死ぬ予定の夏油傑になった凡人   作:nyasu

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毎年、死にかけてるのに食べるのは傍から見たらヤバいんじゃね?

2010年、その年は隣国と揉めていたり野球賭博とか色々あった。

もう年末、宗教団体も軌道に乗り始めたし事業もネット証券会社を設立したり地方スーパーなども経営し始めた。

 

「こちらが予定している決算報告です」

「うわぁ、赤字だらけだ。ゲームとか投資でカバーしてなかったら倒産してたね」

「はぁ……ゲーム、小売店、動画配信、保険、不動産、プロバイダー事業、医療、採算度外視での買収。世間で私がなんて言われてるか知ってますか、見栄っ張りのバカ女ですよ」

「悪いね、でもまだ通信事業や電気事業まで手は出してないじゃないか」

 

出そうとしたらこれ以上赤字が増えると役員に反対されていた、菅田さんが。

表の顔は菅田さんなので、批判もそりゃそっちに行く。

 

「交通電子マネーとの話はどうなってる?あぁ、そうだ楽地の社長とは話し合いで和解したよ。いやぁ、やってること丸パクリだからね」

「うっ……また悪名が」

「大丈夫大丈夫、政治家の伝手も出来たしね。高専の補助金も減らしてもらったよ。代わりに敵対する政治家も猿だったら始末したし」

「やめてくださいよ、謎の不審死で疑われてますよ。まぁ、やったのは野良呪詛師ですけど、ウチの信者ってバレたら面倒ですから」

 

何名か実験体を使ったんだが、呪詛師として殺されてしまったからね。

顔は変えたし、身分証も出鱈目に偽装したからバレないと思うけど。

 

「それで、今度はなんですか。夏油様がアポ取ってくるときって困ることしかないんだけど」

「忘年会やろうよ、年末くらい集まろうじゃないか」

「や、休みが取れたら……」

「そんなに忙しいの?社長でしょ?」

「ぐわぁぁぁぁ、じゃあ変わってよぉぉぉ!」

 

なんか、めっちゃ号泣された。

ごめんて、そんな忙しいの?

じゃあ、暇が出来たらでいいから、うん。

 

 

 

年末、美々子と菜々子に新しい仲間を紹介した。

 

「俺の新しい仲間のミゲル、仲良くするんだよ2人共」

「オレの名前はミゲル、ヨロシクな」

「おう、よろしくなボビー」

「よろしくなの、ボビー」

「ミゲルだ……夏油に似てナチュラルクズな幼女ドモめ!」

 

挨拶するミゲルによじ登ったり、早速仲良くなったらしい。

海外までスカウトしただけあるわ。

 

「シカシ、日本はジュレイがスゴイなぁ」

「年々強くなってるんだ、まぁ原因は私だけどね」

「マァ……祖国のジュレイを祓ってクレタからな。オマエに従うゾ」

「蝗害は日本じゃなかなか起きないからね、コッチも珍しい呪霊が手に入ってよかったよ」

 

カリスマとかなかったけど、何だかんだ仲間にできたのは修正力のおかげなのかもしれない。

 

「お、お邪魔します……」

「真奈美だ」

「夏油様、来たよ」

「真奈美さんでしょ、アンタ達……はぁ、肉買ってきたわよ!」 

 

菅田さんもやってきてようやく年末らしくなってきた。

子供にとって肉の魔力には抗い難いのか、社長!社長!と小躍りしてる。

まぁ、竹皮に包まれてる見るからに高そうな肉だからな。

 

「オイ、夏油……ナンテモン、従エテル……」

「あぁ、リコちゃんだよ。最近、私の脳を複製した呪霊を持ってるから勝手に出てくるんだ」

「ナンテモン、従エテル!?」

「いやだからリコちゃんだって」

 

リコちゃんも肉と菅田さんを囲んで小躍りしていた。

子供か!子供だった。

 

「やはり、肉!肉はすべてを解決する!」

「ボビーは食べたことないでしょ、やってあげる」

「あぁ!しらたきは下茹でしないと固くなるでしょ!」

「ウソだろ……生でタマゴ食ベルノカ……呪力デ胃を強化スル!死ンダラ恨ムゾ夏油!」

 

いや、日本の衛生は良いから。

ドイツ人が豚を生で食べるために頑張ってるように、卵頑張ってるから。

 

「こら、肉ばかり食べない!」

「いっぱいあるから良いんだもーん」

「オイ、ネギバカリ此方に入レルナ!ニク、ヨコセ!」

「ボビーは豆腐で十分なの」

 

何だかんだ楽しくすき焼きをやった。

 

「お雑煮出来たわよー!」

「日本人はマダ食ベルノカ……」

「ミゲルは危ないから食べちゃダメ」

「ナ、ナンデダ」

 

うんうん、素晴らしい。

呪術師が呪術師を助け合っている。

私は感動しているよ。

 

「ミゲル知らないのー!餅は喉に詰まるんだよ」

「毎年、何人も死んでる」

「バカなのか……ナゼ、食ベルンダ……」

「愚問だな。そこに餅があるからさ。俺は5個で頼む」

 

デブだった私が言うんだ。

餅は美味いぞ、食ってみろ。

 

「夏油様」

「どうした?」

「家族が出来たみたいで嬉しい、美々子もあんなに喜んでる」

「はぁ……いいかい、家族とは血のつながりだけではないんだ。慈しみ合う心が大事なんだ。ボンドルド先生が言ってるんだ間違いない」

 

愛です、愛ですよナナチ……じゃなくて菜々子。

あと何回、俺はコイツらと過ごせるのかな。

 

「もし俺が死んで死体を弄ばれても、奪い返そうとしなくていいからな」

「もて……何です?」

「ハハハ、まだ早かったか。大人になったら分かるさ」

「もう、もう高学年です!二分の一の大人なんですよ!」

 

そうか、そろそろ術式の訓練をさせるか。

後は馬鹿なことしないように考えないとな。

そんなことを思いながら、年末を過ごすのだった。

 

 

 

年始から仕事で忙しかった。

まぁ、宗教家なんかやってたら年始なんてイベントとして最適な日だったりする。

何もしないわけにはいかない。

 

「皆さん、明けましておめでとう。この素晴らしき日に、新しい同士を、新しい魔法使いの誕生を皆で祝いましょう」

 

拍手、拍手、拍手。

年始の大集会、以前と同じ方法で悪意のある奴や熱心ではない信者はこの場にはいない。

故に、秘密は破られない。

 

「新たに徳を積みし方々に、祝福の儀を行います。さぁ、名前を呼ばれた方は前に」

 

奉納金順に名前を呼ばれた者達が来る。

明言はしてないが公然の事実であり、信心深いと判断されたものが俺から祝福を受けてマナを解放し、魔力を扱えるようになる……と言われている。

 

「すぐに終わります。さぁ、目を瞑って」

「はい、教祖様」

 

リコちゃんが影から出てきて、足元から蝿頭を取り出す。

そして、それを信者の胸に当ててめり込ませていた。

ズズズと胸に入っていく腕、水面から手を出すようにタプっと手を引き抜いたら完了だ。

蝿頭は信者の体内で臓器と同化したからだ。

 

「さぁ、目を開けて」

「はい……あぁ!見える!リコ様の御姿が!私の信仰が認められたんだ!」

 

原理は簡単だった。

呪霊が見える見えないの違いは、呪力の量によるものだった。

窓のように見えるレベルよりも一般人は呪力がないのだ。

メガネの呪具のように補助があれば別だが、ないなら必要量の呪力がないと見えない。

なので、個人差はあるが見える程度の呪霊を同化させる。

 

それが終わったら元々見える人だ。

別に見えない人でも良いんだが、見える人なら強化する手間が省けるので見える人間だけ術式を使えるようにしている。

 

「次は新たに同士の中から魔法使いとなる祝福を授けましょう」

 

今度は見える人達をリコちゃんと同化させて呪霊と人間のハーフにする。まぁ、改造人間や受肉体のような物だ。

そして、当然のように謎空間に沈める。

試してないが弱らせれば呪霊玉に出来るんだろうか……いや肉体あるから無理か。

 

謎空間にブチ込んだら、感覚になるが呪霊操術による外科手術だ。

中にいるリコちゃんの視界を共有しながら、二人で術師特有の特徴を脳に再現する。

その加工により、元々持ってる人は術式を発現する。

まぁ、入れた瞬間に持ってるかどうか分かるんだけどな。

今回はハズレだったので適当な呪霊の脳と同化させて呪霊の術式が使えるようにする。

 

うんうん、脳は呪霊だけど記憶は本人のだから問題ないだろ。

人工呪詛師の完成だ。

 

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