ひとりぼっちの闇の精霊 作:TE
(ヤバい、体が動かせない…)
魔力を無理やり搾り取られた少女は人間が出ていった後も暫く動けずにいました。
「焦りすぎて判断を間違えちまったな。クソ、やっぱり人間なんかに関わるんじゃなかった。分かってたはずなのに…」
(コイツがいなければ俺は今頃いつもみたいに人間どもにイタズラして遊んでたのに…)
すぅ〜
薬が効いたのか穏やかに寝息を立てる赤子を少女は見つめます。
「なんでこんなことになったんだよ。俺はただ…」
ーーー
「ね、ねぇみんな」
「うわ、逃げろ!」
「助けて!!」
「は、早く!」
まだ赤子を拾う前、少女は妖精の中でも周りから恐れられていました。
「ひぐ、えぐ」
そのため少女はいつも一人ぼっちでした。
「なんでみんな逃げるの?」
ただ少女にはなぜ自分が恐れられるのかがわかりませんでした。
「どうしたの?」
そんな時です。人間の女の子が話しかけてきました。
「え?」
最初は急に話しかけられたことに戸惑っていた少女ですが初めて話をすることができたことをとても喜びました。
「あなたって名前とかないの?」
「ない」
「えぇ、それじゃあ不便だわ。私が名前を考えてあげる!」
「名前くれるの?」
「ん〜そうだな〜。じゃああなたの名前はソフィーよ!」
「ソフィー?ソフィー」
妖精の少女は自分の名前を嬉しそうに何度も口に出します。
「そう、いい名前でしょう?」
「うん、ありがとう」
「そういえば私の名前も話してなかったわね。私の名前はアイラっていうの。これからはそう呼んでね!」
アイラからソフィーという名前をもらい、二人はより一層仲良くなりました。
「ソフィー来たわよ!」
「アイラ!」
ずっと一緒にいる訳ではなく時々ソフィーの元にアイラが訪れては何かをして遊んでいました。
「わぁ、ソフィすごい!」
少しでもアイラに喜んで欲しかったソフィーは自分が使うことのできる魔法を見せたりしては喜ばせていました。そんなある日です。
「ねぇソフィー。お願い助けて!」
いつものようにソフィーの元に尋ねてきたアイラですが、何やらとても慌てています。
「ど、どうしたの?」
「私のお母さんが、お母さんが!」
「え?」
「お母さんが倒れちゃって、村のお医者さんでも治せなくて、ソフィーなら魔法で治せるかなと思って」
(アイラ以外の人間に会うの?怖いけど、アイラの頼みだし)
「分かった」
ソフィーはアイラの母に会うことに怖がりましたが、ゆういつ自分に話しかけてくれ、名前までくれたアイラの頼みを断れるはずもなく頷きます。
「ここだよ」
「これは…」
「あぅ…あ」
アイラに案内されてソフィーはアイラの母のもとに訪れます。そこには痩せ細り呼吸も満足にできていない女性がベッドで横になっていました。
「お願い。ソフィー」
「う、うん」
(出来るか分からないけどソフィーのためだし)
ソフィーは自分に出来ることをやろうとアイラの母に自身の魔力を流して回復を促します。
「はぁはぁ」
暫くそれを続けてソフィーの魔力が残り少なくなっていきます。
(もう、これ以上は…)
「アイラ?」
「お母さん!?」
そんな時ですアイラの母がうっすらと目を開けます。
「ごめんね、こんなお母さんで」
「大丈夫だよ。ソフィーが絶対治してくれるから!」
「愛しているわ、アイラ」
そんな言葉を最後のアイラの母親は目を開くことはありませんでした。
「っ、はぁはぁはぁ」
自分の魔力をギリギリまで使っての治療を行なっていたソフィーはアイラの母親が亡くなった瞬間に膝をつきます。限界を迎えたようです。
「な、んで」
「え?」
「なんでお母さんを治してくれなかったのよ!!」
「え?」
アイラはソフィーにいつもの笑顔ではなく怒りの表情を浮かべています。
ガチャ
「おい、大丈夫か!!」
「お、お父さん」
そこに一人の男性が部屋に突撃してきます。どうやらアイラの父親のようです。
「レアに何かあったのか?」
「お母さんが、」
父親はベッドの上で胸の鼓動が亡くなっている自分の妻を見つめ、自分に抱きついてきた娘を見て何かを察します。そこでふと自分の妻の隣で膝をついているソフィーに気がつきます。
「お前、闇の精霊じゃないか」
「え?」
「お前が、レアを殺したのか…」
父親はソフィーを闇の精霊だとわかると声を荒げます。
「お前!!」
ばき
「うぐっ」
父親に殴れらたソフィーが壁に叩きつけられます。
「なんで?」
「黙れ、よくもレアを!」
「ア、アイラ?」
「私の名前を呼ばないで!!ソフィーなんか消えちゃえ!!」
殴られたルビイはアイラに助けを求めるように名前をよびます。ですがアイラからは怒りと憎しみのこもった目を向けられます。
「私、助けようと」
「嘘をつくな。娘を騙してレアを殺したんだろう!闇の精霊はそういう生き物だ!」
「ひっ」
アイラとその父親からの目線にソフィーは恐怖のあまり悲鳴をあげます。
ドス
「あぐ」
父親はさらにルビイのお腹を蹴り上げます。
「た、助けて、アイラ」
「うるさいうるさい!あなたに名前なんかあげなければよかった!」
「娘に話しかけるな!」
「んぐっ」
(逃げなきゃ)
ソフィーは動かない体に鞭をうち走って逃げ出しました。さいわい、アイラの父親が追いかけてくることはありませんでした。
「ごほ、ごほ、うぇぇ」
なんとかいつものねぐらまで移動してきたソフィーですがアイラの父親からの暴力とアイラからの罵詈雑言に倒れ込み涙を流します。
「な、んで、私頑張ったのに。アイラのために頑張ったのに」
「闇の妖精がいるのはここか?」
「ひっ」
しかしソフィーが倒れている場所に武装した村人たちが集まってきました。
「は、早く逃げないと」
「探せ!」
幸い素早く気づくことができたためなんとか村人たちにバレることなくねぐらから逃げることが出来ました。
「ひく、ひく、私はやっぱり、ダメなのかな…もう名前も」
ソフィーは…
いえ、妖精の少女はまた一人ぼっちになってしまいました。