2000年に到達した。
IT革命とも言われるそれ、日本ではグーグルやアマゾンがサービスを開始した。
株取引したいが、この時代ではインターネットすら珍しい部類。
電話で取引したり、証券会社の人に来てもらったりしないといけないらしい。
ちょっと、子供には無理ですね。
「フッ!はぁ!」
そんな俺は、今では小学3年生。
感謝の正拳突きを初めてから黒閃は未だに成功していない。
もう3年やってるのに、出来なかった。
まぁ、俺も数週間で1日1000回くらいになったし、なんなら今は惰性で出来る時間に出来るだけやるみたいな感じでサボり気味だ。
うん、これは出来ないね。
いや、命が掛かってるのは分かるのだが、努力が全然できないのだ。
頑張って筋トレもしてるのだが、そっちもサボり気味である。
毎日出来る人ってすごいと思う。
逆に不思議な力である、呪力に関しては毎日弄繰り回している。
一定の厚みになるように量を調整したり、維持したり、ぶつかるタイミングをズラしたり。
戦う分には呪力を纏って殴れば身体能力は上がるから鍛えなくてもいいんだよな。
「最近は呪霊が多いし、強くなってきたな。クソ陰キャどもがよぉ……どうせネットというオモチャで負の感情を募らせてるんだろ」
もうSNSとかあるんじゃねぇかな、人の悪意の源泉だろあんなもん。
最近、呪霊を祓う行為が作業ゲーと化していた。
まぁ、呪霊操術はポケモンってみんな言ってたからな。
捕まえた雑魚呪霊の物量で弱らせて少し強い呪霊を取り込んだら、それを沢山集めて格上の呪霊にぶつけるみたいなもんだ。
と言っても、強いというのも何級かは分からないが、だいたい同じくらいの強さのばっか集まってきた。
弱い呪霊は戦闘で倒されて、そこそこ強いのだけ残ってくからだ。
イメージでいうならレベル帯が10ぐらいの奴らがどんどん死んで、捕獲してるのはレベル帯30ぐらいの奴らみたいな感じだ。
「まぁ、そうそう1級とか特級と会うわけないもんな」
むしろ、会うのはスーツと呪力を纏った大人。
なんか窓らしき奴らが増えてんだよな、最近。
呪術師のスカウトでもするべく、人手を増やしてるんだろうか。
「それにしても、縛りは便利だな」
この3年で呪力を練れてから出来ることが増えた。
その一つが縛りだ。
領域は習ってないし見たこともないから出来ないが、呪力の操作と縛りは出来るようになった。
そもそも、縛りって便利だよなと暇さえあれば考えていた。
俺が知ってる縛りは3種類。
1 自分や他者と結ぶ縛り
2 術式開示
3 天与呪縛
この3つだ。
全てに共通しているのは、ルールを設定してペナルティを設けるというものだ。
メリットとデメリットの釣り合いが取れるように縛りというのは作ったり結ばれる。
これはケルトで言うところのゲッシュや、仏教で言うところの殺生禁止のタブー、キリスト教における洗礼という水に沈む行為など、似たようなものが宗教の中にはある。
呪術廻戦という世界だから宗教行為が元ネタともいえるし、呪術があるからそういう行為がこの世界にあるとも解釈できる。
この辺は、卵が先か鶏が先かみたいなもんだから、深くは考えない。
簡単に考えてしまえば、ゲッシュのように自分でルールを決めることや、仏教の戒律のようにタブーを決めること、キリスト教の洗礼のように特定行為を条件にするなどがあると認識すればいい。
1は自分や他者にルールを強制して守らないとペナルティが発生するパターン。
これはゲッシュに近い、ゲッシュてのは犬は食わないとか格下からの食事は断らないとかだ。
なお、守ってる間は祝福されるが誓いを破ると災いが発生する。
ハンターハンターで言えば、誓約と制約だ。
2は自分が不利になるデメリットを負うことで、バランスを取るようにメリットとして術式が底上げされる縛りの一種。自分の匙加減でデメリットを受け入れる代わりにメリットを得るのはゲッシュとは逆だ。
3は呪力によるバグだと思っている。
呪力をもって生まれる直前に結ばれる縛り。
だが生まれたばかりの赤ん坊が負の感情を募らせているとは思えない、だから呪力もないはず。
となると、母体から呪具のように呪力を与えられたんじゃないだろうか。
母体の一部であった頃、母親と赤ん坊の境界は曖昧と言える。
母親の呪力は他人の物だといえるし、母親の一部だから自分の物とも言える。
意思がない赤ん坊に出来るとは思えない。
また共通して自分の肉体にあるものを縛りで失っている。
健康な体とか、あったかもしれない術式とかが望んでない縛りという特大のデメリットに応じた特大のメリットを与えられてるけどな。
天与呪縛の奴らは、全員いらないと思ってるのも特徴か。
呪力なんかいらないから健康になりたいメカ丸とか、身体能力なんかより恵まれた術式が欲しかったパパ黒とか。
つまり母親という他人の呪力を自分の呪力として扱い、母親の一部である間にデメリットとして自分の肉体に関するものを犠牲にして天与呪縛のメリットを享受してるんじゃないだろうか。
例えば健康な体や、あったであろう術式などを失うという形でだ。
「で、いろいろやったんだけどなぁ……」
呪力を練れるようになって真っ先に俺がやったのは、呪霊を弱らせるという調伏行為をしなくても呪霊玉に出来る代わりに1時間味覚を無くすという縛りだ。
呪力を循環させ、そこに意思を乗せるだけで簡単に縛りを作ることはできた。
まぁ、強く誓うだけだからな。
取り込むことが出来る代わりに、一定時間味覚がなくなってもいいと強く思ったのだ。
「結果は、味覚は死んだけど呪霊玉の味だけは分かるだったけど」
ちゃんと味覚はなくなり成功かと思いきや、呪霊玉の味だけは変わらず感じられた。
恐らくだが、呪霊の味というのは五感で知覚してるのではなく魂で知覚しているのだ。
呪霊玉の仕組みは、呪力化して自分の呪力で包んで作るというもの。
実体のない呪力となった呪霊に味があるとしたら、それは呪霊から生み出された呪力の味ということになる。
残穢とか見たり感じたりできるから五感を通してはいるが、結局呪力というエネルギーを五感を通して知覚しているのは精神とか魂とかだろう。
精神は分からんが、漫画で魂とか出てたから魂で知覚していると思う。
つまり、味覚を失ったとしても呪力の味を魂が知覚して味として感じているのだ。
だから縛りで味覚を無くしても意味はないのである。
逆に言えば、知覚する味を固定してしまえば誤魔化せるかもしれない。
結果、俺は味の改善に成功した。
「味覚の有無にかかわらず呪霊玉の味を知覚するなら、食べられる味として知覚するメリットに対して、階級に応じて一定時間その味しか感じられなくするデメリットを設ければいい」
差し引きが0になるように、メリットとデメリットが釣り合うように。
自分が絶妙に嫌な不便さやストレスの溜まる内容をデメリットを設ける。
これにより、俺の取り込む作業は劇的に改善した。
「まぁ、たくさん取り込むと同じ味しか感じられなかったり強すぎると数日引きずるデメリットもあるけど知覚してる情報を誤魔化しているんだから、簡単に治せないほうがバランスが取れるんだろ」
何事も、バランスが大事って訳だな。
うーん、百合の間に挟まろうとする男のようだ。