【カオ転三次】終末を約束された世界で心のままに生きていく 作:緋咲虚徹
事態が動いたのは、黄昏と呼ぶのに相応しい夕暮れ時。
心療娯楽施設アムネジアの利用者調査から戻ってきたネコカオスニキ達三人の調査結果や、私が施設を調査した結果などの情報共有が終わり、ワイルドの特性を持つ琴音なら現実に侵食し始めた認知異界にも侵入可能だろうって事で、琴音による対処をメインとして、ダメだった場合のサブプランにネコカオスニキ達三人が認知異界へ入るための準備も進め始めた頃。
元々裕奈さんの覚醒関連の説明に必要って事で、葦原荘に呼んでいた月光館学園大学部の明石教授も到着しており、銀鈴ネキには準備中にダイオラマ魔法球内で説明に行って貰う事にして、後は琴音と裕奈さんが戻ればと言った状況で、葦原荘へと飛んで来る簡易式神を察知。
それが琴音の送ってきた物だと気付き、過去視により込められたメッセージを確認した事で、状況が急変した事を知る事になる。
「問題発生につき、今後の予定を多少変更する事になります」
「その簡易式神はハム子ネキの物か?」
「ええ、つい先程路地裏で何やら儀式をしてる連中を発見し、阻止及び退避不能な状況に遭遇した様です。今木分身を送って現場確認したところ、アムネジア利用者により認知異界構築の儀式が行われ、琴音と裕奈さんそれから二人の友人の本多二代が認知異界に巻き込まれました」
「裕奈が!?」
声を上げたのは、事情説明のために到着したばかりの明石教授、母親である銀鈴ネキの方は、心配はしつつも最悪の状況では無い事に安堵している感じだろうか。
「秋雄さん、ハム子ネキと一緒なら状況的に良い方よ」
「杏奈……」
「そうですね。どうやらクラスメイトからアムネジアの施設へ遊びに行く誘いもされてたみたいですし、遅かれ早かれ巻き込まれてはいたかと思います」
「ちょっと待って探求ネキ、それって私がアムネジアの調査をしている事も関係してるって事?」
「所謂運命力の影響って所でしょうね。現場で確認して分かった事の一つですが、因果の流れとして銀鈴ネキと裕奈さんが関わる物と、琴音とその友人である本多二代が関わる物の二つを観測してます」
「なるほど、銀鈴ネキメインの流れとハム子ネキメインの流れが合流しちゃった感じか~。ん?ってことは、今回チーム組んでる私やネコカオスニキも含めて、アムネジアの認知異界に突入する流れだったりする……?」
「琴音が関わらない場合でも、その流れは変わらなかったと思われますね」
推測を多分に含む話だけど、琴音と裕奈さんが親しい友人でなければ、影時間で保護した後にペルソナ覚醒までは行かなかっただろうし、その場合琴音が葦原荘に泊まる事も無いから朝にネコカオスニキと話す事も無く、私が依頼内容を調べる事は無かったはず。
そうなると、クラスメイトと遊びに行った裕奈さんが心療娯楽施設アムネジアの認知異界に囚われていた可能性は高く、施設の調査をしていた銀鈴ネキの運命力と合わさって、色々と厳しい状況に陥っていた可能性も考えられる。
で、琴音の簡易式神から過去視した流れを視るに、裕奈さんが関わっていない場合だと、おそらく本多二代が儀式に巻き込まれる事に気付けなかった可能性が高く、琴音の心情的に厳しい事態となっていた可能性もある話。
まあとは言っても、それはどちらか一方の因果の流れだけが動いた場合の話であって、舞台装置として上手く行った施設を使い、タルタロスとメメントスを繋げようとしているNの思惑と、Nが過去に細工を施した舞台を使って銀鈴ネキと裕奈さんの物語を紡ごうとした
「――っと、私の推測はこんな感じですね。どちらもペルソナ関連ですから、人の心の海――集合的無意識と言う名の運命力*1が働いた結果とみてます。裕奈さんは銀鈴ネキの経歴含めて運命力の高い生い立ちしてますし……」
「ああそう言えば、明石教授はメシアンの根切りから逃れて細々と繋いだ霊能家系で、銀鈴ネキはメシアンに命を狙われて死んだ事になってる元CIA。そんで現在は身分を偽装して、政治家系黒札の依頼で諜報活動もしている裏の凄腕エージェントで、その娘がオカルト事件を切っ掛けに死んだと思ってた母親と再会するって、伝奇小説辺りの主人公っぽい立ち位置*2だよね~」
「なるほど、逃れ得ぬ
「【
銀鈴ネキの振り抜いたハリセンが、スパーン!と快音を立てながらネコカオスニキをしばいた所で、これからの行動に話を戻す。
「まず裏路地で行われた儀式は、インスタンスダンジョン形式の認知異界を構築する物で、同じ場所で同じ儀式をしても別の通路が作られるため、後追いする事は不可能と判明しました。ですが、どうやらこの認知異界はアムネジアの認知異界へと連れ込むための通路みたいですから、アムネジアの認知異界へ直接乗り込む事でサポートする事も可能と推測されます」
「確かアムネジアの認知異界が現実側に侵食している影響で、探求ネキが侵入すると予測不能な事態が起きる可能性が有るんだったな?」
「ええ、本来の想定とは異なりますが、琴音が対処するメインプランが不可となりましたので、認知異界の突入班は銀鈴ネキ、ネコカオスニキ、ネコ覚ネキ、それから明石教授を入れての四人を予定しています」
「私も参加してよろしいのですか?」
アムネジアの認知異界攻略メンバーに明石教授の名前を挙げると、揃って訝しげな表情を浮かべて視線を向けてくる。
「まあレベルや霊能の資質的に明石教授には厳しいだろうと思いますが、裕奈さんとの
「親子の繋がりって事か~。それなら納得だけど、そもそも認知異界への侵入はどうするの?」
「現実側に入り口が侵食している関係で、侵入だけなら通常の異界と同じ様に可能になっています。ただ、ペルソナ能力による精神の防護が無いと直ぐに取り込まれてしまいますので、その辺の対策が必要な感じですね。こんな幸いは余り嬉しくない話ですが、サブプランとして準備を進めていましたから、完了まではさほど時間も掛からないと思います」
「確か専用の装備を用意してるとかって話だったけど、どんな装備なの?」
「認知異界の探索人員はいつも不足してますから、どうにか増やせないかと色々と研究している内の一つで、最近実地試験も終わってデータベースに登録したこの装備を使います」
簡易式神での一報から、サブプラン用にと進めていた準備がメインに切り替わった事で、急ぎ製作を進めていた装備を取り出し、四人へと渡す。
用意した装備の見た目は黒のオーバーコートで、使用した素材は合金樹の樹皮にブラックダイヤとオリハルコンを混ぜ合わせたアステリコン合金繊維に、【刈り取る者】などの【死神】のアルカナを持つシャドウの素材とアダマンタイトで作成したアダマントス合金繊維。
コートはアダマントス合金繊維をベースとして、アステリコン合金繊維でアルカニスト系の術式を付与しながら紋様を織り込んでおり、紋様や金属光沢を隠すための艶消し加工を施す事で、防護の概念を上乗せして精神防壁の効果を高める形式。
ちなみにアルカニストと言うのは、タロットのアルカナに沿って悪魔の力をペルソナとして形作り、自身に憑依させる降霊術の一種を専門に扱う術者の事で、これが物質側に寄って肉体の変化を伴う形になると、
アルカニスト系術式により装備者の精神から適合するアルカナを選出し、悪魔の力をペルソナとして形作る技法によりコートの内ポケットに挿入した悪魔カードやペルソナカードをペルソナとしてコートに降霊させ、コート自体を精神の鎧と定義する事で、認知異界やペルソナ能力への適性が低い者でも一時的にペルソナ能力を得て、認知異界に侵入可能となる特殊霊装が、今回用意した〝アルカナコート〟となる。
なお、コート自体が精神防壁となる事から、シャドウによる攻撃やSANチェック系の精神的な負荷などもある程度肩代わりしてくれるため、ガイア連合所属のペルソナ使い用に量産品の〝ペルソナコート*4〟もデータベースに登録して、製造部や購買部に投げてたりする。
「使用出来るカードは装備者のレベル以下の物に限られますが、これについては制御的に仕方無い部分ですね。後、コートに降霊したペルソナの力を引き出せるかは、セットしたカードとの相性や装備者の才能や技量次第なのが、現状の課題と言ったところですけど、認知異界内での行動とシャドウとの戦闘を問題無く行える事は確認出来てますので、目的としては十分な装備に仕上がっています」
「それはまた、コストの掛かってそうな装備が出て来たわね」
「量産品のペルソナコートは兎も角、アルカナコートの方はアルカニスト系の術式を使う関係上、死を乗り越えられるぐらいの精神的タフさが必要なので、あえてレベル31以上の、蘇生も込みで行動出来るラインの性能にしてますからね」
「あ、術的な制限はやっぱり有るんだ」
「悪魔カードを取っ掛かりに出来る分、フィレモン式やシャドウ由来のペルソナよりは対応幅が広いですけど、集合的無意識に関わる以上、外せない条件もありますからねぇ……」
「レベル31以上を対象にした装備となると、装備から秋雄さんへの影響が気になるわね」
「一応装着するカードのレベルに合わせて、装備の性能に制限を掛ける仕様にしてますから、装備による霊質への影響は抑えられるはずですね。その分防御力なども下がりますから注意は必要ですが」
「了解、なら他の装備関連は私の方から確認して置くわね」
と、銀鈴ネキとの話が終わった所で、次はネコアルク・カオスのミニマムな姿にデビルシフトしてるネコカオスニキが質問しにやってくる。
「探求ネキ、吾輩変身中はこのサイズにゃのだが、その辺はどうなのだ?」
「デビルシフターは情報接続加工*5すれば問題無く機能しますよ。丁度変身中ですし、今のうちに処理しておきますね」
「にゃるほど、では頼むとしよう」
そう言って椅子に座り身を任せてくれるネコカオスニキに、アルカナコートの情報接続加工を施していく。
ちなみに、悪魔変身中のネコカオスニキの一人称が吾輩になってるのは、変身前の自身と区別するためにしているとの事だけど、時折〝にゃ〟が混じるのは無意識らしい。
まあ情報接続加工は慣れた作業なので、時間も掛けずにささっと終わらせて、それぞれが使う悪魔カードやペルソナカードの選定も行い、最低限突入出来る準備が終わる。
「さて、突入班の準備はある程度整いましたし、後は認知異界内の探索補助をするナビですね」
「探知なら私って言いたいとこだけど、普段の異界なら兎も角、認知異界だと何処まで通用するか不安なのは確かかな~」
「保険はいくつか有るべきですからね。拠点の方でサイバー関連の対策も含めて、ナビペルソナ系の式神を新しく作りましたから、その子を介して間接的にサポートする形を取ろうかと思います。通信用の端末としてブルーウォーターをネコ覚ネキに渡しておきますね」
「ういうい、ってか探求ネキ新しく専用式神作ってたんだ」
「作ってたと言うか、朝に琴音から連絡を貰って軽く調べた後、占術の結果を含めて必要になりそうだと思い、時間加速も掛けての特急で作成した感じですね」
「あーうん、探求ネキならそれぐらい出来るか。まあそれは良いとして、そのナビをしてくれる式神ってどんな子?」
「それなら直接挨拶させましょうか」
拠点の方で一緒に作業している木分身を通して連絡すると、ネコ覚ネキに渡したブルーウォーターからウィンドウが跳び出し、銀髪ポニーテールな瑠璃の姿が映し出される。
「皆様初めまして、認知異界探索のサポートを行わせて頂きます七倉瑠璃です」
「ほう……電子の妖精モデルがベースか、良い趣味をしている」
「黒札でも割と人気なモデルよね、ルリルリ。まあ見た目の方は置いといて、ペルソナ能力って余り詳しくないんだけど、ナビペルソナ系って具体的にどんな事が出来るのかしら?」
「そうですね。ナビ型が持つスキルだと【アナライズ】などの調査スキルや既に調べた相手と同じ相手の場合、自動で情報を表示する【サードアイ】、パーティーの周囲を探査するサーチ系統辺りが基本的なスキルになります。その他にも支援するパーティーを対象にしたスキルを習得するのが特徴になりますね」
「私のパーティー支援スキルは、現在【ハイ・アナライズ】で得た情報をより詳細に分析する【情報解析】、それから解析した割合に応じてパーティーの攻撃にバフを掛ける【情報解体】の二つです」
「それって【タルカジャ】とは別に威力を強化する感じ?」
「ナビ型のサポートスキルは、基本的にカジャ系とは別に強化するタイプですね」
「同種の悪魔が多い異界やボス戦には有り難いスキルね」
「うむ、後確認する事は……今日調査した利用者に関してか?N案件の本命はおそらくハム子ネキの方に行ってるだろうが、アムネジアの認知異界を攻略中に何かしら仕掛けてくる可能性は高いだろう」
「そっちは私の方で対処しておきます。一度調査して貰えたので捕捉も簡単ですから」
「オッケ、それじゃ確認する事は終わっただろうし、突入しますか」
取り急ぎ確認する事や、探索に必要な準備も終わった辺りでネコ覚ネキが声を上げ、日が落ちきり夜の帳が下りる中、物質世界まで侵食してきた認知異界の攻略が始まる。
ちなみに、各人の専用式神は認知異界に対応出来ないためお留守番である。
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さて、そんな万全とは言い切れないものの、出来る限りの準備をして、急いで侵入した心療娯楽施設アムネジアの認知異界だが、踏み込んだ先に在ったのは、様々な屋外スポーツが可能な施設と更に地下へと降りる階段がある、表の施設を拡大した様な遊戯空間だった。
「周辺エリアのサーチ完了、マップを表示します」
「意気込んで突入した先で普通に遊んでる利用客が居るってのは、なんか気勢を削がれるね……」
「利用客らしき姿は有るが、敵らしき姿は見えんにゃ」
「表示されてるマップでも敵反応は無いわね」
「ここが異界……」
拠点に居る木分身の私の方で、瑠璃と一緒に認知異界へ突入した四人の反応を通信越しに確認しつつ、ネコ覚ネキに渡したブルーウォーターを介して、裕奈さんと両親との縁を辿っていく。
流石に通信を挟んでの遠隔な事も有って時間が掛かりそうな気配がするけど、繋がり自体は確認出来たし、琴音も一緒なら上手い事選び取ってくれるでしょう。
「銀鈴ネキ、遠隔なので万全にとはいきませんが、お二人と裕奈さんとの縁を辿る事自体は成功しましたので、最低限ですが巡り会う因果を介してアムネジアの認知異界へ辿り着く補助を行いました。攻略が進めばより大きなサポートも可能になるかと思われます」
「そう……少なくとも無事に生きているのね」
「生存が確認出来たのは良い事だけど、問題はここの攻略だよね。見た感じだとギミック系かな?」
「その可能性は高いだろうにゃ。マップ通りにゃら地下二階や三階も含めて一つのエリアって訳だ。まあ地下に降りて屋外遊戯場が目の前に有るのは可笑しにゃ話だが」
「よっし!兎に角ギミックを見つけるためにも隈無く回ってみましょう」
「うん、そうだね。何が出来るかは分からないけど、僕も足を引っ張らない様に気を付けるよ」
そんな感じで認知異界の探索が始まり、私も瑠璃と二人で通信越しに可能な範囲の調査をしたり、認知異界の探索に慣れていない突入班の補助をしたりして、一通りエリア内を回っていった訳だけど、見つかるのは屋内外の各種スポーツ設備やゲームセンターに置いてある様な筐体などばかりで、ギミックらしいギミックが見つからないままサーチ出来た範囲のエリアを回り終わる。
「利用客がこっちを一切気にしないって異常さを抜かせば、充実したアミューズメントパークって印象?」
「どの設備も利用者が必ず一組はいる割りに、何処も順番待ち無しで使用可能、それと通路を歩いてる利用客が居ないってのも異常さの一つね。後はスタッフルームや倉庫なんかに繋がる扉も通路も無いのが気になる所かしら」
「わかり易いギミック的にゃ制限は無し……と、現実側との出入り自体は現状自由に可能だったぞ」
「【エネミーサーチ】及び【トレジャーサーチ】の反応も有りません。採取可能な素材の一つもありませんね」
「異界と言えば、そこかしこから悪魔が襲ってくる魔境だと思っていたけど、なんとも不思議な場所ですな。気を抜くとつい遊びたくなってしまう」
「なるほど、その様子だとやはり遊ぶ事がトリガーの一つになってそうですね」
「ええ、私達の中で一番精神防御が低い秋雄さんがそう感じるって事は、遊ばせる事で発動するタイプのギミックね」
「もしや、この遊びたいと感じる事自体が悪魔の誘惑なのか……」
最初のエリアを見回って、露骨に遊べと言ってる様な施設の利用状況から、あえて後回しにしていた部分以外を調べ終わった辺りで、性能が制限されてる影響でアルカナコートの精神防護を抜かれた明石教授が溢した言葉に、生まれたばかりな瑠璃と当の本人を除いて、やはりと言った微妙な表情を浮かべる。
まあ私達の微妙な感情の由来は、十中八九ニャルらしい仕掛けが仕込まれている上に、分かった上でも通らざるを得ないルートが敷かれている感じだろうって予想からだし、ニャルについてよく知らないだろう明石教授と瑠璃にはピンとこないのも仕方無い話か。
「認知異界ですから、悪魔と言うよりは人の無意識から来る衝動って所ですね。精神防護が低いと何があるか分かりませんし、遊んでみて変化があるか調べるのは明石教授以外ですね」
「では吾輩が行こう。シフターとして耐性も高いからにゃ」
「オッケー、それじゃまずは一人用から様子見かな?」
リスクを避けての探索で調べられる範囲は終わっただろうって事で、多少のリスクを覚悟でネコカオスニキが遊んでみる事になったんだけど、身長60cm程の猫耳
まあ、そんな見た目ギャグ空間はさておき、一人用って事でアーケードゲームの筐体――料金を投入せずプレイ可能だった――に座り、プレイしているネコカオスニキを眺めつつ周辺の変化を注視してみるが、特に何か起きるでもなくゲームが進みそのままクリアとなった。
「うーん……、不気味なほど何も無かったねぇー」
「私の方でも特に感じるところは無かったわ。プレイした本人の方はどう?」
「ふむ、プレイ中は特に無いが、クリアした直後は二週目をプレイするか、あるいは別のゲームに行こうかと言う気分になっていたな」
「ネコカオスニキさんのモニタリング状況を確認したところ、ゲームクリア時に微弱な思念波による誘導を受けたのを検出しました。また、獲得した思念波のデータを基に再探査した所、他の利用客も同様の思念波を受けている事が判明しました」
「なるほど、おそらく深層意識に働きかけるタイプのギミックでしょう。精神防護の無い一般利用者は遊ぶ事に没頭し、現実への興味を薄れさせていくのだと推測出来ますね」
「……つまりそれって、その辺の利用客っぽい連中が私らに反応しなかったのは、遊ぶ事以外に意識が向いていないからって事?」
「ネコ覚ネキが読心掛けても、楽しく遊んでる事しか分からなかった理由にも繋がりますね。それと同時に、今エリア内に居る利用客は生きてる人間と確定した事になりますが」
「なんか、更に面倒さが増した気がするわね……」
嫌な予感でもした様に額に手を当てる銀鈴ネキが通信画面に映るが、認知異界に一般人が生身のまま居る事自体が面倒な話なのも事実。
これまでの調査で利用客の精神の一部がネガティブマインドに置き換わる――正確に言えば負の側面に偏る――事が確認されている訳で、このネガティブマインドに関して注意するべき点は、P2に登場する
まあ【邪神 ニャルラトホテプ】に分類される悪魔自体が厄介なのは、N案件の符号が作られてるぐらいには黒札の間でも周知の話だし、人間
ただ、想定通りネガティブマインドの化身としての【ニャルラトホテプ】だった場合、その行動指針は〝人は完全な存在となり得るか〟と言う命題に基づく物であり、最終目標は常に、人類の破滅による〝人は完全な存在になどなり得ない〟事の証明。
そのためネガティブマインドの化身に関しては、悪辣な遊びをした結果として敵意を向けられる悪魔としての【邪神 ニャルラトホテプ】とは異なり、人の心が抱える暗黒面その物である自身を積極的に嫌悪させ、悪として
「――っと、これが一応考えられる中で最悪の相手になりますね。この場合大事なのは、負の側面もまた己の一部として向き合い、光も影も揃ってこその人で有る事を忘れない事ですね」
「うっわ~、とんでもない厄ネタに突っ込まされてたりしない?」
「N案件ってそう言う物ですから諦めて下さい、ネコ覚ネキ」
「これを担当し続けてるカヲルニキの有り難みを感じる話だにゃ。これから対面する事に震えてくるぜ……」
「それで、態々推定黒幕の話をしたって事は、何か攻略の鍵になりそうな物でも見つかったのかしら?」
「鍵にもなりそうですけど、本命は面倒事になりそうな要素の対処ですね。肉体ごと入り込んでる未覚醒者が多いほど現実側との繋がりが強くなりますし、利用者の深層意識が認知異界攻略の妨げになる可能性も高いですから」
「って事は、このエリアに居る利用客を外に出す方法を考える感じ?」
「肉体のある利用客は眠らせるなりして直接外に出して、精神だけ囚われてる分は私の方でパスを繋いで肉体に戻す感じで良いかと思います」
「【ハイ・アナライズ】と【情報解析】により、生身の利用客と精神だけの利用客を識別可能となりましたので、マップに表示します」
「ほぅ、探求ネキの式神だけ有って、生まれたばかりだが優秀にゃサポーターだな。では、吾輩達は生身の利用客を眠らせて運び出すとしよう」
「精神の防護は読心使いの私がやるから、運び出しの方はお願いね~」
「こちらも精神を肉体へ戻す準備に取りかかります」
そんな感じで認知異界の攻略――と言うよりも、厄ネタの爆弾解体みたいな心境で対処を開始する事に。
N案件の場合、真っ当に攻略してるだけだと、何処に地雷が仕込まれてるかわかった物じゃ無いですからねぇ……。
精神防壁としての術式紋様や金属光沢を隠すための艶消し加工を施す事で、防護の概念を上乗せしている。
なお、術式紋様を隠すのがメインで有るため、艶消し加工以外の表面処理も可能となっている。