死ぬ予定の夏油傑になった凡人   作:nyasu

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クリスマスに百鬼夜行って、リア充爆発しろってことじゃね?

何個目の宗教組織だろうか。

公安や高専から探りがある度に逃げ回っている。

今日も今日とて信者のお悩み相談だ。

 

襖を開け、奥の上座へと進む。

部屋には熟年の母親と巨乳の女が立っていた。

あぁー、エロ呪霊に犯されてた女の子だ。

 

「えっと、佐藤さん?」

「いえ、私、斎藤です」

「あぁ、斎藤……そうか、そうだった」

 

映画でもそんなこと言ってた気がする。

 

「お母さん、帰ろう」

「でもあんたぁ、最近眠れてないでしょ」

「でも、こんな胡散臭い……」

「胡散臭いねぇ、まぁそりゃそうだ。霊に取りつかれるだって、誰も信じない。刺すような視線、肩が重くて息苦しい、そして犯される夢を見てる」

「な、なんでそのことを……」

 

いや、だって現在進行形でガン見してるし、首絞めてるし、何なら胸と尻とか揉んでるし、エロから生まれた呪霊だろ。

術式もなさそうだな、あっても相手をエロくするとかそんなんだろ。

 

「動かないで」

 

手を向ければ、呪霊が呪霊玉になる。

うんうん、肩が軽いだろう。

こんな雑魚呪霊でも困ってるなら助けてあげなきゃね。

 

「すごい、身体が軽くなってる」

「いやぁ、重そうだけどね」

「えっ?」

「いや、また取り憑かれたら来てください」

 

肩を回して確認する女の子、プルンプルンしてる。

あっ、あっ、ちょ、リコちゃん脇腹にブローは痛い痛い。

もう、仕方ないだろデカイんだから。

 

呪霊を祓ったら、作戦会議の時間だ。

菅田カンパニー執行部門の人間を集めて高専の襲撃を行う。

ミゲル、オカマ、灰原、パパ黒、今は4人。

招集すれば呪詛師に呪霊を宿して術式が使えるようになった信者もいる。

呪霊は呪霊操術じゃなくて暴力で主従関係を結んだのしかいないから、たくさん集められないが百鬼夜行は行える。

 

「仕事だ」

「ハイハイ!反対です、反対!」

「異論はないな」

「なんで無視するんですか!好き勝手しますよ、夏油さん!」

「うるさいな。もう好きにしろよ、術式で命令して仕事はしてもらうからな」

 

お前はもう亡霊なんだからよ。

今は術式で魂を複製されて、その術式効果で生存できてるだけなんだし、パパ黒の魂と肉体とは別だからな。

 

「俺の仕事は侵入と天元を見つければ良いんだろ」

「あぁ、他の奴らは足止めだ」

「夏油ノ偽物ヲ用意シヨウ」

「まぁ、バレると思うけど良いよ」

 

魂も肉体も一緒のやつを作っても、なんか勘とかでバレそうだけど。

 

「まぁいいさ、時は来たんだ。さぁ、新世界の神になるぞ。まずは呪術高専を潰すとしようか」

 

俺達の百鬼夜行が始まる。

 

 

 

懐かしい通学路を歩いていく。

向かうのは俺だけ、まさか正面から呪詛師が来ないと思うだろ。

というか、俺は死人だしね。

 

「うん?……えっと部外者ですよね」

「えぇ、京都の方から来ました」

「なるほど、じゃあ手続きを――」

 

校門で、窓の人間に呼び止められる。

守衛所の受付をやってる人だ。

今の服装はスーツにマスク。

謎の感染病のせいでマスク不足だから、怪しくない格好。

疑わないのも無理はない。

 

「まぁ、迂闊だよね」

「あっ、がっ……」

「静かに」

 

正体がバレる前に手続きを済ませようとした守衛の窓の人を、間髪入れずに攻撃する。

首を掴み、リコちゃんと同化。

これで肉体の主導権は奪った。

そのままリコちゃんの一部を同化させたまま、肉体から手を離す。

リコちゃんの操り人形の完成だ。

 

「それじゃ、失礼するよ」

「き、貴様……まさか、呪詛師……夏油……」

「喋るな」

 

まだまだ同化が甘かったか。

まぁ、もう意味ないけどね。

 

石畳を歩いて懐かしき母校を見る。

天元の結界の中なのだ、呪力感知でそろそろバレる頃合いか。

正面ロータリーを歩いていると、久しぶりの美々子と菜々子の姿が見える。

そして、乙骨とパンダと狗巻棘の姿が見えた。

あのムチムチはマキマキとやらかな。

 

「ここは変わらないなぁ」

「あっ、この前の……」

「やぁ、乙骨くん」

 

俺の姿に気付いた乙骨が驚いた顔をする。

その様子に周りの奴らも反応した。

 

「関係者なのか?憂太の知り合いか」

「あっ、うん、知り合いって言うか……この間の任務で助けてくれたんだ。そっか呪術高専の人だったんだ」

「すじこ」

「あれ、何処かで見たことある気がする」

 

やはり胡散臭い袈裟よりもスーツだよな。

見た目で人は判断するとはよく言ったものだ。

俺は乙骨に改めて自己紹介をする。

 

「久しぶりだね乙骨くん。私は夏油傑、覚えておいてほしい。君は今の社会に疑問を覚えたことはないかい?悪意を持った人間がノウノウと生きて、弱者が虐げられる世界。ナンセンスだと思わないかい?」

「憂太!離れろ、ソイツの名前に聞き覚えがある!特級の呪詛師だ!」

「……特級で呪詛師の間違いだろ。来たか、悟」

 

巨大な呪力が、この場にいる全員を圧倒する。

肌を刺すような呪力、懐かしいね悟。

 

「よぉ、やっぱり生きてたのか!」

「なんで分かんだよ、お前以外は騙せたのに」

「どうして生きている、夏油!」

 

見慣れた術師がゾロゾロと現れる。

有象無象だな、一番警戒しないといけないのは悟だけだ。

 

「よく1人でここに来たな、自首でもするつもりか?」

「まさか、自首することなんかしてないだろ」

「じゃあ一体、何しに来た」

「決まってるだろ、宣戦布告だ」

 

あと、美々子と奈々子の回収だ。

このまま残るも良し、此方に戻ってきてもよし。

俺は彼女達の意思を尊重する。

 

「来たる12月24日、我々は百鬼夜行を行う」

「なんでクリスマスなんだよ」

「神の誕生を祝う日だからだよ」

「カップルが許せねぇだけだろ、拗らせやがって」

 

別にそんなんじゃねぇし、映画でもそういう風になってたからだし、あと本当は別に目的あるわ。

 

「場所は呪いの坩堝、東京新宿。そして呪術の聖地、京都。各地に呪詛師を放つ。もし、私と共に弱者が虐げられない世界を作ろうと思うなら、私の下に来たまえ。抗うものは、鏖殺だ」

「出来ると思ってるのかよ」

「負け戦なんかするかよ」

「本当にこれがお前のやりたかったことかよ!お前、前に言ってたよな!村人を殺した真犯人がいるって!裏でソイツが――」

「覚えてないな、何の話だよ」

 

そんなことを言った気もするが、どこに奴の目があるか分からないのにあまり言わないでほしい。

俺が冥さんを雇ってるように、スパイとかいそうだし。

 

「あぁ、そうかよ!殴って、思い出させてやるよ」

「おいおい、俺達が本気を出したら他の奴らは死ぬぞ」

 

そう言いながら、俺の身体からリコちゃんを出す。

その姿に、悟の顔が面白いほど驚愕に染まる。

 

「天内……だと……」

「いいや、お前には分かってるはずだ」

「呪霊なのか……いや、受肉している?」

 

固まる悟、その横を走る人影があった。

菜々子だ、菜々子が此方に走り寄ってくる。

 

「菜々子!?」

「おい、何してんだ!」

「ごめんパンダ、でも夏油様を一人には出来ないから。それに、誰も虐げられない世界、何が悪い訳?」

「ソイツは呪詛師だ、嘘に決まってるだろ!」

「マキマキ、ウソじゃないよ。夏油様は、私達を助けてくれた」

 

俺と悟が互いを警戒している間に、菜々子がやってきてしまった。カメラの術式を使うギャルの方だ。

やれやれ、やる気が削がれたな。

それにしても、この子は平穏な生活を捨てるのか。

 

「美々子、美々子も行こうよ。私達はいつも一緒じゃん」

「……行けない、私は行けないよ」

「なんで……」

「私は……もっとみんなといたいよ」

「……そっか」

 

言葉はそれだけだ。

だが、それで十分だった。

 

「どうやら勧誘はこの子だけみたいだな」

「行かせる訳ねぇだろ」

「やめとけよ、俺達の間合いには生徒がいるんだぜ。それとも、やるか?」

 

虚式を放つつもりか構える悟。

だが、いつかと同じようにゆっくりと手が下がる。

 

「弱くなったな、弱者に気を使うようになるなんて。昔のお前はそんなんじゃなかったよ」

「好きに力を使うようになったお前こそ、昔はもっと弱かったぜ」

「大人になったんだ。じゃあ皆さん、次は戦場で」

 

そう言って踵を返す。

それにしても、よく映画じゃ逃げ切れたな。

誰かしら攻撃しても可笑しくなかったろうにさ。

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