【カオ転三次】終末を約束された世界で心のままに生きていく 作:緋咲虚徹
新しいペルソナも良い感じに馴染み、当面使うペルソナが決まった所で、スキルの調整や強化などもしつつ本日の影時間――タルタロスの探索も終わりとなり、巌戸台支部へ戻っての日常業務の時間となる。
まあ支部の業務と言っても、私の巌戸台や承太郎ニキの管理するとこは帝都にある他の支部とも毛色が違うし、何なら帝都にある支部自体が地方支部とは結構性質が異なる所もあったりする。
帝都と地方の最大の違いとすれば、まず上がるのが管理範囲で、帝都の方は支部一つにつき23区の内多くても一つか二つ程度で、帝都全体を管理するほどの支部数も無く、基本的には根願寺の顔を立ててると言う建前で放置しているのが現状。
そもそもガイア連合山梨支部としては、帝都自体を守り切るのは不可能だろうと、初めから切り捨ててるのもあって、帝都にある支部は殆ど非転生者な金札が支部長を務めており、例外の内二つは、ペルソナ関連のシャドウ異界対応のために私と承太郎ニキが責任者をしていると言う話。
なお、タルタロスとメメントスの広さ的に、他の支部とは別の苦労が有ったりはするのだけど、そこは大なり小なり支部長は苦労していると言う事で流しておこう。
そんな管理範囲の違い以上に性質の異なる点としては、地方支部は故郷を守りたいと思う人達による運営で、地域全体の守護や裏関係の治安維持、産業や流通の構築など、終末後もそこで生活する事を見据えての活動が基本なのに対して、帝都の方は発生した事象への対処を行う現状維持と、財界ニキネキ達からの各業界関連や政界ニキネキ達からの政治家関連の依頼対処が基本と言うところだろう。
こう言ったスタンスの違いもあって、帝都の支部と地方支部では業務内容も大変さの質も結構違う訳だけど……、まあ各業界や政治家と大なり小なり関係するのは地方も変わらない事だし、より面倒な連中とやり取りする必要があるぐらいの所ですかね。
新宿支部*1などの精力的に活動する金札がトップにいる支部はそんな感じで、一方シャドウ異界対処用の支部である私や承太郎ニキの所は、扱う依頼は担当するシャドウ異界関連のみに限定しており、通常の霊障などのオカルト依頼は他の支部が代わりに担当するか基本的に放置、巌戸台支部周辺なら私が適当に処理しているし、承太郎ニキの所なら気が向いた時か個人的な伝手で受けるぐらい。
そう言った通常の依頼よりタルタロスやメメントスの対処が優先と言う事で、例外としては影時間やメメントスに迷い込んだ一般人を積極的に保護している事辺り。
まあ迷い込んだと言う事は、多少なりともペルソナへの適性があるって事で、ただでさえ人手が足りないオカルト界隈でも、更に少ないペルソナ関連に携われる人員と成れる可能性があるなら、助けない理由は無いって事でも有るわけですが……。
「さて、今日の影時間に発見された一般人をリストアップしたのがこれになりますが……、リスト化出来るぐらいに居るのが何かの兆候に思えてなりませんね」
「最近増えてるよね~。半終末になってからの増加もあったけど、三月に入ってからはこれまで以上だし、何か有りそうな感じ――」
「見た限り私の知り合いはいないですが、珍しく覚醒の兆候まである人が出たんですね……って、琴音ちゃんどうしました?」
「はは、いやちょっと友達と同じ名前を見つけてさ……、まさかだよね?」
そんな訳で今回保護して、ペルソナの覚醒兆候が有るか調べた人達の内、一人だけ居た半覚醒ぐらいまで行ってる人の元へ向かう事になり――
「ふぇ?!琴音じゃん!なんでここにいんの??」
「うわぁ、やっぱ裕奈だ。今になって巻き込まれるって、これから何かあるって言ってる様なもんじゃん!」
「へ?えぇ??」
それが見事に琴音の知り合い、それも学校での友人だったと言う事で、影時間に巻き込まれる一般人の増加自体が、他の序でに何か起きてないか調査するレベルから、早急に調査を進めるべきレベルへと認識が変わる事となる。
まあそれはそれとして、琴音はこれからの面倒に頭を悩ませる前に、目の前で困惑している友人に事情説明をするべきではないでしょうかね……。
――
「えーっとつまり?世界はファンタジーで、悪魔とかシャドウと呼ばれるモンスターが普通に居て、琴音はそう言ったのと戦う秘密結社の一員で、私がさっきまで居たのがそう言ったモンスターの出てくる空間だった、と?」
「大雑把にまとめればそんな感じね」
「陰陽寮の日常ごっこしてる何て落ちだったりしない?アニメやゲームに出て来た設定に凄く似てるんだけど?」
「残念ながら現実なんだよねぇ……。その陰陽寮の日常自体、オカルト界隈への理解補助目的で、ガイア連合のフロント企業が製作してるコンテンツだし」
「えぇ……」
さっきからの説明で宇宙猫してるこの少女は、琴音と同じく月光館学園に通う現高校二年生の
ダークブラウンでそこそこの長さの髪をサイドポニーにしており、身長は平均より高め、おそらくEかFぐらいあるバストに、ウェストからヒップのラインはそれなり以上に運動しているのか健康的なくびれと肉付きをしている。
見た目の印象的には活発な女子高生と言った感じだけど、黒札的には魔法先生ネギま!の明石裕奈が高校生になった姿、と言う方がわかり易そうな女の子。
おそらく
まあこの辺の考察は、日本どころか世界各地で前世のキャラと似通った容姿や出自に能力の人物が散見される事から、噂システムほどでは無くても、集合的無意識からの認知が現実まで影響したのではないか?との推測による物だけど、物質界と精神世界が近いこの世界を考えると、大きくは外れていないと思うところ*2。
琴音が説明をしている間に思い浮かんだ余り関係無い話は置いておくとして、一通りの説明は終わったみたいですし、これからの事に話を移していきましょうかね。
「大まかな周辺説明は終わったみたいですし、改めて自己紹介をしましょうか。私はここ、ガイア連合巌戸台支部の支部長を務めている七倉瑞樹、こっちは護衛兼秘書の久遠です。立場的には一応琴音の上司になりますが、普段は先程まで明石さんも居た影時間に出現する塔――タルタロスへチームを組んで探索している関係ですね」
「うわっ、すっごい美人!」
「ちなみに私らと生まれた年は同じだよ。早生まれだから学年は一つ上らしいけどね」
「マジで!?」
「あはは、まあそこは驚きますよね。あ、私は秋山綴と言います。琴音ちゃんや瑞樹さんと一緒にタルタロスの探索を行うチームの一人で、覚醒した時の経緯から、瑞樹さんの弟子として学ばせて貰っている身です」
「わぁこっちも違うタイプの美人……あ、はい。よろしくお願いします!私は明石裕奈、琴音のクラスメイトでバスケやってます!裕奈って呼んで下さい」
「わかりました、ではそうさせて貰いますね。それで夜中に長々と話すのもアレですけど、半覚醒状態の裕奈さんをそのままにしておくのも問題がありますので、もう少し現在の状況について説明を続けさせて頂きますが――」
軽く自己紹介も済ませて席に促すと、今後の話をする前に眠気覚ましも兼ねてお茶を用意する。
今回は裕奈さんが半覚醒状態と言うことで、ガイアグループの方でも取り扱ってる低レベル帯向け(他組織的には十分高級な霊薬)の緑茶を、人数分急須で入れたら久遠がそれぞれに配っていく。
それでお茶を飲みながら再開した話としては、影時間で保護した一般人の扱いに関して。
三月に入ってから巻き込まれる人数が増えたとは言え、覚醒や半覚醒に至るのはごく少数で、大部分は覚醒の兆候も無いため、その場合は何かあった時のために名前などの情報をリスト化した後、ちょっと悪い夢を見たぐらいに意識誘導して元いた場所辺りに戻して終わりとする対応。
一方で、今回の裕奈さんの様に覚醒の兆候が確認された場合は、メシア教や多神連合系、野良のダークサマナー辺りに狙われる危険性があるため、ある程度事情説明して能力封印により未覚醒状態と誤認させるか、ガイア連合に所属するかを選択させる方針になっている。
これは、考え決断し選択する事が霊能に――特にペルソナ能力に大きく影響するからと言う点と、ただ流されるままに行動する様な人間なら、無理に引き入れても意思や意欲の低さから周囲を危険にさらす可能性が高く、能力封印してしまった方がこちらに被害も来ないからと言う二つの理由による物。
「――と言う訳で、裕奈さんに兆候が現れているペルソナ能力は、割と珍しい能力ですし、ガイア連合としても人手が不足しているのは事実ですが、その気が無い者を引き入れるつもりも無いのを先に伝えておきます」
「ま、ゲームとかの主人公にありがちな、選ばれた者って訳じゃ無いってことだね。選択肢は裕奈の手にあるよ。裏を知らず今まで通りの平和な日常を生きるか、或いは死ぬ事も死より悍ましい事になる可能性をも受け入れて、裏の世界に足を踏み入れる事を選ぶのか」
私の話に続いて、何時にも増して真剣な表情を浮かべて琴音が告げる。
日常を破壊され否応なく裏に叩き落とされた者、裏に迷い込み戻れなくなった者、或いは生きるために望んで裏へと入った者。
地方依頼関連では良く耳にする話ですし、ガイア連合山梨支部の
「琴音……。うん、そうだね。なら私は、踏み入れるのを選ぶよ」
「良いんだね?」
「だって、そこには学校とは違う琴音がいるんでしょ?なら私は知りたいと思う。表面上だけの友人関係ってのも何か違うと思うしね」
琴音の言葉を聞いて、少しの間思案する表情を浮かべた少女は、明確な意思を持って踏み込む事を告げる。
それは大層な覚悟と言う訳では無く、しかしその選択を後悔はしないだろうと確信する様に笑顔を返す事で、曖昧だった己の形が定まったのだろう。
《我は汝、汝は我 我はクピド、愛情と欲望の伝道者なり!》
裕奈さんから湧き上がる様にしてペルソナが出現し、世界に己の名を示す様に声が響く。
「うわっ、何これ?!」
「それがペルソナだね。裕奈が持つ心の一側面で、困難に立ち向かうための心の鎧」
「問いかけで心が定まり覚醒に至りましたか、【
「共感し理解し合いたいと思う心の現れとも言えそうですね。良い友達ですね、琴音ちゃん」
「うん、ちょっとお調子者な所もあるけど、自慢の友達だね」
「ちょっ、琴音?!そーゆー恥ずいこと言うの禁止ー!」
照れによるものか、仄かに頬を赤らめて琴音とじゃれ合っている裕奈さんを見る限り、突然の事態に巻き込まれたにしては落ち着いている様に思う。
それは琴音と言うよく知る友人が居る事に加えて、正確に状況を理解し切れていないと言うのもありはするだろうけど、正気を失って泣き喚いたり現実逃避をしない辺り、ペルソナ使いとして覚醒しただけあって、心の強さは相応にあると見るべきでしょう。
「お二人がじゃれ合ってるのを見るのも楽しいですが、時間も時間ですから今後の具体的な話に移りましょうか」
「はっ?!」
「あーそうだね、明日って言うか日付変わってるから今日だけど普通に学校あるし、今晩はこのまま泊まっていって、学校が終わったら今の寮からこっちに引っ越しって事になるかな?」
「えっ確定事項?」
「そりゃまあ、覚醒したてで自衛も出来ないのに、霊的防護もしてない女子寮で生活してたら誘拐される危険性もあるし……」
「誘拐とかそんな、私みたいな一般人が有る訳…………マジ?」
「真面目な話ですが、一般人が誘拐されて生け贄にと言うパターンは全国各地で起きてますし、一般的にはただの行方不明として事件にもならない場合も多いですね」
「一般的な誘拐と違い覚醒した霊能者自身に価値がありますから、その辺の意識が低い分、偶然覚醒した一般人が狙われることの方が多いですよ?」
「ひぇっ」
「だからここへの引っ越しって訳、ここはガイア連合向けの賃貸と宿泊施設もやってるから、その辺の結界とか対策も確りしてるし」
具体的な今後の流れとして、一先ず生活拠点を月光館学園の一般学生寮から葦原荘に移して貰う事になるのだけど、何だかこの流れがP3の巌戸台分寮への移動と符合するのが嫌な感じのするところ。
まあタルタロスの攻略自体は随分と前から行っていますし、何なら深奥の探索もだいぶ進んでいて、今年中には最深部に到達出来るのでは?と思う感じですが、これからの一年以内に片が付きそうな状況だからこそ、タルタロスと言う舞台を用意した疑惑のあるニャルが符合させてきた、と言う可能性を否定出来ないのも嫌な予感がする理由の一つ。
ともあれ、多少脅かす形にはなったものの引っ越しの了承を得られたため、学校終わりに引っ越し作業を行うことや行き帰りの護衛を琴音が行う事、万が一の場合に備えての御守りを渡すなどして一旦話を区切る。
続きは引っ越しが終わってからと言う事で、今晩は裕奈さんともう少し話すとの琴音を残し、私と綴は家へ戻る事に。
タルタロスの探索を開始して、琴音が月光館学園へと入学してから六年目、高校三年生へと上がろう言う時期になって初めて身近な人物からペルソナ使いが現れると言う状況。
何か起きない訳がないと思ってしまう事自体が、事件を呼び寄せる確率を高めているのだと分かっていながらも、万が一のために備えなければいけないと言うジレンマを感じつつ、葦原に各種手続きを進める様指示を出す。
「認知によって現実を歪ませ、物質界と精神世界の境界を曖昧にする噂システム……。今のところ不可解な認識の歪みは観測出来ていませんが、少なくともそれが可能と言う実証がされてしまっている*3のは、本当に面倒な話ですね」
可能かどうか不明段階で済んでいた噂システムを、実行可能な現象と確定させた上で、今は何処か太陽系外まで逃亡しているらしい、追放された元神奈川支部長に対する、余計な事しやがってと言う恨みを溢しつつ、怪しい噂話などが流布されていないかの調査も並行して進めていく。
とりあえず今度見つけたら、10連【釘パンチ】ぐらいは叩き込もうと考えながら――
なお、拙作世界線だとクトゥルフ系食材による【狂気耐性】や、修行場異界深層に出現するクトゥルフ系悪魔による狂気への慣れなどが有るので、修羅勢の永続狂気落ちは防ぐ事が出来た感じの設定にしております。
厄物の回収が出来たかどうかは、社畜ニキの所の展開次第で変わりそうなので、今のところ