【カオ転三次】終末を約束された世界で心のままに生きていく   作:緋咲虚徹

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105:巌戸台の日常 七

 忘却の回廊を進み始めてからどれぐらい経っただろうか。

 分岐路以外に通路自体の変化が無いのもあって、時間感覚などが曖昧になってる感じもするけど、おそらく時間的にはそこまで経っているって訳では無いはず。

 それでも早足ぐらいの速度で歩き続け、何度も出現するシャドウと戦って来た事で、裕奈も二代もそれなりに戦える様になったし、レベルもそろそろ一桁の後半に入るかな?

 まあ戦い続けていくなら、レベル10以降から増える範囲攻撃の洗礼を乗り越えられるかが重要なんだけど、今はそれより精神防護に関してを進めていくべきか。

 

「良い感じにレベルも上がってるし、ペルソナ発動したまま動くのにも慣れてきた?」

「発動自体は慣れたけど、戦闘中以外も発動したままってのは結構きついかな……」

「これも鍛練と思えば問題は御座らんが、霊力の消費による気疲れは慣れぬで御座るな」

「呼吸法による霊力回復が安定すれば多少は楽になるんだけどね。まあペルソナ自体が【小気功*1】でも習得するか、【小周天*2】の習得まで行けば御の字かな」

「私的には、それより前にここを脱出出来るのが一番なんだけど?」

「まあそれはそうなんだけどね~」

「拙者としては実戦を通して強くなれるのは歓迎で御座るが」

「いや、私以上に色々と記憶が欠落してるはずなのに、良くそう言ってられるね……」

「槍働きには関係の無い話で御座るからな!」

 

 カラカラと笑ってそう言う二代は、全くと言って悲壮感が無い訳だけど、ぽっかりと穴が空いた様に記憶が欠落するなんて状況になると、裕奈みたいに普通は不安になるよね。

 私に関してはレベルと言うか超越者に至ってるのもあってか、忘却の影響を受けてる感じはしないんだけど、裕奈は最近の流行だとかそこそこ付き合いのあるクラスメイトの事とかを思い出せなくなってるし、二代に至っては武術に関連する周辺の事以外を大分欠落させている程。

 まあそんな状態になっているとは言え、分岐では裕奈の直感に私の感覚も併せて道を選んできたし、通路に出現するシャドウは二代が突っ込み裕奈が援護する形で、ほぼ足を止める事無く撃破出来ているため、早足に進んでいるのもあって大分奥まで来れているとは思うところ。

 実際ここまでに出て来た分岐は、最初のY字路から十字路、通ってきた道に加えて四つの分岐がある五差路となって、そのまま数が増える多差路*3が続くかと思えば、今度は一見分岐の無い通路の様に見えて、実は騙し絵みたいにト型の交差点が隠されていたり、白い壁に紛れてる階段を上り下りする事になったりと、裕奈の霊感が何かに引き寄せられてるかの様に道を感じ取れていなければ、もっと長い事彷徨うハメになっていただろう道程を越えてきた訳だしね。

 

「なんかこれ見よがしな扉があるんだけど……?」

「白一色なのは変わらぬが、色々と装飾が施された大扉で御座るな」

「回廊の終点で、目的の認知異界の入り口に到着したって感じかな。裕奈の霊感はこの扉の先を指してる感じ?」

「んー……なんかちょっと違う?良く分からないけど、このまま開けるのはダメっぽい気がする。準備か何かした方が良さそう?」

「ふむ、何か仕掛けでもあると言う訳で御座るか」

 

 現在は回廊の突き当たりに装飾が施された大扉があるって状況で、パッと目に付く範囲で他の通路や扉などは無い感じ。

 裕奈の霊感に訴えてくる何かは、ここまで来れた事を考えても信じるに値する物だし、それが開ける前に準備をした方が良いと伝えてくるなら、確実に扉を開ける前にしなければいけない事があるのだとは思う。

 思うんだけど――

 

「うーむ、扉を開ける前にしておかないといけない何かがあるってのは確実として、問題はそれが何かって所だよねぇ……」

「琴音は似た様な状況とか知ってたりしない?」

「私的には候補が多くて絞りきれないって感じかな。例えば扉の開き方――前後や左右のスライドなどの違いで繋がる先が変わったり、扉の先が目的地だけど触れた時点で強制転移するトラップが仕掛けられてたり、専用のアイテムを填め込まないと正しい道に繋がらなかったりなんてのは普通にあったし、強制的にデバフを付与してくるなんてのもよくあるかな」

「絡め手は面倒で御座るな……」

「ここに連れ込まれた時に忘却の回廊って聞こえたんなら、忘却関連の状態異常って可能性は高くない?」

「それも含まれてそうだけど、回廊自体にそのギミックがあるのを考えると、他にも何かあると思うんだよね」

「道中に何かしら持ち出せそうな物も無かったで御座るし、既に持ってる何かや心構えなどが重要だったりするのでは御座らんか?いや、拙者既に名前と槍の扱い以外ほぼ思い出せぬ故、道中どうだったのかわからぬで御座るが」

「いやほんと、二代ってメンタル強いってゆーか、戦えればオッケーなコンバットフリークスだよねぇ……」

「そんなに褒めても槍働きぐらいしか出来ぬで御座るよ?」

「六割強ぐらい呆れてる感じだと思うけど?でも二代の言う通り、既に持ってる何かが状況打開の鍵になってる可能性はあるし、収納バッグに入れてる裕奈の私物を確認してみて、私も自分の確認してみるから」

 

 何故その状態で快活に笑ってられるのか謎では有るけど、持ち込んで居る物が殆ど無い二代にはシャドウなどを警戒して貰う事にして、裕奈と二人でそれぞれの私物を入れてる収納バッグを確認していく。

 裕奈は引っ越しのために一部屋分の私物を入れているし、私の方も容量の大きさにかまけて色々と突っ込んだままになってたから多少時間が掛かったけどね。

 まあ私の方は特にコレと言って感じる物は無かったから、裕奈が大扉を見て感じたのは自身の危険に関する物っぽいかな?

 

「私の方は特に思い当たるのは無かったけど、裕奈はどう?」

「んー昔の家族写真、お父さんとお母さんが映ってるのが引っ掛かってる感じ」

「そういや裕奈のお母さんって、生きてるかもしれないって言ってたっけ」

「え?もう七年も前だよ?お母さんが海外の仕事中に亡くなったのって」

「うわっ、そこまで記憶の忘却進んでるんだ。今朝葦原荘で一緒に風呂入った後に裕奈から聞いた話だよ」

「マジで?」

「うん、人攫いとか人体実験とか平気でやるメシア教に狙われたらしくて、裕奈の方まで手が伸びない様に表向きは死んだ事にして、身を隠してるっぽい感じなのをお父さんから聞いたとか」

「あ、そっか……。お母さんが亡くなってからしばらく落ち込んでたお父さんが、急に元気になったのってお母さんが生きてるのを知ったからだったんだ」

「ふむ、そのような事が有ったので御座るな」

「あーなるほど、この大扉の仕掛け検討付いたかも」

 

 両親と一緒に映ってる家族写真が裕奈の霊感に反応したのと、今朝に聞いたお母さんが生きてるかもしれないって話が回廊のギミックで欠落していた事、そんでもって私の方は特に何も無いってのを考えると、現実を否定したくなるような辛い過去の出来事を、再体験させるって辺りじゃないかな。

 忘却の回廊を造り出した連中が言っていた事から考えても、辛い出来事をフラッシュバックさせて自ら現実を拒否させる事で、現実を忘れて認知異界(夢の世界)の住人となる契約に同意した事にするぐらいは有るだろうね。

 

「――と言った感じの仕掛けが、扉を潜った時点で発動する可能性が有るかな。対策としては二代が言った様に、心構えをしておく事が一番だね。過去にあった辛い体験を想起されたりしても、現実を否定して逃げたりせずに受け入れて、今を生きる事を諦めない心が大事だよ」

「なるほど、それなら拙者は問題ないで御座るな。夢でいくら槍を振ろうとも、強くなるには起きて鍛えねばならぬで御座る」

「まあ二代はそれで良さそうだね」

「琴音の推測通りだとしたら、私はお母さんが亡くなったって話を聞いた時の事かな……ん、欠落してるっぽい朝の話の事を聞いてなかったら、夢に逃げてたかもね。でも、お母さんが本当に生きてるなら……うん、大丈夫。私も今を生きる事を諦めないよ!」

「オッケー、そんじゃ行きますか!」

 

 回廊の終点だろう場所に辿り着いてから少し時間が掛かったけど、確りと覚悟も決まった所で三人揃って大扉に触れると、転移の感覚と共に視界が切り替わる。

 一瞬の暗転後に見えたのは、カジノと言われて思い浮かべるような場所。

 そして先の回廊と同様に、直接意識へと音声が響く。

 

――<夢の遊戯場(ドリームランド)>――

 

 ご丁寧な事に、どの様な字を当てて何と読ませるのかまで分かる仕様の声が聞こえた後、こんな状況でなければ凄くワクワクしただろう軽快な音楽が聞こえてくる。

 周囲を確認すると、悪夢に魘されている様な感じの裕奈と二代が倒れており、おそらく推測した過去の再体験なりをさせられているんだろう。

 そんで、周囲にはカジノで遊んでる客っぽい感じのヒトガタに、正面奥を見てみればいかにも胡散臭い雰囲気の推定ニャルらしき存在が居て、嘲るような薄笑いを浮かべて椅子に座りこちらを見下ろしている……と。

 

「ふむ、素質も無い愚者を使った異界ではこんな物か。まあ招いてもいない超越者(化物)に襲撃されたのだし、不運だったと思うしか無いな。まったく、どの私が作った駒かはわからんが、遊び道具ぐらい管理して貰いたいものだ」

「ふーん、ネガティブマインドよりのニャルか。アムネジアの施設を中心に広がってるんだろうし、タルタロスと繋げて死に接触させる呼び水にでもする気だったってとこか」

「いきなり踏み込んで来ておきながら随分な言い様だな?まあ丁度良い場所に舞台が出来たから、あわよくばとは思いもしたがね。とは言え流石の私でも、他の私が作った遊び場だと配慮も必要だ、無遠慮に荒らし回るお前の様な化物とは違うからな」

「メメントスみたいな大衆のパレスって程じゃないけど、近い感じがあるし、やっぱアムネジアの利用者って括りで構築してるのは間違い無いか。規模の小ささもあってニャルといっても霊格(レベル)は80前後……と、三桁超えない分ギミックに割り振ってる感じかな?これ」

 

 ニャルと確定した存在が何やら言っているが、対話するつもりの無い相手と話すだけ時間の無駄って事で、ペラペラと煽り文句を言ってるニャルは考察情報の一つ程度に意識しつつ無視して、裕奈と二代がギミックを突破してくる間に認知異界を破壊するための情報を集めていく。

 考察材料はここに転移してきた時に聞こえた名称、それからこっちに視線も向けずに遊び続けている白紙を切り抜いた様な人の型をした何か、それと回廊に巻き込まれる前に瑞樹から送られてきた情報辺り。

 多分このヒトガタが、認知異界に囚われたアムネジア利用者の精神で、現世の記憶と一緒にネガティブマインドを肉体側に押しつけた事により、裏路地で儀式をしていた連中みたいなのが発生したって事かな?

 となると、認知異界の成立過程から考えたら、向こうで延々としゃべり続けてるニャルよりも、周囲のヒトガタの方がメインになってる可能性もあるか……。

 ニャルが出現してる時点で異界の主としての権限は掌握してるだろうから、最終的に倒すなり封印するなりの必要はあるとして、悪魔よりでは無くネガティブマインドよりのニャルってのを考えると、あえて自身を倒させる事で最悪な結果の引き金にする可能性も考えるべきだね。

 

「まずは確認かな?【アギバリオン】」

「ふん、まともに話すら出来ないとは、所詮は暴力を振るうしか出来ない化物か。そらお前達、楽園を破壊する敵が攻めてきたぞ!」

 

 ある程度ギミックに予想を付けた所で確認を兼ねてニャルを炙ってみたけど、対して効いていないのと周囲のヒトガタが敵対行動を取ったのは予想通り。

 後、ニャルを攻撃したのが切っ掛けみたいな台詞を吐いてるけど、そもそも私達が転移してきた後から少しずつ変化し始めていて、私が攻撃する少し前には既に敵対の気配が出てた訳だし、ニャル的にはヒトガタが制御下にある様に見せたいって所かな。

 一斉に襲いかかってくるヒトガタを取り出した薙刀を一振りして吹き飛ばすと、さっきニャルを焼いた時以上にダメージを与えられた様子が無く、数秒もすればまたヒトガタに集まって襲いかかってくる。

 

「よっと、スキル使うまでも無いけど、こりゃ持久戦になりそうだね」

「その余裕が何処まで続くかな?せいぜい無様に藻掻き苦しむと良い」

 

 色々とギミック予想を立てて、ニャルやヒトガタに一当てした事で確信したのは、強引にギミックを貫通させてニャルを倒す事自体は可能だけど、現時点でニャルを倒して異界を潰した場合、ヒトガタと化してる異界に囚われた利用客のポジティブマインドが消滅し、結果として肉体を占有しているネガティブマインドが暴走するだろうって所。

 ここに囚われている時点で現世の肉体を放棄している状態になっていて、路地裏で儀式していた終末思想信者みたいなニャルの手駒となっている訳だけど、それでもアムネジア利用者の集合無意識により発生した認知異界との繋がり自体は残っていて、逆に言えばその繋がりがあるから、ニャルの手駒としての行動が出来ているとも言える状態なんだと思う。

 つまり現状のポジティブマインドが囚われている状態でこの認知異界が消滅すると、ニャルが手駒として使うために残していた繋がりすらも消えて、ネガティブマインドに染まりニャルのペルソナを宿した利用者の肉体が、解き放たれると言う事。

 

 今はまだ、この認知異界に出現しているニャルのセッション(舞台)として統率されているけど、自身が倒されてセッションクリア(舞台終幕)となった後に、ニャルのペルソナが大人しく消える何て事は、まあ有り得ないよねって。

 自由に行動出来る肉体を得たとなれば、これ幸いとそれぞれがそれぞれの思惑で行動を開始するだろうし、そうなれば噂システム周りの対処が確実に後手に回るだろうと予想出来る。

 結果として、カヲルニキに余計な負担を掛けさせる事になるだろうし、今回よりも更に厄介な終末案件が発生しかねない訳で、詰まるところ現実に居るニャルのペルソナ持ちをどうにかするか、集合意識と化して襲い掛かってくる利用者達を消滅させずに、異界を解除する方法を見つけ出す必要があると言う事。

 なんだけど、まあ忘却の回廊に巻き込まれた時点で、現実側に居る利用客をどうにかするのは無理だし、直通で認知異界の最奥に連れ込まれた時点で、この場所から集合意識に干渉する方法はそもそも存在していないと考えるべき話。

 正直なところ、ニャルがこうして姿を見せてペラペラと喋っている事からしても、現時点で私が取れる手段は後の火種を覚悟で強引にニャルを倒すしか無い、ってのがニャルの思惑なんだろうけど、私にはもう一つ、別働しているはずの瑞樹達が何とかするまで耐えるって手段が取れる。

 認知異界の中だと時間感覚が当てにならない場合も有るけど、状況が劇的に悪化でもしなければ数週間程度ならどうとでもなるし、とりあえずは二人が起きてくるまで現状を維持しておこうかな。

 

「んっ……ここは……」

「お、裕奈も起きたね。ギミックに負けなかった様で何より」

「やはり槍を振るうなら現実に限るで御座るな!」

「化物の次は獣か、まったく話も出来ない奴ばかりとはな。ああいや、忘却の回廊を通って辿り着ける者がまともな人間な訳がなかったか、私とした事が畜生と人間を同列に扱ってはいかんな」

 

 さて、どれだけ経過したかは分からないけど、二代が起き上がってからしばらくして、裕奈の方もヒトガタに陥る事無く目を覚まして一安心って所かな。

 二代に聞いた感じだと、辛い過去の追体験では無く、好きなだけ戦える闘技場みたいな場所で戦っていたらしいんだけど、戦っても疲労や怪我などはせず、技術の成長なども感じられなかった事から違和感を覚え、目を覚ましたとの事。

 多分だけど、二代には否定したいほどの過去体験が無かったから、現実を捨ててでも居続けたいと思うような夢の世界が体験させられたって感じかな?

 

「あー、どんな状況?」

「裕奈の少し前に二代が起きて、周囲の無限湧きするヒトガタを巻き藁に鍛錬中。後は、ここの認知異界に囚われてる周囲のヒトガタが肉体に戻るまで、しばらくの間持久戦って感じ」

「持久戦って、凄い速度で琴音が殲滅してる様にしか見えないんだけど?って言うかそれどうなってんの?!」

「レベル差の暴力で適当に薙ぎ払ってるだけだね。まあそれより、私は対象外だったし二代は望むままの夢の世界みたいな体験したらしいけど、裕奈の方はどうだった?」

「それよりって……。はぁ、私の方は琴音が予想してた通りってとこかな。お母さんが亡くなったって話を聞いた時の追体験で、何か精神的にも当時の小学生だった頃に戻ってて、今もちょっと引きずってる感じ」

「そっか、やっぱり周囲のヒトガタは、現実から目を背けて楽な世界に囚われた連中って認識で間違いないか」

「なるほどなるほど、化物と獣だけかと思えば人間も居たのか。まったく度し難いな、生きている意味など無いのだから、ここの有象無象同様にさっさと夢の世界に引き籠もれば良い物を」

「何あれ、男か女かどころか、見た目の年齢も良く分からなくて気持ち悪いんだけど……」

「鬱陶しい上から目線で喋ってる奥のは無視して良いよ。態と生理的な嫌悪感を抱かせる見た目をしてたり、敵意や害意を持たせる様な言動してるだけだから」

 

 適度に二代の方へヒトガタを回したり他のヒトガタを散らし続けながら、起きたばかりの裕奈へ状況説明と、ギミックで体験させられただろう内容について軽く聞いておく。

 まあこっちは予想した通りだったみたいだし、夢の遊戯場(ドリームランド)のギミック予想が補強されたぐらいかな。

 とりあえず懸念事項だった裕奈が囚われる可能性は無くなったし、後は派手に蹴散らしてる事で誤魔化しているけど、ヒトガタが減り始めてる事を何処までニャルに隠し通せるかって所かな。

 

「だがまあ、人殺しの仲間を人間と呼ぶのは、いくら生きる価値も無い人間相手でも失礼だったか?」

「はぁ?何言ってんの」

「そのままの意味だが、理解が難しかったか。そこの化物がこの世界に囚われているだけの哀れな一般人を殺し続けているだろう?精神が死ねば肉体もまた死に至るのは道理、つまり今もゴミの様に撒き散らされているそれらが人殺しの証拠と言うわけだ。ここまで言えばその巡りの悪い頭でも理解出来るかね?」

「ほら声を掛けちゃダメだって、構って貰って嬉しそうにしてるでしょ?多分回廊のせいで記憶が欠落してるかもだけど、前にちょろっと説明した様に、ペルソナ能力の根源になってる集合的無意識(心の海)の、ネガティブマインド(負の側面)が形になったのがアレ。下手に否定したり拒絶したりすると、ペルソナを制御出来なくなったりするから、基本的に無視するか受け流す様にね」

「あ、うん分かった。絡まれ続けるのは嫌だし、出来るだけ反応しないように気を付けるよ」

 

 それからは活き活きと煽り始めるニャルに、我慢しきれなかった裕奈が時折反応してしまうなんて事も有ったけど、ある意味ではそれが上手い具合に意識を誘導する形になった様で――

 

「っ!?まさか!」

「おっと、気付かれたみたいだけど、ギリギリ間に合ったかな」

「貴様っ!」

「今必殺の光と闇が合わさり最強に見える【混沌(カオス)ビーム*4】!ふっ、シュタッと参上、吾輩が来たからにはもう大丈夫だぜ、ガール」

「何であんたがドヤ顔してんのよ!」

 

 ニャルが気付いた時には、認知異界に囚われてヒトガタを形成していた集合意識が急速に消えていき、ニャルが何か動き出す前に最後の一体が消えた直後、ひび割れる様に砕けた天井から漆黒の光線がニャルへと降り注ぐ。

 穴が空いた天井から飛び降りてきてドヤ顔を決める体長60cmの生物(なまもの)に、同じく飛び降りてきた黒髪の女性がスパーンとハリセンを振り抜き、続いて猫耳カチューシャを付けた少女や見た目アラサーぐらいの男性が、空いた穴に沿って出現した階段伝いに駆け下りてくる。

 

「っと、ネコカオスニキにツッコミしてる場合じゃ無かった。裕奈!無事っ!?」

「っ?!お、お母さんっ!?」

「良かった。裕奈も無事だね」

「お父さんも?!」

 

 ようやく、と言うほど苦労した訳でも無いけど、持久戦した甲斐も有って援軍が到着。

 いよいよこの事件もクライマックスって所かな。

*1
戦闘中、行動する度にSPが小回復。

※戦いに臨む意識により生じたMAGによる回復と裁定し、固定値では無く割合回復と独自解釈。

*2
精神力や霊力(MAG)、体力の自然回復力を小向上。

大気中のMAGを取り込み自身の霊力と混ぜ合わせ、霊体を活性化させる事で霊力や体力の回復効率を向上させている。独自設定スキル

*3
五本以上の道が交わる交差点の名称

*4
破魔系と呪殺系を混合させて特殊属性に昇華したネコカオスニキの固有スキル。

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