【カオ転三次】終末を約束された世界で心のままに生きていく 作:緋咲虚徹
目標は、今年中の本編完結ですかね……。
琴音達が学校へと行っている頃、私の方は琴音から送られて来たメールの事も有り、ワルボウの支部で扱ってるネコカオスニキが受けた依頼を探し、支部長権限で見れる範囲の情報を引き出していく。
依頼の方は、辛い現実を忘れる事でリラックスし、現代社会のストレスを解消するとの触れ込みの、心療娯楽施設アムネジアの調査で、受注したメンバーはネコカオスニキと
「なるほど、銀鈴ネキにネコ覚ネキが居ても即日解決と行かなかったのを考えると、かなり面倒な案件みたいですね」
心療娯楽施設アムネジアの調査に関しては、今年に入ってから逮捕された犯罪者に其処を利用した事の有る人物が何人も居たため、一度警察による調査が行われたが可笑しな点は確認されず、その後今月に入って調査に行った警官の一人が犯罪を犯して逮捕される事件が発生、その情報を得た政治家系黒札から依頼が出された経緯。
ワルボウの支部に回されたのは、心療娯楽施設アムネジアが管轄範囲にあるからと言うだけですが、支部でも腕利きの銀札が調査しても怪しい点は見つから無かったとの事。
ただ、依頼した黒札が念のため、調査に当たった銀札をネコ覚ネキに調べて貰った所、心療娯楽施設アムネジアへ入った後から出てくるまでの記憶に切り取られた様な不連続性が有るのに加え、報告書にはどの様な調査を行ったのか詳細に書かれているにもかかわらず、施設に入ってからの行動を記憶していない事を認識出来ていない状態であり、〝怪しい物は無いただの娯楽施設だった〟との認識になっているのを確認した事で、一般ガイア連合員では対処不能と判断し、黒札への依頼に切り替えとなったらしい。
それと、該当施設の住所を確認すると月光館学園と承太郎ニキの支部――メメントスへの出入りを頻繁にしている場所――の中間地点辺りに在るらしく、ここ数日に入ってきた情報から考えて偶然と考えるのは難しい所。
その上で、本職の諜報員だった銀鈴ネキに読心やある程度の過去視も可能なネコ覚ネキが居て、それでも調査に時間が掛かっていると言う事から、通常の異界や悪魔を使ったオカルト犯罪と言うだけでは無さそうな感じ。
特にネコ覚ネキの読心で読み取れない辺り、認知異界やペルソナが関係して、無意識下の刷り込みをしつつ記憶だけ消されている可能性も考えるべきでしょうね。
「現在分かってる情報だけでもN案件の可能性が出て来てますね……。一応ペルソナのネガティブマインドの化身は性質が酷似してるから邪神と同じ名前ってだけで、クトゥルフの邪神とは別存在のはずなんですが、多分
クトゥルフ神話自体は二十世紀にアメリカで創作されたパルプ・フィクション――当時の低質な紙を使った安価な大衆向け雑誌に掲載された大衆小説の類い――で、世界各地の神話の原型となる外宇宙の存在が太古から存在していたとする事により、身近な神話・信仰の影に得体の知れない何かを感じさせるコズミック・ホラーとした物。
まあラヴクラフト御大自身としては、読者が自ずと隠された世界の実相を暴き出し恐怖する様な、隠される事で機能するホラーの舞台装置だったみたいですし、神話として体系化されたのは、ダーレスを初めとした面々が商業的に売り出し広める過程でまとめられ、ネタバレ的に詳細な設定などが作られていった結果見たいですが……。
とは言え、そうして広く大衆に認識され、神話・伝承の存在と同一視出来る様なナニカを意識する事で、クトゥルフ系悪魔が出現する様になった訳で、その認知が集合的無意識に与えた影響も無視は出来ないレベルだったでしょう。
其処へ別世界からの転生者と言う霊的資質の高い者達が万単位*3で追加され、認知に補強がされたと思えば、集合的無意識のネガティブマインドがニャルラトホテプとイコールになるのも現実的には可笑しいとも言えない話。
ちなみにこの辺の転生してきた黒札の認識による影響に関して、社畜ニキみたいに今世をゲームが元になった世界と認識してるゲーム脳系黒札も極一部では居ますが、実際にはゲームが元になっているとすると起き得ない事象――前世のゲームと同じ素材で完成品が別の物になるなど――も確認されており、複数タイトルの設定と似た現象が混じり合ってる点からも、ゲームと似た世界では有っても現実の世界であって、ゲームが元になっている訳では無いと結論が出てたりしますが……、まあ余談ですね。*4
「状況的にN案件と仮定して行動するとして、そうなると銀鈴ネキが関わってる事も意味がありそうに思えますね」
思考を切り替えてネット上の施設関連の情報を浚い、合わせて現地に派遣した木分身で遠目から施設を観察し、序でに周辺住人を過去視して施設に関連する履歴をピックアップしてみる。
まず判明したのは、心療娯楽施設アムネジアを基点とした認知異界が形成されている事だけど、ネコカオスニキ達にペルソナ適性は無かったはずだし、認知異界に気付かなかったのは仕方無いかな?
態々帝都でも活動しているだけあって三人ともレベル30は超えているし、霊能者としてのレベルが高い事で認知異界の影響を受けなかったのも、気付かなかった理由でしょうけど……。
それは兎も角、施設外からの観察だと認知異界への侵入方法が見えないし、おそらく内部で夢に関連する儀式でも行い、意識のみを認知異界へ連れて行くなりしているのだろうと推測出来る。
次ぎに成果が出たのは、周辺住人からの施設に関連する情報のピックアップ作業をしていた過去視の方だけど、正確には施設関連の情報は設備の充実した娯楽施設程度しか出てこず、代わりに〝世界が終わりに向かっている〟とか、〝現代社会への執着を捨てることで終末を生き残れる〟とかの、終末思想系の噂話が調べた全員から見つかった状況。
で、終末思想関連に絞ってネット上を浚って見たところ、数自体は多く無いものの、施設周辺地域の住人からの書き込みに、終末思想系の噂話が少しずつ増えて来ているのが見つかったと言う訳だが……。
「噂システムの準備段階と言った気配ですかね……。今世は先に転生してた富豪系のニキネキ達が技術発展を推し進めてるおかげで、SNSとかのツールも早い段階から一般化してますし、下火の内に方向性をコントロール出来る様、デジタル技術部の方にも協力を要請しておきますか」
まあ元々ネット上の噂話に関しての警戒はしていたし、デジタル技術部にも噂システムによるガイア連合への不利益を防ぐ目的で、ネットミームや話題を監視したり誘導したりする部署も設置されているため、其処に情報を投げて置く形になるんだけども。
後は、私も多少は出来ると言っても専門では無いですし、今後の事を考えると電子戦に特化した式神でも用意しておくべきですかね?
タルタロスの最奥に到達して無事に封印が完了すれば、終末で消し飛ぶ可能性も有る帝都から蓬莱島に封印を移す予定ですし……。
「色々とやることも見えてきましたが、まずは集まった情報からの未来予測と占術ですね」
未来の確定を行わない方式での習得に至った【天眼通】により、集まった情報を基にした可能性未来の観測という形で【未来視】を行い、大雑把に良い結果と思われる流れを探り出した後、占術による因果の接続を行い良い結果となる未来をたぐり寄せる。
「重要な鍵は琴音と裕奈さんの二人……。それからやはり電子戦特化の式神は用意した方が良さそうですね」
良い占術結果が得られた所で、念のためショタおじとカヲルニキにもN案件らしき現状についての報告を上げておき、ネコカオスニキ達との情報交換に木分身を一体送った後、式神製造に取りかかる。
初期の頃から式神コアの製造やパーツの研究などにも関わっていたし、何なら分身の一体は常に式神製造部に派遣しているため製造自体は慣れた物。
今までは骨格や構成素材のアップグレードなどもして、レベル99相当まで強化した久遠だけで不足は感じなかったし、仲魔の湯乃葉でサポート関連の手数も足りており、単純な人手なら九十九式自動人形や簡易式神で十分な事も有って、二体目の専用式神を作る予定は無かった訳だけど、電子戦に特化して常駐出来る戦力が必要となったのも良い機会という事なのだろう。
「さて、作る方向性は決まってますが、モデルはどうしますかね」
私の認識的にも電子戦に秀でたキャラクターをモデルにした方が性能は上がる訳で、前世で好きだった作品からいくつか思い浮かべていると、式神製造部に割と多く製造依頼が来るキャラクターが脳裏に
有名どころのキャラは好きな人も多いため、式神の見た目が被るなんてのはよくある話だし、見た目に多少のアレンジを入れて差異を出せば良いかと言う事で、モデルは劇場版で電子の妖精とも呼ばれる機動戦艦ナデシコのホシノ・ルリに決める。
それに合わせて、戦艦ナデシコのメインコンピュータの名称がオモイカネな事から、思金神の分霊として【電霊】を作り式神とセットで運用する事を思い付き、契約関係の条件を考え話を持ちかける事に。
条件と言っても基本はショタおじが設定したガイア連合の基本契約で、蓬莱島の電子関連を統括するのと、噂システム対策として電脳空間上の流言をコントロールする役目を任せる代わり、天照や月読、思金などの日本神を奉る社を外部解放区画に建立すると言う内容。
セツニキにダブルチェックを頼んで問題無い事を確認した後は、無事に交渉が締結して【電霊 オモイカネ】と契約し、改めて式神ボディの製造に移る。
使う素材は、目的からペルソナ関連の力は最低限必要と言う事で、骨格には精神感応金属でもあるアステリコン合金木*5、肉体には私二人分ぐらいの生体素材と生理用品の卵の種で保存していた卵子を合わせてパーツを構築。
電子への親和性を高める観点から、電気系を磁力などの側面から金行の範囲と捉え、合金樹皮と混ぜ合わせて作ったエレクトラム合金糸*6を使用し、光の加減で淡く金色を覗かせる艶やかなシルバーブロンドのロングヘアを作り、他の同モデル式神との差別化の一つとして、ロングツインテールでは無くうなじ付近でまとめるローポニーテールにしておく。
出来上がったボディとしては身長が148cm、スリーサイズは体型が崩れ過ぎない程度に盛るペコした結果、カップサイズはGぐらい有る巨乳で安産型のムチムチなスケベボディになったけど、この辺も差別化の一つと言う事にして置きましょうか、十割私の趣味で性癖ですが。
「ボディの方は出来ましたし、後は式神コアとペルソナカードにスキルカードなどを組み込んで、集合的無意識や電脳との接続を確認すれば完了ですね」
出来上がった物的には最初の予定と少し変わり、色々と高レベル素材を突っ込んだからか肉体毎データ化して電脳ダイブが可能な【デジタライズ】と、物質化の【マテリアライズ】スキルが発現し、肉体を持ってる電霊みたいな感じになったけど、対処能力自体は当初の予定より高くなるだろうから良しとする。
後は【電霊 オモイカネ】を運用するための【電霊使役】や【高速思考】などのスキル各種を入れて、【電霊 オモイカネ】の維持待機場所としてのブルーウォーター*7を用意し、起動させる。
「起動完了、初めましてマスター。個体名の登録をお願いします」
「貴女の名前は七倉瑠璃、七倉が家族名になります」
「七倉瑠璃――登録完了。コンゴトモヨロシク、マスター」
専用式神の初回起動設定が終了したら、運用目的である各種機能の動作と、集合的無意識より引き出した【隠者 オモイカネ】のペルソナ展開を確認し、一先ず予定通りの仕事は熟せると判断して、こっちの私はこのままこっちで瑠璃と一緒に噂対策へと作業を移行する。
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私が電子戦特化の専用式神製造に取りかかっている一方で、同日の昼過ぎ、ネコカオスニキ達との情報交換に来た木分身の方では、昨夜の影時間からの出来事や午前中に調べて判明した内容を伝えたところ、二人が面倒そうな表情を浮かべ、一人は机に突っ伏して頭を抱える状況になっていた。
「ハム子ネキと友達になったってのは知ってたけど、数年経っても何も無かったから大丈夫と思ってたのに……」
「銀鈴ネキから話は聞いてましたから、出来るだけの装備は渡してますが、今回に関しては多分運命の渦に囚われてますので、覚悟を決めて立ち向かうしか無いですよ?」
「そう言えば、月光館学園大学に銀鈴ネキの旦那が勤めてて、娘さんも通ってるんだっけ?」
「銀鈴ネキが加入したのは、富豪ニキネキが月光館学園の経営権を得た後だったか。黒札の子なら覚醒する可能性も高いのだ、早々に打ち明けて葦原荘で修行させておけば良かったのでは無いか?」
「早期に修行して、万一ペルソナ能力に覚醒したらハム子ネキとタルタロス行きじゃない、娘をそんな地獄に送りたくなんて無いわよ!」
「ふむ、それはそうだな。私の考えが足りなかった」
「私は今でも毎晩、その地獄を探索し続けてるんですがね……」
「地上に居て良いレベルじゃない修羅勢は例外枠でしょ」
「まあ良いですけどね。それより銀鈴ネキ、娘さん――裕奈さんに事の詳細を話すのはどうします?今日の放課後には葦原荘への引っ越しを行いますし、その後の説明の時に併せてぐらいは可能ですが」
ジト目で〝何言ってんだコイツ〟みたいな気配をさせるネコ覚ネキのツッコミを軽く流し、悩ましい表情で頭を抱えてる銀鈴ネキに改めて問いかける。
話の流れでも分かるとおり、昨夜の影時間でペルソナ能力に覚醒した明石裕奈の実の母親が銀鈴ネキなのだけど、銀鈴ネキが覚醒した際の状況から、娘にメシア教の魔の手が伸びることを警戒し、かつての自分を死んだと偽装して隠れる事にしたらしく、夫の明石秋雄さん*8のみに変装して生き延びている事を告げていたとの事。
なお、死んだ事に偽装した以前の銀鈴ネキは、アメリカ国籍のCIA諜報員だったそうで、結婚して日本に帰化しアンナ・ベネットから明石杏奈へと名前や戸籍が変わったけど、覚醒時はアメリカ国籍の方でCIAの仕事によりメシア教の内部調査をしていたらしく、メシアンや天使に追い詰められたところで覚醒し、【生還トリック】のスキルを習得した事で九死に一生を得て生き延びた。
この時はメシア教において銀鈴ネキの身柄確保を何処まで重視してるのか不明だった事から、
ちなみに、ガイア連合山梨支部に所属した後は、アメリカ育ちの元諜報員と言う経歴もあってメイン武装には銃を選択しているけど、実銃に慣れ親しんでいた事から、エアソフトガンのガイア銃では違和感を感じる状態だったとの事。
精巧に作られたエアソフトガンなら訓練用として一応戦えるぐらいはするらしいけど、訓練用の認識が強いのか威力が低下したり、対象の残りHPが2以上有る場合、攻撃しても必ずHP1で止まると言った様な手加減状態になるらしく、キノネキが実銃愛好部を設立した時には積極的に協力していたし、何なら諜報員時代の情報を使って、アメリカ方面の実銃確保に関わってたりもしていた。
そんな訳で、実銃愛好部の立ち上げにはキノネキにお願いされて私も関わっていた事から、銀鈴ネキともそれなりに長い付き合いが有り、一人娘が月光館学園に通っている事や琴音のクラスメイトで友人で有る事などは知っていたため、裕奈さんに渡した装備は銀鈴ネキの事を考慮して、可能な限り生存性を高めた性能にした経緯があったりする。
修行の時にはどうかとも思う性能ですが、今は渦中に居る訳ですし、まずは生存を第一優先にしたと言う事ですね。
「…………はぁ、裕奈を危険に巻き込みたく無かったけど、覚醒した以上はそうも言ってられないわね。秋雄さんも呼んで裕奈に色々と事情説明するわ。結構長い話になると思うから、時間加速付きの壺中天地でも貸してくれないかしら?」
「それなら大規模術技訓練用のダイオラマ魔法球を葦原荘に設置してますから、其処を使うと良いですよ」
「ならそれでお願いするわ。っと、脱線させちゃって申し訳ないわね」
「なに構わんさ、親が子供の心配をするのは当然の事だ。それで仕事の話に戻る訳だが、ペルソナ関連になるなら俺らは引き継ぎして手を引く方が良いか?」
「認知異界関わるなら私じゃ調べきれないしねぇ……。読心は得意でも過去視は物質限定だし」
「いえ、ペルソナ関係だけなら裕奈さんが今になって覚醒した事が不自然です。必ずしも運命力の影響とは言い切れませんが、無視も出来ないのがこの世界ですから、少なくとも銀鈴ネキは関わる方が良い結果になるとの卦*10が出てます。それと、認知異界関連と判明しましたので、ワルボウの方にはこちらから連絡入れて依頼の管轄を巌戸台支部に移してますし、それに併せて依頼内容の変更と報酬を追加してますね」
「なるほど、だから運命の渦に囚われてるって事ね。なら、私はこのまま依頼を続行するわ。ペルソナ関連だと何処まで手助け出来るか分からないけど、もしもの時に手の届く場所に居たいもの」
「依頼内容と報酬の追加については確認した。俺としても旨味のある話だから否は無いが、ネコ覚ネキはどうだ?」
「認知異界の対処で施設利用経験者に何かしらの影響が出る可能性も有るんだ……。んー利用者のリストもあるし、最近の利用者ぐらいならまあ、照らし合わせて捜し出すのも行けるかな?うん、私も継続させて貰おうかな」
「分かりました。では依頼は継続として処理しておきます」
三人を依頼継続として事務処理に回し、改めて今後の行動についての確認に移る。
これまでの施設利用者で逮捕された犯罪者達の傾向を調べた感じだと、以前から感情の抑制が出来ない――手が出やすいとか衝動的に行動する様なタイプの人間だった事から、ペルソナの暴走に近い何かが起きてた可能性が考えられるし、最悪P1やP2の様に、ペルソナが本人の意思を離れて独自行動を開始する事も有り得る話。
そんな訳で、一先ずはネコ覚ネキが前日の調査で確保したリストを基に、直近から大体年明け頃までの利用者の現在位置を確認して貰う事にして、その間に私の方は認知異界への侵入方法を探る事になり、裕奈さんの引っ越し作業が終わる頃に再度葦原荘へ集合する感じで情報交換を終了し、それぞれ行動を開始する。
私の方は正式に依頼の管轄を移行した事で、午前中の軽い調査から本格的な調査に切り替わった事も有り、【圏境】と【神足通】で監視カメラにも映らず認識されない状態と成って、心療娯楽施設アムネジアへと侵入。
前日にネコ覚ネキが調べた後の利用者情報を送りつつ施設内を歩いていると、外からでは分からない様に対策された境界の歪みを発見する。
「施設案内には記載されていない地下へ降りる階段、ですか。現代社会を忘れるための名目で用意されてる各種遊戯施設にも、それと分からない様に細工がされていましたが、どうやら思った以上に事態が進行しているみたいですね」
まず前提の話として、依頼主である政治家系黒札からの資料やネコカオスニキ達の調査でも分かってる事だけど、この施設自体は純然な娯楽施設として造られた物で、施設の名称自体も現実を一時でも忘れられる程の楽しい遊びを提供するって意味で付けられたらしく、今も施設内の遊戯室では楽しそうに遊ぶ利用者が確認出来る。
しかし、施設内を調べた事で判明した事だけど、どうやらこの娯楽施設の建設自体にニャルが干渉していた様で、精神世界側からの極微弱な細工により、サブリミナル効果的に利用者の無意識へ干渉し、利用者の無自覚な行動により自発的に儀式を行わせ、それの積み重ねにより施設内に限定する閉じた認知異界を形成するに至った。
正直普段から影時間に潜り続けていたり、マヨナカテレビやメメントスなんかの探索にも赴いてたりしなければ、私も気付けなかったかもしれない程度の微かな細工であり、多分だけど、ニャル的には上手く行けば儲け物ぐらいの感じで施された、数ある舞台装置の一つと言ったところでしょうね。
実際【過去視】で認知異界形成に至る過程を追っていくと、半終末頃から渡航規制や物価上昇などの世情不安も相まって施設の利用者が増え、増大したストレスから生じるマグネタイトが影響して急速に強固な認知異界へと変貌して行ったのが分かる。
そうして出来上がった認知異界が稼働しだしたのが大体年明け頃の事で、辛い現実を一時でも忘れると言う施設利用者の共通意識により、現実を
しかも悪い事に、施設の目的が元々一時の忘却――遊んでいる間ぐらいは辛い現実を忘れると言う物だった事から、心の一部が認知異界に囚われているにもかかわらず、肉体の方は遊びの時間が終わると元の生活へと戻っていくため、欠けた心を埋める様に
犯罪者として逮捕された者達は、欠けた心に
「利用回数が多いほど囚われる心の割合も多くなっているみたいですし、認知異界に囚われている心と現実にある肉体との繋がりから、物質と精神の境界が揺らいでますね……」
周辺住人や利用頻度の多い者達から終末思想系の噂話が広まったのも、ネガティブマインドによる影響と考えれば納得いく話ですし、認知異界の中でも無ければネガティブマインドは心の均衡が負に傾いているだけでしかないため、ニャルのペルソナが混ざった結果とは気付きようが無いのも面倒な所。
現状の厄介な点としては、下手を打つと境界が曖昧になった所に噂システムからの終末案件なんて事に成りかねない事で、幸いな点は今のところ影響範囲が小さいため、起きても局地災害程度に抑え込むのは可能だろうと言う事。
ただ、帝都を覆う大結界に支障が出る様な事態になれば結局の所同じ事ですが……。
まあそれは兎も角、極めて限定的な範囲とは言え、認知異界が現実まで侵食するぐらいに境界が揺らいでいるのは事実ですけど、良くも悪くも建物が殻の様な役割を果たしているため、認知異界が成立しても拡大しない状態になっている訳ですし、異界の解体には多少の準備が必要になりますね。
具体的には現実側との接続が不安定なため、私の様な
「準備をして出直しですね。そろそろ引っ越し作業に行った琴音と裕奈さんが葦原荘に戻る頃合いですし、集まった情報は琴音とも共有して置いて、葦原荘に戻りますか」
一先ず今後の方針を決められるぐらいには調査が終わった事も有り、拠点に居る木分身の方で準備を進める間に、琴音へ調査状況や判明した情報をメールしておき、そろそろ戻ってくるだろうネコカオスニキ達との情報共有と、裕奈さんの入居やガイア連合所属の手続き状況確認に葦原荘へと戻る。
「さて、部屋の場所は引っ越し作業中に決めて貰うとして、所属手続きは終わってますね。銀鈴ネキの娘で琴音の友人ですから問題無く金札を渡せますし、後はスライムニキに研修をお願いする新人が入ったのを伝えて、日程を調整する前準備をしておくぐらいですかね」
序でに巌戸台支部の細々とした事務仕事をしたり、宿泊施設としての要望確認などをして程好く時間が過ぎ、ネコカオスニキ達も戻ってきて、そろそろ引っ越し作業――収納バッグに私物を入れて来るだけとも言う――を終えた二人が葦原荘に到着するだろうかといった頃、一体の簡易式神が葦原荘へと飛んでくるのを察知する。
それは運命の歯車が噛み合い、急速に事態が動き出した事を知らせる狼煙だった――
今回はシルバーブロンドぐらいの色味になる様に成分を調節しているため、肉体系状態異常耐性は下がっているが、精神系状態異常耐性はより上昇している。
普通失踪は生死不明状態が七年継続した場合。
登場したオリキャラ紹介
・
元々はアメリカ出身のCIA所属の諜報員で、明石秋雄との結婚により日本国籍を得て帰化。
一人娘の裕奈を産んでから十年ぐらい後の事、メシア教の内部調査中に半覚醒となった事でメシア教に目を付けられ、重傷を負ったところで覚醒して一命を取り留める。
メガテンに関する知識は無かったが、諜報員として調べた情報から危険性は認識しており、覚醒した事も有ってメシア教の追跡を逃れるために変装と自身の死を偽装して、密入国する形で日本へと戻る。
その際に、夫がメシア教の根切りを逃れるために一般へと紛れた霊能関係の人間と知り、娘の裕奈がメシア教に目を付けられない様に、元の自分は死んだことにして変装したまま生活する事になる。
この後転生者掲示板やガイア連合山梨支部の存在を知り合流(1997年頃)、メシア教から夫や娘を守れるだけの力を付けるための修行をする傍ら、変装状態で夫に会いに行ったりはしていた。
ガイア連合山梨支部に所属以降は、政界ニキネキの要請で諜報活動していた事も有り、娘に真相を伝える機会が取れずにいた所、今回の事件で運命の再会をする事になる。
・ネコ
薄い水色の髪と目を持つ身長148cmの見た目少女(成人済み)で、夜桜四重奏のサトリ妖怪である七海アオと似た容姿の黒札。
読心系の適正が高いが制御は出来てるため、少佐ニキほどには苦労しておらず、制御と増幅用に特注した猫耳カチューシャを使った広域探査や過去視による情報収集を得意としている。
COMPを使ったサマナーでも有り、戦闘は基本専用式神の槍桜ヒメと仲魔頼りで、私生活は二体目の専用式神である比泉秋名任せ。