【カオ転三次】終末を約束された世界で心のままに生きていく   作:緋咲虚徹

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のっけから人によっては微妙かも知れない描写がありますので、ご注意下さい。


001:転生と懸念

 ふと気が付いた時、始めに思ったことは違和感だった。

 思考力があるなら目を覚ましているはずで、目が開いているなら夜であっても何かしら見えるはずなのに……。

 目を開けて何か状況が分かるものがないか探しつつ、思うことは自分の記憶――今この場に至る前までの記憶について。

 思い返して出てくるのは特に何かあったとも思えない日常、おっさんと呼ばれて否定出来ない歳になっても特に情熱を傾けられる物も無く、死んでいないだけの様な惰性の日々。

 強いて上げるなら魔法のような超常に対する憧れを捨て切れず、そう言った創作物を中心に楽しんで、そんなちょっとした幸せで満足する程度の人生。

 朧気ながら浮かんでくる記憶に自身の存在を思い返しながら、しかし現状に繋がる情報が思い浮かばないことに、何より〝自分が誰なのかを思い返せることに安堵している〟事に疑問と言い知れぬ焦燥を感じていると、唐突に差し込んだ日光に目が眩む様な感覚と、享楽に耽る男女の濁った音が響いてくる。

 

「お?今のはイったか?」

「奥っ――!ふぅ……、すごく――けど、流れては無いわねぇ」

「オイオイ、まだ楽しませろよ。まだ――も過ぎてないん――」

「――って前のは九ヶ月――残ったから処理が大変――ねぇか」

「大変つってもあの――教会の墓地に捨ててきただけじゃん。――も特に何か騒がれることもなか――」

「私は七――くらいを突かれるのが――だけどなぁ」

「それより――いかね?腰振って――」

 

 聞こえた、いや〝感じ取れた〟のは罪悪感の欠片も無く、ただ己らの快楽のために命を宿し、始まること無く終わる様に喜びすら感じている醜悪さに吐き気すら感じる程だが、今の自分に吐き出すもの等何もない事に否が応でも気付かされ、現実を突きつけられる。

 前世の自分は既に亡く、己という魂が宿った先は生まれることすら望まれていない、壊れる事が前提の玩具だと言うことを。

 

 自分という意識が目覚めてからどれぐらい経っただろうか、初めは途切れ途切れに声が聞こえる程度だった聴覚なのか第六感のようなものなのか分からない状態も、それしか出来ず更に言えば自身が生きるどころか生まれるための希望ともなれば必死になるもので、支障なく声を聞き取れる様になったら次はぼんやりと周囲の様子を感じ取れる様になった。

 この時点で所謂〝霊感〟的なものなのだろうと思い至り、状況打開のために何か出来る事が無いか周囲を感じ取る事に集中した結果、更にいくつかの事を知ることが出来た。

 一つはこの世界が地球で記憶よりは多少昔っぽいが近代日本と思われる都市の何処かにいること、一つは連中の行動範囲にそれなりの大きさの病院があること、一つは成長段階が九ヶ月を過ぎていること、最後は生まれてしまったら死産だったことにしてそのまま玩具にする予定らしいこと、なので――。

 

「うぇっ!ココで!?」

「大丈夫ですか?!直ぐに病院まで運びますから!誰かっ運ぶの手伝って――」

 

 無事に病院近くで破水させて何人も人目がある中で病院へ運び込んで貰い、予想通り育てる気など欠片も無いが適当に捨てるわけにもいかなくなった事から、養護施設に捨てられる事に成功する。

 と言うのも、この連中前にも同じ事を同じ地域でやっていた事もあって、下手に遺体遺棄事件が発覚すると真っ先に容疑者として目をつけられるだろう事ぐらいは認識出来るようで、そのくせ別の地域で遺棄すればいい程度の軽さだったため、予想外の事態が発生すれば手っ取り早い方法に逃げるのではないかと予測を立てて行動に移したわけである。

 まあどのみち胎児という状況で出来る事など禄に無い以上、運任せだったのは仕方のないことか。

 後、今世の性別は女の子の様です。

 

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 親とは呼べない連中の手から養護施設に居場所が移ってから早くも五年ほどの月日が過ぎ、一月の早生まれという事もあって小学校へ入学する年齢になった。

 正直パソコンやネットどころか、本を読むことすらまともに出来ない時期は結構辛いものがあったけど、幼児である以上手の届く範囲にそう言ったものを置かないのは普通で仕方が無い事だし、多少不満があっても我が儘を言える立場でも無いためそこは諦めることにした。

 その代わりというわけでも無いが、幼児としては適度に動いて睡眠を取って体の発育を促すのも大事なことなので、騒音や怪我などで迷惑にならない程度に動いて今世の体で出来る事を確認しつつ、絵本を読んでいる振りしながら魔力なのか霊力なのか分からないけど扱える様になった第六感の鍛錬を繰り返す日々を送っていた。

 まあ前世では出来なかった魔法という不思議を使えて、試行錯誤しながら鍛錬する日常はネットや漫画などを読めなくてもおつりが来るぐらい楽しい日々だったのは確かだけど、気になるのは今世が何かしら原作のあるような世界なのか、そう言ったものが特にない魔法とかの不思議が普通に存在するだけなのかと言うところ。

 私が使える様になった――と言うか使い方や名称などが湧き上がってきた様な感覚だったけど――【アクア】という魔法の名称を考えても、よくあると言うか水を意味する単語ってだけなので何か原作を想起出来る材料にはならず、魔法とかがある世界のテンプレ的な魔力操作――魔法を使う際に消費する力という事で便宜的に魔力と呼んでる――を練習して体内を循環させたり、外に魔力が漏れない様に制御したりと言った事をしても何かスキルが手に入った感じはしなかった。

 そもそもステータス画面なんてテンプレな物は無く、スキル的な感覚も【アクア】を使える様になった時だけだった事も判断が付かない要因だったわけだけど、転生のテンプレから連想して鑑定系の能力が使えたりしないか試して、【アナライズ】と言う魔法なのか技能なのか分からないが対象を調べるための能力を得ることが出来たのがつい最近のこと。

 【アクア】の時と同様に使い方や名称が思い浮かんで来た事から何かしら分類される基準とかあるんだろうけど、【アナライズ】に関しても正直コレと断定できる様な名称じゃないから疑問の解決にはならなかったものの、様々なモノを調べられるというのは疑問解消に役立つわけで、まずは手近なところという事で私自身を調べて見たわけだけど……。

 

―――――――――――――――

 性別:女

 耐性:水・氷結耐性、破魔無効

スキル:【アクア】【アナライズ】

―――――――――――――――

 

 【アクア】と【アナライズ】がスキル枠ってのが分かったのは良いとして、問題は〝耐性〟の【水・氷結耐性、破魔無効】って部分なわけで。

 

「まさか、メガテン系のどれか?施設のある場所、八王子なんだけど……」

 

 転生先の世界に一応の検討が付いたのは良いことだけど、窓の外に見える平和な光景が何時壊れるのかも分からない懸念と、薄氷の上に立っている様な不安を抱えることになった小学校入学を目前にしたある日の出来事である。

 




アナライズ結果に名前部分が無いのは態とです。
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