死ぬ予定の夏油傑になった凡人   作:nyasu

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足止めしたミゲルってやっぱすげぇんじゃね?

人類の選別は終わった。

謎の疫病はワクチンによる治療により軽症化し、現代ではインフルエンザのような扱いとなった。

日本の景気も良くなったのか、外国人のインバウンドが起こり、入国制限時に比べて20倍の外国人がやってきていた。

……というのは表向きの話。

 

本当は、選別した世界中の人間を随時集めていたりする。

計画のために必要な犠牲だからね。

さて、宣戦布告を終えた俺は悩んでいた。

どうせ死ぬからと菜々子を使い潰すか否か。

俺の独断と偏見により、基本的に善人は殺さないようにしていた。

 

菜々子は此方側を選んでしまった。

呪詛師としての生き方、高専は許しはしないだろう。

だが、情というものも湧く。

殺してやるのがせめてもの救いだろうか?

 

「もうすぐか」

「…………」

「君ともお別れだ」

 

俺は菜々子と黒井さんに髪を結われているリコちゃんを見ながら、ふと言葉を漏らす。

もう、此処から先は巻き込むわけには行かないからな。

 

「夏油様、こっちこっち」

「はぁ……俺は普通に床屋に行くから良いんだけど」

「行ったら間違いなく短髪にされちゃうじゃん」

 

反転術式で髪の毛をのばせばいいじゃないか。

とはいえだ、呼ばれたので菜々子の前の椅子に座って、俺も散髪してもらう。

 

「黒井さん、旅行に行くなら何処がいい?」

「はぁ?……何ですか唐突に、ニキュニキュの実で飛ばされるんですか?」

「いや、修行させたいわけじゃない」

「私は、そうですね。沖縄に、行きたいですね」

 

沖縄かー、と菜々子と一緒に納得の声を上げる。

沖縄、俺達とリコちゃんが最後に過ごした場所……いや、最後は、最期は高専になってしまうか。

南の島に行きたいのか、なるほどね。

 

「そういう夏油様はどこに行きたいの……あっ」

「俺は北海道かな、ジンギスカンを食べたいんだ。で、あって言った?」

「私も、夏油様と北海道に行きたい」

「ねぇ、誤魔化されないけど。あって言ったよね?」

「…………言ってない」 

 

うおおおおい、節子みたいになってるじゃん!

なんでバッサリ行ったの、テクノカットでもするつもりなの!

反転術式で治すよ!もう、これ、そういうレベルだよ!

 

「ねぇ、夏油様」

「何だよ菜々子、あーもー焦った」

「私、仲直りしてほしいよ」

「無理なこと言うなよ」

 

これからやる事をアイツはきっと許すだろう。

だが、許されてはいけないことでもあるんだ。

菜々子の方こそ、美々子と仲直りして欲しいものだ。

いや、仲直りしたいから俺達の事が気になったのかな。

 

「これが終わったら北海道……は、呪術連のテリトリーだから東北にでも行こう。その時は美々子も一緒だ」

「美々子は……」

「お前には俺達みたいにはなって欲しくないんだ、いいね」

「……はい、夏油様」

「約束だ。いい子にして、待っててくれよ」

 

あれ、これ死亡フラグか?

まぁ、死ぬ予定だからフラグで間違いないか。

 

 

 

お互いやり合ったら勝率は3割、呪術連も来たら2割と言ったところ。

九割九分の勝率に上げる方法、乙骨のリカちゃんを奪うことだと、気付けるのは五条悟だけだ。

 

「闇より出でて闇より黒く、その汚れを禊ぎ祓え」

 

高専に帳を降ろす。

乙骨を孤立無援にさせる……と言った演出だ。

 

「新時代……いや、新世界の幕開けと行こう」

 

新宿には改造呪詛師と呪霊の受肉体が暴れまわってる。

足止めにはミゲル、拡張術式によって生霊取り憑かせるということで俺自身の魂の複製と肉体情報の複製を行った影武者もいる。

これで多少の足止めは出来るだろう。

 

「おい、なんでオメェがここに居る」

「あぁ、マキマキか」

「マキマキ言うな、何でその呼び方知ってんだよ!」

 

武器を片手に地団駄を踏む禪院真希、薙刀状の所謂「偃月刀」のような呪具を持って警戒していた。

 

「大義のためだよ、それより君はまだそのステージなのか?」

「何?」

「教えてあげるよ、君が強くなる方法。簡単さ、足を引っ張る双子の妹を殺せばいい。それだけで、君は完成する」

「何言ってんだが分かんねぇけど、お前の言う大義はロクでもなさそうだな」

 

そう言って武器を構える禪院真希が、そのままフラッと体勢を崩す。

 

「カハッ……!?」

「はい、お疲れ」

 

その後ろには、憑依により完全再現された伏黒甚爾が立っていた。

早すぎる挙動、俺でも見逃しちゃったね。

 

「よくやった。予定通り天元の居場所を調べてくれ」

「へいへい、扉ブッ壊せばいいんだろ……コイツ、俺の動きを見て動きやがった。肋骨が折れて刺さっちまったぞ」

「大丈夫大丈夫、死にはしないから。うん、そういう運命だから」

 

伏黒は俺の顔を指さしてくるくる回してからフザけた顔で煽ってきた。

誰の頭がくるくるパーだ。

おっと、誰かが俺の帳を突破したか。

十中八九、パンダと狗巻くんかな。

美々子は……乙骨といるのかな?

 

「これもまた運命か、悟……君はやはり気付いたんだね」

 

さて、無視するべきか片付けるべきか。

 

「グオォォォォ!!」

 

突如、眼の前の壁が爆発しパンダが現れた。

何を言ってるのか分からないと思う、俺も分からない。

そうか壁をぶち破って最短ルートで来たのか。

ここまで0.5秒で超速理解した。

 

「オラオラオラ!」

 

ラッシュが入る。ガードしていても、両腕を交差した上から重いパンチが入る。

そしてパンダが飛ぶ、コイツ格闘も出来るのか。

真上に飛んだパンダが、真下に落ちながら殴ってくる。

しゃがみながらガードしていた俺を、呪力と重力と自重と筋力による攻撃でガードしている腕ごとぶち破ってきた。

両腕が、折れる。

 

「カハッ!?」

「棘!」

『堕ちろ!』

 

全身に圧力が掛かる。

地面が、俺ごと凹む。

それはくり抜いた穴のような状態だ。

全身の筋肉が断裂し、骨が粉砕骨折したのを感じる。

すごいな、流石は悟の生徒だ。

 

「棘!大丈夫か!真希、おい真希!」

「うっ、まだ……だ……」

 

反転術式による修復を行う。

骨はくっつき、肉も繋がる。

 

「素晴らしい、本当に素晴らしい。乙骨を助けるために仲間と協力する。呪術師が呪術師を助け合う、実に素晴らしい」

 

10メートルはあるであろう穴からジャンプで出てくると、禪院真希を介抱するパンダと狗巻棘がいた。

 

「な、何なんだよぉ!」

「そう言えば、ちゃんとした自己紹介はしてなかったね。特級呪詛師、夏油傑。君達の担任と同じ特級呪術師だった男だ。当然、反転術式も使える」

「だが、肉弾戦は苦手!ゴリラモード!」

 

やれやれ、全く力技で対抗か。

素早いスピード、贅肉のない肉体を持った、まさにゴリラであるパンダが呪力を漲らせて殴り掛かってくる。

だが、それがどうした。

 

「甘いな、強い奴の記憶と経験は取り込み済みだ」

 

呪力が溢れるほどの強化をした状態で、懐に飛び込む。

下からの一撃、パンダの身体が浮いた。

そこから連続でパンチを叩き込み、最後に回し蹴りで遠くに吹き飛ばした。

肉弾戦が得意な呪詛師やマフィア、裏表問わず全員脳みそにして記憶と経験は抜き取らせてもらった。

同化した俺は彼らの技術を再現可能だ。

おっと、両腕が千切れてしまったか……綿でも詰め直してくれ。

 

「肉弾戦が苦手だとは言ってない」

『動――』

『跪け』

 

頭から狗巻棘が地面に激突する。

それはリコちゃんと同化したことで使える第二の術式、狗巻棘と同じ呪言だ。

リコちゃんには術式を使うだけの機能を与えられた脳の形をした呪霊を複数同化させている。

リコちゃんと同化している間は、俺もその脳を利用して他の術式を使える。

油断したな、美々子から聞いていなかったのか。

 

「食らわせることはあっても、食らったことはないんじゃないかな?」

 

まぁ、結果は先に入った攻撃により五体投地が行われていたが。

そこまでしろとは言ってないんだが意識を失ったな。

ふと、呪力を感じて振り返る。

 

「遅かったじゃないか、乙骨」

「真希さん……狗巻君……」

「頼むね、リコちゃん」

「来い!リカ!」

 

2017年12月24日

特級過呪怨霊 折本里香

二度目の完全顕現

 

「殺しはしない。寝ていろ」

「ブッ殺してやる!」

 

俺の前で呪霊を出しながら怒りを漲らせる乙骨の姿があった。

さぁ、第二ラウンドだ。

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