【カオ転三次】終末を約束された世界で心のままに生きていく 作:緋咲虚徹
「よしっ、見なかった事にして脱出するぞ」
「応、奥の扉にトラップとか無いか調べてくるぜ!」
速攻で隠し扉を閉め直し、再戦なんて事に成る前にさっさと脱出する事にして、奥の扉へと走り出す。
まあ幸いなことに、奥の扉にトラップは無かったし、再起動や再配置の条件を満たすことも無かった様で、冒涜的な機械との再戦は発生しなかった訳だが。
ちょいと締まらない流れだったが、スタート地点の自販機にあった鍵が扉を開くために必要、って予想は当たっていた様で、人間四人が鍵を持った状態で扉に触れる事で解錠され、先へ進む事が可能となった。
どうやらボス攻略と扉を開いた事で脱出条件を満たしたのか、扉の先にある石造りの通路にはトラップだったり状態異常蓄積のギミックなりは無いみたいで、さほどの時間も掛からず通路を抜けると、今度は見るからに宝箱と主張する物体が整然と並ぶ、一種異様な空間が広がっていた。
「ん?ボス戦の後にミミックトラップでも仕掛けてんのか……?いや、他にも通路があるし、異界強度を上げるために設定した報酬部屋みたいなもんか?」
「他に通路って事は、私らとは別で飛ばされた連中も居たって事かね。それなら既に開けられた箱があるのも説明が付くか」
「見たところ、自販機の中にあった鍵で開けられるみたいですわね」
「それなら適当に開けちゃって良いってことです?」
「じゃねーか?人間四人に鍵四本だし、一人一つ開けたら脱出とかそんな感じだろ」
「えー、あんたらだけぇ?不公平じゃない?私も働いたんだから何かよこしなさいよ」
「文句があるなら此処作った奴らにでも言え!つーか契約の酒とかは確り渡してんだろうが、家に帰るまで待ってろ!」
カズマニキとアクアがじゃれ合ってるのを横に、自分の分の報酬になる箱選びにそれぞれ歩き出す。
整然と並ぶ箱は、縦横それぞれ10個の合計100個有り、その内蓋が開いてるのは大体20~30って所。
これが多いのか少ないのかは分からんが、試しに蓋の開いてる箱を確認してみても、どんな物が入ってたのかを探れる様な痕跡は無く、せいぜい箱に入る大きさならそれほど大きな物では無さそうってぐらい。
まあ結局の所運任せだろうと言う訳で、適当に目に付いた箱へと鍵を差し込み捻ってみれば、カチリと音が鳴るのに合わせて鍵が消滅し、自動的に蓋が開くのに合わせて転移魔法陣が展開され、一本の箒が転送されてくる。
「箱の中に入ってるんじゃなくて、転送されてくるなら予想も大外れか。にしても随分大きな箒だな?」
転送されてきたのは、柄の長さだけで2m程有りそうな、見た目は箒の様な物で、COMPのストレージに収納して詳細情報を表示してみる。
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・重力制御式飛行箒〝
【グライ】系統の術式による重力制御飛行能力を持たせ、魔女などが空を飛ぶ時に用いるとの概念を組み合わせた箒型霊装。
なお、搭乗時は箒の柄に直接座る訳では無く、重力制御により位置固定される形式のため、逆さになっても落ちる心配は無い仕様。
MAGによる修復機能を持ち、搭乗者の霊力と制御技術に応じて、最高速度・高度・飛行可能時間が変化する。
MAGバッテリーなどの外部タンクと接続する事で、飛行可能時間を増やすことも可能。
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「個人用の飛行霊装ってとこか?いや、さらっと出てきて良いもんじゃないと思うんだが??」
強敵撃破ボーナスとでも言ったところなのか、会場への潜入から見つけた品物と比べても、一段どころではない程上等な代物だとわかる。
まあとは言え、どれだけの代物でも試験会場から脱出できず持ち出せなければ没収になる訳だし、何としてでも持ち帰って私の物にしたいところだな。
「マリッサ、こちらはチキンナイフとやらのレイピア版が出て来ましたけど、そちらはどうでした?」
「さっきのドローンが持ってた奴の形状違いか、上手く使えれば良い武器になりそうだな。こっちは魔女の箒っぽい感じの奴だな」
「――飛行霊装、ですか……。二人か三人乗って移動も出来そうな大きさですわねぇ」
「おう、ペリーヌが言いたいのは分かる。依頼報酬の一環だろうとは言え、こんなもんがしれっと出てくる辺り、やっぱガイア連合は技術力が可笑しいよなぁ……」
ちなみに、ペリーヌが手に入れたチキンナイフのCOMPに表示された説明がこれ。
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・チキンナイフ Ver.細剣
FF五作目にて登場した、戦闘から逃げる程に攻撃力を増す短剣をベースに、シリーズ作品の性能を組み合わせて作り出された霊装。
同シリーズの一つに登場した際の仕様である、ムーブアクションにより攻撃を回避する事で、攻撃力が上昇する効果が組み込まれている。
なお、〝ナイフ〟とは言っても手に持って用いる汎用の刃物としての意味であり、
装備効果
┣攻撃を回避した際に生じる装備者のMAGを取り込み切断力強化。
┣限界まで強化された時、【チキンハート】の効果を得る。
┗装備者が変更された場合、チキンナイフの強化状況はリセットされる。
【チキンハート】
攻撃の回避に成功した際、次にチキンナイフで攻撃する際の威力を倍にする。
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で、ペリーヌが手に入れたチキンナイフだけでも破格な報酬だと思うのだが、ゆんゆんが手に入れたのは
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・
ステータスの特殊強化補正を得られる宝石12種9個、合計108個の宝石を圧縮して一つの紋章にまとめ、補正効果を高めた護符。
所持する事で、元の宝石では含まれていないTEC等を含めた全ステータスに、+20の特殊強化補正を得られる。
なお、【大いなるイデア】等のスキルによるステータス増加とは別枠での強化となっている。
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COMPに表示された通りの性能だとすれば、どこぞの秘宝か神器かと言われるレベルな気がするんだが……。
「お、ゆんゆんが開けた箱の中身は宝石輝章か。悪魔から該当する宝石かき集めるのが大変なんだよな、こればっかりは12種9個の素材持ち込みじゃねぇと製作依頼受け付けてくれねぇからなぁ」
「あ、カズマさん!これ知ってるんですか?」
「詳しい理屈はまだ研究途中らしいが、悪魔が偶に落とす宝石の中には、9個まとめて所持する事で能力が上昇するのがあってな。確認されてる宝石を一つにまとめて持ち運び易くした物の一種で、能力補正に特化させた奴だな」
「なあカズマニキ、これって黒札の中だと標準装備だったりするのか?」
「能力補正より別の効果を持たせたバージョンのもあったりするし、宝石集めの必要もあるから、修羅勢とか呼ばれてる連中なら大体類似品を持ってる程度で、標準って程じゃねぇかな。元々は108個も宝石を持ち歩いてられんって事で、宝石を圧縮して一つにする研究がされて、持ち歩く数を12個まで減らす事に成功したらしい。そんで、圧縮した宝石なら概念的に色々出来るんじゃね?って事で更に研究された成果の一つがそれな訳だ。製作方法なんかは確立されてるから、素材さえ揃えば普通に作れる護符の一種になってるぞ」
「何と言いますか、知れば知るほど技術の格差を思い知らされる気がしますわね……」
なお、カズマニキが箱から手に入れたのは、何やら金属光沢っぽい輝きを放つ薄手の服で、表示された情報はこんな感じだった。
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・緋秘色ベスト*1
全ダメージを1/4にする、紙より軽い緋緋色金の金属糸で作られた服。
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記載内容はシンプルなもんだが、シンプルだからこそ余計に目を疑いたくなるような性能に、開いた口が塞がらない。
「なんだ、その、何処の神器だ?」
「驚くことに量産可能な装備らしいぞ。つってもガイア連合でもつい最近完成した技術ってぐらいしか俺もしらんけどな」
「運に特化してるとは聞いてましたが、引き当てた物を見ると納得しか有りませんわね」
「あはは……、カズマさんってこう言う時はまず外しませんからね。あ、箱が消えていきます!」
私らがそれぞれ箱を開けて戻り、手に入った品物を見せ合っていた所、アクアとじゃれていてまだ箱を開けて無かったカズマニキが、待たせちゃ悪いと慌てて選んだ箱からとんでもないアイテムが出てきたのに驚いていると、どうやら脱出用の鍵が使用された事がトリガーになっていた様で、箱が消えた後の部屋中央に転移陣らしき物が出現した。
「転移陣で間違い無いみたいですよ、カズマさん。元の場所に戻す術式になってますから、此処に飛ばされる前の荒らされた様な部屋に戻る事になります」
「サンキューウィズ。そんじゃ念のため向こうに戻ってから、トラップとかの無い部屋見つけて此処で入手したアイテムの分配するか。ぐだぐだして何かしらのギミックに引っ掛かるなんてごめんだしな」
「ああ、それで構わんさ」
「ですわね。まずは此処から脱出致しましょう」
まず無いだろうとは思う所だが、念には念を入れて出現した魔法陣を調べ、問題無く帰還用の転移陣と確定した事で、ようやくダンジョンから脱出し館へと戻る事に成功する。
転移先はウィズが調べたとおり、転移トラップに引っ掛かった荒らされた様な部屋で、流石にもう一度トラップが発動したりはしないだろうと思いつつ、床などに散らばっている追加や補充されてるらしき偽装された霊装には手を出さず部屋を出て、適当な部屋を探そうかとなった訳だが――
「あれ?カズマニキじゃん。まあこの手の依頼なら得意分野だし、参加はしてるか」
「お、田舎ニキ*2お久、依頼序でにレア泥狩りして以来だっけか、逆にそっちは珍しいな?」
セキュリティ実地試験会場と言う前提からして、トラップの無い場所の方が少ない訳で、落ち着ける場所を探してる間に、トラップ攻略などで逆に獲得物が増える状況となっていたところ、不意にカズマニキの知り合いらしき人物と遭遇する。
カズマニキの話しぶりと独特な名称からして、この人物も黒札の一人って事か。
「いやほら、この依頼って技術開発班とか、暇は無いけど作って遊ぶ連中が主体だし、上手く持ち帰れたらかなりの稼ぎになりそうな気がしてね、実際色々手に入ったし」
「開発班の名前とか情報出てたっけ?依頼者のとこはガイア連合としか書いてなかった気がするんだが……」
「霊視すると見える文字で依頼書に書いてたよ」
「うげ、マジかー。やっぱ俺も霊視関係鍛えるかね。COMPあるからってウィズから【アナライズ】外したのは失敗したな」
「山梨メインだと周辺のサポートもあって、下手に調べて分かったつもりになるより、専門家に任せた方が良いからその辺良し悪しだよね」
「ま、致命傷になる前に気付けたから良しとするか。田舎ニキは何か面白い物見つけたか?俺は●ーマスドローンがチキンナイフ装備してたから一本盗んできたが」
「今企画が進んでる黎明期ガチャ関連で作られた奴かな?うわっ、回避型垂涎な性能してる……。あ、こっちは怠惰スーツ手に入れたよ」
「怠惰スーツ、造られてたのか……!確か脳缶ニキ*3が造ったデモニカとは名ばかりの、生存以外保障しない【★サンドバッグ】*4をベースに開発が進んでるとは聞いてたが……」
「こんな感じの仕様になっててさ、いきなり装着されたときは焦ったね」
黒札同士の話と言う事で口を挟まず傍観してたんだが、怠惰スーツなる物の仕様が気になった事も有り、カズマニキの後ろからゆんゆん達に混じって、田舎ニキが表示したアイテム情報を読んでいく。
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・怠惰スーツ
脳缶ニキが開発した【★サンドバッグ】をベースに、藤崎竜版封神演義に登場する宝貝〝怠惰スーツ〟を目指して開発された代物。
元ネタでは仙人が着用する前提のため、【不老】要素はオミットし、代わりに快適に怠惰に過ごせる【全環境耐性】と【全属性無効】、重力制御による最適な寝心地を提供する機能を組み込んだデモニカ。
なお、着用中は怠惰に囚われる事になるため、何かをする気力が湧かず、睡眠関連の抵抗力が最低値となる。
ちなみに、着用中の睡眠も快適さの範疇となるため安眠が保障されており、例え貫通攻撃などで【食いしばり】が発動しても、安らかに眠り続ける事が可能となっている。
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「これ、強制装着されたのか?良く脱出出来たな……」
「いやさ、何と言うか装着された直後は何もかも放り出したい気分になったんだけど、色んな所から借りてる資金だったり融資の事が頭を過ぎって、怠けてる暇はねぇって気持ちが湧いたら脱出してた。まあ自力で脱出出来なくても
「まあそりゃそうか、つっても一人だったら依頼期間終了まで寝コケる事になってたかもな」
「それは有るかもね。ただでさえもう最終日なんだし、ようやく時間が空いて来れたのに、何も出来ずタイムアップなんてならなくて良かったよ」
「……ん?最終日?」
「?そうだけど、カズマニキもギリギリまで報酬を漁ってた口じゃ?」
「いや、俺が来た時は依頼期間の半ばぐらいだったはずなんだが?……うげ、マジで最終日になってやがる。どうなってんだ?」
「カズマさん。多分ですが、あの飛ばされた先の異界内と外の時間の流れが違ったのかもしれません」
「つーと、扉の先へ踏み込んだ辺りか、或いはダンジョンの様相が変わったぐらいから時間の進みが遅くなってたのか。こりゃさっさと脱出して連絡いれんとヤバいな」
「あー、何か足止め系のギミックにでも嵌まってた感じか。そう言うのもあるってなると、ギリギリまで漁るのもリスクが大きいか……」
何やら認識の齟齬があった様で、既に依頼期間の最終日になっているとの話を確認するためCOMP――Cキューブを起動すると、ダンジョン内で表示されていた日時から一気に数日経過した日付が表示されているのを確認する。
ウィズが推測するには、時間の流れが遅くなるギミックも、あの異界には施されていたんだろうとの事。
機械共との戦闘時にカズマニキが感じていた、時間を掛けるのも不味いってのは、無意識に時間切れが近いのを感じ取っていたって事かもしれんな。
で、予定外の事態とは言え、流石に一週間近く音信不通な状況だったのは不味いって事で、カズマニキ達も急いで脱出する事になり、館内をもう少し探索する予定の田舎ニキと別れると、早速会場からの脱出に取りかかる。
まあ侵入者の撃退、入り込まれた後の捕縛と逃亡阻止と来たら、最後は脱出の妨害があるのはセキュリティ実地試験としては当然の事。
脱出行動中に他の参加者を見かけての推測だが、どうやら入手したアイテムの価値などで反応するセキュリティが設定されているのか、悠々と脱出するその人物には反応しないのに、私ら――多分主にカズマニキが目標となってると思われる――に対しては、神経質なほどにセキュリティが反応するのを感じる。
「流石に脱出経路の警戒も厳重だな。まあ最悪壊しながら突破も出来る分、まだマシだが」
「いっそのこと、マリッサさんが見つけた箒に乗って飛んで行くってのは……?」
「ぶっつけ本番で使うってのは、ちょい躊躇うな。一応スペルカード使った反動は抜けてるし、他に手段が無いなら覚悟も決めるが……。ガイア連合のセキュリティならメシアンの天使共対策に対空設備ぐらい有りそうだし、どの道リスクは高いと思うぜ?」
「あ、そっか……」
「地道でもセキュリティを掻い潜るのが一番と言う事ですわね。異界のギミックとしての側面が無いのであれば、流石に脱出可能な経路などは無いでしょうし、私とマリッサが忍び込んできた時の
「どうだろうな。そう言う術式による潜入や逃亡を阻止するためのセキュリティって面もあるし、どっかで見破られる前提で行動するぐらいじゃないか?とりあえず出来るだけ隠蔽して進み、発見されたら破壊しながら強引に突破って事で」
そうして行動指針を決めて脱出を決行し、道半ばで透明化も隠蔽も看破され、警備用のロボやドローンなどを吹き飛ばしながら進み、結局最後もカズマニキに頼ることになったが、何とか会場からの脱出に成功する。
つまりは持ち出せたアイテムの所有権が確定したって事で、ようやく落ち着いて分配の話を済ませ、今後も何かしらで関わる事も有るだろうからと連絡先を交換して、カズマニキ達は慌ただしく地元へと帰っていく。
「体感一日ぐらいだったが、かなり濃い経験になったなぁ……」
「得た物はかなり大きいですが、失った時間も相応にありますわよ。具体的には今週行う予定だった鍛練や学習は持ち越しですし」
「あー、それは痛いな。まあ今週はあと一日有る訳だし、授業権を使い損なう事にならなかっただけマシって思うとするか」
「それもそうですわね。では今のうちに瑞樹様へ連絡を入れておきますわ」
「あいよ。それが終わったら、明日の授業前の反省まとめを兼ねて打ち上げでもするか!」
「酒を飲むのは良いですけれど、明日に持ち越さない程度までですわよ!」
こうしていつもとはちょっと違う、それでも蓬莱島らしい出来事が幕を下ろし、私らの日常が明日もまた続いていく。
会話以外の身動きが一切取れず、どんな攻撃でも確定で【食いしばり】が成功する仕様。
なお、術式関連の知識と技量があれば、強制契約を解除して自力での脱出も可能なため、その辺の修行を疎かにしたり、逃げている連合員への強制修行にも使えるのでは?と目されている。
田舎ニキは稼げそうな依頼なら何処にでも出没してそうなイメージ。