【カオ転三次】終末を約束された世界で心のままに生きていく 作:緋咲虚徹
幕間や情報掲載を抜いて百話目となりましたが、来年も完結に向けて頑張ろうと思います。
それでは、良いお年を。
「ではお休みなさい、引っ越しの手続きなどはこちらで行っておきますので、作業が終わったらまた今後の事について話をしましょう」
「琴音ちゃんは大丈夫でしょうけど、裕奈ちゃんは覚醒したてですから、余り夜更かしはさせない様にして下さいね?それではまた明日、お休みなさい」
「わかってるって、瑞樹も綴さんもお休み~」
「あ、お休みなさい!」
何だかんだ話している内に、そろそろ夜中の一時を過ぎようかって頃、早急に決めるべき所の話が終わり、瑞樹と綴さんに久遠が家に戻っていくのを見送る。
「はぁ~、緊張したぁ~」
「二人とも多少砕けた言い方しても気にしたりしないだけどねぇ」
「そうは言っても、初対面なんだし緊張ぐらいはするって、両方ともちょっとタイプは違うけど凄い美人だったし」
「んー、そこは確かに?まあ何度か会って話してれば慣れるでしょ」
「まあ……多分?と言うか、琴音は何処であの人達と知り合ったの?」
今日泊まることになった客室に私と裕奈の二人だけになると、裕奈が盛大に息を吐き出して、力尽きた様にベッドへと転がって行くのを見やり、もう一つのベッドに座る。
こうして見る限りだと多少テンションが高いぐらいで、覚醒による影響は少なめな感じかな?影時間中に保護された時は、半覚醒になってたのも有って精神的な不安定さがあるとの報告だったけど、ペルソナ覚醒が良い方向に作用したと思っておくかな。
まあその辺の観察はしばらく続けるとして、瑞樹と綴さんに知り合った経緯……か、確か――
「瑞樹とはガイア連合に加入して直ぐだったかな?さっきの影時間って呼んでる異界の中に立ってる塔、あれと私に因縁が有るっぽくてさ、あの異界を攻略して対処するためのサポートってのが最初。綴さんの方は丁度五年前の今頃になるかな、瑞樹が影時間内で保護したんだけど、その時裕奈と同じ様にペルソナ能力に覚醒して、私が
「へぇ、ってことは、それから三人……あ、いや護衛兼秘書って言ってたし、久遠さんも入れての四人で探索してるって感じ?」
んー初期の探索は綴さんと私の専用式神なアイギスとの三人だったけど、アイギスは子供達の世話で先に戻しちゃってたから今は居ないし、それに式神云々の話をしてると長くなりそうだしな……。
「その辺の詳しい事も引っ越し終わって、時間が出来てから話すと思うけど、当時の瑞樹と私や綴さんじゃレベル差が大きかったから、基本は私と綴さんと、後で紹介するもう一人の三人でレベルを上げつつ探索って形だったね」
「へぇー、と言うかレベルとかあるの?やっぱりゲームの話だったりしない?」
「わかり易い基準にするためにガイア連合が設定した物だから、その辺はねぇ」
「あ、最近出来たんだ。ならゲームっぽいのも態とって感じか」
「そんな感じ、一応オカルト的な術として、霊的な物を視ると書く【霊視】や鬼を見ると書いて【
「つまりレベルで言うと、同じ奴でも5とか10とか見えたりするって事?」
「そそ、更に言うと術者の体調とか術の精度でも変化が起きるらしくて、ガイア連合でも霊視に特化してる人の結果が一番誤差の少ない情報だろうって事で、それを元に覚醒した直後をレベル1とした基準の数値を作ったって話」
「ほほー、にしても琴音って学校だとそんな感じしなかったけど、ガイア連合だっけ?オカルト組織に所属してるだけあって詳しいんだねぇ」
「今話したのは結構基本的な所だけどね。まあ必要に駆られて相応に学んだし、覚醒してレベルが上がって行くと記憶力とかも上がるから、連合内で言えば私が特別に詳しいってわけじゃ無いかな」
実際瑞樹の方が色々と詳しいし、出来る事も多いしねぇ……、それにショタおじは別格としても、セツニキとか詳しい何てレベルじゃ無く生き字引とでも言うレベルだし、知識系なら星霊神社に籠もってる図書館探険部の面々何かもいるし。
「レベル上がると頭良くなるの?!マジで!?」
「元々は霊格――魂だとかの存在としての強さや大きさ何かを、大雑把に表現してた物をレベルって呼んでるんだけど、この霊格ってのが上がるとその影響が肉体の方にも作用して、身体能力や記憶力に思考速度なんかも上がってくんだよね。ちなみにレベル5ぐらい有ればオリンピック選手以上の身体能力になったりするよ」
「レベル5で?」
「そ、後悪魔なんかはレベル1の奴でも熊と同じぐらいの脅威だね」
「え゛っ?」
「存在としての基本が違うから、レベルの数値が同じでも能力は違うって事。言ってしまえばポケモンの種族値みたいなもんで、妖怪とか神様とかそう言った存在を一纏めに悪魔って呼んでるだけだし」
「うわー、何か覚える事が多そう……」
「実際多いから、詳しい事は引っ越し作業も終わって時間を取れる様になってからって訳。さ、そろそろ眠くなってきただろうし寝よっか」
「あーうん、だね。さっきまで全然だったけど、琴音と話してたら眠くなってきたや」
「そんじゃ電気消すね、お休み~」
「ありがと、お休み~」
ベッドの上に寝転がりながら話す事数分、影時間に迷い込んでからこっち色々とあって上がっていたテンションも落ち着いたのか、改めて布団に潜り灯りを常夜灯に切り替えると、程なくして裕奈の寝息が聞こえてくる。
とりあえず簡易式神を出して裕奈が魘されていたら私を起こす様に指示を出し、続いて【
そんで眠りに入りながら思うのは、今回の事態がN案件なのかどうかって所。
ニャルによって私の中に埋め込まれてた鍵は、レベル100を超えて超越者に至る際に対処したし、タルタロスの方も私を使ったニャルによる干渉手順を瑞樹が早々に潰してる訳で、このままなら集合的無意識から構築されたニュクスをニャルの手が届かない形で封印する所までいけると思う。
ただ、あの邪神の傾向からして、影時間とタルタロスに関する一連の舞台は、TRPGのキャンペーンみたいな物と考えられる訳で、そうなると何かしらの方法でキャンペーンのクライマックスに関わってくるだろうとも思う話。
懸念点でもある月光館学園は、後々ガイアグループが経営権を得て運営関係を刷新してはいるけど、成立自体はカヲルニキが関連した事件の組織――神取グループによる物で、桐条グループやエルゴ研などは関わっていない。
そもそもペルソナの1~3に関わる南条や桐条は財閥からして存在してないのが確認されてるし、神取グループ自体はカヲルニキが既に潰して消滅済み、そんで私が入学してから五年経過しても、学園内どころか巌戸台周辺の私の知り合いからペルソナ使いは出てこなかった……。
それが今になって裕奈が影時間への適性を得てペルソナに覚醒?多分名前と見た目から射撃に適性有るだろうし、アルカナから岳羽の立ち位置へ強引に当て嵌めてる感じがしないでもないんだよね。
まあ父親が大学教授で研究者っぽいけど、母親は子供の頃に亡くなったってのを裕奈から聞いたから、関係性としてはネギまの方が近いし、性格的にはどちらかと言うと岳羽より伊織の方が幾分か近いんだけど――
「まさか、私の回りで性格が近かったり、人間関係や家庭環境が似てるから覚醒を?…………無い、とは言い切れないし、記憶の隅ぐらいには置いとくべきかな」
そんな事つらつら考えてる内に術式の効果が発揮して眠り、三時間経過した四時過ぎ頃に起床して裕奈の様子を確認したけど、見る限りだと魘されてる様子は無さそう。
簡易式神に途中で起こされたりもしなかったし、夢に干渉されてたりはしてないって事で良さそうかな?覚醒自体がニャルの策謀による物なら、何かしらの仕掛けがされてる可能性も有ったけど、瑞樹は何も言わなかったし念のため近くで寝ても何も無かったから、ニャルが関与した可能性は一段下げて良さそう。
とりあえず簡易式神は札に戻して置いて、裕奈の方は影時間に迷い込んだりで疲れてるから起きるまではもう少し掛かるだろうし、学校行く準備でもしつつもう少し考えを進めてみる。
まず確定しているのは、裕奈の覚醒が偶然と言う名の運命力的な影響による物だろうって事。
その運命が裕奈自身の物か、或いは私の物に巻き込まれたのかは現時点だと不明で、多分ここの見極めが一つの分岐点になってると思う。
裕奈自身だとすると家族関係や私以外の人間関係で何か起きる可能性が有るし、私の方だと裕奈以外の友達も何かしら巻き込まれる可能性が有る。
それにどちらかでは無く、両方が交わった事でってのも可能性としてはあるし、断定は避けて可能な限りの対応手段を用意しておくべきな気もするし……。
「うん、その辺は瑞樹に連絡して置こう。多分良い感じにサポートしてくれるだろうし」
考える内に浮かんだ懸念や感じた内容などをメールして、序でに私持ちで裕奈用の隠蔽と食いしばり系霊装の用意を頼む。
裕奈は今のところペルソナ能力に覚醒しただけで、ここ最近見た夢で覚えてるのを聞いてもフィレモンらしき話は出てこなかったから、霊能者としての傾向はP3やP4のペルソナ使いと同じタイプだろうし、肉体面はただの人間と変わらないため、不意の即死から護る装備やアイテムは最低限持たせておきたい所。
降霊術を習得するか他の霊能に覚醒したりすれば、魂魄の霊格も上がって不意打ちへの安全性も多少はマシになるだろうけど、霊的才能に左右される部分だしね。
「ん~、あれ?なんで琴音が私の部屋に……?」
「――っと、思ったより時間経ってたか。お早う裕奈、寝惚けてるみたいだし、まずは朝風呂入ってさっぱりしてから、葦原荘の説明なんかもしてくよ」
時間は大体五時ぐらいと朝早い時間帯だけど、風呂入って色々説明して食事して、学校行くために鞄とかを学生寮まで取りに行かないといけないし、これでも多少の余裕は有る程度かな?
そんな訳で、寝起きで若干ぼんやりしてる裕奈を連れて葦原荘の大浴場(男女別)へと向かう。
「うわぁ、朝から大浴場とか、何処の旅館?って感じだよね」
「連合員向けの宿もやってるから、旅館ってのも間違いじゃないからねぇ。で、寝る前の事は確り思い出した?」
「ダイジョブ、ダイジョブ。洗ってさっぱりして目が覚めたし、ちゃんと思い出してるよ。まあペルソナは貰った補助道具が無いと出せないけど、能力自体は有るって実感出来たし、知らない世界に入ってきたんだなぁ~って思ってたとこ」
「そっか、覚醒したてで気持ちが大きくなってたりしないなら、とりあえず大丈夫そうだね」
「どゆこと?」
「霊能に覚醒するってのは、存在として一段上に上がる様な物だからさ、全能感を感じたりして中二病っぽい言動になったりする場合も多いんだよね。そうなると根拠も無く自分なら出来ると思い込んで、色々失敗しやすくなるってとこ」
「あー、そう言われると、ペルソナ発動してる時は何か行ける!って感じはしてるかな。まあ長く維持出来ないから直ぐにその気持ちも消えて、微妙な気分になるんだけどねぇ」
「ペルソナ解除後に気持ちの高揚が消えるなら、裕奈の心に確りとした芯が有る証拠だし、良いことだよ。昨夜もちょろっと言ったけど、ペルソナは困難に立ち向かうための心の鎧だから、発動中は気分が高揚するもんだし――っと、そろそろ上がろっか、朝食食べたら学生寮まで鞄とか取りに行かないとだしね」
「あっそうじゃん!無断外泊じゃん!やっば、どうしよ……」
多少ゆっくり朝風呂に浸かってたけど、そろそろ時間も良い頃合いだしと思って裕奈に声かけると、色々有って思考から抜け落ちてたのか、無断外泊してる事に気付いたみたい。
まあその辺はどうとでも出来るのがオカルトだし、だから学生寮には戻さず葦原荘に部屋を用意したんだけどね。
「それはこっちで裕奈が居なくても気付かれない様に誤魔化してるから大丈夫」
「マジ?」
「認識阻害系の結界でも張れば結構簡単にできるからね」
「そんな事も出来るってマジでオカルトなんだねぇ」
とりあえず、問題無い事は納得した感じかな?
ま、そこは良いとして、瑞樹に頼んで置いた装備は着替えの横に届いてるみたいだし、体拭いてる内に説明もしておくかな。
「オカルト話の続きになるけど、私のと同じ霊装化した月光館学園の制服とか、裕奈用の下着も用意しといたから、こっちを着てね」
「いや、用意したって何時の間に?しかも私のサイズにぴったりだし」
「裕奈が寝てる間に瑞樹に頼んどいた。体型とかサイズとかは視れば分かるしね。それにしても、遂にFまで到達とか何処まで大きく育てるつもり?」
「望んで育ててる訳じゃ無いから。つーか、そう言う琴音だって私と変わらないぐらい育ってるじゃん」
「私の場合は育てられたって感じかなぁ」
「ほほぉぅ、何やら意味深な発言ですにゃ~。何?実は彼氏持ちだったりしたの?」
「表現的にどう言うのが正しいのか悩むけど、そう言う相手は居るね」
「マジで?!うわぁ、昨夜から色々有ったけど、一番驚いたかも……」
「オカルト遭遇より驚くって、私どう見られてたのよ」
「ほら学校でも、一緒に居て楽しい女友達だけど恋人はちょっと……とか、一対一で付き合うのは体力が……って評価じゃん」
ぐぅ、なかなかにグサッとくる事言ってくれるけど、人気は有るけど恋人にしたいかと言われるとNOと言われてるのは裕奈も一緒でしょうに、まあ見た目は特級なのに武術馬鹿なせいで男っ気の欠片も無い
あれ?思えば強くなることに夢中なバトル馬鹿っぽい立ち位置って、P3の真田先輩ポジじゃ?……まあ今は置いとこうかな、うん。
「後半の方は裕奈もでしょ。まあ男子からの告白とかされた覚えないのは確かだけどさ」
「その代わり女子からの告白は先輩後輩問わず結構されてたよね~。まあ私は男子から告白された事ぐらいは有るし?そんな気分になれなかったから断ったけど、学校で全く男の気配がしない琴音がねぇ……」
「裕奈のそれは中等部の頃でしょ、高等部に上がってからさっぱりなのは同じだし、女子から告白された経験は裕奈もそこそこ有るじゃない」
「あーあー!聞こえな~い!そ・れ・よ・り、相手は誰なのかにゃ~?私の知ってる人?」
「裕奈も昨夜会った瑞樹と綴さんだけど?」
「へ?あの美人さん達??」
「そ、三・四年前ぐらいからね。今は一緒に住んでるし」
「同棲まで?!」
そう声を上げた裕奈はナニを想像したのか、風呂上がりである事を差し引いてもわかり易い程に頬を紅潮させ、下着を身に付けただけの肢体を腕で隠す様にして一歩後ずさる。
まあそんな風に腕を回しても、たわわに実った胸が強調されるだけだし、もじもじとしてる様子は普通にエロいだけなんだけども。
「琴音が男子に興味無さそうだったのはまさか……!私の体を狙って……!?」
「いやまあ思春期的な意味で学校の男子に興味が無いのは事実だけどさ、その気が無い相手を性的にどうこうってのは無いから、と言うかその体勢って逆に誘ってる様にしか思えないんだけど?」
「あ、そのつもりは無いです。はい。つーか、その場の弾みで何かやっちゃってそうな二代は兎も角、恋愛事に疎そうな琴音が私より先に恋人とはねぇ」
「そう言う裕奈はファザコン気味で、恋人作る気殆ど無いじゃない」
「中学の頃は結構本気でお父さんと結婚するぐらいのつもりだったけどね……。なんかそう言う事言ってたからかと思うんだけど、実はお母さんが生きてるっぽい事聞かされてさー、あ、此処だけの話にしてね?何かメシア教?とかに勘付かれると危険らしいから」
「あーなるほど、オカルト系に巻き込まれてたんだ。メシア教に目を付けられたんなら霊能者としてそれなり以上の素質があるんだろうし、娘の裕奈がターゲットになる可能性を考えて身を隠したって所か。そうなると裕奈のお父さんもオカルト関係知ってる可能性が高いかな?となると、裕奈がペルソナ使いに覚醒した事も含めて、ガイア連合から話を伝えて対策取る必要が出てくるね」
「あれ、何か普通に知ってる感じ?と言うかお父さんもオカルト関係だったりするの?」
「表向きは一神教系の一宗派って事になってるけど、オカルト界隈だと異端認定されてるかなり有名な要注意団体だからね」
「へぇ~」
「この辺も引っ越し作業が終わったら合わせて説明するから、今は用意した装備の方ね」
「あ、うん」
用意されてた装備は、低レベル帯向けに開発された悪魔などに見つかり難くする隠蔽効果付きの下着に、肉体ダメージを衣服の耐久値で肩代わりする効果と自動修復に防汚効果付きの制服、それから即死効果や致命傷を受けた際に身代わりしてくれる御守りの三つ。
制服の方はぱっと見普通の服に見える様に偽装されているけど、物理・魔法両方の防御力も可能な限り強化されているみたいだし、下着の方も含めて今の裕奈が装備可能なギリギリの性能を持たせた感じの装備になっている。
「――って感じの装備なんだけど、んー?何だろ、裕奈のスタイルや性格的に瑞樹の好みなのは確かだけど……」
「いや、いきなり好みがどうとか言われてどうしろと?!」
頼んだのは私だけど、私が一緒に行動する予定な状況で、友達のためってだけでここまでの装備を瑞樹が用意するのは何かちょっと違和感……。
「いやさ、覚醒直後の状態で高性能な装備を渡すってのは、瑞樹らしく無いんだよね。万一の備えは確りするけど、ある程度怪我をしながら覚えるのも大事って感じだし」
「聞いた効果がホントなら凄いものだとは思うけど、そんなに?」
「ゲーム的に言うなら、中盤ぐらいまで一線で使える装備をチュートリアルで渡されたみたいな感じ」
「あー何度か買い換えた先ぐらいの性能って事か。組織に所属した支給品的な物って訳でも無い?」
「支部によってはレンタル品とかも用意したりしてるけど、それでも性能は四分の一ぐらいだね。まあ裕奈の身の安全が高まったって事だし、今は置いとくかな。それより学生寮に寄ってから学校行くわけだし、ゆっくり朝食も食べたいからそろそろ行こっか」
「なんか地味に不安なんだけど……?」
「嫌な予感はしないから大丈夫でしょ」
「そこで勘頼みぃ?」
「あ、覚醒した霊能者の勘ってのは軽視すると危険だから注意ね。占いもそうだけど、物事の因果関係とか運命的な物を感じ取る霊感の働きだったりするから、判断材料の一つぐらいには意識に留めるのが鉄則」
「うーん、ホントに学校での琴音と色々違うなぁ」
「学校での私やガイア連合員の私、時と場合によって違う自分の側面が出てくるのは普通の事でしょ?それに、ペルソナ使いはそう言った違う自分の側面ってのを理解して、把握するのが大事だからね」
裕奈が微妙に困惑気味な表情を浮かべてるけど、余裕を持って行動しているとは言え時間が限られてるのも事実ってことで、話を切り上げて風呂場を出ると食堂へと向かう。
道すがら葦原荘にある設備も軽く説明はするんだけど、レベル上げのためのダンジョンや鍛練場に装備関連の工房なんかの霊能関連は後回しにして、通り道にあるコインランドリーだったり一般のも販売してる購買部、それから各種遊び道具を使用可能な遊戯室なんかの場所を教えて、最後に食堂へと到着。
現在時刻は午前七時前と割合早めな時間だけど、葦原荘の各種設備は自動人形が交代で管理している上、ガイア連合の依頼関係で夜中仕事する人だったり、普通に夜型人間な居住者だったりが利用するため、時間に関係無くそこそこの利用者がいるのが葦原荘の食堂だったり。
「宿泊客なら費用に含まれてる一定額までの料理なら無料で、オーバーする料理はその分追加料金払って注文する感じ。裕奈も今回は宿泊客扱いだから、そこのメニューで確認して注文してね」
「それは良いんだけど、円と合わせて書いてあるマッカって何?」
「異界とかで悪魔を倒した時に落とす事が有る金貨で、こんな奴。オカルト界隈だと貨幣として取引に使われる事も多いし、霊能関係の装備作成に使ったりもする素材だから、基本的に円より価値が高いね」
「へぇ~」
「ん?この時間にハム子ネキがこっちと言うのは珍しいな」
と、裕奈に食堂の使い方を教えていると、見知った顔――ネコカオスニキ*2が相変わらず渋い声で話掛けてくる。
「学校の友達がペルソナに覚醒してね、色々と説明中~。ネコカオスニキはいつものアキバ巡り?」
「いや、ワルボウ*3の所では手に余りそうな案件との事で依頼中だな。この後一眠りしてまた調査だ」
「時間掛かってるのは珍しいね。と言うかあいつの管轄で面倒なのが起きてるって事は、メメントスにも影響出てそうな感じだけど……んー、影時間の方も今月入ってからちょっと変な感じだし、何か繋がってるかもしれないね。瑞樹も調査に入ってるみたいだから、既に調査入ってるチームが居るの伝えとく、メンバーは一人?」
「俺の他に捜査向きが一人と戦闘要員を兼ねたのが一人だな」
「オケオケ、そんじゃ依頼頑張ってね~」
「そっちはいきなりタルタロスに連れて行くなどせん様にな」
「いやいや、ペルソナ使いはまずスライムニキの講習を受けるってのが決まりになってるから、それに今から最前線まで行ける様にってのは流石に無理があるしね」
「くく、何軽い冗談だ。ではな」
これから寝るところと言うネコカオスニキと軽くやり取りをした所で、朝食のメニューを決め終わったかと裕奈の方へ視線を戻すと、何だかまた微妙な表情を浮かべた裕奈が私を視ていた。
「そんなチベットスナギツネみたいな顔してどうしたの」
「や、その動物がどんな表情してるのかは知らんけど、ハム子ネキとかネコカオスニキとかって呼び方は何さ」
「ガイア連合の黒札専用掲示板で呼び合ってるコテハンだね。元々ガイア連合って掲示板での知り合いが集まったオフ会が始まりだし、オフ会のノリでコテハン呼びが定着したってのが理由かな?一応オカルト的な名前隠しでの呪詛対策って面もあったりするから、おふざけだけと言う訳でも無いよ」
「何と言うかこう……、シリアスに受け止めれば良いのか、コメディ的に流せば良いのか、わたしゃわからんよ……」
「まあ基本的に黒札同士で使ってるだけだし、余り気にせずシリアル程度に軽く受け流せば良いと思うよ。それより朝食はどうする?私は何かシリアル食べたくなったし、BBコーンフレークとオムレツに厚切りベーコン辺りにでもしようかと思うけど」
「あー無料範囲だしお腹も空いてるから、生姜豚のステーキってのにしてみるかな。ご飯はお代わり可能みたいだし、後はサラダと味噌汁で」
「オッケ、じゃあ後で登録とかも教えるけど、ガイア連合のアプリで支払いして、出て来た注文札を持ってけば完了。席に座ってれば注文札を目印に運んできてくれるから、料理と札を交換って感じね」
「オカルト組織って割りに、随分機械化してるよね。便利なのは良いことだと思うけど」
「そう言う古い考えな組織も有ったりはするけど、使える物は使うってのも多いからね。特にガイア連合は最近出来た新興組織だし」
そうして数分ほど話していると、美味しそうな香りを漂わせる料理が運ばれてくる。
私が注文した分のBBコーンから作られたコーンフレークが盛られた大きめのボウルに、最近選択に追加されたミルクジラのミルクが入ったピッチャー、溶けた出したチーズの焼けた匂いが香るオムレツ、蟹ブタのベーコンを厚めに切ってじっくり火を通したベーコンステーキ、それから裕奈が注文した生姜豚のステーキと炊きたてのヒノエ米に、パリッとした新鮮なサラダと味噌汁がテーブルに並ぶ。
「おお、美味しそう!」
「葦原荘の食事関係は瑞樹が色々梃入れしてるから、値段の割りに良いのが食べれるのも地味に評判だったりするからね。じゃ、頂きまーす」
「頂きまーす!はむっんん、生姜焼きみたいな感じかと思ったけど、豚肉自体から生姜の香りがする!肉は軟らかいし肉汁がすっごい溢れてくる!生姜の風味で脂っこさもあんまり感じないし、ご飯との相性も抜群で何杯でもいけそう!」
「生姜豚は肉自体が生姜の風味を持つファンタジーな豚だからね」
「え、飼料に生姜を混ぜて育てたとかって奴じゃ無く?」
「未覚醒者が食べると大変だから一般には出回ってないけど、創作物っぽいファンタジーな食材も実は結構あったりするし、生姜豚もその一つだったりするんだよね。覚醒してれば問題無いから、覚醒者しか居ない葦原荘の食堂メニューには普通に置いてるけど」
「へぇ~そうなんだ、ホントに違う世界に入ってきた感じがする。ま、美味しい物が食べれるのは良いことだよね」
「美味しい物なら瑞樹が研究して色々創り出してるから、楽しみにしてると良いよ。まあ美味しい物は相応に高いから、確りと稼ぐ必要が有るけどね」
「ぬぅやっぱ高いよね~。でもさっきの人が依頼がどうとか言ってたし、稼ぐ手段はあるんだよね?」
「色々とあるけど、稼ぎたいならそれなりにレベル上げて力を付けないとね」
「うん、何かやる気も出て来た!まあ放課後に引っ越しと話を聞いてからだけどね」
そんなこんなで朝食も食べ終わって、一度学生寮の方まで寄ってから学校へと向かう。
調査関係は瑞樹に情報渡しておけば何とかしてくれるだろうし、後は放課後に引っ越し作業終わらせてからかな!
術者の時間に関する適性と技量によって、十分な睡眠時間を得る最低時間が変化するが、最大でも三時間で必要睡眠が得られる。
なお、術の習得には三時間で必要睡眠に届く程度の時間系統適性が必要。
終末後には山梨に第二のアキバを作ろうと画策中。
本家様の方で、承太郎ニキとハム子ネキは面識がある様子のため、拙作世界線では巌戸台支部とも割と近い場所を管轄している事に。
登場したオリキャラ紹介
・ネコカオスニキ
見た目ネロ・カオスでデビルシフトするとネコアルク・カオスの姿になる不思議なまもの系黒札、本名
サブカルをこよなく愛するオタクであり、普段は帝都の他支部で依頼を受けて金稼ぎしつつアキバ巡りをしている。
なお、ガイアニメンバーの護衛として同行する事も多く、護衛として十全に活動出来る様、定期的に修行場異界でのレベル上げも欠かしておらず、現在のレベルは47。
専用式神は、沙耶の唄のヒロインである沙耶。