【カオ転三次】終末を約束された世界で心のままに生きていく 作:緋咲虚徹
カズマのパーティーメンバーを見て、女としてのプライドが刺激されたのはごく個人的な事だから置いておくとして、改めての自己紹介――青髪の悪魔が【女神 弁才天】のアクア、茶髪の式神がウィズと言うらしい――をしつつの状況確認をしたところ、カズマ組がこの部屋に飛ばされてきたのが大体一日程前の事。
壁際に置かれている自販機や棚などを見れば分かるが、置かれているのが大半エログッズと食料に衣類と、日本的に言うところのラブホって奴をイメージした様な部屋になっており、更に言えば、転移されてきた場所の背後の壁には、〝子作りしないと出られない部屋〟と思いっきり書かれていたりする。
そんな訳で、カズマ組は元々男女の関係だった事も有り、扉を開くところまでは順調だったんだが、その先に有ったもう一つの扉は閉じたままとなっていて、どうすれば開くのか調べている内に、私らが転送されてきたと言う流れらしい。
で、そうして色々話をしていれば、素っ裸でパニック状態だったゆんゆんも、服を着て落ち着きを取り戻せるぐらいにはなった様で、改めて此処からの脱出についてを話し合う。
ああそれと、確認したらやっぱり黒札らしく、とりあえず呼び方は探求ネキと同じ様にニキ付けで良いか聞いて、了承が取れたのでカズマニキと呼ばせて貰う事になった。
まあその流れで、私とペリーヌが探求ネキの授業を受けてる事を話したら驚かれたが。
「懸念だった扉はそちらの二人、マリッサとペリーヌが霊力込める事で開いたのを確認した。のは良いんだが……」
「子作りしないと出られない部屋の後に、何かの体内みたいな通路って事は、まあそう言うこったよな……」
「まあ十中八九、スケベ部が製作に関わった場所だろうな。見た感じが依頼で行った色欲界とか肉欲界何て言われてる異界*1と似てるし」
「えっ!ガイア連合ってそんな破廉恥な部署もあるんですか?!」
「ゆんゆんさん、部署名はどうかと思いますが、霊能者として子を残すと言うのは重要な事ですから、専門の部署がある事自体は不思議ではありませんわ。ええ、名前はどうかと思いますが」
「つっても、ガイア連合の立ち上げ以前から有る最古参の部署だぞ?なんなら探求ネキも所属してるし、ほぼ確実に、この先の通路やギミックの作成にも関わってるだろ」
「マジでか?」
「マジもマジ、大マジよ。探求ネキ自身、元々女性だったのを自分の魂魄から改造して、両性具有になった剛の者だし、面白ければオッケーな愉快犯気質は確実に持ってるぞ、基本的に取り繕ってるから真面目そうにも見えるけどな。それに、スケベ部が行ったエログッズなんかの各種研究があったからこそ、高級式神用のパーツを流用した生体移植とか、性同一性障害向けのTS手術なんかも出来たらしいしな」
「か、カズマさん、その、医療とそう言うのを同列に扱って良いんですか?」
「ゆんゆん、オカルト的にエロは大概の文化と絡める万能概念だぜ?それに技術が急速に発展するなんてのは、戦争かエロか楽したいからってのが相場だしな。何が元だろうと技術は技術だ」
「はぁ、探求ネキがねぇ……あ、そう言われると、その場の思い付きで何か作り始めたりってのは、結構してるな?」
「話が脱線してますわよ。今は扉の先にある何かの肉で作られた様な通路や脱出についてでしょう?」
扉の先に見た妖しい気配のする通路から、ガイア連合のスケベ部なる部署が関わっているだろうって話に移り、其処に所属しているらしい探求ネキの事に話題がズレ始めたのをペリーヌが軌道修正すると、何かを思い出した様に、カズマニキが一枚の札を取り出す。
「おっと、そうだったな。ああそういや扉が開けれたなら、ウチの壁役も紹介しておかんとな」
「あー扉開ける人数的な奴か?」
「そう言うこったな。転移時の人数がカウントされてるってのはわかったが、追加で喚び出してどうなるか分からんって事で、扉開けられるまでは待機状態のままにしてたんだよ。戦闘メインで潜入や探索系のスキル持たせてねぇし、って事でダクネス」
カズマニキが札を投げると、札が淡く光を放った直後には、見事なブロンドの長い髪をポニーテールに結び、同性でも視線が引き寄せられる程に巨大な胸を持つ、長身の女性が出現する。
「初めましてだな。私はダクネス、
「また巨乳か、まあ私らはそっち方面狙ってる訳でも無いから、対象外なのは楽だがな」
「ダクネスの見た目に俺の好みが反映されてるのは事実だが、どっちかというと技術班の悪ノリの方が大きいからな?別段積極的に相手増やそうとしてる訳でも無いが……。つーかダクネス、俺の名前の所や式神の部分に変なニュアンス含めてねぇか?」
「事実をありのままに述べただけだとも。疑うのであれば、いつもの様に激しく攻めてくれていいのだぞ?」
「家に帰ってからな。今は推定迷宮となってるだろう此処の脱出に集中しろ」
「うむ。ガイア連合のスケベ部が関わってるだろうギミックを味わえるのは楽しみだな!」
「何とも……随分と個性的な式神ですわね」
「チームの壁として、私と同じく初期からカズマさんを支えてきた仲魔ですから、頼りになりますよ。あの性格もカズマさんに負担を掛けない様、盾になる事を当然とする中で培われた物ですし」
「性格のことは兎も角、専門のタンクが居るってのはありがたい、何せ潜入や探索の依頼で来てたはずなのに、何故かダンジョンアタックみたいな状況になってるしな」
この部屋の事も含めて、泥棒――潜入や探索の訓練と撃退技術のテストと言えるのか疑問だし、セキュリティの範疇なのかどうかも疑問に感じる所だが、侵入者の撃退から逃がさず捕らえる方に変わったと考えれば、まだ納得は出来るか。
「うっしダクネスの紹介はこの辺で良いか。まず前提の再確認だが、【トラエスト】なんかの脱出系は会場全体の結界で制限されてる。そんで、転移による移動はこの部屋への一方通行、ウィズが調べた限りだと、捕らえた人員の生存と脱出経路が用意されている代わりに、特定の経路以外での脱出が不可能な異界ギミックが設定されてる感じだな」
「それはつまり、此処の制作者の意図通りに進むしか無い、と言う事ですの?」
「そうなるな、少なくとも俺やウィズの攻撃じゃ部屋の天井を壊して逃げるとかは難しい。アクアはサポート系だしゆんゆんもまだレベルが低いからな。ここの異界ギミック自体を解除出来る技量も無いし、出来たとしても要を見つける所からになるしな」
「まあ現状分かってる情報的に、解除方法が設定されてないタイプの異界だろうしな。解除されない前提を強引にってのが、相当難しいってのは探求ネキから聞いてるし、カズマニキで無理なら仕方無いか。逆に言えば、ギミックの解除を想定されて無いからこの程度の制限で済んでるって事だろ」
「そ、そうなんですか?」
「まあな。異界のギミックだと、制限を付けることでデメリット分のメリットを上乗せする、ってのは結構あるんだが、解除方法の有無ってのはわかり易い制限だ。解除方法が無いなら設定する側に大きなメリットだから、その分侵入者側に与える制限も小さくなる。で、そこに侵入者の生存保障と脱出経路と言うメリットを与える事で、ギミック解除不可でも脱出経路を通らないといけない制限を成立させたって訳さ」
こうしてカズマニキが解説してるのを見るに、私らと同じ様にゆんゆんの鍛練目的で来てるって所だろうか。
探求ネキから軽く聞いた程度の話だけど、黒札用の修行場には理不尽ギミックを体験出来る異界もあるそうだし、ここのギミックについても、ある程度は対処の目処が立ってるのかもな。
「詰まるところ、あの成人指定されそうな通路を通っていくしかないわけだが……カズマニキ、まず確実にあるだろう状態異常系で気を付ける物はあるか?」
「あれがスケベ部の色欲界を参考にしてるなら、って前提だが、魅了のバステが重度化した発情状態*2ってのが確認されてるぞ。魅了状態に加えて、時間経過で攻撃・防御・命中・回避が1段階ずつランクダウンする結構ヤバ目のバステだな」
「発情状態ですか、瑞樹様の戦闘訓練で体験した事有りますが、かなり厄介な状態異常ですわね。【チャームディ】やディスチャームの様な専用の回復方法なら解除できますが、【パトラ】などの複合回復だと解除出来ない性質があったはずですわ」
「流石に【魅了ガードキル】とか【魅了貫通】なんかまでは持ってこないと思うが、あの異界、ブーストニキが造り出した【造魔 触手】とか【造魔 スライム】何かも居たからなぁ。無効系の装備があっても一度に重ね合わさると、概念化して貫通する事が有るのは注意点か。出来るだけ回避を心掛けるのと、小まめな回復が必要になるかもな」
「対策を突破するレベルの一点特化型ってのは、流石に想定外だな。状態異常解除と魅了対策自体はしてるが、発情までいってしまった場合の対策術式も組んで置いた方が良さそうか」
「え?専用の術を作ったり出来るんですか?!」
「いえ、契約呪法アプリと言う、悪魔召喚プログラムの追加アプリを使った物ですわ。流石に即興で術を構築出来る程には、知識も経験も足りてませんもの」
「あー、そんなアプリも探求ネキが作ってたっけか。そりゃ授業受けてるなら教えてるか」
ゆんゆんが驚きの声を上げるが、
こうして見ると、ゆんゆんからは疑問の声は有っても意見が出てくる事が無かったのは、見たまんまの引っ込み思案ってだけじゃ無く、知識量的にも色々と足りてないのだろうと分かる。
まあ、私にしても蓬莱島に来る前だったり、探求ネキの授業を受ける前後を考えると、知識を得る機会が無ければ知らないのは当たり前な話だし、まともに指導をしようとしてるカズマニキが居る分だけ、ゆんゆんは幸運だろう。
こんなご時世でまともな感性持った男な上に、黒札と恋仲ってだけで十分な勝ち組だろうしな!
「まあな。状態異常の厄介さは探求ネキに実体験させられたし、特に魅了系統はメシアンの常套手段な洗脳も有るから、自動解除の準備はしてる。ただまあ今有るのは都度回復する方式だから、何度もバステくらうと消費も厳しいんだよな。聞いた感じだと発情までは頻繁にいかんだろうから同じでも良いが、前段階の魅了は何度も来るだろうから結界辺りで弾く様にするか」
「念のため、結界と特化解除術式はどちらも使える様にしておきましょう。普段は私が結界を張りますわ。カズマさんの方は何かありますか?」
「こっちはウィズが確率付与系の耐性を上げる【結界*3】を張れるってのと、俺のスキルでチーム全体の運気を上昇させて、抵抗率を上げるのが基本だな。今回みたいに状態異常の種類を限定出来るなら装備を付け替えるし、ウィズはそもそも状態異常全般を無効まで耐性上げてるから、貫通とかのどうしようも無い場合以外は立て直せる――」
「カズマー、つまんない話しまだ終わんないの?私待たせてるんだから、酒ぐらいよこしなさいよ。酒!」
「会場脱出するまでは無しっつっただろうが駄女神!バナナでも食ってろ!」
「あー、とりあえず確認しておくところは終わったか?予想される状態異常以外は、実際に進んでみないと何とも言えないだろ?」
「んーまあそうだな。そんじゃ装備の付け替えとか、この部屋で買える物や持っていく物を調べてから、脱出を始めるか」
最後の方でカズマニキの仲魔がちゃちゃ入れてぐだついたが、確実にあるだろう問題への対処確認は終わり、契約呪法アプリでの術式構築や、確認してなかった室内の探索へと移る。
とは言え、改めて調べて見たが、元々この部屋の目的が目的な事も有り、霊薬としての効能も抜群に高いのが分かるものの、媚薬効果混じりの回復薬やエロ目的の道具を持ち帰りたいかと言うと、正直微妙な気分になる話。
まあ〝床若の水*4〟とか、売りさばくルートが有れば大金になりそうな物も有るし、技術的な参考目的でってのも有りではあるんだが……。
「ま、何が役に立つか分からんし、持ってけるのは持ってくとして、ガイアポイントやマッカで購入可能になってる奴は、どんな判定になるんだ?」
「ここに書いてある通りですと、購入した物は脱出に失敗しても所持品として持ち出せるみたいですわ。まあ料金払ってる訳ですから、当然と言えば当然ですわね」
「金払って確定で入手出来る分良いラインナップしてるな。ギルドの購買部で買える耐性装備より上等なのが売ってるのは流石って所か……ん?」
部屋の棚に置かれてる薬品や道具類をカズマニキの方と別けて回収し、場違い感のある自販機に並んでる商品を眺めていると、ふと疑問が思い浮かんだが、丁度自販機に関しての説明を読んでたらしいペリーヌが答えを返してくる。
言われて見てみると、料金を払った分については、アイテムの所有権が譲渡されるため、脱出に失敗しても所持出来るとの張り紙がされており、あくまでも〝色々な状況を試すための場所〟と言う意図が感じられる。
何と言うか、場合によっては普通に死ぬ可能性すらあるにもかかわらず、この手の配慮の影響か、どうにも緊張感というか集中力的なのが削がれてる気がするな……。
まあそれは兎も角、自販機のラインナップに欲しい物が有るか確認していると、先程見た張り紙の一文と今回の依頼内容が頭を過ぎる。
「何で
「マリッサ、自販機前にしてどうした?」
「カズマニキか、そこの張り紙の書き方が気になってな。なもんで自販機を調べて見たんだが、これも一種の宝箱になってるぜ」
「マジかよ?!」
この部屋に飛ばされる直前の部屋でも、霊装を一般品に偽装するって仕掛けが有った様に、自販機についても何か仕掛けが有ると考えて調べるのがトリガーになってたのか、さっきまでは感じなかったギミックの気配を感じ取る。
「なる程、自販機なんてそう言う物ってイメージ強いからなぁ。言われなきゃ気付かんかったな、マジで……」
「ギミックがあるのは分かりますが……、罠と言うより、開けるために特定の手順を要求するタイプ、でしょうか?ちょっと私では手が届きそうにありませんわね」
「なら俺に任せてくれ、この手のは結構得意なんでな」
「オッケ、頼むわ」
自信ありげに言うカズマニキに自販機の前を譲ると、少しの間全体を眺めたりあちこちに触れたりした後、淀みなく仕掛けを動かし始める。
ものの数十秒程で自販機だった宝箱が開かれると、中には商品として表示されていた物が入ってるらしき収納バッグ、それから四本の鍵が置かれているのが見える。
「収納バッグは自販機の商品って考えればまあ分かるが、鍵?……いや待て、ステレオタイプな古くさい鍵だと?ってことはこれ、ほぼ確実に、脱出に必要な文字通りのキーアイテムじゃねぇーか!こんなとこに隠してんじゃねぇーよ!!」
「はぁ?!そんな馬鹿なこと……無いと言い切れないんだな?」
「セキュリティと称して子作りしないと出れない部屋なんぞ設置してる奴らだぞ?!脱出口到達した所でスタート地点に戻らせるぐらいは絶対にする。つーか普通の異界としても、捕らえて逃さない様にするなら有効な手段だろ」
「特定の経路を通らないと行けない上に、脱出用のアイテムは最初の安全地帯に置いてあるとなれば、確かに気付かれなければ往復で時間を稼げる上に、ミスも誘えますわね」
「でもま、こうして見つけられたなら一転して俺らのアドバンテージってな。もうちょい何か隠されてないか調べ直さんといかんが、それが終わったらいよいよ脱出だな」
とりあえず、自販機の商品に変な呪いなどが無いのを確認したら、それぞれ分配して耐性装備を付け替え、今一度室内を細かく調査していく。
するとまあ出るわ出るわ、棚の二重底に力持つ宝石がいくつか転がっていたのを初めとして、部屋の中央に鎮座するキングサイズなベッドの下には、〝蠱惑の乳香*5〟とそれを起動させる仕掛け、ベッド自体も解体してみれば、中に虹の実の種とか言う物が仕込まれており*6、無意識にベッドへ意識が引き寄せられる仕掛けがされていたとか……。
他にも幾つか有ったが、一番危なかったのはベッド下のトラップだろうか、発動条件が扉向こうの通路に踏み込んだ後、再度人が入ってきた時となっていた事から、先に自販機の中身に気付いてなければ、往復して戻ってきた所に刺さっていた可能性も高く、そうなればまあお察しだろう。
そうして何だかんだ結構な時間が掛かったが、現状で可能な限りの準備を整え、扉の先へと一歩を踏み出す。
正直、どんな仕掛けが待ち受けているのか、今の時点でゲンナリとしているのだが……。
時間が掛かる代わりに、魅了系統の耐性を無視して積み込む事が可能。