九十九由基って結構な年齢なんじゃね?
中学を卒業する前に、急に現れた女が夏油様を襲っていた。
そのせいで夏油様は死んでしまったけど、リコ様のお陰で生き返った。
やっぱり夏油様はすごい、神は死んでも復活するって聖書に書いてた、つまり夏油様は神っぽい。
夏油様は哲学的ゾンビに意識を移してるって言ってたけど、よくわかんない。
ペイン六道みたいな感じらしい、どういうことだってばよ。
そんで、夏油様の縛りによって、またあの女がやってきた。
「ミミナナ、準備は出来たかい」
「気安く呼ぶなよ、おばさん」
「私、学校行かない。配信者になる」
美々子の案に、良いじゃんと閃きを得る。
コイツ、縛り守れなくて痛い目見そうじゃん。
「あーしも行かなーい」
「はぁ、ガキかよ……いや、ガキだった」
「あーしらがガキだったらおばさんじゃん」
「フッ、年増が言いおる。片腹痛い」
目の前が上下にブレる。
激痛、頭部の痛みに思わず反射で頭を抱える。
久しぶりに殴られたのだ、誰に?
犯人は眼の前の女しかいない。
「痛っ!クソが、ムカつくんだけど!」
「吊るす?吊るす?」
「おいおい、敵対行為をしてもいいのかい?夏油君との縛りを君達が破るのか?」
「先に破ってんだろ、クソババア!」
「破ってない。私のは敵対行為ではなく教育的指導だから、私自身が無意識でも敵対行為だと思ってないから問題ない。あと、私はまだ20代だ」
嘘だ!だって夏油様が高校生の時に大型バイク乗ってたって言ってたもん。
その時点で大型が取れる年齢の21からプラス10してても31だ。
「嘘だ!嘘つきだ!」
「永遠の17歳とかそういう系、うわぁ……」
「私、アンタ達きらーい。はぁ……夏油くんに迷惑を掛けたくないなら私の言うことを聞きなさい」
「ず、ずるーい!夏油様を人質に取るなんてサイテーだ!」
「流石ロクデナシ、汚い。やることが汚い」
「うるさいなぁ、ほら高専に入学するんだよ!」
そう言って、美々子と私の身体が持ち上げられる。
こ、こいつ!俵みたいに私達を抱えていやがるだと!?
「気を付けるんだよ〜」
「夏油様!やだやだ、学校やだー!」
「イヤッ、ヤダー!」
私は入学することになった。
連れてこられたのは東京にしては田舎臭い所だった。
本当に東京かよ、埼玉よりなんじゃないの?
「話はついている。此処から先には二人で行くんだ」
「はぁ?」
「私、高専って嫌いだし、じゃそういうことで!」
「あっ!逃げるな!付き添え!」
「夏油様は逃げなかった、付き添ってくれた」
私達の叫びは虚しく響くだけだった。
あのババア、いつか殺す。
「はぁ……」
「菜々子、あれ……」
美々子の指差す先、そこには二足歩行のパンダがいた。
パンダである、それ以上でもそれ以下でもない。
パンダであった。
「ん?おい、お前らもしかして新入生か?」
「ギャァァァ!?喋ったァァァ!」
「お、落ち着く!きっとあれは呪泉郷に落ちた人間!確かめてやる!」
「うおっ、何をする!や、やめろォ!撫で回すんじゃない!」
「馬鹿な、ファスナーがないだと!?」
「美々子ー!死ぬな、モフりで沼ったら死ぬぞ!」
「菜々子、もうダメ。驚きの柔らかさ、ウチで飼いたい」
な、なんてことだ!美々子が蕩けてやがる。
モフりすぎたんだ、落ちてやがる。
「よく分かんねぇけど新入生はこっちだぞ、離れろ」
「すごい、ぬいぐるみみたい」
「もういい、行くぞ」
「動かなくていいの、すごい楽」
よく分かんねぇのはパンダの存在なのだが、案内してくれるとのことでついて行くことにした。
私達が案内されたのは、よくわからないお堂だった。
「この先はお前達だけで行くんだ」
「それ、流行ってるの?」
「お前は何を言っているんだ?」
「パンダだけ、何も知らないのである」
いや、パンダじゃなくても知らないよ。
何言ってるの美々子?
じゃあなと去っていくパンダを追いかけようとする美々子を引きずりながらお堂の中に入る。
扉を開けたらそこには、サングラスのおっさんがぬいぐるみを縫っていた。
オッサンが、可愛いを作ってる!
「新入生だな。九十九はどうした」
「帰りましたー」
「ガッデム!まぁいい、それでお前達は何しに来た?」
「はぁ?」
何を言ってるんだ?
美々子と顔を寄せ合って作戦会議する。
「どういうことなん?」
「とんち?なんか手続きミスった?」
「えー、あーしら関係なくなくない?」
「これは帰って良いのでは?」
作戦会議終了!
閉廷、おばさん年増有罪!
「話は終わったか」
「帰りまーす」
「はぁ?おい、ちょっと待て」
「えっ、なんかあります?」
「面談だぞ、帰っていいと思ってるのか?」
「面談とか聞いてねーんだけど、説明不足じゃん!」
何なんだ、どいつもこいつも説明不足。
やっぱり夏油様が神だって分かりみ深い。
「もう一度聞く、お前達はここに何しに来た」
「入学」
「モフり?」
「違う、呪いを学び呪いを払う術を身に着け、その先に何を求める」
「決まってるじゃん、推し活しょ!」
「推し……なに?」
「推し活!推しのために生きて、推しを感じて、推しのために死ぬ!推し活は義務だから、知らないわけ?」
えっ、逆になんのために生きてるの?
生きる理由もなく漠然と生きてるとか死んでるのと一緒じゃん。
推しのために死ぬくらい当たり前っしょ、聖書や古事記にだって書いてる。
「それは、アイドルとかのオタ活ってことか?うーむ」
「所詮はロートル、オタ活との違いも知らないとは……」
「推し活と違うんですけど、知ったかするなら死ねよ!ギャル舐めんな!」
「オタ活は道を極めること、つまり狭く浅く一つの分野に精通していく事。推し活のように推しにアクティブに動いて惚れ込むのとは違う、オタ活は推しという単一ではなく分野で、文化で、カルチャー、ニワカは死んだ方がいい。オタク舐めすぎ、馬鹿なの?死ぬの?」
「……口が悪いな。まぁいい、それなりのモチベーションとイカレ具合、認めよう。だが、呪術師に悔いのない死はない。これは肝に銘じておけ」
勝った。
よくわからんけど、論破してやった。
私の論破りんぐが冴え渡ったわ。
「寮の部屋は空いてるとこを好きに使え。オリエンテーションは明日行う。分からなければ、教室の場所を職員に聞いてくれ」
「おけまる」
「おけ……俺も歳か。何言ってるのか分からん」
「大丈夫、美々子も分かってないけどフィーリングで行けるから、よろしくぬいぐるみおじさん」
「夜蛾学長だ!お前達の担任は別にいる」
「はえー、そーなん?まぁ、いいや。行こう、美々子」
「菜々子は自由すぎ、可哀想なぬいぐるみおじさんだった」
明日からということで、早速寮に向かう。
場所も当然知らないので最近増えたという窓の人に場所を聞いて、と何だか懐かしい呪力を感じた。
「ヤバ、リコ様じゃん」
「えっと、一体な……ナイショニ、スルノダ」
「どうしてここに?」
「マドノ、オオクハ、リコニカンセン、シテイルカラサ」
「アハッ、夏油様じゃん」
窓の人間が白目を剥き、俯きながら低い絞り出したような声を出す。
リコ様が肉体の主導権を奪って、夏油様の声を代わりに伝えているのだ。
リコ様自体は縛りなのか喋れないが、伝言は出来るらしい。
自分の考えてることは言えないけどみたいな感じかな?
「ニュウガク、オメデトウ」
「はい!」
「ガクセイセイカツ、タノシムノダ」
「分かりました」
「……ハッ!?あ、あれ?」
「ブラックなの、窓の人立って寝てたの」
「えぇぇ!?嘘、びょ、病院行こうかな……」