが男が動き出すと同時に体をバラバラにされた。

見えなかったが、簡易領域の押し合いでもして口裂け女の攻撃が通ったのかな?

 

「言い忘れたが、受肉した場合は呪霊と違って負の感情から呪力を生み出せるんだ。だから、より強化されるし、生前の記憶も持っているんだ。あぁ、もう聞こえないか……脳だけ回収しよう」

「ウフフフ、アハハハ、私!赤って大好き!」

 

 

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