死ぬ予定の夏油傑になった凡人   作:nyasu

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転生者ってある意味スワンプマン何じゃね?

特級術師、九十九由基の襲撃。

それは俺に恐怖を与えた。

馬鹿な、なぜ、何しに来た、様々な考えが浮かんでは消える。

結論は、全く意味が分からないだ。

 

「何しに来た……」

「随分と機嫌が悪いじゃないか」

「ここには結界があったはずだ。どうやって」

「あぁ、殴って壊した」

 

コイツ……クソゴリラが!

俺と九十九由基が出会うことは運命では決まっていない。

だが、それは解釈次第で覆る。

俺は戦ってないが、俺の身体はコイツと戦っていることを俺が知っている。

最終的には勝っていたが、片腕は持ってかれていた。

 

「ある地域で呪霊を見れる人間が増えてね、見え始めた時期から統計的に調査していくと羅漢に辿り着いた。そして多額の研究費が使われてる研究施設で特定の残穢を見つけてね。不思議なことに、特定の信仰をしている人間達が同じ呪力を身に宿してる」

「探偵かよ……」

「何を企んでいるんだい、夏油くん」

 

そう、問うてくる九十九由基に対して身構える。

時間は足りない、長々と話していれば高専に気付かれる可能性が出てくる。

乙骨だけが俺を殺しかけ、悟だけが殺せるが、それまでの過程は変わる可能性がある。

つまり、死にはしなくても死にかけることは大いにあり得るということだ。

 

「まぁ、お前が殺しに来てるとも言えるけどな」

「あっはっはっ!必要とあればね」

「お前は俺の運命の相手じゃない、リコちゃん!」

 

俺の身体から、ヌルリとリコちゃんが飛び出してくる。

記憶を共有してるから、既に戦闘態勢だ。

 

「いつか話した、世界から呪霊をなくす方法を覚えているかね?」

「呪術師だけの世界にするか、呪力を無くすか」

「どんな手段を取ろうとも人類は1段階上の存在になる」

「呪力の最適化か」

「違う、呪力からの脱却だ」

 

お前が言うんかい。

それが一体どうしたと言うんだ。

 

「ウィルスとは良い着眼点だった。術師は呪力が免疫となり、非術師だけが同じ呪力を宿す。そして呪力を回せるようになるわけだが、同じ呪力を宿しているのが引っかかる。何が目的だ、夏油」

「ハハッ、それが何だという。そもそも目的が違うんだ、俺は別に脱却も最適化も望んでない。羂索やお前らと方向性が違う」

「お前ら……?」

 

そんなことが聞きたかったのか。

おい、やめろ。

なんだその構えは殴る気か。

 

「言うつもりはないと?」

「夏油様!映写呪法……」

「新手か、フンッ!」

 

九十九由基が床を思い切り殴る。

それだけで、辺りに粉塵が舞った。

今の声は、菜々子か。

学校帰りにまた来たのか。

だが、力技で菜々子の撮影するという縛りを突破した。なんて早い判断、東堂の師匠なだけある。

 

「スマホが縛りかな、邪魔だね」

「あぁ、最新機種が!?」

「……ま、また買えばいいだろ」

「アンタと違って友達の写真とかあるんだよ、おばさん!」

 

ぐっ、と胸を押さえて膝から落ちる九十九。

菜々子は菜々子で割れた画面のスマホを前に嘆いていた。

いや、お前らギャグパートか?容赦しないけど。

 

「領域展開」

「しまった!?」

『孤毒形影相弔』

 

俺とリコちゃんに、これと言った変化はなかった。

だが、それこそが俺達の領域展開だ。

その様子に警戒を露わにする九十九、その首に半透明の縄が掛かる。

 

「閉じない領域!?必中効果か」

「いや、何もしてないよ」

「夏油様!菜々子!」

 

すごい勢いで上昇する九十九、それは美々子の術式によるものだ。

実体化した縄が、九十九由基の首に巻き付いて吊し上げる。

だが、それも数秒。

ギチギチという音を出しながら縄が捩じ切れていやがった。

 

「力技!?」

「ゲロヤバっしょ!」

 

素手で首の縄を捩じ切った女が、着地と共に地面を蹴る。

初見殺しか、お前の術式を知らないとでも!

 

「リコちゃん!」

「触れたら拙い!?」

 

リコちゃんが九十九の前に、瞬間移動する。

そして殴り掛かりに行くが、九十九はバク転で距離を取った。

突っ込んでくるのはブラフ、様子見に徹するつもりか。

 

「俺の領域展開は必中のみ」

「領域内に侵入したものへの、術式の開示」

「相手に無害かつ必殺でない事により領域の押し合いには強くなっている」

 

領域展開と言うには烏滸がましい。

範囲も半径数メートル規模の領域だ。

だが、領域内に入ろうと攻撃が当たり判定になるわけでもなければ術式による必殺効果もない。

ただ、俺とリコちゃんの術式と縛りを開示するだけだ。

 

「シンプルに領域内でリコちゃんが瞬間移動出来る、その程度の領域だ」

 

俺が手に入れた記憶や経験の多くが必中の領域ばかりだった。

だから俺は、必中でありながら何も意味のない領域を作った。

坐殺博徒のようにルールを教えるだけの無害なものは領域の押し合いに強いからだ。

 

「同化術式……リコ……天内理子、星漿体か!」

「そうさ、そして俺は呪霊操術の強みを捨てる縛りを使っている」

「対象である呪霊は一体しか出さない。そして、呪霊自身の自由行動の許可、呪霊のダメージを共有する。数の強みも呪霊を操るということも放棄したのか」

「俺はリコちゃんを取り込んだ時からリコちゃんしか出してない。そして、行動を縛ったこともないさ。最近は、ますます自由だけどね」

「ロリコンが……」

「失礼な、友情だよ」

 

そして、リコちゃんと俺は手持ちの呪霊を使い潰して膨大な呪力を得ている。

術式空間には呪霊を加工してリコちゃんでもある、術式脳呪霊もストックされている。

呪力で強化して殴る。

脳を取り出して別の術式を使う。

ある意味、近距離パワー型スタンドだ。

メカ丸の言ってたことも間違いではない。

 

「その余裕、あと1つか2つ隠しているね」

「なんのことが分からんが、帰ってくれないか?勘が良すぎて怖いんだが」

「冗談、まだ始まったばかりじゃないか」

「そうだった。コイツ、タイプ的には東堂と同じだ」

 

これだけしてなお、九十九由基はやる気満々だった。

嫌だよ、この施設とか更地にしたくないんだが。

 

「命を賭けた縛り、それこそが弱点だったね」

 

九十九がそう言って領域内に踏み込んでくる。

リコちゃんが、瞬時に反応して殴りかかる。

よし、このまま当たれば勝ち。

 

「止めれるかよ」

 

九十九が飛ぶ、リコちゃんが距離を詰めたのを見てから対空で攻撃する。

リコちゃんが、身体をひねり足で蹴り上げ迎撃しようとするが、そこに九十九は拳を入れた。

リコちゃんの足に九十九の拳、コイツ接触することを厭わないだと!?

 

「ガハッ!?」

 

リコちゃんの足がひしゃげ、腹にまで拳が到達。

リコちゃんが地面と拳の間で倒れ、腹部が爆散。

地面にはクレーターが出来上がり、離れていた俺の腹部が爆発した。

 

「そうか、仮想の質量……」

「反転術式を使う前に始末する。悪いが何を企んでいるかは知らないが、バイオテロは看過出来ない」

「ハッ、やってみろ……だが、俺の死はお前じゃない。俺はこんな死に方は……望んでない」

「夏油様!やめろ、夏油様から離れろ!」

「夏油様!どうしよう夏油様が、死んじゃう!」

 

美々子と菜々子が俺を庇うように立ち塞がる。

大丈夫だ、運命では俺はまだ死なないと分かっているからだ。

リコちゃんは自前の呪力で回復しつつある。

俺も反転術式で治せば、なんとか戦える。

だが……

 

「抵抗するなら、この子達は殺す。どうする」

「降参する。だからこの子達は見逃し、この子達を高専に入れろ。あと、もうこの子達の大事な者達とも敵対しないでくれ」

「……あぁ」

「これは縛りだ。口約束は信用できないからね」

「良いだろう、約束は守る」

 

ふぅ、何とか生き残れそうだ。

俺は何も知らないで泣きじゃくる、ミミナナを抱き締める。

いよいよ持って、意識が無くなりそうだ。

 

「俺は死なない、安心しろ……」

「……夏油様?」

「だから、俺の敵討ちなんてしようとするな……」

 

俺はその言葉を最後に、今生で初めての死を経験した。

 

 

 

目の前には胴体に穴の空いた死体がある。

騒ぎを聞きつけた高専の奴らが今にも来そうな場所だ。

長居はあまりしたくない。

だが、厄介な置き土産をしてくれたもんだ。

 

「夏油様!夏油様!」

「お前!」

「やめろ、私達が戦うことは夏油君の縛りに反する。夏油君の意思に反するのか?お前にも言ってるんだ、天内理子」

 

背後に立っているであろう呪霊にも言う。

この子供達の大事な者、それは夏油君や呪霊も対象になるかもしれない。

死体は物だから良いかもしれないが、呪霊はまだ生きてるからな。

高専に入れるのは呪詛師認定されて上に何かされるのを予見しているからか?

 

「……リコ様?」

「おい、私はやめろといったぞ」

 

気配を感じて振り返る。

子供達が呆然とし、何やら固まっていたからだ。

しかし、私は振り返った事を後悔した。

 

「…………」

「……はぁ?」

 

天内理子の周囲には呪霊操術の際に出るような空間の亀裂のような物があった。

そして、そこからは天内理子と同じ呪力を持った信者の男が出てくる。

呪霊以外も格納出来るのか……いや、同化により呪霊として受肉しているにも関わらず対象として認識しているのか。とんだ、バグ技じゃないか。

受肉した場合は体内にある自身の領域などから呪霊操術で調伏出来ないが、調伏済みの天内理子と同化することで既に調伏したということで空間に格納を可能としているのか。

 

「…………」

 

天内理子は、空間から出した信者に向かって何かを口元へと運ぶ。

あれは……人の指か?

 

「何を……して……」

 

指を飲み込んだ信者は、変化しはじめる。

まず呪力の質が変わった。

指の呪力が広がるように信者の男から溢れ出る。

そして、見た目が変わった。

顔の半分が、さっきまで見た夏油傑の顔に変化し始めているからだ。

 

「何だと……」

「夏油様!」

 

眼の前に死んだはずの男が立っていた。

 

「美々子、菜々子、お前達の愛があれば私は不滅です」

「どうして生きてるんだ!夏油!」

「おやおや、どうしました九十九さん?縛りを破るんですか?」

 

眼の前の男がニヤニヤしながら言う。

 

「俺の目的は最適化でも脱却化でもない。同一化、俺自身を複製することによる不死の実現だ」

「何なんだお前は!」

「俺は特級呪術師、夏油傑。人は俺のことを史上最悪の呪詛師と呼ぶ、願わくば二度とお前とは敵対したくないよ」

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