死ぬ予定の夏油傑になった凡人   作:nyasu

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学生って無賃労働なんじゃね?給料出てるの?

登校日、田舎の学校みたいだなと思いながら美々子と教室に向かう。

夏油様に通えと言われた中学校、煩わしいと思ってた数日前が何だか懐しくてまた通いたいなと思うくらいにはエモい。

うーん、ギャップのせいかな?

 

「奈良とか京都みたい、枯山水どちゃくそ映えでは?」

「マジ、朝活とかウチら、やばたにえん。超健康優良児っしょ」

 

朝のひんやりした空気も、人の営みから離れた静けさも、学校の中にいるはずなのに日常とは違った雰囲気。

少しだけ学校が好きになった気がする。

まぁ、新しい友達とか必要かというと、いらない気がするけど。

 

「菜々子、マジヤバかも」

「あーね、キモすぎかも」

 

チルい雰囲気だなとか思ってた私達の気分をぶち壊す奴が、少し離れたところで仁王立ちしていた。

ダサいアイマスクみたいなのを片手で上げて、その人を見透かしたような蒼い瞳で私達を見る男。

ただ、化物染みた呪力は呪術師なら気圧されるレベルだろ。

 

「枷場美々子と枷場菜々子だな」

「アハッ……なんかキレてる?」

「五条……悟……」

 

ただ近付いてくるだけ、なのに私達の息が詰まる。

一般人には分からない呪術師特有の感覚、特に私達は近接が出来ないから徹底的に残穢や呪力量の感知は鍛えられている。

コイツが、夏油様の親友だった男。

 

「九十九由基から聞いている。その上で聞きたいことがある……お前ら夏油傑を知ってるな?」

「……ッ!?」

 

何故、夏油様の名前が今出てくる。

あのババア、私達を裏切ったのか!

クソ、勝てるわけないけどやるしかないのか!

 

「菜々子!だ、大丈夫」

 

私の携帯を持つ手を、美々子が両腕で抑えてくる。

そうだ落ち着け、縛りはある。

まだ裏切ったとは、私達を売ったとは確定してない。

震える美々子の静止が、動揺した私を落ち着かせる。

 

「その人が、なんだって訳?」

「子供の頃、会ったことがあるはずだ。アイツを知ってるか?」

「し、知らない……意味分かんない」

「美々子の言う通りだし、いきなり何なん?」

「…………」

 

五条悟はそのまま、外していた目隠しを元に戻す。

コイツ、どうやって前を見てるんだ?

横にいた美々子もすごい顔で見つめていた、頭の後ろに宇宙が見える。

 

「…………勉強不足だねぇ、まぁこれから勉強しようか〜、じゃ教室こっちだから」

「はえ?」

 

今までの雰囲気は何だったのかと言うように、呪力量が抑えられる。

循環する呪力、コイツ無意識に垂れ流していたのに気付いてないのか?

まぁ、何にせよ売られた訳じゃなかったか。

 

「今年は豊富だから同級生は多いよ。まぁ、呪術師はいつでも人手不足だから、多いけど3人しかいないね」

「……あっそ」

「……興味ない」

「そうだ……君達を助けたアイツは、どんな奴だった?」

 

まだ探られてるのだろうか、何か勘づいてるのかと菜々子と顔を見合わせる。

言葉を選ばないと、下手したらマズイことになる。

お互いの考えが決まった。

 

「良い人だった」

「私達の手を引いてくれた」

「……そうか、そうだな。そんなやつだよな」

 

互いに言葉がなくなった。

浅い関係性だ、言葉を交わすほど初対面じゃ互いのことを知らない。

私達はたくさん知ってるが、向こうは何も知らない。

分からないのは、何を考えているかだけだ。

その背中を見ながら、私達は教室までついていった。

 

教室には3人の生徒がいた。

パンダ、銀髪のイケメン、眼鏡の女だ。

先に五条悟が教室に入っていく。

 

「自己紹介して」

「枷場菜々子でーす」

「美々子」

「……終わり?」

 

終わりと言われても、他になにか言う事なくない?

私達席を指さされ、座ったら五条悟が他の人達にも指示を出す。

 

「はい、みんな自己紹介して」

「……禪院真希」

「えー、今どきって趣味とか好きなもの言わないの?彼女は呪具使い、いろんな武器を使うよ」

「しゃけ」

「そこにいるのが呪言師、狗巻棘。好きな食べ物は多分、おにぎり!」

「よっす」

「パンダ、以上!」

 

そしてパンダはパンダだった。

全員知っている、だって夏油様が教えてくれたから。

 

「さぁ、明日から授業だよ。まずは呪いについて、次に基本的には基礎体力の向上や戦闘訓練、たまに任務かな」

「学生って賃金発生しないんだって」

「クソ、ブラックなの」

 

しかも調査は適当で、たまに政治的な嫌がらせで命が危ないって灰原も言ってた。てか、灰原がそれで死んだって笑ってたし。

なんで夏油様はこんなとこに通うように言ったんだろ。

 

「狗巻君、棘君、どっちがいい?」

「しお」

「塩……何にでも合う、つまりどちらでも良いって事かな?ところで筆談は出来るの?」

「しゃけ」

「ほほぉ、しゃけとは……SYAAKE、これはつまりアナグラムでakaYES、肯定ってこと。じゃ、ライン交換しようか」

 

な、なんかぁ!

グイグイ、美々子が行ってる!

てか、そこはサーモンだし!サーモンの綴り知らんけど!

サーモンなら、モンだから、多分MとNOだし!

 

「しゃ……」

「なに、QRコードが出せないとは」

「ケッ、色気付きやがって」

「マキマキも交換してあげるから拗ねなくていい」

「マ、マキマキ?」

 

こ、これは!

コイツ、コミュ障が一周回って陽キャみたいになってやがる!

狂ったタイプの陰キャ的行動、学校デビューってやつかもしれない!

 

「お、おい。お、俺とは」

「ハァ?パンダは携帯なんか持っちゃダメなんだよ。パンダは喋らないし、笹しか食べないの」

「俺、雑食なのに……」

「おかか」

「うるせぇ、このリア充め!おかかって、おかかしか分からないんだよぉ」

 

モフモフと少年が抱き合ってる。

喧嘩、喧嘩なんだろうか、ペットとの触れ合い?

 

「ハハハ、早速仲良くなってよかった……仲良くなるの早くない?」

「早い」

「まぁ……これも青春だから、うんうん」

「青春でまとめやがった……美々子、正気に戻れ〜」

「ハッハッハ、私は正気。友達たくさん、ボッチじゃないよ」

 

やめろ、お前そんなキャラじゃなかっただろ!

 

 

 

翌日から、学校が始まった。

同じ女の子だし、仲良くなれるかと思ったが禪院は此方を避けてる気がする。

夏油様に相談すれば、双子に思うところがあるのだろうとのことらしい。

ウチらの兄弟子?弟弟子?っていう東堂がいる京都にいるらしい。

いや、弟子にはなってないから他人だわ。

好きなタイプ聞いてきてビンタされた記憶しかない。

 

「マキマキぃ〜」

「マキマキ言うな」

「マキマキ、避けてね?えっ、何、なんかある?」

「ねぇよ、っだぁぁぁ!ダル絡みしてくんなよ」

 

そう言って、さっと離れていく。

シャァァァ!と威嚇する猫みたいだ。

分かるんだよな、人の顔色伺ったり背後に立たれるのを嫌がったり、視線が合い続けるのに耐えられなかったり。

それと、誰かと私達を重ねてる。

 

「フッ、俺知ってる」

「高菜」

「マキマキ、思春期って奴ぅ〜?」

「おーし分かった!パンダ、テメェは殺す!すぐ殺す!今すぐ殺す!」

「ワ、ワシントン条約が黙ってないぞ!」

「た、高菜!」

 

襲われるパンダ、追い掛ける禪院、後ろでオロオロする狗巻くんとそれを動画撮影する美々子。

小さな違和感、美々子との日常に同い年の子達が入ってくる。

私の居場所はそこにあるだろうか。

 

「おい、何してんだよ。菜々子も来いよ」

「た、助けてくれ!剥製にされる」

「菜々子、サーティワンが安いらしい。行くしかない」

「ツナマヨ!昆布!」

 

みんなが呼ぶ声がする。

今は、ただこの時間を楽しんだ方が良いかもしれない。

 

「マジィ、行くしかないっしょ!モチ、パンダの奢りあざまーす」

「お、俺、人間の通貨、分からない」

「コイツ、都合がいい時だけパンダになりやがって!オラ、飛べよ!持ってんだろ!」

「すじこ!」

 

これが私の新しい日常になるからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「シゴトダヨ、オッコツユウタヲ、カンシシロ」

「……はい、夏油様」

 

 

 

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