【カオ転三次】終末を約束された世界で心のままに生きていく 作:緋咲虚徹
「おーし、そんじゃ告知してた通り、新しく空戦技術の講義――と言うか、少し前に戻った勉強会っぽい感じだが始めて行くぞ。まあ本格的な実践は各々の適性調べて、一番適性に合った装備を用意した後に成るから、しばらくは座学で知識の詰め込みと、多少数を用意出来た装備での練習になるがな」
「プレ講義みたいな感じ? 年度替わって新しく科目が増えたのかと思ってたけど」
「外部解放区画の受け入れスタートが去年の九月だからな。蓬莱島の新学期などは九月スタートにする予定だとさ。今はオープン一年目で色々手探りって事で、試して良ければ継続、問題あるなら改善していくってこったな」
「なるほど了解、話の腰折って済まんかった」
「疑問のままにしないってのも大事だと言われてるから構わねぇよ。そんで空戦技術の講義についてだが、少し前に見た目木造の飛空艇が蓬莱島を出入りしてたのを見たのは居るか?」
「ああ、FFⅤに出てくる飛空艇っぽい奴だろ? 掲示板でも話題になってたぞ」
「あれで京都沖まで行って、海洋資源保護目的の悪魔掃討作戦に参加してきたんだが、飛空艇で飛んでるとまあ当然の様に飛行可能な悪魔が襲ってくる訳だ。そんで、甲板より上空からなら迎撃も可能なんだが、船底の方から来るとこっちも飛べないとどうしようも無いってな。そんな訳で、終末後の蓬莱島だと飛空艇による空路が重要になるからって事で、飛空艇を護衛出来る人員の層を増やすのが、この講義の主目的だな」
四月もそろそろ終わろうかって時期だが、新しい講義をやることになったのは師匠からの通達による物。
何でも将来的に必要な技術になるだろうから、空中戦可能な人員を育てる基盤作りとして、基本的なカリキュラムの構築だったり、指導出来る側の人間を増やしたいとか。
実際京都沖に連れて行かれた時は、飛空艇の護衛として船底方面を飛び回ったりもしたし、海面に近いと海中からの攻撃が飛んで来たりもしたから、重要だってのは分かるんだが……。
そもそも基本的に島への出入りは転移による物で、転移以外の方法で来るのは、新ハワイ島とか呼ばれてる近くの島に住む黒札の人が来る時ぐらいだし、態々飛空艇を作って量産までする辺り、師匠が言う終末ってのはそれほどの〝何か〟があるんかねぇ。
「飛空艇の操縦とか船の上で戦うって事じゃ無くて、個人で空を飛んで戦うって内容なのか」
「その辺はどっちもって所だな。個人装備で飛ぶのは空間把握能力の適性が要るから、誰でも出来るって訳じゃないが、船の操縦か船の上でなら可能って場合も有るしな」
「ほー、なる程。とりあえず空を飛ぶ体験が出来そうってだけでも、受けるに越した事は無さそうだな」
「それより俺は飛空艇が戻ってきた数日後に飛んで来た、巨大な潜水艦とメガロドンを足した様な、奇っ怪な
「黒札のKSJ研究所ってチームの人が、蓬莱島へ観光に来る序でに売り込みに乗ってきた〝U-シャーク*1〟って奴らしい。見たのも居る通り空を飛べて見た目通り海中も航行可能な上、地中も泳ぐ様に進む事が可能な多機能船艦だそうだ」
「KSJ研究所って言えば、確か対穢教鳥用に呪殺属性アイテムの大量生産してる所だよな。アイテムを高速でばらまくピッチングマシンまで用意してて、ガイア連合の黒札の中でも、殊更メシア教への殺意が高いって話は聞いた事あるが……」
「今回来たカズフサニキって人が、一応と言うか師匠の外弟子に当たるらしい。
対メシア教の先鋒みたいな人物が何故蓬莱島に? とでも言いたそうな表情を浮かべる生徒に、同じ事思ってた私としても内心頷きつつ、師匠から聞いた伝えても大丈夫な部分を話す。
いやまあ、師匠的には別に隠してる訳でも無いし気にしないっぽいんだが、弟子としては流石に、【房中術】の鍛練のために来た何て事は言いたかねぇし、んなこと言おう物なら私の事まで連鎖しかねん。
ちなみに、正式な弟子としての初めては1998年の綴姉さん*2との事で、その前の年には琴姉が指導を受ける様になったらしいんだけど、カズフサニキが師匠に教えを受ける様になったのは、更に前の1995年頃の事。
何でもガイア連合が組織として成立した当初辺りで、所謂長兄的なポジションになるんだとか。
つまりは当時十○歳かそこらの頃から、そう言う事をしてきた関係って事でもある訳だよな……、それを楽しい思い出みたいに言える辺り、まともそうに見えて師匠本人も言ってる様に、人間性が可笑しくなってる部分って事なんだろう。
弟子入りして、霊的才能の限界を拡張する【霊質強化術】を受けるに当たって説明された事だが、レベルが上がってヒトの限界を超える段階に成ると、ヒトの感覚からの逸脱が大きくなり、ヒトとしての意識や感覚が薄れていくから気を付ける様に、と言われたのも、今にして思えば何となく理解が出来た気がするな、こんな理解の仕方はしたくなかったが。
それは兎も角、兄弟子なカズフサニキの思惑の程は不明だけど、師匠自身としては【房中術】の鍛練としての性行為と、普段家で行われてる性行為と合わせて【房中術】の鍛練を行うのは明確に別けられてるらしく、具体的に言うと前者は〝感覚の全てを制御し、霊力を練り上げる事〟が目的で、肉体的な反応はどうあれ、そこに友情はあっても愛情は存在しないとか。
逆に後者の方は、感覚の制御を行う訓練も行うけどメインは愛情を確かめ合う事で、ヤるなら気持ちいい方が良いから【房中術】の手管も使うし、習得の取っ掛かりもその方が良いだろうって事らしい。
まあ師匠自身も、ミナミィネキって黒札の人みたいに選り好みせず【房中術】の指導をするタイプでは無いし、修業のために100人抱いてこい何て言われないのは安心なんだが、其れは其れとして翌日が休みでも無ければ部屋に行ける気がしないんだがな!
あの師匠と毎日一緒に寝てる綴姉さんや琴姉って、やっぱ夫婦なだけあるよなぁ……。
「へぇ~、やっぱ黒札同士でも色々教え合ってんだな。……って、ちょっと気になってた事が知れたのはのは良いが、それより今は空中戦に関する技術だろ」
「おっと、そうだったな。そんじゃまずは、今ある装備からどんな物か説明していくぞ」
思考も含めて脱線していた話を元に戻し、空戦技術の講義で使う装備――正確に言えばペリーヌの方の、空戦装備製造の講義でやる予定で、蓬莱島に集まってる職人ギルドの連中でも作れるだろうラインの物を取り出す。
一つ目は私も使っている重力制御式の物だが、これに関しては学びの園にある設計図通りに作るのも一苦労な代物で、外側の改良すら当分先の事になりそうって話しだから、一応見せておくだけだな。
二つ目はペリーヌが正式に譲渡されたストライカーユニットで、こっちは重力制御関係が一部に使われているものの、推力関係はマギジェットスラスタや仮想展開したMAGのプロペラを使うため、まだ手を出せる余地がありそうってんで、研究の主力になりそうなところ。
三つ目は、京都沖海戦の時に師匠が途中で持ち出して遊んでいたリフボード*3で、構造も使用している技術も割と単純だし、難しい部分はせいぜい底面に貼り付ける、【水面展開】の術式を刻んだ板の製造ぐらい。
「重力制御のみの奴は私が使ってるのと、サンプルとして学びの園に寄贈して貰った奴が五台程しか無いから、適性を見るための試験で使うぐらいになる。職人ギルドの連中がサンプルのと同程度の物を作れる様になれば、多少状況は変わるからそれを楽しみにしといてくれ。ストライカーユニットの方は一応、試作品の製造に取り掛かれそうって話だから、しばらく様子見だな。そんな訳で、リフボードの方はそれなりの数用意して貰ったから、今日の内に一通り適性試験を終わらせて、次回には海岸へ行って練習に移る感じの予定だ」
一通り装備の説明が終われば、次は適性試験に向けた注意事項をざっと説明して、早速重力制御式から試していく。
まあ重力制御式は製造難易度が高いだけ有って、使用者が意図して行わなければ落ちる事も無いため、懸念すべきは速度を上げすぎての衝突や、上下左右に回転した際の位置喪失によるパニックを起こすかどうか。
適性があったのか、今だとバレルロールやインメルマンターンなどのマニューバでも位置を見失う事は無くなったが、私も最初は苦労したもんだ。
案の定、不用意に回転掛けてそのままパニックを起こす者、不意に速度を上げて壁に激突する者もそれなりに出て来たが、一部には確りと適応して縦横に動ける様になった者も居たし、いずれ重力制御式も製造出来る様になれば、一線で戦える様になるかもしれんね。
次のストライカーユニットは墜落する奴もちょこちょこ居たが、重力制御式よりは扱えてるのが多い感じかね。
重力制御のみの物だと重力方向が装備や胴体の下側に固定され、傍目には天地逆転していても本人は地面に立ってるのと同じ感覚になるため、その辺の齟齬によって混乱を起こすんだが、ストライカーユニットに使用されてる重力制御は主に反重力で浮くための物で、体に掛かる重力方向自体は変化しないのも、適性者が増えた理由ってところか。
最後のリフボードは、明確に何かに乗って飛ぶ感覚が強いからか、空戦技術の講義に参加しただけあって全員が乗れたのは良い感じだな。
まあ調子に乗ってトリック決めようとして墜ちた奴も居るが、その辺は想定範囲内だし問題無いな。
「ぬぅ……、簡単だけど難しいと言うか、空間把握能力の有無が大事だって言われたのも納得だな」
「視界は逆さになってても重力を感じる方向は変わらないってのが、重力制御式の良し悪しだよな。俺はそこまで違和感無かったが、駄目な奴は吐いたりしてたしなぁ」
「重力制御式のが一番自由度が高いのは分かるんだが、安定するのはストライカーユニットだし、飛んで楽しいのはリフボードだな」
「やっぱり地面の方向に重力が掛かっていて、横や逆さになっている状態を知覚出来る方が安定するって事は確かだな。ストライカーユニットが量産されるのが待ち遠しいが、個人で持てる様な値段になるかねぇ?」
「値段かぁ……、買えたとして整備とかどうすんだって話にもなるよな。やっぱ個人ならリフボードが一番か?」
「いや、職人ギルドの奴らがその内、町工場っぽく整備工場とか作ってくれたりしないか? 今後必要になるからって製造方法を渡したり講義の枠を作ったぐらいだし、車みたいな感じになったりしそうな気もするぞ」
順に適性試験を試していき、最後のリフボードまで来れば大概慣れてくるもので、順番待ちする方も終わった側も当初の緊張など既に無く、試験中の奴が馬鹿をするのを笑って眺めつつ、意見交換する余裕も有る程。
中には早速知り合いの職人に連絡を取って、個人用にリフボードやストライカーユニットを入手出来ないか聞いている者も居るが、リフボードは兎も角、ストライカーユニットは当面一般販売しないって話だから、せいぜい職人ギルドが作った試作品のテスターになれるかどうかって所かね。
ま、その辺は個人の自由だから私が関与するこっちゃ無いし、今は最低限、リフボードに乗っての空中戦闘が出来るぐらいに教えるのと、育てるためのカリキュラム作りに専念だな。
そんなこんな適性試験の進行で気になった事や、出て来た問題点などをまとめつつ、一日掛けての試験を終わらせた翌日。
蓬莱島の南側に陸地を拡張しながら広がっている外部解放区画の東、師匠の家が在る山から見て南東方面にある海岸線へと集合。
各々動きやすい格好でとは言っておいたが、まあ模擬戦も予定してるし海に墜ちるのは確定してる訳だし、全員水着だよな。
まあ私も、師匠がノリノリで用意した〝あぶない水着*4〟の改良型とかって話の〝きわどい水着*5〟――見た目は布面積少なめのモノキニタイプの水着――に着替えてるからどうこう言いはしないが、見た感じ霊装では無い普通の水着っぽいし、何度か事故が起きるのは覚悟しておく必要が有りそうだな……。
「馬鹿するのは良いが、【ディア】で治せる程度にしろよ! いくら蘇生出来るつっても、自責分の蘇生費用は自己負担だからな!」
「「へーい!」」
注意事項を話し終わって、一先ずは空中での行動に慣れさせるため、昼までは自由時間って事にしたんだが、返事もそこそこに掛けだしていく連中を見るに、何処まで話が残っている事だか。
まあ年代が若い男連中は、参加してる女性達や私だったりの水着姿に目移りしてたし、殆ど聞こえてないと思って良いか。
ともあれ、蓬莱島の住人は全員学徒な訳で、
「それにしても、思ったより水着姿を見られる事に抵抗感無かったな。いや、師匠に渡されて試着した時は恥ずかったし…………あれ? これ
自分の重力制御式飛行箒〝
【魂魄精練法】に師匠との【房中術】も手伝って、私とペリーヌはここ二ヶ月程で色々と育ったし、今回渡された水着にも負けていないと思えるぐらいだから、以前よりはスタイルに自信が付いてるのは確かなところ。
ただまあ、それで男の視線が気にならないって訳じゃ無いし、胸や腰回りに向かう視線が増えた事に、優越感と羞恥が混ざり合ってる感じもしてたんだが、こうして水着の格好になって感じたのは、男に見られる事より師匠にどう見られるかと言う事の方。
何と言うか、もう後戻り出来無いとこまで価値観が変わってる事に、今更気付いた感じで身を捩りたくなる様な感覚になったが、今はそんな場合じゃ無いって事で後回しとする。
今夜戻った時、まともに師匠の顔、見れるかねぇ……。
その後、午前中は個人での習熟に専念して、複数人での行動は午後からとの説明を聞き流していた若い層が、案の定リフボードでの競争で接触事故を起こす事になったが、
この手の問題は今後確実に続くだろうし、受講者に気を付けさせるってのはどうしても限界が有るのを考えると、最悪の場合を想定して【リカーム】持ちをサポートに付けるのが必須になるだろうか。
「ま、課題は色々と多いが、それでも確りと前に進めてる感じがするのは良い事だな!」
底面には【水面展開】を発生させる術式を刻んだ板を使い、空気中のマグネタイトでも人一人ぐらいは浮かせられる様になっている。
また、ボードの後部側にブースターを付ける事で、水流操作か気流操作での加速や複雑な動きを可能にしている。
リフボードのタイプは、水流操作か気流操作のどちらかのみのタイプと、両方可能なタイプの計三種類。
火炎・電撃・核熱属性に耐性が有り、太陽光による紫外線などの影響を防ぐ効果も付与されている。
探求ネキとカズフサニキの関係や【房中術】を行うに当たっての認識に関しては、拙作世界線ではこう設定させて貰いました。
家族との子作りと、スポーツ感覚の違いというか、本家様のドクオニキと式神の友情ックスな関係がイメージとしては近い感じ。