死ぬ予定の夏油傑になった凡人   作:nyasu

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天与呪縛って最初は弱かったんじゃね?

美々子と奈々子を拾って、もう5年が経過した。

それはつまり、俺が呪詛師になってから5年経ったことを意味する。

計画は最終段階に入った、呪術の極致とも言える領域展開も使えるようになった。

生涯を費やしても出来るかどうかの技術だが、呪霊操術という恵まれた術式の効果で手に入れることが出来た。

 

「どうか、どうか娘を……」

「えぇ、必ず」

 

今日もまた、憐れな術師が犠牲になる。

俺の目の前にはテーブルがあった。

とても長いテーブル、そこには白いテーブルクロスが敷かれている。

その上に、白いワンピースを着た女性が置かれている。

 

「さぁ、皆さん!祈りを!貴女方の祈りが奇跡を起こすのです!」

 

信者達が祈り始める。

こうまでして大袈裟にやってるんだ。

だから、それ相応の結果が欲しい。

呪術や宗教の、根本的な思想だ。

そして、それを叶えると刷り込まれるように、その成功体験は信者を深みにハマらせていく。

 

「術式反転、皓」

 

女性の頭、胸、腹、子宮と順に触れていく。

どこにあるか分からないため虱潰しに行ったのだが、腹の辺で反応があった。

独特の呪力、本来の女性が持った呪力に溶けるように存在する異なる呪力。

リコちゃんとの同化により魂を知覚出来るようになってからの芸当だ。

俺の手から黒い靄が現れて、いつもの呪霊たちのいる空間。

領域展開を出来てから気付いたのだが、一種の結界内のような物にぶち込む。

 

「身体が……消えて……」

 

見えないものからすれば空間に溶けているように見えるのかもしれない。

見えてる俺からしたら、黒い靄の中に落ちていくように見える。

……今回は当たりのようだな、マーキングだけじゃなくて呪具のタイプか。

 

反転呪力により回される術式効果により、呪力の収奪が行われる。

呪霊から呪力を奪うように、眠ったままの女性からその呪力を奪う。

呪力だけではなく、その魂すらも個体として認識して分離する。

 

「おぉ!」

「奇跡だ!」

「……あれ、ここは……」

「あぁ……そんな……本当に」

 

内部の呪物の解析をしていると、外野が煩わしい。

あぁ、ソイツ起きてたのか。

元気になってよかったな。

 

「教祖様は悪魔を取り込んで、疲労してるから!もう帰るしょ」

「そう、教祖様は戦ってるから。悪魔祓い中だから、近寄らないほうがいい」

 

解析に集中していたら、いつの間にか美々子と奈々子が信者達を捌いていた。

すまないな、呪霊操術で分離して、リコちゃんの同化で記憶とか魂を奪うとどうしても自己の認識があやふやになってしまうんだ。

まぁ、俺を取り込もうとして呪霊操術で書き込まれて同化されて尊厳も人格も消されてしまうけどね。

 

「やぁ、すまないね。ミミナナ」

「夏油様、油断しすぎ」

「結界内でも何が起きるか分からないの、あと胡散臭い」

「分かるぅ!私とか似合わなすぎ」

 

菜々子、言動がギャルっぽくてお父さんは悲しいような嬉しいような。

美々子、胡散臭いとか言うなよ。お父さん、臭いみたいな奴だろうか。

 

「うるせぇな、信者の手前で素なんか出せるかよ」

「もう信者いないんだよなぁ」

「早く、お仕事終わったなら帰るべき!はよ、はよ!」

 

お前ら、そういう事言うようになったの絶対俺の影響だろう。

最近、スカウトしたオカマからメイクも教わってなんだか急に成長したな。

 

「分かった分かった、帰ったら卒業式の放映会をしよう」

「ちょ!?まっ、それはいいから!」

「そう!むしろ、学校にカメラ陣は普通にハズいからやめて!やめてぇ!」

 

バカめ、なんのための金だと思ってる。

菅田さんが稼いだ金だぞ、つまりは俺の金だ。

権力を使ってもええやろ。

何、政治家を裏で脅して権力で電力自由化も勧めたし、ガスや電気、家電から家まで何でも関わるようになってきたから。

今年は覚えてたから三冠馬オルフェーヴルの単勝に大金ブッパするだけで良かったからな。

オッズが常に1.2とかだったけど関係ないし、また菅田社長がニュースになってるし、何なら色々あって馬主になってたし、裏じゃ大変そうだけど。

 

「さぁ帰ろう、私達の家に」

 

俺は取り込んだ呪物を解析しながら帰路に着いた。

 

 

 

 

 

 

メロンパンがマーキングし始めたのか、信者達からの相談で謎の昏倒する奴らが現れた。

大体身内だが、中には信者の一人だったりするときもある。

ハズレはマーキングだけだが、中には呪物を取り込ませ受肉体にさせようとしている奴もいる。

そういう身動きの取れない呪物を奪って、吸収して、知識や経験を手に入れていき、スタンダードな必殺のない必中の領域展開を知って、出来るようになった。

まぁ、補正なのか原作に出てた奴らは出てこない。

再契召とか捏造したレシートでも出来るのか試したかったんだけどね。

 

俺の計画による課題は2つある。

1.呪霊操術の対象となり呪霊化して生存しても操られる。

2.魂の形を変更、魂を切り裂くなどの破壊に耐性がない。

 

1に関しては受肉体になることで調伏されかけても問題なく対処できる。

調伏済みのリコちゃんと同化しない限り、呪霊のいる空間に入れられても操作は出来ない。

問題は2である。

 

「真人め……」

 

真人を手に入れられたら一番簡単だが、術式を持ってなかった事から最近生まれた呪霊なんだろ。

昔の人は、人よりも妖怪や自然災害を恐れたんだろうな。

 

対処法は2つ。

呪力で魂を保護する、または触れられても問題ない魂になる。

前者は呪力という外殻、または鎧のようなもので柔らかい魂のようなもので形を固定しているイメージだ。

前者は魂の格とか言ってたが、宿儺の特徴としてはセンスや自我の強さ、呪力の量などが考えられる。

 

試したくないが、圧倒的な呪力というエネルギーを持っていたら対抗できるのかもしれない。

呪霊操術と呪霊の関係のように、等級換算する呪力の量とか強さ次第で無条件に調伏出来ないのに近い。

強すぎると、無条件では無為転変出来ないとか。

 

考えた対策として、いらない猿や信者を加工して、魂をミルフィーユ状にする方法だ。

問題は魂と魂を同化させようとすると、反発して崩壊することだ。

拒絶反応のようなものに近い。

一つの肉体に複数の魂を独立した状態で入れられるが、融合や合体のようなことは出来ないということだろ。

つまり、エヴァに乗れてもシンクロ出来ないもんだろ。

 

どうして、エヴァの事を考えたのか。

それは、眼の前にいる信者の子供が原因である。

 

「やぁ、始めまして」

「だ、れだ……」

「私は夏油傑。与 幸吉(むた こうきち)君だね」

 

まだメカ丸に、高専に保護される前。

小学生の与幸吉が私の前にいた。

術式を自覚するのが小学生の入学頃だとしたら、随分と経過しているが保護されてはいなかった。

理由は、言うほどまだ呪いが強くないから、見つけられてないからだと思われる。

 

「君の両親から、君を救って欲しいと言われていてね」

「俺の……これは……呪いだ……医者じゃ、直せない」

 

天与呪縛はサンプルが少ないから知らなかったが、どうやら呪いと祝福は徐々に大きくなっていくらしい。

よく考えたら、禪院家をぶっ壊せる術師殺しが子供の頃に過酷な仕打ちを受けてグレるってのも、最初から化け物フィジカルならおかしな話だ。

呪霊の中に突っ込まされたりしたらしいが、それってあの忌庫だったりするんだろうか。

ボコして突っ込んだの?天与呪縛より身体能力があるって?

いやいや、なら高説垂れてた禪院扇はお前程度の身体能力とか言いながら、娘にコマ切れにされたりしない。

 

答えは簡単だ。

子供の頃は天与呪縛でも、そこまで強くなかった。

大人になるに連れて強くなったのではないか?

その証拠として、歳を経る事に肉体が損傷していく、与 幸吉という存在がいた。

 

名前からして愛されてるのに、保護されてから風呂みたいなので生命維持装置にブチ込まれたんだよな。

親とかワンチャン殺されてそう、それこそ保護が上手くいくように呪霊とか使って救出劇みたいな。

 

「正直な話をしよう、ここには俺とお前だけだからな」

「エセ……教祖め……」

「君の呪いは魂にまで付随した呪いだ。解除されるには、魂の形を操れるような存在に頼むしかない。私にできることは肉体からの情報である痛みの緩和や下半身不随の補助や皮膚の保護程度だ」

「なん……だと……」

 

可能かどうかで言えば可能である。

与 幸吉 自身の状態は変わらないが、命令を受けて動くように呪肉体に補助させればいい。

もっとも、高専に保護された時点でバレて手足もがれて、剥奪されそうだけどな。

 

「君は未来で好きな子や友達が出来る。そして、生身の体で出会う前に死ぬ」

「クソみたいな……話だ……」

「しかしね、死んだ後にも君は役割があるんだ。とても高度で縛りによって成立する保険、傀儡操術という魂を扱うのに近い術式だから出来る芸当によって一時的にね」

「未来を……知ってるような……口振りだな……」

 

知ってるとも、そして本来起きるはずのない出来事に俺は浮足立っている。

呪力によって仮初めの命を与える傀儡操術、魂という核を入れれば自立型の呪骸も生み出せる。

メカ丸の場合は自分自身の魂を呪力によって一部だけ移していると考えている。

それなら肉体や魂を弄られて死んだはずなのに、ミニメカ丸として一時的に蘇生出来た理由も分かる。

死後の復活で、これほど興味深い対象はいない。

 

「特級呪霊に殺される。他人の情報を敵対するものに与える。五条悟の封印を前提とした縛りを結ぶ。この全てを達成するまで私との記憶を忘れる、最後に術式を解析させる。その代わり、私が肉体を3つ提供しよう。呪力を貯蔵出来るね?肉体の一部を埋め込めば傀儡操術の対象として認識できるだろう」

「よく分からないが……俺の使える呪いに……ついてだな……」

「呪力というものだ、使い方も教えてあげよう。一瞬だ……リコちゃん」

「ッ!?……スタンドだと、実在したのか」

 

いや、スタンドではないが!?

 

 

その後の話、与 幸吉君は痛みを感じなくなり身体は丈夫になった。

なお、下半身不随は天与呪縛に影響しそうなので直さず、動けないままである。

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